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中学でも分かる⑫「ベクトル」

 この記事では、高校で習うベクトルの解説をします。まず、ベクトルとは何かを解説し、ベクトルのたし算ひき算の作図、成分表示、内積、ベクトルの平行条件と垂直条件まで解説していきます。基本のみを重点的に解説するので、さらに内容を深めたい場合は、高校の教科書などで勉強を進めてください。


ベクトルとは?

 ベクトルは、「大きさ」と「向き」を持つ量のことです。たとえば、風は大きさと向きがあります。下図のように、矢印の長さが風の大きさ、矢印の向きが風の向きを表します。よって、風はベクトルといえます。

Sunny-spot.net! 天気・気象情報サイトより引用

 力も大きさと向きがあります。例えば重力は、大きさは $${mg  [\text{N}]}$$ 、向きは下向きのベクトルです。

 なお、$${m}$$ は質量 $${[\text{kg}]}$$、$${g}$$ は重力加速度 $${9.8  [\text{m}/\text{s}^2]}$$ です(高校の物理で習います)。
 このように、大きさと向きをもつ量のことをベクトルといいます。
 ベクトルのイメージとして矢印を思い浮かべてください。

 矢印の長さがベクトルの「大きさ」を表し、矢印の指す方向がベクトルの「向き」を表します。
 一方、方向をもたない大きさだけの量をスカラーといいます。例えば、気温やテストの点数などがスカラーです。北向きの気温、右向きの点数などというものはありません。
 ベクトルは単なる数値と異なり方向を持つため、物理や数学のさまざまな分野で重要な役割を果たします。

ベクトルの表し方

 下図のようなベクトルがあったとします。

 これを

$$
\begin{align*}
\overrightarrow{\text{AB}}
\end{align*}
$$

と、文字の上に矢印記号 $${\rightarrow}$$ をつけて表します。点 $${\text{A}}$$ を始点、点 $${\text{B}}$$ を終点といいます。

 また、ベクトルは1つの文字と矢印を用いて、$${\vec{a}}$$ や $${\vec{b}}$$ のようにも表されます。

ベクトルの大きさ

 ベクトルの大きさを、絶対値記号 $${|\hspace{7pt}|}$$ を用いて $${|\overrightarrow{\text{AB}}|}$$ や $${|\vec{a}|}$$ と表します。

 特に、大きさが $${1}$$ であるベクトルを単位ベクトルといいます。

単位ベクトル

 ここでベクトルについて、いろいろな決まりを整理していきます。

ベクトルの相等

 ベクトルは大きさと向きが等しいときは、位置が違っても同じベクトルとみなします。これをベクトルの相等といいます。

 つまり、平行移動させたものはすべて等しいベクトルになります。まっすぐ移動した $${\vec{d}}$$ も平行移動です。

 ベクトルの相等は、例えば「風速 $${3}$$ m/s の北向きの風」といえば1階も3階も同じ風が吹くとみなしたり、体育の授業で「3歩前進」といえば生徒全員が同じ方向に3歩動くなど、同じものとみなすことを抽象化した考え方です。空間を大域的に考えたり、位置は意識しないなど、抽象化することによって応用の範囲が広くなります。

逆ベクトル

 大きさが同じで向きが反対であるベクトルを逆ベクトルといいます。$${\vec{a}}$$ の逆ベクトルは $${-\vec{a}}$$ と表します。

 下図のように、
 $${\vec{a}=\overrightarrow{\text{AB}}}$$
とおくと
 $${-\vec{a}=\overrightarrow{\text{BA}}}$$
となるので

$${\overrightarrow{\text{AB}}}$$ の逆ベクトルは $${\overrightarrow{\text{BA}}}$$ となり

$$
\begin{align*}
\overrightarrow{\text{BA}}=-\vec{a}=-\overrightarrow{\text{AB}}
\end{align*}
$$

 よって、次の関係が成り立ちます。

$$
\begin{align*}
\overrightarrow{\text{BA}}=-\overrightarrow{\text{AB}}
\end{align*}
$$

 つまり、始点と終点を入れ換えると $${-1}$$ 倍が外に出る、逆に $${-1}$$ 倍すると始点と終点が入れ替わります。次のように形式的に操作すればよいでしょう。

$$
\begin{align*}
\overrightarrow{\text{OA}}&=-\overrightarrow{\text{AO}}\\
-\overrightarrow{\text{CD}}&=\overrightarrow{\text{DC}}\\
\end{align*}
$$

 簡単なようですが、左辺から右辺、右辺から左辺とこの計算は頻繁に現れるので強調しておきます。

例題1
 次のベクトルを作図しなさい。
(1) $${\overrightarrow{\text{AB}}=\overrightarrow{\text{CD}}}$$ となる、点 $${\text{C}}$$ を始点とするベクトル $${\overrightarrow{\text{CD}}}$$。
(2) $${\overrightarrow{\text{AB}}}$$ の逆ベクトルで、点 $${\text{C}}$$ を始点とするベクトル $${\overrightarrow{\text{CD}}}$$。

指針
(1) 大きさ(長さ)と向きが等しいベクトル $${\overrightarrow{\text{CD}}}$$ を作図します。
(2) 大きさ(長さ)が等しく、向きが反対であるベクトル $${\overrightarrow{\text{CD}}}$$ を作図します。

解答

$${\blacksquare}$$

例題2
 下図において、次のベクトルを答えなさい。
(1) ➀ と等しいベクトル。
(2) ➁ と等しいベクトル。
(3) ➀ の逆ベクトル。
(4) ➁ の逆ベクトル。

指針
(1)、(2) 大きさ(長さ)と向きが等しいベクトルを選びます。
(3)、(4) 大きさ(長さ)が等しく、向きが反対であるベクトルを選びます。

解答
(1) ➀ と等しいベクトルは ➅。
(2) ➁ と等しいベクトルは ➃。
(3) ① の逆ベクトルは ➇。
(4) ➁ の逆ベクトルは ➆。

$${\blacksquare}$$

ベクトルの足し算

 ベクトルのたし算は、2つのベクトルを合成して新しいベクトルを作る操作です。例えば、次のようにベクトル $${\vec{a}}$$ と $${\vec{b}}$$ があるとします。

 このとき、$${\vec{a}+\vec{b}}$$ は次のように作図します。

方法1(平行四辺形の法則)

(step1) $${\vec{a}}$$ と $${\vec{b}}$$ のどちらかを平行移動して始点をそろえます。ベクトルは大きさと向きが同じなら同じベクトルとみなすので、どちらを(または両方を)平行移動してもかまいません。下図では $${\vec{b}}$$ を平行移動させて、始点をそろえています。

(step2) それらを2辺とする平行四辺形を作り、その平行四辺形の対角線を表すベクトルが $${\vec{a}+\vec{b}}$$ になります(平行四辺形の法則)。

方法2(しりとりの法則)

(step1) $${\vec{a}}$$ と $${\vec{b}}$$ のどちらか(または両方)を平行移動して、終点と始点を重ねます。下図では $${\vec{b}}$$ を平行移動させて、終点と始点を重ねています。

(step2) 下図のように、$${\vec{a}}$$ の始点から $${\vec{b}}$$ の終点までを矢印で結べば、それが $${\vec{a}+\vec{b}}$$ になります(しりとりの法則)。

 $${\vec{a}=\overrightarrow{\text{OA}},   \vec{b}=\overrightarrow{\text{AB}}}$$ とおくと、次の関係式が成り立ちます。

$$
\begin{align*}
&\overrightarrow{\text{OA}}+\overrightarrow{\text{AB}}=\overrightarrow{\text{OB}}\\[-5pt]
&\hspace{10pt}|\hspace{13pt}\uparrow\\[-11pt]
&\hspace{11pt}\overline{\hspace{20.5pt}}\\[-6pt]
&\hspace{5pt}{\footnotesize しり取り}
\end{align*}
$$

 この $${\overrightarrow{\text{OB}}}$$ を、$${\vec{a}}$$ と $${\vec{b}}$$ のと定義し $${\vec{a}+\vec{b}}$$ と表します。
 次のように $${\text{A}}$$ がキャンセルされるイメージです。

$$
\begin{align*}
&\overrightarrow{\text{O}\cancel{\text{A}}}+\overrightarrow{\cancel{\text{A}}\text{B}}=\overrightarrow{\text{OB}}\\[-5pt]
&\hspace{10pt}|\hspace{13pt}\uparrow\\[-11pt]
&\hspace{11pt}\overline{\hspace{20.5pt}}\\[-6pt]
&\hspace{5pt}{\footnotesize しり取り}
\end{align*}
$$

