「平和の流れる街」, "Peace Like a River" (Paul Simon) 歌詞和訳
原題を直訳的に訳すなら「川のような平和」, あるいは「平和は川のように」。歌詞の冒頭 "Oh, peace like a river ran through the city" は「ああ, 平和が 川のように街を流れていた」。
流れるような, まさしく「流れる」ような, 流麗な Paul Simon の アクースティック・ギターのサウンドが聴ける曲, 邦題「平和の流れる街」。Paul Simon の Simon & Garfunkel 解散後のソロ第1作, S&G 時代の "The Paul Simon Songbook"(1965年8月リリース)を含めるとソロ・アルバム 2作目, 1972年1月24日リリースのセルフタイトル・アルバム "Paul Simon" に収められた曲, Peace Like a River, 今日はこの歌の歌詞の和訳を。
いや, その前にちょっと「前口上」しておくと, 近頃のアメリカ, つまり前近代どころか石器時代のヒト属ホモ・ハビリス(脳の容量は現生人類の半分以下)の「お山の大将」にも及ばないようなドナルド爺さんのアメリカのせいで(いやバイデン爺さん以前のアメリカだって酷いもんだったけどね, ともあれ)世界は, というより, アメリカだけでなくアメリカとイスラエルのせいで, 世界は最早ほとんど崩壊前夜, そんなアメリカの惨状, ひいては「我が祖国」日本を含む世界の惨状を毎日見てるうちに, 半世紀以上前のおそらくは小学校6年になる前の春休み辺りから 長らく聴いてきた曲 Peace Like a River, 邦題「平和の流れる街」を, 今また あらためて聴きたくなったというわけだ(全く「流れる」ような言い回しではない口上だ)。
「平和の流れる街」, "Peace Like a River" (Paul Simon) 〜 歌詞和訳
"Peace Like a River" from Paul Simon's 1972 self-titled album, 歌詞和訳
この歌の歌詞における Peace, これはいわゆる「平和」(戦争の対義語としての「平和」)なのか, 案外, 比喩的に「心の平安」のようなものを意味するものなのか, あるいはその両方なのか。因みに同じアルバムには "Armistice Day", 「休戦記念日」という歌も収録されている。
収録アルバムは 1972年1月にリリースされているが, 録音は前年 1971年1月から 3月にかけてで, 曲が書かれたのはそれ以前の時期。Paul Simon 自身によれば, 例えば "Armistice Day" を書いた(書き始めた)のは 1968年だという。
一方, あのベトナム戦争の歴史を思い出すと, アメリカが ベトナムへの全面的な軍事介入を始めた, その理由としてアメリカ自らが仕組んだでっち上げのトンキン湾事件が 1964年8月, 最終的にアメリカ軍が 北ベトナム軍や南ベトナム解放民族戦線に敗北を喫し, 和平協定を結んでベトナムの地から撤退したのが 1973年1月(いわゆる「サイゴン陥落」は1975年4月30日)である。
Peace Like a River が書かれた時期は, まだまだベトナム戦争の暗い影が世界を覆っていた時代にあったわけで, 少なくとも当時(本来 今の 2026年も同様のはずではあるが), Peace なり「平和」なりが 相当に重たい響きを持つ言葉であったことは間違いないだろう。
以下は, 1972年7月の Rolling Stone による Paul Simon へのインタヴュー記事(インタヴュー実施時期は 同年5~6月)。この記事は同誌を Subscribe しないと全文読めない。
別の非公式サイトにアーカイヴされているようなので(ただし記事にあるはず?の “Armistice Day” に関する部分がなく, ここに転載されているのは記事全文ではなく一部割愛されている可能性がある), その中で Peace Like a River について語られている箇所を, 以下に引用する。
"Peace Like a River" is a serious song. It's a serious song, although it's not as down as you think. The last verse is sort of nothing; it sort of puts the thing back up in the air, which is where it should be. You end up, you think about these things that are something to do with a riot, or something in my mind in the city.
