356.【1分間読了∣掌編小説】ラウンジにて──名前を呼ぶまでの距離②−猫のスタンプの向こうで(男性編)
彼女のことは、和美と呼んでいる。
でも、本当の名前は、知らない。
LINEでやり取りをして、ホテルで時間を過ごす。食事もしないし、話もない。
最初の頃は、食事に誘ったこともある。自分のことを話したこともあった。でも、返ってくるのは、当たり障りのない猫のスタンプばかりだった。
スタンプを見るのも嫌になって、今はホテルの約束だけを送っている。
そんな関係が、三度続いている。
そして四度目──初めて、彼女の方からの誘いだった。
いつもなら、次を考えていた。
でも、彼女には──それが浮かばなかった。
彼女も、同じかもしれない。
それでも、誘いの通知を見たとき、俺は少しだけ、返事に迷った。
いつか終わる関係だと、わかっている。
でも、今は──それでもいいと思う。
名前も知らない彼女。
それでも今日、俺はまた会う。

男女間の違いを書いた連作掌編小説∶
《女性編》
《男性編》
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