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「Solaria 第六話|スプリングフェスティバル」

春の風が、校内を駆け抜けていた。

掲示板の前。

人だかり。

「スプリングフェスティバル出演団体オーディション」

その文字を、ひなたはじっと見つめていた。

「……来たね」

隣で、しおりが呟く。

「参加団体……6つ」

指でなぞる。

吹奏楽部。軽音楽部。弦楽部。アカペラ部。和楽器部。チアリーディング部。

そして――

スクールアイドル部。

「2つ落ちるってことは……」

「5枠ね」

空気が、少しだけ重くなる。

「……やるしかないでしょ!」

ひなたが、振り返る。

その笑顔は明るい。

でも――

(まだ、足りてない)

自分が一番、わかっている。

ダンス練習室。

いつもより、静かだった。

「……オーディション、明日」

しおりが確認する。

「うん」

短い返事。

「完璧じゃなくていい」

あかりが言った。

全員が、顔を上げる。

「“何を見せるか”だから」

その言葉は、以前の彼女からは少しだけ変わっていた。

厳しさの中に、選び方がある。

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翌日。

簡易ステージ。

他の部活のパフォーマンスが続く。

圧倒的だった。

音。

動き。

完成度。

「……すごい」

さくらが、小さく呟く。

ひなたは、何も言わない。

ただ、見ている。

「次、スクールアイドル部」

呼ばれる。

 

空気が、止まる。

ステージに上がる。

観客は少ない。

でも――

確実に、見られている。

「……いくよ」

あかりの声。

ひなたが、うなずく。

さくらが、息を吸う。

音楽が流れる。

最初の一歩。

――ズレる。

「……っ」

ほんのわずか。

でも、わかる。

それでも――

止まらない。

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ひなたが前を見る。

あかりがリズムを引く。

ゆいが流れを繋ぐ。

しおりが整える。

そして――

さくら。

「……あ……」

声が出る。

震えている。

でも。

消えない。

少しずつ。

重なっていく。

完璧じゃない。

バラつきもある。

でも――

そこには、確かに“何か”があった。

演技が終わる。

静寂。

誰もすぐに拍手しない。

審査員も、無言。

でも。

空気が、変わっていた。

放課後。

掲示板の前。

再び、人だかり。

「出演団体」

紙が貼られる。

ひなたの手が、少し震える。

さくらが息を呑む。

「……あった」

ゆいの声。

スクールアイドル部。

その文字。

「……通った」

しおりが、静かに言う。

「やった……!」

ひなたが、声を上げる。

あかりは、少しだけ間を置いて――

「当然じゃない」

全員が見る。

「でも」

ほんの少しだけ、口元が緩む。

「悪くなかった」
 
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フェスティバル当日。

青空。

グラウンド特設ステージ。

観客のざわめき。

「次は――スクールアイドル部!」

ステージへ。

さくらの手が、少し震えている。

ひなたが、そっと握る。

「大丈夫」

小さく、笑う。

音楽が始まる。

今度は――

揃っている。

完璧じゃない。

でも――

“心”が揃っている。

 

さくらの声。

前より、ずっと届く。

観客の視線が、変わる。

ざわめきが、静かになる。

引き込まれていく。

ラストポーズ。

静寂。

そして――

拍手。

大きくはない。

でも。

確かに、届いた証。

舞台袖。

誰も、すぐに話さない。

息だけが揃っている。

「……届いたよね」

ひなたが、笑う。

さくらが、うなずく。

「……ゼロじゃない」

しおりが言う。

「うん、ちゃんと届いてた」

ゆいが微笑む。

あかりは、前を見たまま。

「まだ足りないけど」

でも。

その声は、どこか柔らかい。

夕焼けが、5人を包む。

まだ、名前はない。

まだ、未完成。

それでも――

確かに、そこにいた。

“何かを持った存在”として。

第六話 スプリングフェスティバル (終)

▶ Solaria 第七話|
― 広がる波紋 ― へ続く

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