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里見八犬伝聖地巡礼【安房八】鋸山

2025年10月12日

房総の人気観光地・鋸山。

「地獄のぞき」や巨大な石仏で有名な山だけど、実は『南総里見八犬伝』では、物語の始まりと終わりの両方に関わる特別な山。

今回はロープウェイではなく、採石場跡が残る登山道から山頂へ。

刀で削ったような岩壁、古代遺跡のような石切り場、そして観光客で賑わう日本寺の奥に残る静かな羅漢道。

八犬伝の世界を妄想しながら、鋸山のちょっとディープな一面を歩いてみました。


南総里見八犬伝、始まりの地

里見八犬伝の物語の序盤、結城ゆうき合戦を落ち延びた「里見義実さとみよしざね」は、対岸の三浦半島にある三浦の浜「矢取の入江やとりのいりえ」に辿り着く。

見渡してみれば遥々と、入江に続く青海原、波も静かに白鴎が眠る。これは卯月の夏霞。引き残したという鋸山は、あれかとばかりに指差せば、のみで掘りなして、刀で削ったかのような、青い壁がそびえ立つ。見るからに危なげな長汀曲浦ちょうていきょくほの旅の路に、心を砕くは世の習い。

現代語訳 南総里見八犬伝 肇輯 巻之一 第一回 曲亭馬琴  作 村井新吉 訳

対岸は鋸山。青海原に渦巻きのぼる雲の中から、白龍がふいに現れる。
南へ飛び去る白龍を吉祥として、義実は安房に渡り里見家再興を決意した。

フェリーから見た対岸の鋸山。山頂に雲がかかって神秘的

馬琴先生の描写が豊かすぎて、無性に八犬伝の舞台の山に登りたくなる。

これまでも八犬士のように妙義山の岩を登ったり、

化猫退治の舞台・庚申山こうしんざんに登って、聖地巡礼してきた。

今回は『南総里見八犬伝』始まりの地、鋸山を登ってみる。

裏側から攻める! 車力道登山道

東京湾フェリーで金谷かなや港に上陸し、金谷海浜公園から出発。
海辺から眺める早朝の鋸山は、山頂付近がガスっていて、青い壁は秋霞あきがすみ

10年ぶりの再訪で、今回は「車力道しゃりきみち」から山頂を目指す。

歴史を感じる岩畳の登山道

車力道とは、かつて鋸山で切り出された「房州石ぼうしゅういし」を、ねこ車(荷車)で麓の港まで運んでいた歴史ある運搬路。

……ねこ車? 猫が乗ってるのを想像してしまった(猫好きの性💦)

ゴツゴツした岩畳の登山道を登っていくと、猫丁場ねこちょうば分岐に到着。

猫丁場分岐。奥は崖、その向こうに山並み

猫丁場に行ってみると、岩山の絶景が広がり、岩壁にはかわいいねこたんが!

当時の石切職人が遊び心で彫り残した、手鞠にじゃれついてる猫たん

珠(ホントは鞠)にじゃれつく、猫ですと!?
珠を見るとつい八犬伝に見えてしまう病が発動して、いろいろ妄想モードに💦

「ねこ車」もあることだし、鋸山は猫にゆかりのある山なのかな。

猫丁場は最近整備された石切り場エリアで、海側には「ハートの穴」もある。ロープウェイでは味わえない、登山者限定の見どころです。滑りにくい靴で来てね!

刀で削ったような岩壁を登る

鋸山は、コンクリート以前の時代に建築用の石を切り出した採石場。削り取られた岩の切通しなど、ダイナミックな風景がまるで古代遺跡のよう。

巨大すぎて自分がめっちゃ小さく見える切通し

垂直の壁が迫る石切り場跡に近づくと、小さな観音様(石仏)が壁面にひっそりと刻まれている。ここは「観音洞窟かんのんどうくつ」とも呼ばれている。

インディ・ジョーンズに出てきそうな、石切り場跡(観音洞窟)

山頂へと続くハイキングコース「関東ふれあいの道」に合流。
ここからは、息が上がるような急勾配の「絶壁階段」が始まる。

容赦なく続く絶壁階段

登りきった先には、麓の富津ふっつの町から東京湾、その先の丹沢、伊豆半島、そして富士山まで一望できる「東京湾を望む展望台」——なんだけど!

ゴジラの背びれを越えて

前に来た時は地平線がまぁるく見える「やっぱり地球は丸かったぁ〜」な絶景だったんだけど、
今回は真っ白な霞の中。

なんか雲の中で泳いでるみた〜い な展望台

……これはこれで神秘的で八犬伝ぽいかな?
ここまできたら、鋸山の山頂も踏んでおきましょうかぁ~

ひっそりとした鋸山山頂(標高330m)

鋸山の山頂は、狭くて木々に囲まれてひっそりしてるけど、それゆえ人も少なくて静かな雰囲気。
物語の始まりに、里見義実が眺めた鋸山の山頂に立てたのは、やっぱり感慨深く、達成感もひとしお。

この先は裏鋸登山道。アップダウンや足場の悪い岩場、滑りやすい粘土質の道が続く。前に来た時はここから先の裏鋸で下山したんだけど、今は土砂崩れで通行止め。
今回は引き返して日本寺方面へ。

