葉山、鐙摺港の朝と──週間まとめ(7/20〜7/25)
梅雨が明けました。今週は厳しい暑さが続き、季節が大きく歩みを進めたことを実感する一週間となりました。
今朝は葉山の朝市を訪れています。朝からミンミンゼミの声が途切れることなく響き、本格的な夏がやってきたことをあらためて感じます。


追記)そのあと海も入りました。海水は温かったです。


「問いの技術」では、問いをどう立てるかよりも、その問いはどこから生まれてくるのかを見つめてきました。答えを探す前に、自分は何を問いとして受け取っているのか。その見方を少しずつ辿っていきます。
一方、「弱いシグナルを読む」では、世界の各地で少しずつ始まっている社会の変化を取り上げます。今週のテーマは、まだ生まれていない人の利益を制度の中でどう扱うのかという試みです。長い時間をかけて考えられてきた問いと、現実の制度として動き始めた変化。その二つを並べながら、今週の記事をお届けします。
1.言葉になる前に、「違うこと」は分かっている
121: 問い 暗黙知
何かを選ぶときや、言葉を選び直すとき、「何か違う」と感じることがあります。その理由を説明しようとすると難しいのに、その感覚だけは確かにあります。
ところが、その基準を言葉で説明しようとすると、うまくいかないことがあります。軸になるのは、プラトンの『メノン』に描かれた「探究のパラドクス」です。まだ知らないものを、どうやって探し当てられるのか。この古くからの問いを出発点に、マイケル・ポランニー(Michael Polanyi)が示した「暗黙知」や、ユージン・ジェンドリン(Eugene Gendlin)が提唱した「フェルトセンス」を通して、言葉になる前の感覚が私たちの判断にどのように関わっているのかを考えます。
まだ言葉にならないものへ向かいながら、私たちはどうやって「違う」と判断できているのでしょうか。
#メノン #探究のパラドクス #ポランニー #暗黙知 #ジェンドリン #フェルトセンス
2.見慣れた景色が違って見えたら──違和感に、ひとつ説明を与えてみる
122: 問い 違和感
見慣れた景色の中で、何かが少しだけ違って見える瞬間があります。多くの場合、それは「気のせいだろう」と受け流され、そのまま消えていきます。
ここで手がかりとなるのは、トマス・クーン(Thomas Kuhn)が「アノマリー」と呼んだ、それまでの見方では説明できない出来事です。ヴィルヘルム・レントゲン(Wilhelm Conrad Röntgen)によるX線の発見や、アーノ・ペンジアス(Arno Penzias)とロバート・ウィルソン(Robert Wilson)による宇宙背景放射の観測を辿りながら、チャールズ・サンダース・パース(Charles Sanders Peirce)が示したアブダクションという考え方を通して、違和感が問いへ変わっていく過程を見つめます。
「何か違う」という感覚が、新しい問いの始まりになる条件とは。
#違和感 #クーン #アノマリー #レントゲン #宇宙背景放射 #パース #アブダクション
3.「ご質問のある方は?」──問いを消す場、問いを生む場
123: 問い 場
「ご質問のある方は」と声をかけても、誰も手を挙げないことがあります。その場面を見ると、「特に質問はなかったのだろう」と考えてしまいがちです。あるいは、「説明が十分だったのだろう」と思うかもしれません。
ここで確かめたいのは、問いが生まれるかどうかを決めているのは、話し手の巧みさや聞き手の関心だけではなく、その場のやり取りの構造ではないかという点です。ミランダ・フリッカー(Miranda Fricker)が論じた「証言的不正義」と、ミハイル・バフチン(Mikhail Bakhtin)が示した、「言葉は応答の中で形になる」という見方を手がかりにしながら、航空の現場で育まれてきた対話の実践にも目を向けます。
問いが生まれる場と、消えていく場を分けているものは、何なのでしょうか。
4.「なんでこうなったの?」――質問はすでに尋問に変わっている
124: 問い 関係
「なんでこうなったの?」相手に問いかけているつもりでも、口にする前から「きっとこうだろう」という見立てが、すでに心の中にあることがあります。疑問文の形をしていれば、それだけで問いになっているとは限りません。
ここで参照するのが、ハンス=ゲオルク・ガダマー(Hans-Georg Gadamer)が論じた、問いの本質は答えの可能性を閉じないことにあるという見方です。プラトンの『テアイテトス』に描かれたソクラテスの対話や、エドガー・シャイン(Edgar H. Schein)が提唱した「謙虚な問いかけ」、「動機づけ面接」の知見も手がかりに、確認するための問いと、まだ知らないことを引き出すための問いの違いを見ていきます。
その問いを口にする前に、答えはどこまで決まっていたのでしょうか。
#ガダマー #テアイテトス #産婆術 #シャイン #動機づけ面接
5.解けない問いと、どう暮らすのか
125: 問い 共生
問いには、いつか答えが出るものだと、多くの人は考えながら育ちます。分からないことは調べればよく、うまくいかないことは原因を探れば改善できる。そうした経験を重ねるうちに、問いは答えへ向かって進むものだという感覚が、自然に身についていきます。
この回で見つめ直すのは、その歩みをどれだけ続けても、答えに届かない問いもあるという事実です。ポーリン・ボス(Pauline Boss)が「あいまいな喪失」と呼んだ、答えの出ない喪失とともに暮らす営みと、ライナー・マリア・リルケ(Rainer Maria Rilke)が一人の青年に宛てた手紙で語った、「問いそのものを愛するように」という言葉を重ねながら、答えを急がずに問いと暮らすとはどういうことかを見ていきます。
解けない問いは、どうすれば、暮らしの中に居場所を持てるのでしょうか。
6.まだ生まれていない人の利益は、誰が守るのか - 弱いシグナルを読む vol.8
126: 将来世代コミッショナーという制度
政治や制度は、いま生きている人たちの意思を反映しながら動いています。投票できるのも、声を上げられるのも、現在を生きる人たちです。では、まだ生まれていない人たちの利益は、誰が考えればよいのでしょうか。
この回で取り上げるのは、将来世代の利益を社会の意思決定に組み込もうとする動きです。ウェールズでは2015年に成立した将来世代の福祉法(Well-being of Future Generations (Wales) Act)にもとづき、将来世代コミッショナーという公職が設けられました。一方で、この考え方は制度だけではなく、国連の「将来世代に関する宣言」や、日本で広がるフューチャー・デザインなど、それぞれ異なる形でも広がりつつあります。
まだ声を持たない人たちの利益を、現代社会はどのように引き受けられるのでしょうか。
#弱いシグナル #将来世代コミッショナー #フューチャーデザイン
身の回りの出来事も、少し視点を変えるだけで違って見えてくることがあります。今週の記事が、いつもの景色を少し違う角度から眺めるきっかけになれば幸いです。
世界を"システム"として捉える道具箱👇
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