見出し画像

【Advent企画】12/12:雪の結晶【410字小説】

最寄駅から家まで歩いて13分。
ものすごく近いわけではないけれど、遠いとも言い切れない。新卒の頃、家賃とのバランスで悩んでギリギリ選んだアパートに、結局今でも住んでいる。

駅周りの繁華さから徐々に遠のいて、今歩いているのは、静かな夜の住宅街だ。コンビニの袋を下げた美吉は、ずんずんと先を行く。

既視感。
この背中を何度も見てきた。

視界の中を、白い影が横切った。
俺が顔を上げるのと同じタイミングで、
「妹尾、雪だっ」
と弾む声がする。

腕を広げて空を仰いだ美吉が、くるりと綺麗なターンをする。軽い足取りに、転ばないのかと心配になるけれど、美吉は転ばない。

出会いも雪の日で、あの時の美少年は、そのまま儚く溶けてしまいそうな気がしたものだけれど。
実際の美吉は、焼き鳥の袋を振り回しながら、大口を開けて雪にはしゃぐような男だったんだよなと思う。

降った雪が、結晶で残るほどの寒さではないはずなのに。美吉の黒髪に、銀色の雪の結晶が見えた気がした。

--------------------------

本文410字。
#いつきちゃんのアドベントカレンダー


夢見がちだけれども。
理想と現実のギャップにはとうに気が付いている。


この二人の話です。

Advent:0日目

Advent:1日目

Advent:2日目

Advent:3日目

Advent:4日目

Advent:5日目

Advent:6日目

Advent:7日目

Advent:8日目

Advent:9日目

Advent:10日目

Advent:11日目

Advent:12日目


いいなと思ったら応援しよう!

この記事が参加している募集