自己責任論は思考停止ワードで、問題解決しにくい社会を作り出す理由
0 はじめに
この論考は、「自己責任論」という一見中立的な概念が、じつは社会的問題解決を阻害するメカニズムであることを、システム思考と具体例を通して論じます。
本稿で整理した責任転嫁の3類型は、本稿の中でどう機能するでしょうか?
リスクの空間的転嫁(例:原発立地)
責任の階層的転嫁(例:雇用者→非正規)
失敗の時間的転嫁(例:将来世代へのツケ)
1 国難どうします?
1-1
人材不足を補うためには、外国人労働者などを起用し、企業の多国籍化が進むことが考えられますが、対応できない場合は対応できる企業に統廃合されると推察されています。
「外国人労働者」は、フルリモートでその方の国で働いているケースは稀で、研修生・実習生・移民のことですよね。少子高齢化の日本では労働力が欲しいことは分かります。また、社会統合するとイノベーションが起きやすくなるなどメリットもあります。
でも、スウェーデンもドイツのメルケルさんすら社会統合は苦しんでいるので、労働力だけ見るのは望ましくないと思います。
スウェーデン「500万円あげるから帰って」と移民の自主出国促す 北欧の寛容が様変わり - 産経ニュース
https://www.sankei.com/article/20240924-NGI4ALAO5NG2XFYFNYG4TA6MH4/
メルケル独首相、移民政策の影響認める 市議選大敗で - BBCニュース
https://www.bbc.com/japanese/37415657.amp
1-2
例えば、私の友達に、学区で一番偏差値高い高校で文武両道に取り組んで、ある国立大学へ進学した方がいます。移民ではなく、ご両親が国際結婚で、日本国籍の方です。日本で多感な時期を過ごし異なる文化のルーツを継承することに苦しんだけど、自己研鑽出来た。だから競争に勝てた。
社会統合するということは、あなたの子孫が「外国人労働者」の子孫に数や競争で負ける可能性を含みます。大家さんとか、あなたの子孫の結婚相手とか、日常のあらゆる人間関係で接点が起きるかもしれない。
1-3
例えば、人種は分からないけど、スカーフをなさっている中年女性が同じスーパーを利用しています。買い物かごを次の人が使う場所に戻すことは、お店がすればいいと考えているのか、時々見かけるけど買い物かごを元に戻すことをしません。これは公共のルールが異なるか、お店がアナウンスして明示しないと分からないのだと思う。
買い物かごくらいどうでもいいことだけど、ゴミの分別とか、大きな音楽をかけて騒がないとか、日本の細かなルールを理解して守ってくれる外国の方ばかりではないことに、無防備だと、誰も得をしません。町内会とか対応できます?
2 思考実験からの観察
2-1
思考実験をしましょう。相互確証破壊(mutually assured destruction)の概念は1960年代からあり、核保有国の努力のおかげで今のところ世界は滅んでいません。つまり、間違えたらアウトという問題は、事故を起こさないように取り組めています。
2-2
では、「安全」な原子炉や核融合による発電を行うために、首相官邸と国会議事堂と霞ヶ関などをVIP地区と定義し、安全な形で地下に日本で必要なエネルギーの多くを発電できるようにしましょう。電力会社の幹部もこの地区に暮らしてもらいます。
安全で必要で国益のためです。日本の経済成長で利益を得るのだから、リスクも負ってもらいましょう。
冷却水の問題は横に置きます。
相互確証破壊の例と同じく、例えば事故ではなくテロなどで狙われたとしても、火災などが起きれば大変なことになるから、地震が起きても津波が来ても、絶対に事故を起こさない強い動機が生まれます。VIP地区は、安全が保たれるでしょう。
2-3
けれど、この思考実験は当然、反対されますよね。安全で必要なのに何故ですか? 危険やリスクがあるからですよね。また、核廃棄物をどうするのかも不透明です。
原発賛成なら、エネルギーだけでなく、リスクも説明すべきです。やらない機会損失の指摘も大切ですね。対して、反対する側は、原発や核融合以外の代案を出したり、環境やエネルギーの問題と、どう経済成長するのかを話し合うといいと思う。
2-4
要するに、「安全」「必要」と言いながら、当事者として責任を負う立場になりたくないという心理が透けてしまうわけです。こうした矛盾は、自己責任論を都合よく使っている構図とも重なる部分があるように思えます。
具体的には——
“It is especially concerning as it comes as we are also seeing an increase in military activity in the area around the Zaporizhzhya Nuclear Power Plant. The IAEA remains committed to doing everything we can to help prevent a nuclear accident. Judging by recent events, nuclear safety remains very much under threat,” he said.
