第9回:風土と制度は両輪。一見、意味がなさそうなことも、人事がやるから意味がある
結局、わたしたちがやっていることは何に役に立つのか。記事を書いたり、イベントを開いたり、日々の小さな積み重ねで「ちょっと空気が変わったかも」と感じる瞬間はある。
でも、それがどこにつながっていくのか、正直まだはっきりとは見えていない。変わってきているのは確かだけれど、その先に一体何があるのか──。
今回の放談では、そんなもやもやした問いを出発点に、目の前の手応えや小さな変化をどう捉えるか、そして「風土をつくる」という営みの意味を改めて話しました。

ミクニ: 今日は「わたしたちの仕事は結局何に役に立ってるのか?」という話をしたいです。
室長: ほお。ということは、モヤモヤしてるのかな?(笑) わたしは最近、効いてるなって実感することが増えてきたよ。「記事読みました」もほんとにいろんなところで言われるようになってきたし。
ミクニ:おお〜
室長:第6回の後半でも言ったけどさ、記事やイベントをきっかけに、「こういうこと言ってもいいんだ」「やってもいいんだ」って思える人が少しずつ広がってる気がしてる。
ウエムラ:あ、それはめざしていることのひとつなのでうれしい!
室長:こないだの事業部長のインタビューでもさ、会議の多さとか縦割りのモヤモヤを代弁してくれた回があったじゃない? あれとか効いたと思う。
ウエムラ: わたしもあの発言は絶対に書きたかったんですよ。みんなどこかで「おかしくない?」と思っていても、なんとなく「言っちゃいけない」空気が会社にあるというか。だから、目の前でそれを語ってもらったときはスッキリしたし、上の人もそう思ってんじゃん! と安心したんです。じゃあこの状況は変えられる可能性がある、希望がもてるんだな、と。
室長:そうそう! 「おかしくない? と思ってるのわたしだけじゃなかった!」と思えれば、「言っていいんだな」「わたしも言ってみようかな」につながる。
ウエムラ:原稿確認段階で削られるかなーと思ったけど、カットされなくてよかった(笑)。過去には、そういうわたしたちのアプローチに「違和感を覚えた」みたいな声もあったんですよ。
ミクニ: そうそう。ポスターを掲出したとき、「だれに何を届けたいんですか? 正直わからない」ってモヤモヤを表明してくれた方もいましたよね。

これまでにおこなった従業員インタビューの中から、
あえてちょっとドキッ!とするセリフを選んでポスターにしました。


ウエムラ:この企画の発端は、まさに「見えない何か」を気にして、言いたいことを言ったり、やりたいことをやったりすることに対して遠慮がある社内の雰囲気に風穴を開けたい、というところからでした。おカタそうな組織である人事が、ぽくない発信をしたら、その雰囲気を壊す一助になるのではと思ったんです。
ミクニ:ポスターの横にはこのセリフのネタ元になった記事のQRコードも貼ってたんですけど、ポスターの言葉だけにパッと反応した人から「どういう意図でやっているのか?」とチャットでご意見をいただいて。でも、ああいう意見はありがたいですよね。ちゃんと向き合ってくれてる証拠だから。
ウエムラ:うん。すごくありがたかった。反応してくれたおかげで、この企画に込めた意図を説明する機会が持てたし、その人とはそこからさらに踏み込んだ話もできたし。反応してもらえたという意味ではこの企画は成功だったけど、自分たちが着地させたいところまで持っていけなかったのはこちらの設計ミス。そのあと、隣にネタ元の記事もいっしょに掲示するスタイルに変更しました。
室長: なるほどね。それでいくと、マキコレツアー*もそうじゃない? 業務時間に、一見仕事と関係なさそうな場所へみんなで行く。ぱっと見は遊んでるように見えるけど、実はすごく意味がある。

「圧倒的顧客起点」を掲げる人事こそ現場を見て知るべし、というコンセプトで月に1回開催
ミクニ: はい。レポートを発信することでツアーをやる意義も伝えられるし、そもそも「こういう仕事の仕方もありなんだ」、というメッセージになっていますよね。目の前の仕事から少し離れて、ほかの価値観を知る時間をあえて設ける、みたいな。
室長: そうだね。そういう「余白」とか「余裕」はほんとに大事だと思う。
ミクニ: …でも正直、わたしたちは遊んでるように見えてると思います(笑)。
ウエムラ: そうだよね。チームの存在自体が余白。「読まなくても困らない」「読んでも役に立たない」コンテンツを発信することがポリシーですからね。
室長:(笑)。でもさ、そういう「余白」みたいなものを人事が発信すると「会社としても認めてる」って空気になる。それがいいんだよ。
ミクニ: なるほど。記事の中身だけじゃなくて、「人事が発信してる」っていうこと自体が効いているんですね。
ウエムラ:取材記事も、実際に語っているのは取材に応じてくれた方なんですけど、それを人事が記事にして出すことで「いろんな考え方、価値観があってOK!」っていうメッセージになってるってことですね。
室長:そう。だから、読んだ人が“安心した”とか“自分の考えは間違ってなかった”って感じてくれるんだと思う。
ミクニ: ただ、その気づきや行動って、放っておくと一過性で終わっちゃいますよね。
制度は続く。でも、人は慣れる。だから
室長: そう。制度のほうがそれは顕著で、最初はインパクトがあるけど、受け取る人はすぐ慣れちゃう。「昇給した!」「福利厚生が増えた!」って最初はうれしくても、すぐに慣れて当たり前になる。本来、制度は必要なことを継続させるための仕組みなんだけど、慣れによって効果が薄れていく。だからこそ、その効果を支える風土が必要なんだよ。
ウエムラ: なるほど。制度が形を残す一方で、風土がその力を長持ちさせるんですね。
ミクニ: しっくりきます。制度と風土がかみ合うことで、はじめて根づくってことか。
室長: そういうこと。片方だけじゃ足りない。だから、いつも言ってるように「両輪」でやることが大事なんだよ。
ミクニ: あっ、そういうことなんですか! 前に室長が言ってた「両輪」って。人事の施策をわれわれが企画や記事にして宣伝するとか、そういうことかと思ってました。
室長: もちろんそういうのもあるけど、それだけじゃない。制度は制度、風土は風土。だけど、その両方が揃うことで力を発揮できる。当社みたいに、明確に戦略としてやっている会社、実はあまりないと思うんだよね。でも、この「両輪」スタイルが、世の中の「人的資本経営を進めるフレーム」になればいいなと思ってる。
ミクニ: すごくいい!
ウエムラ: そっか! 「両輪」の本当の意味、やっとわかりました。じゃ、もう何も気にせず、自分たちが思いついたことを片っ端からやってこーっと。
ミクニ:いままでもそうですけどね(笑)。

