何もない部屋が教えてくれた3つの判断基準|時間と場所から自由になりたくて肩書きを手放した話
もし、あの日の東京に戻ったら
もし、
あの日の東京に戻ったら、僕はまた同じ判断をするだろうか。
そんなことをふと考えたのは、
本社取締役を辞する意向を提出したからだ。
東京の、狭くて何もない部屋から、地元に引っ越してきた。
荷物は段ボール3つだけだった。
東京には20年以上暮らした。
未練や後悔がないかと言われたら、正直わからない。
でも、地元での再出発の方が、僕には魅力的だった。
今回の移動は、本社に呼び戻されたことがきっかけだった。
新しい役割、新しい肩書き。
悪くない話だった。
でも、3ヶ月でその意向を白紙に戻すことにした。
理由はいろいろある。
シンプルに言うなら、窮屈だった。
時間と場所に縛られず働く方が、僕には合っていたらしい。
もちろん、
辞意を伝えたからといって、すぐに全部を手放せるわけじゃない。
今は業務整理と引き継ぎの真っ最中で、今後も一部は業務委託というかたちで関わり続けることになる。
そのあたりはまた追って書くとして、今日はこの決断の背景にある思考編集の話をしたい。
部屋の真ん中に、段ボールが三つだけあった
引っ越しは物の整理だと思っていた。
でも実際は、生活の前提を見直す作業だった。

洗濯機だけを送り、あとは全部鞄に詰めて持っていった。
ベッドも、机も、椅子も手放した。
その過程で見えた基準が、三つある。
① なくても生きられるか
東京の部屋で、
ベッドを解体しようとして、手が止まった。
シンプルに、面倒くさいと思った。
組み立てるのも、また面倒だ。
本当は、ベッドがなくても暮らせる。
あると楽なだけだ。
便利と必要は、違う。
「なくても生活できるか」
これが最初の基準になった。
② 長く使う前提があるか
机と椅子も手放した。
以前は高価なオフィスチェアを使っていた。
在宅時間を快適にしようと思ったからだ。
選んだのはエルゴヒューマン。
人間工学に基づいた設計でどうとかこうとか…
椅子としては素晴らしかった。
でも、重くて引っ越しに向いてなかった。
拠点が変われば、家具の意味も変わる。
どれだけ良いモノでも、
長く使う前提がなければ一時的な所有になる。
高価な椅子が悪いわけじゃない。
前提が揃っていない状態で持つと、生活も重くなるだけなのだ。
生活が固定されていないなら、家具も固定しなくていい。
この基準は、
東京から変わらず持ち込んだ道具にもそのまま表れている。
例えば、5年以上使い続けているバルミューダのケトルの話は、こちらに書いた。
③ 仕事は場所に依存しているか
東京にいなければいけないと思っていた。
成功するには東京だ、と。無意識にそう決めていた。
でも実際は違った。
仕事は拠点よりも、人間関係とポジションに依存していた。
福岡を拠点に動くようになっても、方向が変わるだけで、働き方の本質は変わらなかった。
場所は条件ではなく、手段だったのだ。
そもそも、成功ってなんだって話だし。
このあたりの経緯は、東京を離れると決めた日のことにも書いている。
広くなった、何もない部屋
東京の部屋も、実は何もない部屋だった。
ミニマリストを名乗るくらいだから、当然といえば当然なのかもしれない。
でも、今の部屋は違う。
同じ「何もない」でも、随分と広くなった。
床は無垢の木目、白い壁、梁がそのまま見えている。
家具はまだ、ほとんど何もない。
ベッドとデスクと、飾り棚があるだけ。

部屋の半分以上は空白。
サーキュレーターが一台、ぽつんと置いてあるだけだ。
正直に言うと、これがよかった。
狭い部屋で何もないのと、
広い部屋で何もないのとでは、思考の伸びやかさがまったく違う。
同じ「持たない」選択でも、
器が変わると、頭の中の余白まで変わるらしい。
何もない部屋に立って、あらためて思考が整理された。
この部屋をどう整えていったかは、別の記事に詳しく書いている。
取締役辞任の話も、
この部屋で一人、静かに考えて出した答えだ。
地元に戻って3ヶ月というタイミングで、
「本社取締役」という肩書きに対しても、同じ基準で考えることにした。
なくても生きられるか。
長く続ける前提があるか。
そして、それは本当に自分の働き方に合っているか。
答えは、辞任という形で出た。
引っ越しは「物の整理」じゃない
取締役という肩書きも、結局は「持ち物」のひとつだった。
何かをやめること、手放すことは、大きな決断のように見えて、実際は小さな判断の連続だ。
維持するとはつまり、現在を守ることで、
手放すとはつまり、今にはない未来を手にいれることになる。
その一つ一つを決めていくと、生活の輪郭が少しずつ見えてくる。
次の未来に向けて、整理はまだ途中だ。
でも、
この広い何もない部屋でなら、悪くないペースだと思っている。
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