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モネと「消える人」 -アーティゾン美術館 モネ没後100年展-②

数あるnoteの記事の中から
おいでいただきありがとうございます。

今回は、アーティゾン美術館で開催されているモネ展の
レビュー記事、第二弾です。

前回はシスレーやブーダン、
はたまた鳥獣戯画の話で終わってしまったので
今回はモネ展で展示されていた、モネの絵に踏み込んで
書きたいと思います。

第一弾はこちらからご覧ください。
※モネ展のレビューですが、モネの絵には1枚しか言及できておりません。。



モネ展について

概要や大まかな感想は前回かいた通りです。

今回はそこから展示されていた3点のモネの絵をとりあげて
モネに迫ってみたいと思います。

かささぎ

Claude Monet La Pie entre 1868 et 1869
huile sur toile H. 89,0 ; L. 130,0 cm. Achat, 1984
© Musée d’Orsay, Dist. RMN-Grand Palais / Patrice Schmidt

修復完成後の展示ということだったので
モネが消えてしまっていないかなとか、
状態が心配だったのですが
今回展示されていた絵の中で「すごい」と感じました。

28-29歳くらいの作品ですが
修復もあってか、黄ばみもなく、
絵がとにかく「綺麗」。
モネはやっぱり天才なのだなと感じる作品です。

モネは、先輩マネを戸外へ連れ出して絵を描くようになり、
ある日、マネ、モネ、ルノアールで絵を描いていた時。
マネはモネへ
「あの子(ルノワール)は才能がないので
早めにやめるように言ってあげて」という
なんとも痛烈なアドバイスをします。
ルノワールも印象派ではレジェンドクラスの画家ですが
マネは若き日の天才モネと見比べてしまったのではと思います。
そのくらいモネは若い頃から天才が漏れ出ていた人だったのでしょう。

1867〜1893年、
モネ、シスレー、ピサロは数百点もの雪景色を描いた時代のようです。
モネは140点ほど描いたと言われています。

雪で交通も止まるほど寒い日、
何枚もコートを着て、手は凍え、顔も凍りつきながら
絵を描いている男がいた。
それがモネだった、らしいです。

私は西美のモネ展示から
「モネは狂気の人」という印象ですが、
本当に狂気を裏付けるエピソードですよね笑
天才で狂気的。
この「かささぎ」も
20代で描ける絵とは思えません。

ちなみに「かささぎ(鳥)」は左側におりますが
私はこの絵の右上あたりが特に気に入ってしまって、
かささぎがいることに気づいたのはこの記事を書いているときです笑

ぜひご覧になられたら右あたりも楽しんでください。
本当に美しいです。

人を描かないモネ

いやいや、モネはけっこう人を描いていますよ、
と言う方もいらっしゃるでしょう

果たして本当にそれは「人」でしょうか。

今回の美術展のカバー絵にも選ばれているこちら。

Claude Monet Essai de figure en plein-air :
Femme à l'ombrelle tournée vers la droite 1886 huile sur toile H. 130,5 ;
L. 89,3 cm. Don Michel Monet, 1927 © RMN-Grand Palais (Musée d’Orsay) / Stéphane Maréchalle
《戸外の人物習作-日傘を持つ右向きの女》 1886年

「人」が感じられません。

私は元来、人を描いた絵が嫌いでした。
美術鑑賞当初は人物画を避け
風景画ばっかり見ていたように思います。

人を描いた絵は、そのほとんどの作品から
「人」が漏れています。

その人への思いとか、
その時、筆に乗せた感情、みたいなものが
漏れ出ているのです。

私は、内向的で人と付き合うのが得意ではありません。
きっと、本能的に「人」にチャンネルを合わせたくなくて
人を描いた絵から漏れ出ている感情を避けていたのでしょう。

ルノアールの絵で人物画をだいぶ見れるようになって
ロートレックで完全に克服したいと思います。
ルノアールの安定感のある人物画、
ロートレックのユーモラスな人物画。強いですね。

モネは、というと、
人物が描かれている絵に「人への感情」を全く乗せていません。
彼の興味の範疇「光の当たり方」「時とともに移り変わる光」
そのあたりに集中されています。
それが人でも木でも変わらないといったふうに。
まるで木のように人を描いているのです。