(試訳)
Peace Like a River は真面目な歌なんだ。真面目な歌だけど, リスナーが思うほど暗い曲じゃない。最後のヴァースはある意味 何もないようなもので, 言ってみれば 物事を宙に浮かせるような感じで, それが本来あるべきところなんだ。リスナーは結局, 暴動に関係することとか, あるいは街で起きる何か, 僕の心の中にあるものなんだけど, そういうものについて考えてしまうってわけさ。
Peace Like a River の Peace, 解釈に幅があってもいいとは思う。歌詞の和訳における日本語では普通に「平和」(そもそもこの「平和」という日本語もいろんなニュアンスで使える言葉)でいくことにした。いずれにせよ, 何とはなしに不思議な趣のある歌詞だ。
そして, まさしく「流れる」ような, 流麗な Paul Simon の acoustic guitar のサウンドが聴ける曲, 邦題「平和の流れる街」。そのギター・プレイ(和製英語です, 英語では guitar-playing)における fingering が 素晴らしい。"I was playing my guitar lying underneath the stars, just thanking the Lord for my fingers, for my fingers", これは同じアルバムに収録された "Duncan" の歌詞(リンク先は和訳, 1974年リリースの "Paul Simon in Concert: Live Rhymin'" 収録のライヴ・ヴァージョンはこちら, 歌詞和訳ノートの別ヴァージョンは これ)。
さて, Peace Like a River の歌詞。和訳してみたものの, 日本語の表現に工夫の余地が残るものになり, 今日のノートの「前口上」同様, 「流れる」ような言い回しにならなかった。歌詞和訳の平和は遠い。
Peace Like a River from Paul Simon's 1972 self-titled album 🎶
英語原詞 https://genius.com/Paul-simon-peace-like-a-river-lyrics
ああ, 平和が 川のように街を流れていた
真夜中の外出禁止令の開始時刻をとうに過ぎ, 僕らは星空を見上げながら座っていたんだ (*1)
ああ, 僕らは満たされていたよ
ああ, それで 僕は 誤った情報が 疫病のように僕らにつきまとったのを憶えてる
計画が変更されたのかどうか, 時折り誰にも分からなくなったくらいさ
ああ, そうなんだ, 計画が変更されたかどうかなんてね
君らは ワイヤーで 僕らを打ち負かすこともできる (*2)
鎖で 僕らを打ち負かすこともできる
君らが作ったルールを破ることすらできるだろう (*3)
だけど分かってるよね, 歴史の流れという列車からは逃げ切れないんだ (*4)
僕は輝かしい日を見たんだよ
ああ, 明け方の 4時に夢から覚めたのさ (*5)
行くところなんてないし また眠るしかないけど, 諦めたよ (*6)
ああ, しばらくは起きてるさ (*7)
ああ, しばらくは起きてるさ
ああ, しばらくは起きてるよ
… ♫ … ♫ … ♫
訳注
*1 Long past the midnight curfew we sat starry-eyed .. curfew には「外出禁止令(特に夜間)」(独裁政権の国などで戒厳令下において発出されるあれ)の意味があり, 「外出禁止の開始時刻」を指す場合もある。アメリカ英語では単に「門限(の時間)」の意の場合も。歌詞の和訳では「門限」にしてしまった方が 言い回しがすっきりしただろうが, ここはあえて「外出禁止令の開始時刻」とした。
starry-eyed は「夢想的な」「夢見心地で」といったニュアンスで使われることが多いようだけど, この歌詞では「真夜中」なんだから, we sat starry-eyed は「星空を見上げながら(座っていた)」ぐらいでいいのでは。
*2 You can beat us with wires .. wire は「針金」でもあり「金網」や「鉄条網」でもあり。因みに複数形の wires は「(操り人形の)操り糸」, 転じて比喩的に「(裏で人を動かす)操り糸」の意味にもなる。いろんな解釈が可能。
*3 You can run out your rules .. run out は「使い尽くす」「売り切る」, 「追い出す」「追い払う」「追放する」, 「延ばす」など。Verse 1 にある curfew を「夜間外出禁止令」の意としてそれを「延ばす」と解釈したら穿ち過ぎか。しばし考えた末, ここはルールを「追い払う」と受け取って「君らが作ったルールを破ることができる」の意と, やや "意訳"。
*4 But you know you can’t outrun the history train .. outrun は「~より速く走る」「を追い越す」「~から逃げ切る」など。history train は「歴史の列車」, 意訳含みで「歴史の流れという列車」。あるいは「歴史という名の列車」でもよかったか。
train からはいろいろ想起させられる。Soul train は懐かしいし, Curtis Mayfield, The Impressions の "People Get Ready" の歌詞には "People get ready, there's a train a-comin'", その他, Jimi Hendrix の歌には "Hear My Train A Comin'", さらには Elvis Presley が有名にした "Mystery Train" って曲もある(元はブルーズ)。例を挙げれば まだまだ 長々と続くだろう, The Doobie Brothers の "Long Train Runnin'"!!
