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壁の穴のレストランと、シャツの穴


先日、ビーチ沿いのステーキハウスに夫と出かけた。
予約は受け付けておらず、行ってみるしかない。評判は上々で価格もそれなりだが、なぜか話題にのぼることは少ない。いわゆる「知る人ぞ知る」店。少しだけお洒落をして訪れたが、店に足を踏み入れて、一瞬ひるんだ。けっこうボロい(いや、いい意味で!)し、薄暗くて狭く、お洒落感ゼロ。みんなサンダル姿だった。

アメリカでは、こういう店を “hole in the wall” と呼ぶ。(直訳すれば、壁の穴)狭くて小汚かったりするけど、料理は抜群。味を知っている人だけが集まる、隠れた名店。そんな意味を込めた表現だ。

アメリカ産の和牛プライムリブを注文したら、骨つきの巨大な大きな一切れが、2人分としてドン!と運ばれてきた。
ちなみにAmerican Wagyuとは、日本の和牛とアンガスなどアメリカの牛との交配種。純血ではないものの、飼料や育て方、ストレス管理まで丁寧に育成されているため、品質の高いものはとても希少で、かなりプレミアムなメニューになる。

焼き加減も味も申し分なく、夫はワインのセレクションにうれしそうだった。次々に現れる客は、しっかりと店に合わせて近所のスーパーに行くような恰好。誰も雰囲気や外見ではなく、「確かな味」だけを頼りにこの店を選んでいるように見えた。

壁の穴。
レストランの良さなんて、見かけだけではわからない。

穴といえば──
先日、偶然、夫の知人に出会った。隣には老夫婦がいて、軽く挨拶を交わした。そのとき、男性のシャツがビリっと破れて大きな穴が空いているのが目に入った。それを隠そうともせず、レストランで食事をしていた。

あとで夫に、「あの人、大丈夫かな。あんなに大きな穴があるのに、夫婦で気づいていないのかな?」と尋ねた。年齢的に目がよく見えないのかとか、さすがにちょっと心配になった。でも、夫はあっさりと言った。「いや、彼は資産運用にも詳しい頭のキレる人だよ。資産は10億もくだらないだろうね」

あっけに取られた。

人は見た目によらない。

わかっているつもりでも、私たちはつい、外見や雰囲気で相手を判断してしまう。たとえば「挨拶しても返ってこなさそう」「自分とは話が合わなさそう」「この人から得るものはなさそう」──そんなふうに、まだ何も始まっていないのに、心のシャッターを下ろしてしまうことがある。

。。。まあ、そんなこと、ちゃんと分かってるのだけど、それでもやっぱり、先入観で色々判断しちゃうものですよね。


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