IAEA(国際原子力機関)の上記のように、紛争もリスクです。ドローン攻撃で傷つけられるようですが、日本の原子炉はドローン防衛設備は設置されていましたっけ。
<独自>「自爆ドローン」310機導入へ 令和8年度に陸自、イスラエル製など候補 - 産経ニュース
https://www.sankei.com/article/20250112-UVM4SHRSIZOTLFUQIOZK7J2RXQ/
上記はあるのですが、イスラエルの研究開発からも、コストが大きいことが予想できます。
イスラエルは今週、5億ドル(約765億円)を超える資金を投じる契約を自国企業のラファエル・アドバンスト・ディフェンス・システムズ並びにエルビット・システムズと結んだ。前者はミサイル防空システム「アイアンドーム」の開発を手掛けている。
『地元の方々からのご理解。』と「原子力発電所が都市部から離れたところにあるのはなぜですか? | よくあるご質問 [関西電力]」( https://www.kepco.co.jp/siteinfo/faq/atomic/9098905_10620.html )
に記載があります。そもそも地震国の日本に設置するのは無理があると思うし、原子炉を設置しだした1971年頃はドローンは想定していなかったのでは?
原子炉や核融合をやるのなら、ドローン攻撃によるテロやサイバー犯罪への備えも必要でしょう。そうした具体的なコストは電気料金に乗ります。本当に安くなりますか?
では、構造を比較しましょう。
原子力政策の「責任の所在曖昧さ」は、自己責任論の構造と相似形ではないですか?
曖昧なリスクを一部の人に固定化していますよね。
3こどものいじめ、ハラスメントの解決という基本
日本人同士でも対立があるのに、多民族社会になったときにうまく統合できるのでしょうか?
多民族国家では文化や宗教の違いから摩擦が起こりやすく、日常生活の規範やルールをどう共有するかが重要な課題になっています。
ルールを守る
お互いの文化を尊重する
こうして新しい秩序を作るのですが、出来ます?
例えば、子どもの陰湿ないじめは、中野富士見中学いじめ自殺事件(1986年)や山形マット死事件(1993年)が報道されたのに、今でもなくならないですよね。
パワハラやセクハラも起きるし、痴漢犯罪も無くせない。
異なる文化とか人種の問題の小さい、「日本人社会」で解決できていません。これより複雑な問題に対応できるのですか? だから、多文化共生する多民族国家をやって成功する根拠が分からない。
例えば、カナダは移民の自主的統合を促す「緩やかな多文化主義」を特徴とし、シンガポールは住宅政策や言語規制を通じた「管理的多元主義」を採用しています。両国とも民族間所得格差を20%以下に抑制するなど経済面での成功を収めつつ、文化的多様性維持に継続的な財政投入を続けています。
この努力や理念をお手本に、我々も多民族国家に成長できますか?
4 その分断は国益に貢献しますか?
4-1
例えば、安定や秩序、責任の明確化を優先する視点と、弱者への配慮や社会保障の充実といった視点は、本来両方大切で、優先順位の違いが思想的な違いになることがあります。
揉めて意見がまとまらないと、問題解決しにくくなるから国益を損ないます。
また、二項対立にして「奴らと我々」にすると、その対立構造が権力に結びつくので、一部の政治家にとっては便利ですね。魅力的な政策を幅広い人に説明しなくても「我々の話」だけすれば政治家でいられるから。
4-2
「外国人労働者」の件をなし崩しにする前に、自分と思想や価値観の違う相手が、何を大切にしているどんな人なのか、譲れない部分と妥協できる点はどこなのか、国民同士が、相手を分かろうとする努力や姿勢を行動で見せる必要がないでしょうか?
4-3
社会統合して多民族国家になることは大変だけど、やれるのだろうか、とは思います。例えば、多民族国家の「象徴」として天皇制を続けられるのか、イギリスの王室はどう努力したのかなど、調べて考えることは多いと思います。
4-4
要するに、「弱者に寄り添う」というだけでなく、「共に暮らすために最低限必要な約束事を守ってもらう」という筋道をしっかり作ることが、多民族化や社会統合の鍵になるはずです。
これは思想や党派を越え責任を持って考え、どう実現するかが今後の大きな課題でしょう。
4-5 思想や支持政党が異なる人に対して具体的にどうするのか?
「なるほど一理ありますね」(あなたはそう考えたのですね)と、相手の論拠と考え方に接するよう、一旦聴く練習をしてはどうでしょう。これは、寛容のパラドックスになってはいけないから、極端で攻撃的な方はその方が落ち着くのを待つことを勧めます。
5 自己責任論で失ったもの
私は、非正規雇用者に向けられた「自己責任論」は、雇用者側が本来取るべき責任を、自由度の少ない弱者に転嫁する「責任転嫁論」にほかならないと考えます。むしろ「自己責任」を追及されるべきは雇用者側ではないでしょうか?