曇り空に佇む石舞台の遠景

またもや絶壁階段を降れば、壮大な石舞台。
石舞台の一番上のベンチで、のんびりランチタイム。

鋸山は標高こそ330mだけど、ゴジラの背びれみたいにギザギザのアップダウンを繰り返す。
意外と登りごたえがあって、お腹もぺこぺこにぃ~。

石舞台の上まで登ってくる人は少なくて、絶景を見ながらのもぐもぐタイム。
ちょっと雲も切れてきたかな?
はぁ〜、このひとときのために、山登りしてると言っても過言ではないっ😆

お腹もいっぱいになったので「ラピュタの壁」へ。

ラピュタの壁 みんな心の中でムスカになる場所

最大垂直面96m の絶壁である石切り場跡「ラピュタの壁」。
眼下には金谷の町並みと港が一望。

ラピュタの壁 絶壁と後ろに広がる東京湾

高いところから「ラピュタ」と聞けば、自然と口をついて出てしまうのが「天空の城ラピュタ」の名セリフ——「人がゴミのようだ」。

後から来たお兄さんも、ぼそっとつぶやいてたぁ😆
きっとこの地では、日々……大量のムスカが発生しているにちがいないっ😅

地獄のぞきの向こう側へ

日本寺北口から課金して境内に入ると、いきなりすんごい人人人。
静寂のハイキングコースから、一気に超人気観光地へとワープした気分。

まずは岩壁をくり抜いて作られた、高さ30m(百尺)を誇る巨大な「百尺観音ひゃくしゃくかんのん」様がお出迎え。
圧巻の存在感で、観光客が入れ替わり立ち替わり記念撮影中。
しかも外国人観光客の姿がものすごく多い。

そして鋸山名物「地獄のぞき」。

スリル満点の地獄のぞき

こちらも大盛況ですんごい行列。外国人観光客にも大人気。

実は鋸山、「訪日外国人が選ぶディープなスポットランキング」で高野山奥の院に次いで全国第2位に選ばれたことがある。外国人に刺さる何かが、この山にはあるらしい。

以前に地獄はのぞいたことがあるので、今回は長い行列に並ぶのはパス。
地獄をのぞく代わりに、売店で「地獄を愛する=食す」ことにしましたぁ🍦😋

地獄を覗き、地獄を愛す…地獄アイス

見た目真っ黒でちょりっとびびったけど、フツーにおいちい😋
真っ黒な「地獄まん」もあって、どちらにするか迷いどころ。

南総里見八犬伝、終わりの地

この先、多くの観光客が大仏広場へ向かう中、
今日のお目当ては、「千五百羅漢道せんごひゃくらかんみち」。

この静かな散策路こそが、今回のもう一つの目的地、「里見八犬伝・終わりの地」への聖地巡礼の始まり。

風化してできた岩窟の窪みに沿って、表情豊かな石仏がずらりと並ぶ

里見八犬伝の終盤、対管領戦で勝利を収めた八犬士たちの活躍によって、
朝廷とも和議を結び、安房の地に再び平和が戻った。

里見家の重臣となった八犬士たちだったが、時が流れ、玉の文字や体の痣は消えていった。ヽ大法師は八つの玉を里見家を守護する四天王像の目にするため、犬士たちに返上させた。四天王像は安房の四隅に配置され、安房・上総の国境である鋸山には”房総随一の仏地”であるという理由から、五十体の仏像が安置された。

「里見八犬伝」のあらすじ アートで見る南総里見八犬伝 公益財団法人 金谷美術館

地獄のぞきの喧騒が嘘のような静かな空間。
立ち並ぶ無数の仏像を眺めながら歩いていると、丶大法師が彫った仏像もこのどこかにひっそりと眠っているかも……そんな不思議な気持ちになってくる。

散策路の行き止まりにひっそりと佇む「奥の院無漏窟むろうくつ」。鋸山の中でも屈指のパワースポットだと感じるほど、厳かな空気に満ちていた。

静寂に包まれた奥の院無漏窟

物語の「始まりの地」であり、同時に「終わりの地」でもある鋸山。

安房の地における八犬伝の聖地としては「富山とみさん」が有名だけど、この鋸山もまた、物語の壮大なスケールを肌で感じることができる、最高にディープな聖地。

対岸の相模に戻ったら、鋸山が見える始まりの地「矢取の入江」を探しに行きたいな。

おまけ——鋸山、全部盛りで堪能

日本寺のロープウェイ山頂駅、もうひとつの鋸山山頂からも、絶景が。

展望台でチーバくんとツーショット

下山後は、鋸山美術館で『南総里見八犬伝の人形と切り絵展』を鑑賞。
NHKの人形劇『新八犬伝』で使われた、辻村寿三郎つじむらじゅさぶろう先生の美しい人形たちを間近で見られて大興奮。

夜は、鋸山山麓にある歴史ある温泉旅館「かぢや旅館」さんに宿泊。美味しい海の幸と温泉を頂き、これ以上ないほど鋸山の魅力を丸ごと堪能しまくりましたぁ‼️

ハイキング、絶景、採石場跡、日本寺、八犬伝聖地、温泉、そして海の幸。鋸山は思っていた以上に全部盛りの山だった。

みなさんも、ぜひ刀で削った岩肌と物語の息吹を感じにきてほしいな~!

👆空撮地形と今回歩いたルートの動画はこちら。鋸山の空撮カッコええ⛰️👆
⬇️南総里見八犬伝のあらすじと、聖地巡礼の時系列のまとめはこちら⬇️

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