奥様の肖像画を描くときに
構造の中に感情を凍結させ、再構築で安定させた
セザンヌとは、違います。
セザンヌは、感情を絵に載せない手法を、敢えてとっていると思います。

モネの場合は、感情を乗せないように、すら
気をつけていない天然な気がします。
ただただ、光に集中していたような。


ただ、この絵だけは、別物です。

Claude Monet Camille
sur son lit de mort, en 1879
Musée d'Orsay Don de Mme Katia Granoff, 1963
© Musée d’Orsay, Dist. RMN-Grand Palais / Patrice Schmidt See the notice of the artwork
死の床のカミーユ 1880年

最初の奥様、カミーユが亡くなった時の絵です。
突き刺さるほど、痛い絵でした。

一般的に、カミーユが亡くなってから
人物を描くときは顔の中がぼかされている、なんて言いますよね。

やはり、最愛の奥様以外の「人」を描きたくなくて
自ら光を描くことに集中させていた、
とも考えられますね。

画家さんのタイプによっては
人を描くときにすごく消耗してしまうタイプの方がいます。
ロートレックがそうでした。
彼は人を描くのが世界一上手だと、私は思っています。
でも、すごく危うい描き方をします。
相手の境界に侵入しすぎるのです。
それは諸刃で、自己を強く消耗します。

モネの「死の床のカミーユ」は
痛いほど悲しみが突き刺さってくる絵ではあるのですが、
よーくみていくと
感情よりも、
掴み取れる色を描くことに冷静に集中しているところが
ちらほらと見受けられます。

モネもカミーユの最期を描くときに
相当感情が踏み込んでいき、「消耗」したのでしょう。
モネは感情で消耗させて描く手法は
あまりよしとしなかったと思われるので

感情で消耗しない方法、
色と光に集中することで自然と自己防衛できる手法を
使えるようになっていたんだと思います。

この手法は以後、人物画に見受けられます。

この、人が感じられないモネの人物画って、
意外に人気があるのです。
好きな方も多いのではないでしょうか。

「人」が漏れ出ないから
見る人が「揺さぶられない安全性」を
感じるのではないでしょうか。


モネの赤と他の画家の赤

Claude Monet Le Jardin de l'artiste à Giverny 1900
huile sur toile H. 81,6 ; L. 92,6 cm. Dation, 1983
© GrandPalaisRmn (musée d'Orsay) / Adrien Didierjean
ジヴェルニーのモネの庭 1900年

モネは時々、赤を挿した絵を描くことがありますね。
この絵の赤をみてボナールを思い出したので
取り上げることにしました。

ボナールの方が後の時代なのですが
ボナールをみてモネっぽいな、とは思わない不思議。

このモネの赤は1900年から先、増えていきます。

クロード・モネ(1840-1926)は、1900年代初頭から白内障を発症し、特に1910年代後半から症状が急速に悪化しました。水晶体が濁ることで、青色の光が吸収され、世界が全体的に黄褐色や黄色〜赤みがかった茶色に見えるようになりました。

すでに1900年には症状が出始めていたのかもしれません。

モネはこのあと、白内障の時代に突入し
なかなかクレイジーな(私好みな)
作品をたくさん生み出しています。

目の病気になっても
筆を折らず、さらに描き続けるあたりにも
モネの狂気さが見受けられます。

その頃は赤を多用するので
けっこう強烈です。


一方、ピエール・ボナール。

ボナールが風景につかう赤を掲示したく
どの絵がよいか探してみたのですが
選定がなかなか難しく。

今回は画集から見つけてみました。

Pierre Bonnard (1867, France - 1947, France) L'Atelier au mimosa [hiver 1939 / octobre 1946]
:Musee National d'Art Moderne, Centre Pompidou, Paris, France
ミモザの見えるアトリエ