——佐藤 優(作家・元外務省主任分析官)
5-1
自己責任論は、新自由主義的な小さな政府と市場原理の最適化で論じるのなら、超人的に頑張る滝澤ジェロムさんのような若者を認めて励ますことに使うといいと思う。
先の記事でも触れましたが、自己責任論はダブルスタンダードな使われ方があって、「頑張った、凄いな!」と褒めるときに、「あなたの三大会連続の金メダルは自己責任ですね」とは言わないですよね。弱者や敗者に「それはあなたの自己責任で、私も組織も知らない」と切り捨てたり抑圧する使い方をします。
5-2
江戸時代は士農工商と、その下に被差別階級を固定化しましたよね。
法務省:部落差別(同和問題)を解消しましょう
https://www.moj.go.jp/JINKEN/jinken04_00127.html
現代でも、まだ問題は残っている。非正規雇用の所得が少ないことは、身分制度の再発明になっていないか、私は心配です。
以下によると、2022年の段階で36.9%が非正規雇用です。
『概要(事前分析表のポイント)
施策目標Ⅳ-2-1
非正規雇用労働者(短時間労働者・有期雇用労働者・派遣労
働者)の雇用の安定及び待遇の改善を図ること』
https://www.mhlw.go.jp/content/11601000/001062550.pdf
5-3
資本主義にも、人生にも失敗はつきもの。競争だって、必ず金メダルを取るアスリートや、100%三振になる投手や、絶対にシュートさせないキーパーなど、無理ですよね。F1だって、必ず勝てるとは限らない。
勝負に「必ず」は無いですよね。
5-4
だから、職業訓練や資金調達の支援や、就職や進学の資金の応援など、敗者が負けを認めて努力できる社会になると——
①勝つまで学び続けるから社会の底力が上がる
②努力することも負けることもPDCAを回すことも当たり前になる
③競争に勝ち抜いた「優秀な元敗者」は、戦力になるだけでなく、組織の文化的通訳ができる。特に、組織内の感情の問題を通訳可能になる
④問題解決は仕事になる。日本に問題解決すべきことは多い。だから、敗者復活の仕組みを運用すると、世の中の不便なことがどんどん問題解決される
⑤そのフレームワークは、他国に輸出できるかもしれない。
上記は、例えばフレキシキュリティ(flexicurity)が北欧にあるから、私はお手本にすることで、実現可能だと思う。
5-5
こう考えると、格差の固定は国益を損なう大局観の無さに思える。
格差が固定されると、こうした「再挑戦のエネルギー」を社会全体で失ってしまいます。その意味でも、敗者復活のための仕組みづくりは国益という観点から見ても大切です。
日本が上手く行かない理由は、敗者になると固定化されるから挑戦しにくいことで、創造性が痩せ衰えてしまったのではないかな。
5-6
もう一つ言えるのは、日本型の教育は、環境が整うと強いです。対してサバンナに放り出されて、暫定的なルールを自分達で読み解いて競争を始めるのは苦手かもしれない。後者の能力をいきなり獲得するのではなくて、我々が力を発揮しやすい仕組みにルールを切り替えるといいと思う。
真面目な働き者が多いから、組織で競争することは本来向いているはずです。人情だってある。炊き出しのおにぎりとか。
6 何を怯えるのだろう?
①自己責任論を問題視する側は、公正な競争による成長を支持している(新自由主義の競争をより良くしようとしている)
②自己責任論を使う人は、保身や自身の優位という私益だけ考えるように見える(行動が官僚的に見える)
③「自己責任論を使う人も含めた、社会の国益を考える人」は自己責任論を使わない(自己責任論は大局観や問題解決志向と相性が悪い)
機会の平等も格差もどうでもいい。自分の有利な立場を維持したい。それは、勝っているはずなのに、負けることを恐れる人物に見えます。「そこまでしないと、また勝てないの?」と、私は不思議に思います。
既得権益層は、佐藤優さんの指摘した雇用者側と重なるはずだから、自分達の搾取する構造が露見することは恐ろしいかもしれない。そんな理由で、「ずっと敗者でいろ」「ずっと弱いままでいろ」と要求されるのは、理不尽ですね。
なお、損失回避バイアスという認知バイアスが働いているのなら、「やらないデメリット」、つまり国益を損ない続けると誰が損をするのかを意識してもらうと、抜け出しやすいかも。
まとめ
俯瞰すると、価値を生み出さずに搾取することで帳尻を合わせるから、実体経済が成長しにくくなる。我々は、我々が有利に競争できる「場」や安心して暮らせる暮らしを破壊しているから、バブル後の失われた数十年が続くのではなかろうか?
搾取は倫理的に問題です。搾取された人のコストは社会に対する外部不経済だから。でも、国民同士が奪い合うから、教育を受けて真面目に働く人材がいても、イノベーション起こせないのではないかな。日本は搾取や国益を損なう問題で「浪費する贅沢」は、もう続けられないはずです。
そして、高齢化ですが、例えば、うちの親のように、体に弱い点はあっても、大きな病気をせずに介護を避けられるよう努力する者もいます。
もちろん、具合悪くて介護受けてる方もいます。これは予防医学だから、海外に輸出することも出来ますよ。味噌使ってると教えてくれる海外の方もいますよ。健康に関する関心は普遍的です。
責任転嫁して環境を壊すより、問題解決して価値を生み出せば、多くのことをスマートに解決できる。
反論のために
Governments can build welfare bridges to success for job seekers
Welfare bridge schemes are one type of measure that facilitates business creation by job seekers by allowing future unemployment benefits to be converted into a grant and/or allowance to support business creation.
OECDのレポートをご確認いただくと、自己責任よりリスクの社会化の方がイノベーションを促進してますよ。
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