 これは、次のようにつなげていくことが可能です。

$$
\begin{align*}
&\overrightarrow{\text{O}\cancel{\text{A}}}+\overrightarrow{\cancel{\text{A}}\bcancel{\text{B}}}+\overrightarrow{\bcancel{\text{B}}\text{C}}=\overrightarrow{\text{OC}}\\[-5pt]
&\hspace{10pt}|\hspace{13pt}\uparrow\hspace{1pt}|\hspace{13pt}\uparrow\\[-11pt]
&\hspace{11pt}\overline{\hspace{20.5pt}}\hspace{7pt}\overline{\hspace{20.5pt}}\\[-6pt]
&\hspace{6pt}{\scriptsize しり取り}\hspace{1pt}{\scriptsize しり取り}
\end{align*}
$$

ベクトルの引き算

 ベクトルのひき算は、あるベクトルから別のベクトルを引く操作です。例えば、次のようにベクトル $${\vec{a}}$$ と $${\vec{b}}$$ があるとします。

 このとき、$${\vec{a}-\vec{b}}$$ は次のように作図します。

方法1(ベクトルのたし算に帰着させる)

 まずは
 $${\vec{a}-\vec{b}=\vec{a}+(-\overrightarrow{b})}$$
と考えて、$${\vec{a}}$$ と逆ベクトル $${-\overrightarrow{b}}$$ のたし算に帰着させる方法です。

(step1)  $${\vec{b}}$$ の逆ベクトル $${-\overrightarrow{b}}$$ を描きます。

(step2) ベクトルのたし算でやったように、$${\vec{a}}$$ と $${-\vec{b}}$$ とで平行四辺形の対角線のベクトルを描きます(平行四辺形の法則)。

 または、$${\vec{a}}$$ の始点から $${-\overrightarrow{b}}$$ の終点までをベクトルで結びます(しりとりの法則)。

方法2(後ろから終点と終点を結ぶ)

(step1) $${\vec{a}}$$ と $${\vec{b}}$$ のどちらか(または両方)を平行移動させて始点をそろえます。下図では $${\vec{b}}$$ を平行移動させています。

(step2) 引く方のベクトル $${\vec{b}}$$ の終点から、引かれる方のベクトル $${\vec{a}}$$ の終点までを矢印を結べば、それが $${\vec{a}-\vec{b}}$$ となります。

 これが $${\vec{a}-\vec{b}}$$ のベクトルです。
 これは、次のように証明可能です。
 $${\vec{a}=\overrightarrow{\text{OA}}}$$、$${\vec{b}=\overrightarrow{\text{OB}}}$$ とすると

 ベクトルのたし算より

$$
\begin{align*}
&\overrightarrow{\text{OB}}+\overrightarrow{\text{BA}}=\overrightarrow{\text{OA}}\\[-5pt]
&\hspace{10pt}|\hspace{13pt}\uparrow\\[-11pt]
&\hspace{11pt}\overline{\hspace{20.5pt}}\\[-6pt]
&\hspace{5pt}{\footnotesize しり取り}
\end{align*}
$$

 $${\overrightarrow{\text{OB}}}$$ を右辺に移項して

$$
\begin{align*}
&\overrightarrow{\text{BA}}=\overrightarrow{\text{OA}}-\overrightarrow{\text{OB}}
\end{align*}
$$

 両辺を入れ換えて

$$
\begin{align*}
&\overrightarrow{\text{OA}}-\overrightarrow{\text{OB}}=\overrightarrow{\text{BA}}\\[-5pt]
&\hspace{6pt}\uparrow\hspace{21pt}|\\[-11pt]
&\hspace{11pt}\overline{\hspace{28pt}}\\[-6pt]
&\hspace{-5pt}{\footnotesize 後ろから前へ矢印}
\end{align*}
$$

より証明されます。
 この $${\overrightarrow{\text{BA}}}$$ を、$${\vec{a}}$$ から $${\vec{b}}$$ を引いたと定義し $${\vec{a}-\vec{b}}$$ と表します。
 このベクトルの差は、次のように考えることもできます。

$$
\begin{align*}
\overrightarrow{\text{OA}}-\overrightarrow{\text{OB}}&=\overrightarrow{\text{OA}}+(-\overrightarrow{\text{OB}})\\
&=(-\overrightarrow{\text{OB}})+\overrightarrow{\text{OA}}\\
&=\overrightarrow{\text{BO}}+\overrightarrow{\text{OA}}\\
&=\overrightarrow{\text{BA}}
\end{align*}
$$

 $${-\vec{b}}$$ の始点 $${\text{B}}$$ が、$${\vec{a}-\vec{b}}$$ の始点になるので、点 $${\text{B}}$$ から $${\text{A}}$$ に向かって矢印を引くことになります。
 毎回このように変形するのは面倒なので、ベクトルの差は、次のように機械的に操作すればよいでしょう。

 終点について”後ろから前へ” 矢印を引っ張るイメージです。このように機械的に操作します。
 なお、この変形ができるのは、始点がそろっている場合であることに注意してください。上記では始点が $${\text{O}}$$ でそろっています。始点がそろっていればよいので、ベクトルのひき算は次のように応用されます。

$$
\begin{align*}
&\overrightarrow{\text{DB}}-\overrightarrow{\text{DA}}=\overrightarrow{\text{AB}}\\
&\overrightarrow{\text{AB}}-\overrightarrow{\text{AC}}=\overrightarrow{\text{CB}}\\[-5pt]
&\hspace{6pt}\uparrow\hspace{21pt}|\\[-11pt]
&\hspace{11pt}\overline{\hspace{28pt}}\\[-6pt]
&\hspace{-5pt}{\footnotesize 後ろから前へ矢印}
\end{align*}
$$

 また、このベクトルの差は、両辺を逆にして次のように計算することも多いです。

$$
\begin{align*}
&\overrightarrow{\text{AB}}=\overrightarrow{\text{OB}}-\overrightarrow{\text{OA}}\\
&\overrightarrow{\text{AB}}=\overrightarrow{\text{DB}}-\overrightarrow{\text{DA}}\\[-5pt]
&\hspace{-1.5pt}\uparrow\hspace{1pt}|\\[-11pt]
&\hspace{3.5pt}\overline{\hspace{8pt}}\\[-7pt]
&\hspace{0pt}{\footnotesize ベクトルの差}
\end{align*}
$$

 これは始点を変える計算です。前者は始点を $${\text{O}}$$ に、後者は始点を $${\text{D}}$$ に変えています。始点を変えると、ベクトルの差になります。左辺から右辺へ、右辺から左辺へと自在に計算できるようにしましょう。

例題3
 下図について、ベクトル $${\vec{a}-\vec{b}}$$ を図示しなさい。

指針
 下図のように $${\vec{a}=\overrightarrow{\text{OA}}}$$、$${\vec{b}=\overrightarrow{\text{OB}}}$$ と置くと、ベクトルの差の公式

$$
\begin{align*}
&\overrightarrow{\text{OA}}-\overrightarrow{\text{OB}}=\overrightarrow{\text{BA}}\\[-5pt]
&\hspace{6pt}\uparrow\hspace{21pt}|\\[-11pt]
&\hspace{11pt}\overline{\hspace{28pt}}\\[-6pt]
&\hspace{-5pt}{\footnotesize 後ろから前へ矢印}
\end{align*}
$$

が使いやすくなります。なお、始点のそろっていない (2)、(3) は、ベクトルを平行移動して始点をそろえます。下図では、$${\vec{b}}$$ を平行移動して $${\vec{a}}$$ と始点をそろえています。

解答

$${\blacksquare}$$

 いずれも終点 $${\text{B}}$$ から $${\text{A}}$$ まで矢印で結びます。逆にしないように注意しましょう。

零ベクトル

 ベクトル $${\vec{a}=\overrightarrow{\text{AB}}}$$ とその逆ベクトル $${-\vec{a}=\overrightarrow{\text{BA}}}$$ の和を考えると

$$
\begin{align*}
&\vec{a}+(-\vec{a})=\overrightarrow{\text{AB}}+\overrightarrow{\text{BA}}=\overrightarrow{\text{AA}}\\[-5pt]
&\hspace{61pt}|\hspace{13pt}\uparrow\\[-11pt]
&\hspace{62pt}\overline{\hspace{20.1pt}}\\[-6pt]
&\hspace{57pt}{\footnotesize しり取り}
\end{align*}
$$

