三題噺ショートショート_努力家
落語家もすなる三題噺といふものを、コジも、してみむとてするなり。
企画もの、大の苦手なのである。
どんな親しい人の企画ものでも、なかなか素直には乗れない。
私は、「ルール」とか「決まり事」とか「期限」とか「締め切り」とかという制限事項が世の中で一番嫌いなのだ。
いくつになろうが、聞かん坊の悪ガキ。それが、私、kojuroだからである。
え?落語?三題噺?ヤスさん?

心の中の、リトルkojuroが、ボソリと、呟いた。
コジ、別名、天の邪鬼志朗だろ。「もし書けなかったとしても、それはそれでOK。でも、やってみなきゃ、もったいない!」なんてこと言われたら、逆に書きたくなるんじゃないの?
なんのはなしですか。

わかったよ、書くよ。書く書く。書けば良いんでしょ、リトル。それで、いいんだろ?
ブラックホールよりも重い重い重い腰を上げて、半ば自暴自棄に筆を執る。
さて。では、三題噺ショートショート「努力家」まいりましょうか。

剣は天才的に、何でも最初から出来る器用なヤツだった。
ところが努力を継続していくつもりが無いものだから、徐々に追いつかれ、追い抜かれていった。
あるオフの日、剣と一緒に中華街に、豚饅の食べ歩きに出た。
雨上がりの空がとても綺麗で穏やかな春の日だった。
一貫楼、皇蘭、老祥記と回り、海文堂でやりもしない参考書を漁って帰ろうとしたとき。
剣が、泥の水たまりに足を突っ込んで汚してしまったのだ。
翌日から剣は、部活に顔を出さなくなった。
それから一月ほど経った頃。
6限が自習だった俺は、剣が居ることを確認してから教室の前で見張っていたのだ。
授業が終わり。各々生徒が出て行く。掃除も終わり、最後の一人も出て行った。
あれ?
教室の中を覗くと。カーテンの向こうに、隠れている人影が見える。
俺は、ほくそ笑みつつ叫んだ。
「カーテンで遊ばない!」
剣はその後部活に戻り。
努力家に変貌したヤツは、最終回に代打でホームランを放ち、超強豪校にひとり、一矢報いた。

ヤスさんの三題噺企画の、そんなこんなを家内と語らおうとして後ろを振り向くと、空のソファーが、静かに笑っていた。
先日から家内は、あるプロジェクトで、都心のホテルに泊まり込んでいる。
シーンとした部屋の空気に、なんだか、心が追いつかない。
あの時の、家内の言葉が頭の中に響く。
まだ三題噺続けてるの?じゃ、それにちなんで、マッサー(注1)三倍返しで、ね。ペペン、ベンッ!
……。
昼間のやりとりからすると、家内は、元気なようである。
家内が元気だと、我が家は、明るくて平和である。
だから。
これで、いいのだ。

(注1)マッサーとは、マッサージのことである。家内のさっちゃんがそうやって、略して言うのである。さっちゃんへのマッサーは私の最重要の日課である。
俺にしちゃあ、三題噺も、けっこう書いたな。笑