煌々と輝くミモザの後ろの森や空や家の中に
赤を挿していますね。

モネは、影や暗い部分、一瞬の木々のゆらめきから掴んできた色、
として赤を使っているように見えますが

ボナールは全く違う使い方をしています。

ボナールの場合は、
時間の移り変わりの中の記憶、
みたいなものを描いているので
赤が、記憶の断片、のように描かれていると感じます。
「あの日、奥さんといたときはこうだったな」
みたいな赤です。
(ちなみに左隅の顔は無くなった奥さんです)
記憶を色で封じ込めるので
彼の作品はどれもみずみずしいです。

そして、改めて見つけたこの
「ミモザの見えるアトリエ」、
すごく良い絵ですね。。

赤色ひとつでも
画家の色々な面が見れて、おもしろいです。


まとめ


今回はアーティゾンのモネ展で
展示された、3つの絵を取り上げてみました。

見に行かれる方も、
見に行かれない方も、ご参考になったら嬉しいです。



質問、聞きたいこと、ご感想等、
お気軽にコメントを書いていただけるとうれしいです。




記事をまとめてみました。
ご興味のある記事がありましたらぜひお読みください!

はじめに01 -絵の声を聴く、アート鑑賞について- 好きな画家さん一覧
https://note.com/killamaru/n/n0cb504116a87
書き始めた経緯やこのNoteの説明など

はじめに02 -アートの声を聴く鑑賞について-
https://note.com/killamaru/n/n3b42879699f8
「はじめに」の続きですが、私のNoteの中では、♡率が高くて、ありがたいです。

はじめに03 -審美眼は何年で身につくもの?
https://note.com/killamaru/n/ne9792bc439fe

<ドイツ旅2026>
ドイツから戻ってきました -2026.01.13 近況報告-
https://note.com/killamaru/n/nce677f79afbc

デューラーと話したくて家に2回おしかけた話 - デューラーズハウス -
https://note.com/killamaru/n/n681100d72660

フェルメール報告会 - ドイツ旅で鑑賞した絵のレポート -
https://note.com/killamaru/n/n9509726b7b11

フェルメールに隠された法則 - 嫌いだったフェルメールが好きになれた秘密 - [ディープ]
https://note.com/killamaru/n/nab3fbbd02386

<若冲>
若冲からはじめて呼ばれた話 -泉屋博古館東京-
https://note.com/killamaru/n/n79a61287feed

若冲は、今日も私を呼ぶかしら - 三井記念美術館「円山応挙」展 -
https://note.com/killamaru/n/na07051e46676

若冲は、もう1人の天才にためらう、の話 - 東京藝大美術館 -相国寺展
https://note.com/killamaru/n/n85b940e93ef9

<ゴッホ>
[ディープ]ゴッホのひまわりって、おいしいの? - 西洋美術館 ロンドン・ナショナル・ギャラリー展
https://note.com/killamaru/n/n69330619f156

「あなたはどんな鑑賞タイプ?」と「ゴッホの死相」について ゴッホ展 -東京都美術館-
https://note.com/killamaru/n/na3e315c32ca0

ゴッホ美術館(アムステルダム)に行ってきた -美術館レビュー(絵多め)-
https://note.com/killamaru/n/n4e65dea66a63

おいしそうな絵はここにも(ピエール・ボナール) -「ひまわり」異変の後日談-
https://note.com/killamaru/n/n32920ae6c2de

<美術展>
ブラックホールを作りだせる画家 -仙厓展@出光美術館- [ディープ]
https://note.com/killamaru/n/n576fe4a903b7

絵から音がしない理由 -ユトリロ展(SOMPO美術館)-
https://note.com/killamaru/n/nd086f4b57077

定家にきゅんきゅん -国宝熊野御幸記と藤原定家展レポート(三井記念美術館)-
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伊勢物語展 -根津美術館- 岩佐又兵衛に感じるもの
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僧侶の背中には、実は何があったのか -特別展「運慶 祈りの空間―興福寺北円堂」-
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マチュピチュの展示じゃない?!けど、興味深い -マチュピチュ展-
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岡本太郎の絵をめくってバックヤードをのぞいた話[ディープ] - ウォーホルの続き -
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アンディ・ウォーホル「SERIAL PORTRAITS」展(ルイヴィトン) - 岡本太郎のために力をお借りします -
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<ランキング>
[異変の起こった美術展ランキング]2025年行った美術展の中から)
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