となります。この $${\overrightarrow{\text{AA}}}$$ は始点と終点が一致した場合と考えられます。このベクトル $${\overrightarrow{\text{AA}}}$$ を零ベクトルといい、$${\vec{0}}$$ と表します。

$$
\begin{align*}
\overrightarrow{\text{AA}}=\vec{0}
\end{align*}
$$

 零ベクトルの大きさは $${0}$$ であるが、向きは考えません。

$$
\begin{align*}
|\vec{0}|=0
\end{align*}
$$

 零ベクトルには、次の性質があります。

$$
\begin{align*}
&1.     \vec{a}+(-\vec{a})=(-\vec{a})+\vec{a}=\vec{0}\\
&2.     \vec{a}+\vec{0}=\vec{0}+\vec{a}=\vec{a}
\end{align*}
$$

 下の計算($${a}$$ は実数)から分かるように、$${\vec{0}}$$ は数の $${0}$$ と似た枠割りを果たします。

$$
\begin{align*}
&1.     a+(-a)=(-a)+a=0\\
&2.     a+0=0+a=a
\end{align*}
$$

 なお、$${\vec{0}}$$ はベクトルであり、$${0}$$ はスカラーです。$${\vec{0}}$$ と $${0}$$ は同じではないことに注意しましょう。

ベクトルと実数の積

 $${a}$$ を実数とすると、$${3a}$$ も実数で
 $${3a=a+a+a}$$
が成り立ちます。
 ベクトルについても同様のことが成り立つと考えます。つまり、$${3\vec{a}}$$ もベクトルで

$$
\begin{align*}
3\vec{a}=\vec{a}+\vec{a}+\vec{a}
\end{align*}
$$

と考えます。つまり、$${3\vec{a}}$$ というベクトルは、$${\vec{a}}$$ と同じ向きで、大きさが $${3}$$ 倍のベクトルと考えます。


 また、$${a}$$ を実数とすると、$${(-3)a}$$ も実数で
 $${(-3)a=(-a)+(-a)+(-a)}$$
が成り立ちます。ベクトルについても同様のことが成り立つとし

$$
\begin{align*}
(-3)\vec{a}=(-\vec{a})+(-\vec{a})+(-\vec{a})
\end{align*}
$$

と考えます。つまり、$${(-3)\vec{a}}$$ というベクトルは、$${\vec{a}}$$ と反対の向きで、大きさが $${|-3|=3}$$ 倍のベクトルと考えます。また、$${(-3)\vec{a}}$$ は $${3\vec{a}}$$ の逆ベクトルと考えることもできるので
 $${(-3)\vec{a}=-3\vec{a}}$$
が成り立ちます。

 一般に、実数 $${k}$$ とベクトル $${\vec{a}}$$ の積 $${k\vec{a}}$$ を、次のように定めます。

$${k>0}$$ のとき
 $${\vec{a}}$$ と同じ向きで、大きさが $${|\vec{a}|}$$ の $${k}$$ 倍であるベクトル。

$${k<0}$$ のとき
 $${\vec{a}}$$ と反対向きで、大きさが $${|\vec{a}|}$$ の $${|k|}$$ 倍であるベクトル。
 $${k<0}$$ なので、正の値にするために $${k}$$ に絶対値をつけて $${|k|}$$ 倍とします。

$${k=0}$$ のときは零ベクトル $${\vec{0}}$$ になります。つまり
 $${0\vec{a}=\vec{0}}$$

例題4
 下図について、次のベクトルを図示しなさい。
(1) $${2\vec{a}}$$
(2) $${-3\vec{b}}$$
(3) $${2\vec{a}-3\vec{b}}$$
(4) $${2\vec{a}-\vec{b}}$$

解答
(1) $${2\vec{a}}$$ は $${\vec{a}}$$ と同じ向きで、大きさが $${2}$$ 倍のベクトルです。

(2) $${-3\vec{b}}$$ は $${\vec{b}}$$ とは反対向きで、大きさが $${3}$$ 倍のベクトルです。

(3) (1) と (2) の結果を利用すればよいでしょう。つまり

$$
\begin{align*}
2\vec{a}-3\vec{b}=2\vec{a}+(-3\vec{b})
\end{align*}
$$

と、$${2\vec{a}}$$ と $${-3\vec{b}}$$ の和と考えて、 それらを2辺とする平行四辺形の対角線のベクトルを作図します(平行四辺形の法則)。

(4) $${\vec{b}}$$ の終点から $${2\vec{a}}$$ の終点までを矢印で結びます(ベクトルの差)。

$${\blacksquare}$$

 分かりにくいときは、下図のように $${\vec{2a}=\overrightarrow{\text{OA}}}$$、$${\vec{b}=\overrightarrow{\text{OB}}}$$ とおけば、ベクトルの差の公式が使いやすくなります。

$$
\begin{align*}
&2\vec{a}-\vec{b}=\overrightarrow{\text{OA}}-\overrightarrow{\text{OB}}=\overrightarrow{\text{BA}}\\[-5pt]
&\hspace{39pt}\uparrow\hspace{21pt}|\\[-11pt]
&\hspace{44pt}\overline{\hspace{28pt}}\\[-6pt]
&\hspace{27pt}{\footnotesize 後ろから前へ矢印}
\end{align*}
$$

 ベクトルと実数の積について、次の3つの法則が成り立ちます。

ベクトルと実数の積の法則

 $${h,  k}$$ を実数とするとき
1.  $${h(k\vec{a})=hk\vec{a}}$$
2.  $${(h+k)\vec{a}=h\vec{a}+k\vec{a}}$$
3.  $${h(\vec{a}+\vec{b})=h\vec{a}+h\vec{b}}$$

***

1. より、係数の実数同士はかけてもよい。
2. より、ベクトルは実数の和(差)に分配してもよい。
3. より、実数はベクトルの和(差)に分配してもよい。

 この法則から、ベクトルについて次のような計算ができます。

$$
\begin{align*}
3(2\vec{a}+\vec{b})+2(-\vec{a}+4\vec{b})&=3\cdot2\vec{a}+3\vec{b}+2\cdot(-\vec{a})+2\cdot4\vec{b} {\small 法則  3.  より}\\
&=6\vec{a}+3\vec{b}-2\vec{a}+8\vec{b} {\small 法則  1.  より}\\
&=6\vec{a}-2\vec{a}+3\vec{b}+8\vec{b}\\
&=(6-2)\vec{a}+(3+8)\vec{b} {\small 法則  2.  より}\\
&=4\vec{a}+11\vec{b}
\end{align*}
$$

ベクトルの成分表示

同一視

 ここでは、ベクトルの新しい表示方法である成分表示を解説します。
 下図のように、$${\text{O}}$$ を原点とする座標平面上に点 $${\text{A}(2,  3)}$$ があるとします。

 また、この平面上に点 $${\text{E}(1,  0),  \text{F}(0,  1)}$$ を取り
 $${\vec{e_x}=\overrightarrow{\text{OE}}}$$
 $${\vec{e_y}=\overrightarrow{\text{OF}}}$$
というベクトルを考えます。これは、大きさが $${1}$$ で互いに直交するベクトルで、基本ベクトルとよびます。基本ベクトルを用いると、$${\overrightarrow{\text{OA}}}$$ は次のように表せます(平行四辺形の法則)。

$$
\begin{align*}
\overrightarrow{\text{OA}}=2\vec{e_x}+3\vec{e_y}
\end{align*}
$$

 一般に、ベクトル $${\vec{p}}$$ に対して、座標平面の原点を $${\text{O}}$$ として、$${\vec{p}=\overrightarrow{\text{OP}}}$$ となる点 $${\text{P}}$$ をとり、点 $${\text{P}}$$ の座標を $${\text{P}(x,  y)}$$ とすると、基本ベクトル $${\vec{e_x},  \vec{e_x}}$$ を用いて、$${\vec{p}}$$ は次のように表せます。

$$
\begin{align*}
\vec{p}=x\vec{e_x}+y\vec{e_y} \cdots(*1)
\end{align*}
$$

 このようにして決まる $${x,  y}$$ の組 $${(x,  y)}$$ を、$${(*1)}$$ の右辺と同一視して

$$
\begin{align*}
\vec{p}=(x,  y)
\end{align*}
$$

と表します。つまり

$$
\begin{align*}
x\vec{e_x}+y\vec{e_y}&=(x,  y) \cdots(*2)\\[-2pt]
&\hspace{1.5pt}\uparrow\\[-2pt]
&\hspace{-7pt}{\small 同一視}
\end{align*}
$$

 同一視とは、本来違うものを同じものとみなすことです。同一視という考え方は、数学の世界ではよく現れます。
 この $${(x,  y)}$$ をベクトルの成分といい、$${x}$$ を $${\bm{x}}$$ 成分、$${y}$$ を $${\bm{y}}$$ 成分といいます。このようなベクトルの表現を成分表示といいます。

