⑬「ゆゆちゃんってアタシのことバカにしてるんでしょ?」 【これは、風俗を通して自分を赦す物語】♯お仕事小説部門♯創作大賞2025
【これまでのあらすじ】
★風俗の仕事に疲れを感じ始めたゆゆ。
ある日、ホスト通いのリンちゃんとの何気ない会話から、自分は風俗を続ける理由が無いことに気がついてしまう。
♯これは、風俗を通して自分を赦す物語
①話
②話
③話
④話
⑤話
⑥話
⑦話
⑧話
⑨話 聞いてください、お母さん。私、風俗で働いているんです。
⑩話 風俗嬢って楽しいの?
👆🏻先週の“創作”、“仕事”カテゴリーの最もスキがついた作品1位でした!ありがとうございます٩(ˊᗜˋ*)و
⑪話 「ヒカルちゃんはやってくれたよ」って嘘だよね?
⑫話 店長は、ちょっとだけお父さんの匂いがする
⑬◀︎New!
全19話予定🍀

気楽なはずのこの仕事が、最近は少しだけ重く感じる。
行きたくないな、と思う日は増えてきた。
それでも休まないで来れたのは、1度逃げるとまた来るのが難しくなるのが分かっていたからだ。
出勤した私は静かにバーカウンターに座っていた。
まだ指名が入ってないからどこか気楽で、どこか重々しい気持ちがした。
頬を机につけるとヒンヤリとして気持ちがいい。木製の机が冷房の冷気を吸って、私を安心させてくれてるみたいだった。
「ゆゆちゃん具合悪い?」
「……あ、リンちゃん」
声をかけたのはリンちゃんだった。
黒い膝丈のワンピースを着ていたが、首筋にじんわりと汗をかいてるのがわかる。
さっき出勤してきたのかな。
「あ、いや、……ちょっと疲れちゃって」
私は曖昧に返した。どうとでも取れる言葉なのに、リンちゃんはちょっと悲しい顔をして、私の隣に腰掛けた。
「……もしかしてだけどさ、ゆゆちゃん、辞めたいんでしょ。気持ちわかるよ。やってしばらくしたら急に現実見えて、しんどくなっちゃうよね」
思いのほか優しい言葉にビックリする。
リンちゃんって、優しい子なんだ……。
ギャル言葉で、ぴえん系の格好をしてるから、どこか壁を感じていた。
パッチリ二重の目が優しく細められた。だらしない私の姿を瞳ごしに捉え、少し恥ずかしくなった。
「リンちゃん、ホストに通ってるって言ってたよね。この仕事もホストのために頑張ってるの?」
「うん。貢がないといけないからさ。でもこれだけだと稼げないから、ソープとピンサロもやってるよ」
「あ、そうなんだ……」
ソープとピンクサロンはウチよりも過激なことをする。私はちょっと驚いて、リンちゃんの苦労を勝手に想像した。
「ホストの方に貢ぐって凄いね。だって、こんなに嫌な気持ちになって、必死で稼いだお金を人のために使ってるんだよね。人のためにそんなに献身的になれるって、凄いことだよね」
思ったままを口にした。
珍しく私の本心だった。
だけど、リンちゃんは表情を曇らせて、なぜか不思議そうに私を見ていた。
あれ、何を間違えたんだろう。
「私本当にリンちゃんのこと尊敬するよ」
「……うーん、ゆゆちゃん、なんでそんなに他人行儀なの?」
「え?」
「ゆゆちゃんも同じだよ。ゆゆちゃんも体を売ってここにいる、風俗嬢なんだよ」
リンちゃんはピンクのリップを塗った、お人形さんのような唇をにいっと持ち上げた。
「ゆゆちゃんは自分のこと風俗嬢じゃないと思ってるんでしょ。客に触られてなかろうが同じだよ。アタシと同じ。汚れてるんだよ」
「………………」
絶句した。
私と同じ、汚れてる?
頭では否定したいのに、心のどこかが、黙ってしまった。
「……ごめん、私嫌なこと言ったかな?」
慌てて謝ると、リンちゃんは首を振った。
「ううん、他人事なのが気になっただけ。あのさ、ゆゆちゃん。アタシが毎日楽しい楽しいって言って、ちんこ扱いてると思ってる?アタシだってツラいんだよ。心が死んじゃってるからこんな仕事続けてて、本当ならもう辞めたいんだよ。素敵なことって言われても、馬鹿にされてるように感じるんだ。……でも、アタシも嫌な言い方してごめんね」
リンちゃんはせっかく座った椅子を立ち上がった。椅子が床にスられて、甲高い声で鳴いた。
「ゆゆちゃんは公務員だったんだから、他に仕事もあるんじゃない?嫌なら辞めなよ。誰も止めたりしないからさ」
「……うん、ごめん」
訳もなく謝っていた。リンちゃんの静かな怒りを見てしまって、動揺していた。
汗で冷えたのか、先程の机の気持ちよさが薄ら寒く感じ、鳥肌がたった。
リンちゃんは優しい。
私をほっておくことも、途中で会話を終わらせることも出来たのに、ちゃんと最後まで私のことを見ててくれた。
背中を押された私は、辞める理由ができたことに戸惑っていた。
自分で始めた物語を終わらせる。
それは難しいようで、思ったよりも簡単なことなのかもしない。
♢♦
noteを読んでくださりありがとうございます٩(ˊᗜˋ*)و
ちょっと重たい空気の回になってしまいましたが、次回からは少しずつ明るくなってきます……!🌱
ここまで読んでくださった方、本当にありがとうございますm(*_ _)m
スキやコメント、アドバイスもとても励みになっています。
ひとつひとつ大切に読ませて頂いております……!💌
残り6話、ゴールまで一緒に歩いてもらえたら嬉しいです✨
引き続き、どうぞよろしくお願いします!
次のお話はこちら👇!
前回のお話はこちら!👇🏻
リンちゃんの登場回はコチラ👇
