大河ドラマ感想記『豊臣兄弟!』決死の築城作戦
大河ドラマ感想記「豊臣兄弟!」
第一回:二匹の猿
第二回:願いの鐘
第三回:決戦前夜
第四回:桶狭間!
第五回:嘘から出た実(まこと)
第六回:兄弟の絆(きずな)
第七回:決死の築城作戦
第八回:墨俣一夜城
第九回:竹中半兵衛という男
第十回:信長上洛
木下小一郎長秀
OPが始まる前のAパートで、前回の振り返りと小一郎の改名についての説明があった。信長の「信」の一字を与えられ、木下小一郎長秀となったのである。
しかし、織田家には丹羽長秀という重臣がいるため、小説などで「長秀」と呼ばれることはほとんどない。どちらの長秀か分からなくなるからだ。さらに小一郎は信長の陪臣であり、藤吉郎の配下である。立場上、「長秀」と呼ばれる機会は多くないだろう。
濃姫を登場させない大胆な演出を採っているのだから、いっそ最初から「秀長」と名乗らせる歴史改変があっても良かった気はする。そこはコアな歴史ファンへの配慮として補足説明を付け加えたのかもしれない。
個人的には、やはり「秀長」呼びがしっくりくる。
調略と恋愛の二本立て
墨俣築城は次週に持ち越し。今回の主軸は「蜂須賀正勝の調略」と「小一郎と直の色恋沙汰」の二本立てであった。
直はオリジナルキャラクターであるため、小一郎と結ばれるのか、それとも悲しい別れを迎えるのか予測がつかない。夫婦となり小一郎を支える展開も見てみたいが、個性の強いオリキャラは史実キャラを食いかねない。そうなると物語上、長命にはなりにくい。
豊臣兄弟を取り巻く女性陣は個性派揃いである。ねねが祝言を挙げて藤吉郎と夫婦になった今、直の役割は終焉に近づいているのではないか。もし退場となれば、演出上の都合とはいえどこか寂しさが残る。
情報収集をこなす小一郎
直との喧嘩で放心状態にあった小一郎。しかしその最中でも、柴田勝家の配下から墨俣の情報を的確に聞き出していた。
この情報処理能力こそが、後の戦でも生かされる彼の持ち味だろう。弟の小一郎が地道に情報を集め、兄の藤吉郎がその情報を武器に敵を調略し、味方に引き入れる。
農家出身の豊臣兄弟が孫子を読んでいたとは到底思えないが、「戦わずして勝つ」「敵を知り己を知れば百戦危うからず」を体現している。だからこそ数多くの戦で成功を収めてきた。
『ノモンハン事件』を扱った番組を先日視聴した。関東軍の服部卓四郎や辻政信は、ソ連・モンゴル軍の実態を十分に把握しないまま、過去に勝利した日清・日露戦争を過信し、優勢の相手に精神論で戦った。劇中の柴田勝家も、どこか似た心境だったのではないか。
もし織田家が『桶狭間の戦い』の成功体験に固執していたなら、弱小大名のまま歴史の波に飲まれていたであろう。戦において不利を覆すには精神論だけでは足りない。地道な下準備と運が必要である。織田信長は、豊臣兄弟を起用したことで大きな幸運を引き寄せた。
大盤振る舞いのリスク
現代日本には「投資」よりも「節約」を美徳とする風潮があるが、これは江戸時代に失敗した倹約令を思い起こさせる。
対して豊臣兄弟は、信長様のためなら銭を惜しまない。直の病気平癒を願う奉納もそうだが、前半で見せた情報収集のための酒食の振る舞いにも、小一郎はためらいがなかった。この姿勢は、「責任ある積極財政」を掲げた高市総理の思想と重なる。成功すれば莫大な富と権力を得るが、失敗すれば破産というハイリスク・ハイリターンの手法だ。
積極財政とは真反対の、財務省が主導する「緊縮財政」がまかり通るのは、リスクを回避できるからに他ならない。しかし、その代償は国民の税負担増と停滞である。先の衆院選で高市総理率いる自民党が大勝利を収めたのは、現状打破への期待の現れだろう。
「投資」は常に博打の要素を孕む。価値なきものへの投資は破滅を招くが、豊臣兄弟は常に危険な橋を渡りきり、天下人まで登り詰めた。彼らの大盤振る舞いという名の「綱渡り」は、今後の物語における大きな見どころとなるはずだ。
美濃三人衆・安藤守就
川並衆への調略を進める織田方を討つべく、美濃三人衆の一人・安藤守就が前野長康の館を包囲した。美濃攻略において、この三人衆の動向は極めて重要である。
大陸的な「侵略と殲滅」の文化とは異なり、当時の日本は将棋の駒のように敵を寝返らせ、勢力を拡大する調略の文化があった。それゆえ、大陸型の中央集権を目指す独裁者・織田信長は、当時としては極めて異質な存在だったといえる。藤吉郎は、自分にはない人誑しの才能に惚れ込み、重宝していたのだろう。
次回、美濃三人衆がどう立ち回るのか目が離せない。
次週予告
堺屋太一版の『豊臣秀長』と同様、次週ついに墨俣一夜城へ竹中半兵衛が来訪するようだ。
『仮面ライダーW』以来、菅田将暉さんの活躍を見守ってきた身としては、彼の登場は格別に嬉しい。これまで藤吉郎の参謀役を担ってきた小一郎が、半兵衛とどのような関係を築くのか。そこも見どころだ。
むすび
二話完結型の構成は、平成仮面ライダーシリーズを思わせる。年間放送だからこそ可能な形式である。
「わしが頼りにできるのは、ここにおる皆だけじゃ。」
ねねとの祝言で見せた藤吉郎のセリフが耳に残る。侍大将になっても、農家出身という根源的な劣等感は消えなかったのかもしれない。蜂須賀正勝を待つ間に口ずさんだ田植え唄には、明るさの裏に潜む彼の哀愁が滲んでいた。
川並衆を従えることになり、どんどん膨れ上がる家臣団を小一郎はどう調整していくのか。大幅に議席を増やした自民党の調整役にも似た苦労が予想されるが、その手腕に注目したい。
※文中の政治に関する記述は、あくまで劇中の状況を現代の社会構造に置き換えた比喩であり、特定の政党や政策、政治家を支持・宣伝する意図はありません。
追記

『テレビドラマ感想文』応募作品の中でスキの週間一位を獲得しました。皆様ありがとうございます。感謝!!

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《了》
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