 例えば、最初にやった点 $${\text{A}(2,  3)}$$ のときのベクトル $${\overrightarrow{\text{OA}}}$$ は

$$
\begin{align*}
\overrightarrow{\text{OA}}=2\vec{e_x}+3\vec{e_y}
\end{align*}
$$

と表せたので、その成分表示は

$$
\begin{align*}
\overrightarrow{\text{OA}}=(2,  3)
\end{align*}
$$

となり、$${x}$$ 成分は $${2}$$、$${y}$$ 成分は $${3}$$ です。

 特に、零ベクトル $${\vec{0}}$$ の成分表示は

$$
\begin{align*}
\vec{0}=0\vec{e_x}+0\vec{e_y}=(0,  0)
\end{align*}
$$

となります。
 このように、任意のベクトル $${\vec{a}}$$ を、原点を始点とするベクトル $${\overrightarrow{\text{OA}}}$$ で表すと、 $${\vec{a}}$$ の成分 $${(x,  y)}$$ は、終点 $${\text{A}}$$ の座標 $${(x,  y)}$$ と一致します。

注意
 点 $${\text{A}(x,  y)}$$ としたときの $${(x,  y)}$$ は点 $${\text{A}}$$ の座標であり、$${\overrightarrow{\text{OA}}=(x,  y)}$$ としたときの $${(x,  y)}$$ はベクトルの成分です。座標もベクトルの成分も、どちらも $${(x,  y)}$$ と表記されるので、混同しないように注意しましょう。
 なお、大学の教科書ではベクトルの方を

$$
\begin{align*}
\overrightarrow{\text{OA}}=\begin{pmatrix} x \\ y \end{pmatrix}
\end{align*}
$$

と縦書きで表記されることが多くなりますが、高校の教科書では横書きで表すことが通例です。

例題5
 下図のベクトル $${\vec{a},  \vec{b},  \vec{c},  \vec{d}}$$ を成分で表しなさい。

指針
 $${\vec{a}}$$ は終点 $${\text{A}}$$ の座標を読み取ります。
 $${\vec{b},  \vec{c},  \vec{d}}$$ は、始点が原点 $${\text{O}}$$ と重なるようにベクトルを平行移動し、そのときの終点の座標を読み取ります。

解答
$${\vec{a}}$$ について
 $${\vec{a}}$$ は終点の座標は $${(2,  2)}$$ なので
 $${\vec{a}=(2,  2)}$$

$${\vec{b}}$$ について
 $${\vec{b}}$$ の始点が原点 $${\text{O}}$$ と重なるように平行移動させると、$${\vec{b}}$$ の終点の座標は $${(1,  -3)}$$ なので
 $${\vec{b}=(1,  -3)}$$

 $${\vec{b}}$$ は、始点から終点まで「右に $${1}$$ だけ進む($${+1}$$)」、「下に $${3}$$ だけ進む($${-3}$$)」とみることができます(下図)。$${x}$$ 成分は左右の移動で、右をプラス、左をマイナスとします。$${y}$$ 成分は上下の移動で、上をプラス、下をマイナスとします。
 そのようにとらえることによって、平行移動という操作を経ないで成分を読み取ることができます。

 以下、始点から終点までの移動で考えてみましょう(下図)。
$${\vec{c}}$$ について
 「左に $${3}$$ だけ進む($${-3}$$)」、「下に $${1}$$ だけ進む($${-1}$$)」とみることができるので
 $${\vec{c}=(-3,  -1)}$$

$${\vec{d}}$$ について
 「左に $${2}$$ だけ進む($${-2}$$)」、「上に $${3}$$ だけ進む($${+3}$$)」とみることができるので
 $${\vec{d}=(-2,  3)}$$

$${\blacksquare}$$

ベクトルの大きさ

 下図のようにベクトル $${\vec{a}=(2,  3)}$$ を考えます。このとき、このベクトルの大きさ $${|\vec{a}|}$$ はどのように計算できるでしょうか?

 点 $${\text{A}}$$ から $${x}$$ 軸に垂線を下ろし、その交点を $${\text{H}}$$ とすると、直角三角形 $${\text{OAH}}$$ について三平方の定理より(参考1)

$$
\begin{align*}
|\vec{a}|^2&=2^2+3^2=4+9=13
\end{align*}
$$

よって

$$
\begin{align*}
|\vec{a}|=\sqrt{13}
\end{align*}
$$

 一般に、下図のようにベクトル $${\vec{a}=(x,  y)}$$ があったとき、このベクトルの大きさは、直角三角形 $${\text{OAH}}$$ について三平方の定理より

$$
\begin{align*}
|\vec{a}|^2&=x^2+y^2
\end{align*}
$$

 よって、$${\vec{a}=(x,  y)}$$ のベクトルの大きさは

$$
\begin{align*}
|\vec{a}|=\sqrt{x^2+y^2}
\end{align*}
$$

と表すことができます。つまり

$$
\begin{align*}
|\vec{a}|=\sqrt{(x  成分)^2+(y  成分)^2}
\end{align*}
$$

と、$${x}$$ 成分の2乗と $${y}$$ 成分の2乗の和の平方根が、そのベクトルの大きさとなります。
 これは $${x,  y}$$ が負の値でも適用できます(2乗すると正になるので)。これをベクトルの大きさと定義します。

例 下図において、ベクトル $${\vec{a}}$$ の大きさは

$$
\begin{align*}
|\vec{a}|=\sqrt{(-3)^2+(-2)^2}=\sqrt{9+4}=\sqrt{13}
\end{align*}
$$

例題6
 下図のベクトル $${\vec{a},  \vec{b},  \vec{c},  \vec{d}}$$ の大きさを求めなさい。

指針
 ベクトル $${(x,  y)}$$ の大きさは $${\sqrt{x^2+y^2}}$$

解答
 $${\vec{a}=(2,  2)}$$ より、その大きさは
 $${|\vec{a}|=\sqrt{2^2+2^2}=\sqrt{8}=\sqrt{2^2\times2}=2\sqrt{2}}$$

 $${\vec{b}=(1,  -3)}$$ より、その大きさは
 $${|\vec{b}|=\sqrt{1^2+(-3)^2}=\sqrt{10}}$$

 $${\vec{c}=(-3,  -1)}$$ より、その大きさは
 $${|\vec{c}|=\sqrt{(-3)^2+(-1)^2}=\sqrt{10}}$$

 $${\vec{d}=(-2,  3)}$$ より、その大きさは
 $${|\vec{d}|=\sqrt{(-2)^2+3^2}=\sqrt{13}}$$

$${\blacksquare}$$

2点間の距離の公式

 一般に、始点が $${\text{A}(a_1,  a_2)}$$、終点が $${\text{B}(b_1,  b_2)}$$ であるベクトル $${\overrightarrow{\text{AB}}}$$ の大きさは(下図)

$$
\begin{align*}
\overrightarrow{\text{AB}}&=\overrightarrow{\text{OB}}-\overrightarrow{\text{OA}}\\
&=(b_1,  b_2)-(a_1,  a_2)\\
&=(b_1-a_1,  b_2-a_2)\\[-2pt]
&\hspace{18pt}{\small x  成分}\hspace{14pt}{\small y  成分}
\end{align*}
$$

より

$$
\begin{align*}
|\overrightarrow{\text{AB}}|&=\sqrt{(b_1-a_1)^2+(b_2-a_2)^2}\\[-3pt]
&\hspace{30pt}{\small x  成分}\hspace{28pt}{\small y  成分}
\end{align*}
$$

***

 $${x}$$ 成分の2乗と $${y}$$ 成分の2乗の和の平方根が、そのベクトルの大きさなので、上記のようになります。これは、2点間の距離の公式として高校で習います。
 始点が原点 $${\text{O}(0,  0)}$$、終点が $${\text{A}(x,  y)}$$ の場合は、$${\overrightarrow{\text{OA}}}$$ の大きさは

$$
\begin{align*}
|\overrightarrow{\text{OA}}|=\sqrt{(x-0)^2+(y-0)^2}=\sqrt{x^2+y^2}
\end{align*}
$$

となり、これは2点間の距離の公式の特別な場合です。

ベクトルの成分による計算について

 例えば、$${\vec{a}=(2,  3),  \vec{b}=(1,  -5)}$$ のとき
 $${\vec{a}+\vec{b}}$$

 $${2\vec{a}}$$
をどのように計算すればよいでしょうか。これには、$${(*2)}$$ でやったベクトルの同一視を用います。

$$
\begin{align*}
x\vec{e_x}+y\vec{e_y}&=(x,  y) \cdots(*2)\\[-2pt]
&\hspace{1.5pt}\uparrow\\[-2pt]
&\hspace{-7pt}{\small 同一視}
\end{align*}
$$