そうだ, "Mystery Train" ってタイトルの本も(若いころ読んだ, 訳書で!)。

何でここまで, ただ懐かしくて(笑)。
何はともあれ, train はさまざまな歌の歌詞に使われ, さまざまなかたちで, さまざまなもののメタファーに。
*5 Oh, four in the morning I woke up from out of my dreams .. four in the morning は 3年後にリリースされるアルバム "Still Crazy After All These Years" のタイトル曲の歌詞を思い出させる。つまり "Four in the morning, crapped out, yawning"「明け方の 4時, くたびれて あくびをしながら」。
拙者の訳, 略して「拙訳」
*6 Nowhere to go but back to sleep but I’m reconciled .. reconcile は「仲直りさせる」「和解させる」, 「仲裁する」「調停する」, 「(運命などに)甘んじさせる」など。be reconciled to と言えば「~に甘んじる」「諦めて~する」の意味になり, 後に続く "Oh, oh, oh, I’m gonna be up for a while" を踏まえれば, "Nowhere to go but back to sleep but I’m reconciled" は「行くところなんてないし また眠るしかないけど, 諦めたよ」くらいでいいだろう。
*7 Oh, oh, oh, I’m gonna be up for a while .. この up は「目覚めている」「起きている」の意。
Paul Simon's 1972 self-titled album 全曲聴き倒し, 4曲(+)歌詞和訳つき
今日の Peace Like a River が入り, 歌詞を和訳した同アルバム収録曲は 4曲。(+) とあるのは, 他のアルバムの曲の歌詞和訳も若干掲載しているから。
Paul Simon ライヴ・レポ, S&G ライヴ・レポ, Paul Simon アルバム 3枚レヴューもどき, 歌詞和訳 28曲 リンク集!
今日 歌詞を和訳した Peace Like a River が入り, これまでに 28曲の歌詞を和訳, そのリンク集に, 上の見出しにある諸々を加えた Paul Simon 特集ノート。
「アメリカ」(Simon & Garfunkel), 「アメリカの歌」(Paul Simon) 〜 歌詞和訳
前説
いや, その前にちょっと「前口上」しておくと, 近頃のアメリカ, つまり前近代どころか石器時代のヒト属ホモ・ハビリス(脳の容量は現生人類の半分以下)の「お山の大将」にも及ばないようなドナルド爺さんのアメリカのせいで(いやバイデン爺さん以前のアメリカだって酷いもんだったけどね, ともあれ)世界は, というより, アメリカだけでなくアメリカとイスラエルのせいで, 世界は最早ほとんど崩壊前夜, そんなアメリカの惨状, ひいては「我が祖国」日本を含む世界の惨状を毎日見てるうちに, 半世紀以上前のおそらくは小学校6年になる前の春休み辺りから 長らく聴いてきた曲 Peace Like a River, 邦題「平和の流れる街」を, 今また あらためて聴きたくなったというわけだ(全く「流れる」ような言い回しではない口上だ)。
"American Tune" from Paul Simon's 1973 album "There Goes Rhymin' Simon", 歌詞和訳
拙者による訳, 略して「拙訳」。
「アメリカの歌」 〜 ピルグリムの船・メイフラワー、植物のメイフラワー、そしてナサニエル・ホーソーン「緋文字」を巡る不思議(?)な展開
"America" from Simon & Garfunkel's 1968 album "Bookends", 歌詞和訳
「アメリカ」(Paul Simon作詞作曲), その歌詞を読み解く試み
