【第4回/全6回】“越え方”を探す日々 -親子それぞれの決意と覚悟-
地方公立から医学部へ 〜 ある家庭の子育て回顧録
-親子の時間、受験の現実、そして決断へ-
【第4回】第6章/全6回(無料)
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第6章 医学部を目指すまでの道 -対話から生まれた決意と覚悟-
──受験に立ちはだかったのは、学力だけではありませんでした。
環境の格差と地理的な遠さという“二重の壁”が、私たちの歩みに重くのしかかってくることになるのです。
●6-1 都会との距離 -環境と地理、その二重の壁
私は長女の受験を通して、学力だけではない大学受験の難しさ、“情報戦”の重要さを思い知りました。
だからこそ、次女の受験では私自身も必死に情報収集をしました。
それまでの基礎的な受験知識に加えて、医学部独特の受験制度や科目選択。
入学金の支払い期限を踏まえた、併願戦略や受験日程管理などなど──
調べれば調べるほど、「これは素人が片手間で扱える領域ではない」と認識するばかりでした。
そんな中で出会ったのが、とある塾が運営するYouTubeチャンネルでした。
私が疑問に思っていたことや、新たな気づきを面白おかしく紹介していて、「都会にはこんな塾もあるのか」と驚いたものです。
いつしか、自然に娘とも動画で配信される情報を共有するようになり、地方と都会の教育格差を実感しつつも、そこに光明を見出した思いでした。
ただ、調べてみると、その塾は最寄りの校舎でも片道1時間以上かかるという現実がありました。
中等学校でも自主学習や補講が始まり、ただでさえ娘の帰宅は遅くなっていました。
通塾するのはあまり現実的ではないことを言い訳に、都会の環境を羨みつつ、この時も行動を起こせずにいました。
●6-2 近くに現れた“可能性”と、立ちはだかった現実
ところが、そんなある日。
偶然、自宅から車で15分ほどにある隣町の駅前を通りかかった際に、その塾の新しい校舎の開校を予告する看板を目にしました。
思わず車の中で一人、大きな声で呟きました。
「マジか」
はやる気持ちを抑えつつ、家に戻るや否や、娘に報告。
期待と喜びを隠さない表情の娘と一緒に、すぐに無料面談に向かいました。
しかし、そこで見たのは──、高額な料金表でした。
ある程度高いだろうとは想像していましたが、正直、想像を超えていました。
娘はその頃、地方によくある個人経営の学習塾に通っていました。
それでも「高いなぁ」と感じていたのに、提示された金額はそのおよそ3倍。
確かに自習室が使い放題である点や、従来の“勉強を教える塾”とは違う仕組みだということは理解できましたが、それが適正な値段なのか判断できず、その日は説明だけ受けて帰りました。
その後、娘からは通塾に関する話はほとんど出なくなりました。
金額を見た時の私の表情を見ていたのでしょう。
帰りの車の中でも「あの金額を払える家庭がこの辺にどれくらいあるんだろうね」と不用意な話をしてしまった覚えもありました。
都会ならともかく、これを田舎の家庭が負担するのは現実的なのか。
成績と同じくらい、受験では戦略が重要だということは、もう誰よりも分かっている。
でもあの料金を、少なくとも1年半。既に長女の大学の授業料と仕送りで悩んでいる妻からは、とても同意を得ることは難しいだろう。
内心諦めつつも、何とか実現できないかと心の中で葛藤し続けたまま、あっという間に3か月ほどが経過し、高2の学年も残り少なくなった年末のことでした。
●6-3 娘の決意の一言と、父としての覚悟
田畑に囲まれた田舎の学校では、交通の便が悪く、保護者が車で送迎するのも特別なことではありません。
冬になると北風が強く、積雪の日には広い駐車場で迎えを待つ生徒たちが、肩をすぼめながら親の迎えを待つ姿が日常の光景でした。
学年がひとつ上の先輩たちは共通テストまで残り1か月。
迎えに来る保護者の表情にも、どことなく緊張した空気が漂っていたのを覚えています。
自分たちも来年は同じ立場になる──
そんなことを思いながら過ごしていた時期のことです。
雪国の早い日没と荒れ模様の天候の中、学校帰りの娘を車で迎えに行った時、娘が後部座席に乗り込むなり、小さな声で話してきました。
「○○君、あの塾に行くんだって」
──その一言に、娘の意思が凝縮されていると思いました。
娘のクラスには、もう一人だけ、医学部志望の生徒がいると聞いていました。
その彼の名前でした。
私も覚悟を決めました。
塾代が高額なのも分かっている娘。
それでも口にしたのは、覚悟があるということだろう。
親として、ここで背中を押さなくてどうする。
私は視線を前に向けたまま、静かに腹を括りました。
お金は何とかしよう。私の父にも頼もう。へそくりもかき集めよう。
この日を境にして──
怒涛の“受験生の親”生活が始まることになるのです。
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