 これより、$${\vec{a}=(2,  3)}$$ は $${2\vec{e_x}+3\vec{e_y}}$$ と同一視できるので

$$
\begin{align*}
\vec{a}=(2,  3)=2\vec{e_x}+3\vec{e_y}
\end{align*}
$$

 $${\vec{b}=(1,  -5)}$$ は $${\vec{e_x}-5\vec{e_y}}$$ と同一視できるので

$$
\begin{align*}
\vec{b}=(1,  -5)&=\vec{e_x}-5\vec{e_y}
\end{align*}
$$

 よって

$$
\begin{align*}
\vec{a}+\vec{b}&=2\vec{e_x}+3\vec{e_y}+\vec{e_x}-5\vec{e_y}\\
&=2\vec{e_x}+1\vec{e_x}+3\vec{e_y}-5\vec{e_y}\\
&=(2+1)\vec{e_x}+(3-5)\vec{e_y}\\
&=3\vec{e_x}-2\vec{e_y}
\end{align*}
$$

 これは $${(3,  -2)}$$ と同一視できるので

$$
\begin{align*}
\vec{a}+\vec{b}=(3,  -2)
\end{align*}
$$

となります。
 ただし、わざわざ同一視 $${(*2)}$$ に戻らないで、次のように成分同士で計算すれば簡単です。

$$
\begin{align*}
\vec{a}+\vec{b}&=(2,  3)+(1,  -5)\\
&=(2+1,  3-5)\\
&=(3,  -2)
\end{align*}
$$

 つまり、$${x}$$ 成分は $${x}$$ 成分同士で、$${y}$$ 成分は $${y}$$ 成分同士で計算します。
 例えば、$${\vec{a}-\vec{b}}$$ は

$$
\begin{align*}
\vec{a}-\vec{b}&=(2,  3)-(1,  -5)\\
&=(2-1,  3-(-5))\\
&=(1,  8)
\end{align*}
$$

 $${2\vec{a}}$$ については、$${\vec{a}=(2,  3)}$$ は $${2\vec{e_x}+3\vec{e_y}}$$ と同一視できるので

$$
\begin{align*}
2\vec{a}&=2(2\vec{e_x}+3\vec{e_y})\\
&=4\vec{e_x}+6\vec{e_y}\\
&=(4,  6)
\end{align*}
$$

 これも、わざわざ同一視 $${(*2)}$$ に戻らないで

$$
\begin{align*}
2\vec{a}&=2(2,  3)=(4,  6)
\end{align*}
$$

と各々の成分を $${2}$$ 倍すれば簡単です。

 一般に、ベクトル成分計算について次が成り立ちます。

ベクトルの成分計算

 $${\vec{a}=(a_1,  a_2),  \vec{b}=(b_1,  b_2)}$$、$${k}$$ は任意の実数のとき

$$
\begin{align*}
\vec{a}+\vec{b}&=(a_1,  a_2)+(b_1,  b_2)=(a_1+b_1,  a_2+b_2)\\
\vec{a}-\vec{b}&=(a_1,  a_2)-(b_2,  b_2)=(a_1-b_1,  a_2-b_2)\\
k\vec{a}&=k(a_1,  a_2)=(ka_1,  ka_2)
\end{align*}
$$

***

 ベクトルのたし算、ひき算、実数倍は、成分ごとに($${x}$$ 成分ごとに、$${y}$$ 成分ごとに)計算します。
 また、次のことも成り立ちます。

$$
\begin{align*}
(a_1,  a_2)=(b_1,  b_2)\longleftrightarrow a_1=b_1,  a_2=b_2
\end{align*}
$$

***

 2つのベクトルが等しいときは、そのそれぞれの成分が等しくなります。証明は同一視 $${(*2)}$$ に戻って証明されます(教科書参照)。

例題7
 $${\vec{a}=(1,  -2),  \vec{b}=(-1,  3)}$$ であるとき、次のベクトルの成分を求めなさい。また、その大きさを求めなさい。
(1) $${\vec{a}+\vec{b}}$$
(2) $${\vec{a}-\vec{b}}$$
(3) $${3\vec{a}}$$
(4) $${-2\vec{b}}$$
(5) $${2\vec{a}-3\vec{b}}$$

解答

$$
\begin{alignat*}{2}
&(1) & &\vec{a}+\vec{b}=(1,  -2)+(-1,  3)=(1-1,  -2+3)=(0,  1)\\
& & &|\vec{a}+\vec{b}|=\sqrt{0^2+1^2}=\sqrt{1}=1\\[5pt]
&(2) & &\vec{a}-\vec{b}=(1,  -2)-(-1,  3)=(1-(-1),  -2-3)=(2,  -5)\\
& & &|\vec{a}-\vec{b}|=\sqrt{2^2+(-5)^2}=\sqrt{4+25}=\sqrt{29}\\[5pt]
&(3) & &3\vec{a}=3(1,  -2)=(3,  -6)\\
& & &|3\vec{a}|=\sqrt{3^2+(-6)^2}=\sqrt{9+36}=\sqrt{45}=\sqrt{3^2\times5}=3\sqrt{5}\\[5pt]
&(4) & &-2\vec{b}=-2(-1,  3)=(2,  -6)\\
& & &|-2\vec{b}|=\sqrt{2^2+(-6)^2}=\sqrt{4+36}=\sqrt{40}=\sqrt{2^2\times10}=2\sqrt{10}\\[5pt]
&(5) & &2\vec{a}-3\vec{b}=2(1,  -2)-3(-1,  3)=(2,  -4)-(-3,  9)\\
& & &\hspace{32pt}=(2-(-3),  -4-9)=(5,  -13)\\
& & &|2\vec{a}-3\vec{b}|=\sqrt{5^2+(-13)^2}=\sqrt{25+169}=\sqrt{194}
\end{alignat*}
$$

$${\blacksquare}$$

ベクトルの内積

 $${\vec{0}}$$ でない2つのベクトルを $${\vec{a},  \vec{b}}$$ とする。
 1点 $${\text{O}}$$ を定め、$${\vec{a}=\overrightarrow{\text{OA}}}$$、$${\vec{b}=\overrightarrow{\text{OB}}}$$ と表したとき、$${\vec{a}}$$ と $${\vec{b}}$$ で作られる $${\theta}$$ のうち、$${0\degree\leqq\theta\leqq180\degree}$$ であるものを、2つのベクトル $${\vec{a},  \vec{b}}$$ のなす角といいます(下図)。

 $${\theta=0\degree}$$ または $${\theta=180\degree}$$ のとき、$${\vec{a}}$$ と $${\vec{b}}$$ は平行であるといい、$${\vec{a}  /\!/  \vec{b}}$$ と表します。
 特に、$${\theta=0\degree}$$ のときは、$${\vec{a}}$$ と $${\vec{b}}$$ は同じ向きに平行です。

 $${\theta=180\degree}$$ のときは、$${\vec{a}}$$ と $${\vec{b}}$$ は逆向きに平行です。

 $${\theta=90\degree}$$ のときは、$${\vec{a}}$$ と $${\vec{b}}$$ は垂直である(直交する)といい、$${\vec{a}\perp\vec{b}}$$ と表します。

  2つのベクトルの関係は、なす角 $${\theta}$$ によります。この2つのベクトルの関係を表す指標として、内積というものを考えます。

内積とは

 一般に、$${\vec{a},  \vec{b}}$$ のなす角が $${\theta}$$ であるとき、$${|\vec{a}||\vec{b}|\cos\theta}$$ を $${\vec{a},  \vec{b}}$$ の内積といい、記号 $${\vec{a}\cdot\vec{b}}$$ で表します。すなわち

$$
\begin{align*}
\vec{a}\cdot\vec{b}=|\vec{a}||\vec{b}|\cos\theta
\end{align*}
$$

 $${\vec{a}}$$ と $${\vec{b}}$$ の間にドット ”$${\cdot}$$” をつけて内積を表します。

なぜ内積に cosθ を使うのか?

