クナッペンシュミーデ(Knappenschmiede)とボド・メンツェ:FCシャルケ04の象徴となった「育成機関」
ゲルセンキルヘンの象徴、FCシャルケ04

ドイツ、ゲルセンキルヘン(Gelsenkirchen)。ルール工業地帯を代表しながら、21世紀以降、縮小しつつあるこの街には、ドイツ国内外に名前が知れ渡る「象徴」が存在する。もちろん、FCシャルケ04(正式名称:Fußballclub Gelsenkirchen-Schalke 04 e. V.)のことである。1964年、ブンデスリーガが創設時に所属したオリジナルの16クラブの1つであり、国を代表する歴史的強豪だ。
クラブ最大の成功は、1997年のUEFAカップ優勝。ハビエル・サネッティやユーリ・ジョルカエフなど世界的名手を数多く擁した相手を破った。またブンデスリーガ創設以前には7度のドイツ王者に輝いた実績を誇っている。2022/23シーズンに降格して以降は2部を主戦場とするものの、2025/26シーズンは2部で首位の位置につけ、昇格を虎視眈々と狙っている(2026年3月18日現在)。
名手を輩出するユース部門「クナッペンシュミーデ」

街の象徴であり、国内屈指の強豪でもあるシャルケは、当然、これまで数々の名手を擁した。なかでもユース部門である「クナッペンシュミーデ」は、世界的な名手をトップチームへ輩出した。筆頭は、2014年のブラジル・ワールドカップで優勝した3人のサッカードイツ代表選手だろう。メスト・エジル、ベネディクト・へーヴェデス、そしてマヌエル・ノイアーである。
むしろ、この3人がクナッペンシュミーデの存在を世界に知らしめたといっても過言ではない。それぞれが異なるポジションでワールドクラスの輝きを放ち、ドイツサッカー界に新たな時代が訪れたことを世界に知らしめたのだ。その他にも、ユリアン・ドラクスラー、ジョエル・マティップ、レロイ・サネ、マックス・マイヤーなど、次々とユースからタレントが登場した。
「クナッペンシュミーデの父」ボド・メンツェ

トップチームの低調にも関わらず、クナッペンシュミーデの勢いが衰えることはない。ガラタサライSKの左WGアフメド・クトゥジュ、ベシクタシュJKの右SBタイラン・ブルト、SVヴェルダー・ブレーメンのケケ・トップ、RBライプツィヒのMFアサン・ウエドラオゴなど、直近でも優れたタレントをトップチームに供給している。ドイツのユース部門としては、驚くべき継続性である。
直訳すると「鉱夫たちの鍛冶場」を意味するクナッペンシュミーデは、ある人物が中心となって創設された。その人物がボド・メンツェ(Bodo Menze)だ。ゲルゼンキルヘン中央駅からフェルティンス・アレーナに向かうトラムも走る、カートシューマッハ通りのパルク・シュタディオンを臨む家で生まれ育ったメンツェは、1964年にシャルケに入団。幾つかのユースチームでプレーした。
メンツェがシャルケのユース監督に就任するまで

1976年から1981年にかけてボーフムのルール大学でフランス語とスポーツを学び、教員養成課程を修了。第二次国家試験に合格後、ドイツ体育大学ケルンのコーチコースを修了し、ディプロマを取得して卒業。1985年には、デュースブルク=ヴェーダウに拠点を置くニーダーライン地方サッカー協会にコーチとして採用され、 1990年にはDFBランダーポカールで協会選抜チームを優勝に導いた。
1991年、当時の会長ギュンター・アイヒベルクは38歳のメンツェをシャルケのユース監督として招聘した。まだシャルケを含むほとんどのクラブでユース育成が軽視されたなか、メンツェはプロの組織を導入。マンフレート・ドゥプスキー、ノルベルト・エルゲルト、ローター・マトゥシュチャクなどのコーチとともに専任スタッフを配置し、シャルケのユース育成の成功に貢献したのだ。
クナッペンシュミーデとエリートサッカースクール

またメンツェは、クラブと教育機関の繋がりを深め、選手に適切な教育が受けられる環境を作ろうと考えた。1993年、シャルケはベルガー・フェルト総合学校と協力し、学校とサッカーにおける若手選手の育成の連携を図った。1年後、 LSB NRW(ノルトライン=ヴェストファーレン州スポーツ協会)とNRW州内務省の協力のもと「ゲルゼンキルヒェン才能育成プロジェクト」が設立される。
さらに2007年、ベルガー・フェルト総合学校はノルトライン=ヴェストファーレン州で初めてドイツサッカー協会(DFB)からエリートサッカースクールの称号を授与された学校となった。この極めて先進的な取り組みは、シャルケが他のドイツのクラブよりも優れた選手育成ができる土壌を作り出した。世界的GKのノイアーは、この計画が生んだ最高傑作である。
優れた選手を輩出し続けるシャルケの育成機関「クナッペンシュミーデ」と、優れた環境を生みだしたメンツェ。この育成機関が正常に機能している限り、シャルケユースは優秀な選手を輩出するドイツの育成機関として、絶対的な地位を確立し続けるだろう。
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