Chapter8. 微小発酵体の自律性③
↓の続き
だが、微小発酵体の種類が、第一に、諸々の動植物の卵や種子、胞子の種類に迫るほど膨大であり、第二に、動植物の完成個体や発生過程にいる微小発酵体の数が、その生物固有の解剖学的体系や器官、組織、細胞の数に相当することを考慮すれば、空気中の微小発酵体が莫大な数に上ることは想像に難くない。これは、その内の一種が、着地した発酵性培地で増殖し、細胞や黴が形成されることで生じる多種多様な変質の説明になる。
従って私の実験的証明の通り、周辺空気中の微生物叢に動植物の微小発酵体の他にも胞子や、地衣類や真菌の分生子、まさに発酵中の細胞までもが存在する場合、発酵性培地への着地後に繁殖し、その性質に応じて多様な生成物…黴や諸々の細胞、ビブリオニエンスが出現する可能性は容易に理解できよう。
しかし、これら空気中の微生物叢を全滅ないし抑制した場合、天然の動植物質の自然変質や、動物組織や体液による砂糖や馬鈴薯澱粉の発酵現象を対象するあらゆる実験系で微小発酵体とビブリオニエンス、並びにその進化の産物であるビブリオやバクテリアのみが出現する。これは微小発酵体が自律的解剖学元素だと明示している。
これらの記述と考察は、以下の命題に要約されるだろう:
(1) 動物組織の微小発酵体は卵黄微小発酵体から発生し、これは卵黄における自律的解剖学元素である。
(2) 微小発酵体の解剖学的な種別の数は膨大である。
(3) 微小発酵体の本質的な生物学的特徴は、合成による細胞および進化によるビブリオニエンスの創造である。
(4) 微小発酵体の生理的・化学的特徴は、ザイマスの生産者であり、形態が定義された発酵体であることである。
この命題は胚珠に始まる植物細胞にも該当する。
そして微小発酵体がビブリオニエンス進化を遂げる事実より、論理的帰結として微小発酵体の種別が無数にある以上はビブリオニエンスの種別もまた無数に存在する。
更に一つ、看過すべきでない観察がある。即ち、動植物の解剖学元素たる微小発酵体は、明らかに動物では動物的であり、植物では植物的であることだ。ここで疑問が生じる。動物固有の微小発酵体より生じるバクテリアはどの生物界に属するのか?植物固有の場合は?ここで、微小発酵体がバクテリア進化を完了する迄には、僅かな形状変化や2~3粒以上の連鎖体形成などの段階を経ることを想起して頂きたい。これらの形態はMonas, B. termo, B. punctum, Coccus(球菌), Diplococcus(双球菌), Torula(トルラ), Streptococcus(連鎖球菌), Micrococcus(小球菌), Mesococcus(中型球菌), Microbe en point(点状微生物), Microbe en point double(二重点状微生物)などの名で記述されている。また、それに止まらない。最終的な自己崩壊により白亜や人工的白亜のそれに類似の微小発酵体へと回帰するバクテリアは新たな形態を採り、その最も恒常的な形態がBacterium Termoと命名された。
だが、指定の対象の形状や長短、厚み、色、運動性の可否のみに基づく規定の価値とは何か?この通念が成熟する迄の経緯を論じるのは余りに冗長である。敢えて言えば、(シャルル・ボネの)胚種仮説に精通しながら自説で言及することはなかったデュジャルダンは、この形状変化に観察される現象は自然発生説に有利だという見解であり、従って微小発酵体理論の存在無くしては全てが摩訶不思議で恣意的である。バクテリアがどの生物界に属するかをアプリオリに知ることはできない。微小発酵体、延いてはバクテリアは、その微小発酵体の起源と機能でのみ区別される為である。人間と馬の耳下腺を例にこれを明示しよう。両者とも耳下腺の構造と機能は同一であり、その細胞の微小発酵体は形態学的に同一である。だが人間の耳下腺微小発酵体は馬鈴薯澱粉糊を活発に液化ないし糖化する一方、馬のそれに液化作用はあるが、糖化作用はない。そして同じ類の別の相違点、即ち、同一個体内の微小発酵体が解剖学的体系ごとに互いに相違があることは立証済みである。況や異種生物なら尚更である!
動物と同様に植物もまた解剖学的に微小発酵体の組成により生きている以上、その進化によるバクテリアの分類は明らかに二つの生物界に限定される。従ってビブリオニエンスが嘗ての分類の如く動物なのか、流行の分類の如く植物なのかという問いは恐らく無意味である。
それでも尚バクテリアを植物認定し、微小発酵体はその胞子だと譲らぬ場合、新たな疑問が浮上する。完全なバクテリア(B.termo、M.crepusculum、torula、Diplococcus、Streptococcus、Micrococcus…etc)進化が完了する前の微小発酵体は分裂菌綱のどの種なのか?進化が開始する生体内での胞子に始まり、生体の完全分解後に石灰岩や人工的白亜に胞子として存在するのか?
通念に準ずればこの回答は曖昧模糊とならざるを得ない!微小発酵体理論ならば、回答は次の通りである。
動植物の解剖学元素である微小発酵体は、その存在条件の変化で以てバクテリアへ進化する。蛙に変態するオタマジャクシを例に、進化の中間段階でも微小発酵体の基本的な性質はそのまま保存される。換言すれば、この変態の過程で新種の創造などない。両生類の完全な個体発生がオタマジャクシ固有の性質で決定される如く、完全なバクテリアの発生もまた微小発酵体固有の性質で決定される。
如何なるバクテリアも自己崩壊により微小発酵体へ分解され、分解後はバクテリアの解剖学的なそれとは異なるが、それは有形発酵体としての形態学的、機能的相違ではなく、個々の独立状態におけるその形態と機能を永続的に保証する一連の性質によって異なる。
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