 内積の定義

$$
\begin{align*}
\vec{a}\cdot\vec{b}=|\vec{a}||\vec{b}|\cos\theta
\end{align*}
$$

をみると $${\cos\theta}$$ が現れますが、(例えば $${\sin\theta}$$ ではなく)なぜ $${\cos\theta}$$ を用いるのか、素朴な観点でその理由を解説します。
 $${y=\cos\theta}$$ のグラフは次のようになりなります(中学でも分かる⑧「三角関数」)。

$${y=\cos\theta}$$ のグラフ

 特に、なす角として指定される $${0\degree\leqq\theta\leqq180\degree}$$ に限ると、次の実線部分です。

 この実線部分から分かるように、$${0\degree\leqq\theta\leqq180\degree}$$ の範囲では、$${\theta}$$ と $${\cos\theta}$$ の値は一対一に対応します。つまり、$${\theta}$$ が $${0\degree}$$ から $${180\degree}$$ まで増加すると、それに対応して $${\cos\theta}$$ の値は $${1}$$ から $${-1}$$ まで、一対一の値を取りながら減少していきます。「一対一」とは、何かと何かが(ここでは $${\theta}$$ と $${\cos\theta}$$ が)1つずつだけ対応しているということです。
 しかも、2つのベクトルのなす角について
 同じ方向に平行だと $${\cos0\degree=1}$$
 鋭角 $${0\degree<\theta<90\degree}$$ だと $${\cos\theta}$$ はプラス
 直角だと $${\cos90\degree=0}$$
 鈍角 $${90\degree<\theta<180\degree}$$ だと $${\cos\theta}$$ はマイナス
 逆の方向に平行だと $${\cos180\degree=-1}$$
と、2つのベクトルの位置情報が一対一で反映されます。2つのベクトルの幾何学的状況が、$${\cos\theta}$$ の値、つまり内積の値に自然に反映されるのです。
 これが $${\cos\theta}$$ を用いる理由の一つです。
 例えば、内積を $${\sin\theta}$$ を用いて

$$
\begin{align*}
\vec{a}\cdot\vec{b}=|\vec{a}||\vec{b}|\sin\theta
\end{align*}
$$

と定義するとどうなるでしょうか?
 $${y=\sin\theta}$$ のグラフの、$${0\degree\leqq\theta\leqq180\degree}$$ の部分は次の実線部分になります。

$${y=\sin\theta}$$ のグラフ

 これだと、$${\sin\theta=\dfrac{1}{2}}$$ となる $${\theta}$$ の値は $${30\degree}$$ と $${150\degree}$$ の2つが発生します。逆に、$${\theta=30\degree}$$ と $${\theta=150\degree}$$ のときの $${\sin\theta}$$ の値はともに $${\dfrac{1}{2}}$$ になり、$${\sin\theta}$$ と $${\theta}$$ が一対一に対応していません。つまり、鋭角も鈍角も、ともに同じ $${\sin\theta}$$ の正の値として反映されてしまいます。
 ある内積の値に対して、鋭角と鈍角の2つの $${\theta}$$ が存在してしまう、逆に鋭角と鈍角の異なる $${\theta}$$ に対して、同じ値の内積が存在するなど、2つのベクトルの位置関係が自然に反映されず、都合が悪くなるでしょう。
 これが、($${\sin\theta}$$ ではなく)$${\cos\theta}$$ を採用する素朴な理由となります。もっとも、そう定義すると ”都合がよい” という数学的な理由はありますが、それは勉強を進めていけば分かるようになります。
 例えば、これから解説するように、内積の成分表示や、ベクトルの垂直条件、平行条件など、内積を

$$
\begin{align*}
\vec{a}\cdot\vec{b}=|\vec{a}||\vec{b}|\cos\theta
\end{align*}
$$

と定義することによって、美しい理論が展開されていきます。

内積の計算

 前置きが長くなりましたが、ここから、ベクトルの内積を勉強していきます。
 まずは、$${\cos\theta}$$(および $${\sin\theta}$$)の対応表は次のようになります(中学でもわかる➆「三角比」)。

$$
\def\arraystretch{1.5}
\begin{array}{c|c|c|c|c|c|c|c|c|c}
\theta & 0\degree & 30\degree & 45\degree & 60\degree & 90\degree
& 120\degree & 135\degree & 150\degree & 180\degree\\ \hline
\sin\theta & 0 & \frac{1}{2} & \frac{\sqrt{2}}{2} & \frac{\sqrt{3}}{2} & 1
& \frac{\sqrt{3}}{2} & \frac{\sqrt{2}}{2} & \frac{1}{2} & 0\\ \hline
\cos\theta & 1 & \frac{\sqrt{3}}{2} & \frac{\sqrt{2}}{2} & \frac{1}{2} & 0
& -\frac{1}{2} & -\frac{\sqrt{2}}{2} & -\frac{\sqrt{3}}{2} & -1
\end{array}
$$

 この表より、例えば
 $${\cos30\degree=\dfrac{\sqrt{3}}{2}}$$、$${\cos90\degree=0}$$、$${\cos120\degree=-\dfrac{1}{2}}$$
となります(次の例題で使います)
 

例題8
 下図の直角三角形 $${\text{ABC}}$$ において

 $${\vec{a}=\overrightarrow{\text{OA}}}$$、$${\vec{b}=\overrightarrow{\text{OB}}}$$、$${\vec{c}=\overrightarrow{\text{BA}}}$$
 $${|\vec{a}|=\sqrt{3}}$$、$${|\vec{b}|=2}$$、$${|\vec{c}|=1}$$
とするとき、次の内積を求めなさい。
(1) $${\vec{a}\cdot\vec{b}}$$
(2) $${\vec{a}\cdot\vec{c}}$$
(3) $${\vec{b}\cdot\vec{c}}$$

解答
(1) $${\vec{a}}$$ と $${\vec{b}}$$ のなす角は $${30\degree}$$、$${|\vec{a}|=\sqrt{3}}$$、$${|\vec{b}|=2}$$ なので

$$
\begin{align*}
\vec{a}\cdot\vec{b}&=|\vec{a}||\vec{b}|\cos30\degree\\
&=\sqrt{3}\times\cancel{2}\times\dfrac{\sqrt{3}}{\cancel{2}}\\
&=3
\end{align*}
$$

(2) $${\vec{c}}$$ を平行移動して、始点を $${\text{O}}$$ にそろえます。

 すると、$${\vec{a}}$$ と $${\vec{c}}$$ のなす角は $${90\degree}$$、$${|\vec{a}|=\sqrt{3}}$$、$${|\vec{c}|=1}$$ なので

$$
\begin{align*}
\vec{a}\cdot\vec{b}&=|\vec{a}||\vec{c}|\cos90\degree\\
&=\sqrt{3}\times1\times0\\
&=0
\end{align*}
$$

(3) 下図

より、$${\vec{b}}$$ と $${\vec{c}}$$ のなす角は $${30\degree+90\degree=120\degree}$$、$${|\vec{b}|=2}$$、$${|\vec{c}|=1}$$ なので

$$
\begin{align*}
\vec{b}\cdot\vec{c}&=|\vec{b}||\vec{c}|\cos120\degree\\
&=\cancel{2}\times1\times\left(-\dfrac{1}{\cancel{2}}\right)\\
&=-1
\end{align*}
$$

$${\blacksquare}$$

内積の成分表示

 ここでは、内積を成分で表すことを解説します。
 三角比でならった余弦定理を使うので、先に紹介をしておきます(中学でも分かる⑧「三角関数」)。証明は教科書参照。

余弦定理(復習)

 $${\triangle\text{ABC}}$$ について

$$
\begin{align*}
a^2&=b^2+c^2-2bc\cos A\\
b^2&=c^2+a^2-2ca\cos B\\
c^2&=a^2+b^2-2ab\cos C
\end{align*}
$$

***

 $${\vec{0}}$$ でない2つのベクトル $${\vec{a}=(a_1,  a_2),  \vec{b}=(b_1,  b_2)}$$ のなす角を $${\theta}$$ とします。$${\vec{a}=\overrightarrow{\text{OA}},  \vec{b}=\overrightarrow{\text{OB}}}$$ と表すと、$${\theta=∠\text{AOB}}$$ となります。

 このとき、$${\triangle\text{OAB}}$$ について余弦定理より

$$
\begin{align*}
|\overrightarrow{\text{AB}}|^2=|\overrightarrow{\text{OA}}|^2+|\overrightarrow{\text{OB}}|^2-2|\overrightarrow{\text{OA}}||\overrightarrow{\text{OB}}|\cos\theta
\end{align*}
$$

 $${\overrightarrow{\text{OA}}=\vec{a}}$$
 $${\overrightarrow{\text{OB}}=\vec{b}}$$
 $${\overrightarrow{\text{AB}}=\overrightarrow{\text{OB}}-\overrightarrow{\text{OA}}=\vec{b}-\vec{a}}$$(ベクトルの差)

より

$$
\begin{align*}
|\vec{b}-\vec{a}|^2=|\vec{a}|^2+|\vec{b}|^2-2\underline{|\vec{a}||\vec{b}|\cos\theta}
\end{align*}
$$

 すると、$${\vec{a}}$$ と $${\vec{b}}$$ の内積

$$
\begin{align*}
\vec{a}\cdot\vec{b}=|\vec{a}||\vec{b}|\cos\theta
\end{align*}
$$

