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衆議院議員総選挙の大勢を見て

今回の総選挙は「結果」ではなく「構造」が変わった選挙だった

 今回の総選挙について、私はまず勝敗の是非や好悪から距離を取って考えたい。
 報道等が示すとおり、
自由民主党の歴史的とも言える大勝と、
野党第1党中道改革連合の壊滅的敗北が確定したとして、

重要なのは「誰が勝ったか」よりも、
何が変わったのか。

 そして、それに誰が気づいているのか。

1.前提としての選挙結果

 今回の選挙結果は、選挙期間中に報道された情勢分析の「想定内」であった。

得票差や議席数以上に目を引くのは、
• 勝ち方が大きすぎること
• 負け方が脆すぎること

 この極端さは、政党や候補者の力関係だけでは説明が不足する。
 私は、戦後日本で長く続いてきた選挙の構造そのものの変化だと思う。

2.地殻変動①

 組織依存・地縁血縁から、政策と人間性へ

 戦後の選挙の構造は、長らく、有権者が「考えないまま投票する仕組み」であった。
• 労働組合、宗教、企業等の所属団体
• 後援会
• 地縁・血縁

 これらは、多くの有権者をして、選挙前から、誰に、何処に、投票するかを決めていた。

しかし今回、特に若い世代を中心に、
• その政党や候補者が何を主張しているのか
• 言動に一貫性があるか
• 危機的状況でどう振る舞ったか

といった、中身そのものを見て投票した形跡がはっきりと見える。

 これは今回限りの一時的現象ではない。
 組織に属さない人が増え、所属組織が弱体化し、有権者が自分で判断できる条件が整った結果であり、不可逆的変化である。

3.地殻変動②

TV・新聞・雑誌から、ネット(YouTube等)へ

 もう一つの決定的な変化は、情報源だ。

 かつては、
• テレビで見た
• 新聞で読んだ
• 雑誌で特集されていた

 これが政治認識の基盤となった。
 そのため、所謂、オールドメディアが、
選挙結果に多大な影響力を及ぼして来た。

 今は違う。
• 候補者本人の発信
• 会見や演説の全文
• 切り取られていない長尺の映像

 そうしたものを、YouTubeやSNSで直接見に行く人が増えている。

 重要なのは、
「ネットは偏っている」という話ではない。

 テレビも新聞も雑誌も、
見ない、読まない者が急増し、
見ても、読んでも、
信用しなくなった結果である。

 そして、この流れは、
今後、更に加速するであろう。

 有権者は、
自分自身の目と耳で、
政党や候補者の本性を見極める時代となった。

 これもまた、
不可逆的変化である。

4.この変化に気づいていない、あるいは軽視している人々

 問題は、こうした地殻変動に、
• メディア
• 政治家
の多くが、
気づいていないか、
気づいていないふりをしているか、
気づいていても軽視しているかのように
見えることだ。

 大敗した側が現実を直視できないのは、
ある意味自然だ。

しかし、より危ういのは勝った側の錯覚である。

 もしも、
• 自分たちの説明が全て支持された
• 自分たちの戦略が全て正しかった
そう思い込んだ瞬間、
有権者が、
何を見て、
何に耐え、
何を選んだのかを見失う。

 今回の勝利は、
自民党に対する積極的支持というより、
高市早苗総裁という一人の党首の個人的人気、
他の政党に比べたらマシという消極的選択、
に加えた中道改革連合の自滅
の結果という可能性が高い。

5.最大の懸念

 若い世代の「信頼の前払い」が裏切られること

 私が最も懸念しているのは、ここだ。

 今回、悪天候の中で投票所に足を運び、
 大勝した側に票を投じた若い世代が少なからず存在する。

 彼らは、
• 無関心を越え
• 自分で情報を集め
• 「今回は意味がある」と判断し、

政治に一度、信用を前払いした。

もしこの後、
公約を破ることは勿論、

• 説明が雑になる
• 有権者を軽視する
• 常に見られているという前提を忘れる

そうした振る舞いだけでも、
若い世代が抱くのは怒りでは済まない。

 無関心という
政治からの撤退である。

 これは抗議より静かで、
回復し難い政治不信となる。

結びに代えて

 今回の選挙は、
何処かの、誰かの、
勝利を祝うためのものではなく、
政治が次の段階に進めるかどうか、
を試される通過点となった。

 今後、
多くの政治家やメディアが淘汰されることは、
全く問題ではない。
 むしろ健全である。

 しかし、
有権者、とりわけ若い世代が、
「もう見限った」と判断するなら、
その損失は取り返しがつかない。

 今回の選挙は終わった。
 だが、政治にとっての本番は、
ここから始まる。


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