より、下部分がちょうど内積になるので、そこを $${\vec{a}\cdot\vec{b}}$$ で置き換えて

$$
\begin{align*}
|\vec{b}-\vec{a}|^2=|\vec{a}|^2+|\vec{b}|^2-2\vec{a}\cdot\vec{b}
\end{align*}
$$

よって

$$
\begin{align*}
2\vec{a}\cdot\vec{b}=|\vec{a}|^2+|\vec{b}|^2-|\vec{b}-\vec{a}|^2
\end{align*}
$$

 ここで $${\vec{a}=(x,  y)}$$ とすると、ベクトルの大きさの2乗は

$$
\begin{align*}
|\vec{a}|^2=x^2+y^2
\end{align*}
$$

より
 $${|\vec{a}|^2={a_1}^2+{a_2}^2}$$
 $${|\vec{b}|^2={b_1}^2+{b_2}^2}$$
さらに、$${\vec{b}-\vec{a}=(b_1,  b_2)-(a_1,  a_2)=(b_1-a_1,  b_2-a_2)}$$ より
 $${|\vec{b}-\vec{a}|^2={(b_1-a_1)}^2+{(b_2-a_2)}^2}$$
なので

$$
\begin{align*}
2\vec{a}\cdot\vec{b}&=|\vec{a}|^2+|\vec{b}|^2-|\vec{b}-\vec{a}|^2\\
&={a_1}^2+{a_2}^2+{b_1}^2+{b_2}^2-\{\underline{{(b_1-a_1)}^2}+\underline{{(b_2-a_2)^2}\}}\\
&={a_1}^2+{a_2}^2+{b_1}^2+{b_2}^2-({b_1}^2-2b_1a_1+{a_1}^2+{b_2}^2-2b_2a_2+{a_2}^2)\\
&=\cancel{{a_1}^2}+\cancel{{a_2}^2}+\cancel{{b_1}^2}+\cancel{{b_2}^2}-\cancel{{b_1}^2}+2a_1b_1-\cancel{{a_1}^2}-\cancel{{b_2}^2}+2a_2b_2-\cancel{{a_2}^2}\\
&=2a_1b_1+2a_2b_2
\end{align*}
$$

 両辺を $${2}$$ で割って

$$
\begin{align*}
\vec{a}\cdot\vec{b}=a_1b_1+a_2b_2
\end{align*}
$$

 これが、内積の成分表示です。途中(下線部)で中学3年で習う展開公式
 $${(a-b)^2=a^2-2ab+b^2}$$
を使っています。改めてまとめておきます。

<内積の成分表示>
 $${\vec{a}=(a_1,  a_2),  \vec{b}=(b_1,  b_2)}$$ のとき、その2つのベクトルの内積は

$$
\begin{align*}
\vec{a}\cdot\vec{b}=a_1b_1+a_2b_2
\end{align*}
$$

 また、次のように表されることもあります。

$$
\begin{align*}
(a_1,  a_2)\cdot(b_1,  b_2)=a_1b_1+a_2b_2
\end{align*}
$$

***

 矢印を使わないで、成分だけで表したのが後者です。
 表面上に、角度 $${\theta}$$ が現れていないことに注意してください。成分表示をすることで、角度 $${\theta}$$ の情報は表には現れなくなっています。

 では、すでにやった例題5を編集して、新たに例題9として出題しましょう。

例題9(例題5の編集)
 下図のベクトルについて、次の内積を求めなさい。
(1) $${\vec{a}\cdot\vec{b}}$$
(2) $${\vec{b}\cdot\vec{c}}$$
(3) $${\vec{c}\cdot\vec{d}}$$
(4) $${\vec{d}\cdot\vec{a}}$$

解答
 それぞれのベクトルを成分表示すると(例題5で求めた)
 $${\vec{a}=(2,  2)}$$
 $${\vec{b}=(1,  -3)}$$
 $${\vec{c}=(-3,  -1)}$$
 $${\vec{d}=(-2,  3)}$$
 よって
(1) $${\vec{a}\cdot\vec{b}=2\cdot1+2\cdot(-3)=2-6=-4}$$
(2) $${\vec{b}\cdot\vec{c}=1\cdot(-3)+(-3)\cdot(-1)=-3+3=0}$$
(3) $${\vec{c}\cdot\vec{d}=(-3)\cdot(-2)+(-1)\cdot3=6-3=3}$$
(4) $${\vec{d}\cdot\vec{a}=(-2)\cdot2+3\cdot2=-4+6=2}$$

$${\blacksquare}$$

 さらに例題8を編集して、新たに例題10として出題します。

例題10(例題8の編集)
 下図のように、座標平面上に直角三角形 $${\text{ABC}}$$ をとる。

 $${\vec{a}=\overrightarrow{\text{OA}}}$$、$${\vec{b}=\overrightarrow{\text{OB}}}$$、$${\vec{c}=\overrightarrow{\text{BA}}}$$
とするとき、内積の成分表示

$$
\begin{align*}
\vec{a}\cdot\vec{b}=a_1b_1+a_2b_2
\end{align*}
$$

を用いて、次の内積を求めなさい。
(1) $${\vec{a}\cdot\vec{b}}$$
(2) $${\vec{a}\cdot\vec{c}}$$
(3) $${\vec{b}\cdot\vec{c}}$$

解答
 
$${\text{A}(\sqrt{3},  0)}$$、$${\text{B}(\sqrt{3},  1)}$$ より、それぞれのベクトルを成分表示すると
 $${\vec{a}=(\sqrt{3},  0)}$$
 $${\vec{b}=(\sqrt{3},  1)}$$
 $${\vec{c}=\overrightarrow{\text{BA}}=\overrightarrow{\text{OA}}-\overrightarrow{\text{OB}}=\vec{a}-\vec{b}}$$
 $${\hspace{7pt}=(\sqrt{3},  0)-(\sqrt{3},  1)}$$
 $${\hspace{7pt}=(\sqrt{3}-\sqrt{3},  0-1)}$$
 $${\hspace{7pt}=(0,  -1)}$$
よって
(1) $${\vec{a}\cdot\vec{b}=\sqrt{3}\cdot\sqrt{3}+0\cdot1=3}$$
(2) $${\vec{a}\cdot\vec{c}=\sqrt{3}\cdot0+0\cdot(-1)=0}$$
(3) $${\vec{b}\cdot\vec{c}=\sqrt{3}\cdot0+1\cdot(-1)=-1}$$

$${\blacksquare}$$

 これは、例題8の結果と同じです。

内積によるベクトルの大きさ

 内積 $${\vec{a}\cdot\vec{b}}$$ において、$${\vec{a}=\vec{b}}$$ とすると $${\theta=0\degree}$$ となるので

$$
\begin{align*}
\vec{a}\cdot\vec{a}=|\vec{a}||\vec{a}|\cos0\degree=|\vec{a}|^2
\end{align*}
$$

より

$$
\begin{align*}
|\vec{a}|^2=\vec{a}\cdot\vec{a} \cdots(*3)
\end{align*}
$$

 $${|\vec{a}|\geqq0}$$ であるから

$$
\begin{align*}
|\vec{a}|=\sqrt{\vec{a}\cdot\vec{a}}
\end{align*}
$$

***

 これより、ベクトルの大きさは、自分自身との内積の平方根で表せます。実践的には $${(*3)}$$ 式を使う場合が多いです。$${(*3)}$$ 式は
 「ベクトルの大きさの2乗は、自分自身との内積」
という公式です。

内積の性質1

 内積には次の性質があります。$${k}$$ は実数とします。

  1. $${\vec{a}\cdot\vec{b}=\vec{b}\cdot\vec{a}}$$

  2. $${(k\vec{a})\cdot\vec{b}=\vec{a}\cdot(k\vec{b})=k(\vec{a}\cdot\vec{b})}$$

  3. $${(\vec{a}+\vec{b})\cdot\vec{c}=\vec{a}\cdot\vec{c}+\vec{b}\cdot\vec{c}}$$

  4. $${\vec{a}\cdot(\vec{b}+\vec{c})=\vec{a}\cdot\vec{b}+\vec{a}\cdot\vec{c}}$$

***

  1. より、内積は交換法則が成り立ちます。

  2. より、実数倍($${k}$$ 倍)は内積の外に出すことができます。

  3. 4. より、左右からの分配法則が成り立ちます。

 3. について証明を与えましょう。他も同様に証明可能です。

(3. の証明)
 $${\vec{a}=(a_1,  a_2),  \vec{b}=(b_1,  b_2),  \vec{c}=(c_1,  c_2)}$$ とおくと
 $${\vec{a}+\vec{b}=(a_1,  a_2)+(b_1,  b_2)=(a_1+b_1,  a_2+b_2)}$$
より

$$
\begin{align*}
(左辺)&=(\vec{a}+\vec{b})\cdot\vec{c}\\
&=(a_1+b_1,  a_2+b_2)\cdot(c_1,  c_2) {\small 成分表示}\\
&=(a_1+b_1)c_1+(a_2+b_2)c_2 {\small 内積の定義}\\
&=a_1c_1+b_1c_1+a_2c_2+b_2c_2\\
&=\underline{a_1c_1+a_2c_2}+\underline{\underline{b_1c_1+b_2c_2}}
\end{align*}
$$

 すると、一重線部は $${\vec{a}=(a_1,  a_2)}$$ と $${\vec{c}=(c_1,  c_2)}$$ の内積、二重線部は $${\vec{b}=(b_1,  b_2)}$$ と $${\vec{c}=(c_1,  c_2)}$$ の内積なので

$$
\begin{align*}
(左辺)&=\underline{a_1c_1+a_2c_2}+\underline{\underline{b_1c_1+b_2c_2}}\\
&=(a_1,  a_2)\cdot(c_1,  c_2)+(b_1,  b_2)\cdot(c_1,  c_2)\\
&=\vec{a}\cdot\vec{c}+\vec{b}\cdot\vec{c}\\
&=(右辺)
\end{align*}
$$

より証明されます。成分の計算に持ち込むのがポイントです。他も同様に証明されます(教科書参照)。

 この性質を用いて、次のように計算が可能です。

$$
\begin{align*}
|\vec{a}+\vec{b}|^2&=(\vec{a}+\vec{b})\cdot(\vec{a}+\vec{b}) {\small (*3)  より}\\
&=\vec{a}\cdot(\vec{a}+\vec{b})+\vec{b}\cdot(\vec{a}+\vec{b}) {\small 性質  3.  より}\\
&=\vec{a}\cdot\vec{a}+\vec{a}\cdot\vec{b}+\vec{b}\cdot\vec{a}+\vec{b}\cdot\vec{b} {\small 性質  4.  より}\\
&=|\vec{a}|^2+\vec{a}\cdot\vec{b}+\vec{a}\cdot\vec{b}+|\vec{b}|^2 {\small 性質  1.  と  (*3)  より}\\
&=|\vec{a}|^2+2\vec{a}\cdot\vec{b}+|\vec{b}|^2
\end{align*}
$$

より

$$
\begin{align*}
|\vec{a}+\vec{b}|^2=|\vec{a}|^2+2\vec{a}\cdot\vec{b}+|\vec{b}|^2
\end{align*}
$$

これは公式として利用できます。中学3年で習う展開公式

$$
\begin{align*}
(a+b)^2=a^2+2ab+b^2
\end{align*}
$$

と対比して覚えればよいでしょう。

例題11
 次を計算しなさい。
(1) $${|\vec{a}-\vec{b}|^2}$$
(2) $${|2\vec{a}+3\vec{b}|^2}$$
(3) $${(\vec{a}+\vec{b})\cdot(\vec{a}-\vec{b})}$$
(4) $${(2\vec{a}+3\vec{b})\cdot(\vec{a}-2\vec{b})}$$

解答
(1) 例でやったように
 $${|\vec{a}-\vec{b}|^2=(\vec{a}-\vec{b})\cdot(\vec{a}-\vec{b})}$$
として、そのまま内積を展開をしてもよいですが、先ほど証明した

$$
\begin{align*}
|\vec{a}+\vec{b}|^2=|\vec{a}|^2+2\vec{a}\cdot\vec{b}+|\vec{b}|^2
\end{align*}
$$

を用いましょう。この式について、$${\vec{b}}$$ を $${-\vec{b}}$$ で置き換えて

$$
\begin{align*}
|\vec{a}+(-\vec{b})|^2=|\vec{a}|^2+2\vec{a}\cdot(-\vec{b})+|-\vec{b}|^2
\end{align*}
$$

 $${\vec{a}\cdot(-\vec{b})=-\vec{a}\cdot\vec{b}}$$(性質 2. より実数倍($${-1}$$ 倍)は内積の外に出せる)
 $${|-\vec{b}|=|\vec{b}|}$$(逆ベクトルも大きさは同じ)
より

$$
\begin{align*}
|\vec{a}-\vec{b}|^2=|\vec{a}|^2-2\vec{a}\cdot\vec{b}+|\vec{b}|^2
\end{align*}
$$

 これも公式として覚えておきましょう。中学3年で習う展開公式

$$
\begin{align*}
(a-b)^2=a^2-2ab+b^2
\end{align*}
$$

と対比して覚えればよいでしょう。

(2) 例で証明した

$$
\begin{align*}
|\vec{a}+\vec{b}|^2=|\vec{a}|^2+2\vec{a}\cdot\vec{b}+|\vec{b}|^2
\end{align*}
$$

を用いると

$$
\begin{align*}
|2\vec{a}+3\vec{b}|^2&=|2\vec{a}|^2+2\cdot2\vec{a}\cdot3\vec{b}+|3\vec{b}|^2\\
&=2^2|\vec{a}|^2+2\cdot2\cdot3\vec{a}\cdot\vec{b}+3^2|\vec{b}|^2\\
&=4|\vec{a}|^2+12\vec{a}\cdot\vec{b}+9|\vec{b}|^2\\
\end{align*}
$$

(3)

$$
\begin{align*}
(\vec{a}+\vec{b})\cdot(\vec{a}-\vec{b})
&=\vec{a}\cdot(\vec{a}-\vec{b})+\vec{b}\cdot(\vec{a}-\vec{b})\\
&=\vec{a}\cdot\vec{a}-\vec{a}\cdot\vec{b}+\vec{b}\cdot\vec{a}-\vec{b}\cdot\vec{b}\\
&=|\vec{a}|^2-\cancel{\vec{a}\cdot\vec{b}}+\cancel{\vec{a}\cdot\vec{b}}-|\vec{b}|^2\\
&=|\vec{a}|^2-|\vec{b}|^2
\end{align*}
$$

より

$$
\begin{align*}
(\vec{a}+\vec{b})\cdot(\vec{a}-\vec{b})=|\vec{a}|^2-|\vec{b}|^2
\end{align*}
$$

 これも公式として覚えておくと便利です。中学3年で習う展開公式

$$
\begin{align*}
(a+b)(a-b)=a^2-b^2
\end{align*}
$$

と対比して覚えればよいでしょう。

(4) これについては地道に展開していきます。

$$
\begin{align*}
(2\vec{a}+3\vec{b})\cdot(\vec{a}-2\vec{b})&=2\vec{a}\cdot(\vec{a}-2\vec{b})+3\vec{b}\cdot(\vec{a}-2\vec{b})\\
&=2\vec{a}\cdot\vec{a}+2\vec{a}\cdot(-2\vec{b})+3\vec{b}\cdot\vec{a}+3\vec{b}\cdot(-2\vec{b})\\
&=2\vec{a}\cdot\vec{a}-4\vec{a}\cdot\vec{b}+3\vec{a}\cdot\vec{b}-6\vec{b}\cdot\vec{b}\\
&=2|\vec{a}|^2-\vec{a}\cdot\vec{b}-6|\vec{b}|^2
\end{align*}
$$

$${\blacksquare}$$

 まとめとして、次の性質は公式として覚えておくと便利です。非常によく出てくる計算です。

内積の性質2

$$
\begin{align*}
|\vec{a}+\vec{b}|^2=|\vec{a}|^2+2\vec{a}\cdot\vec{b}+|\vec{b}|^2\\
|\vec{a}-\vec{b}|^2=|\vec{a}|^2-2\vec{a}\cdot\vec{b}+|\vec{b}|^2\\
(\vec{a}+\vec{b})\cdot(\vec{a}-\vec{b})=|\vec{a}|^2-|\vec{b}|^2
\end{align*}
$$

***

 繰り返しになりますが、中学3年で習う展開公式

$$
\begin{align*}
(a+b)^2=a^2+2ab+b^2\\
(a-b)^2=a^2-2ab+b^2\\
(a+b)(a-b)=a^2-b^2
\end{align*}
$$

と対比して覚えればよいでしょう。2乗は絶対値の2乗になり、かけ算のところは内積になります。$${{\vec{a}}^2}$$(絶対値をつけない)や、$${\vec{a}\vec{b}}$$(内積記号 ”$${\cdot}$$” をつけない)としないように。定義されていないベクトルの計算です。

ベクトルの平行条件

 $${\vec{0}}$$ でないベクトル $${\vec{a}=(a_1,  a_2),  \vec{b}=(b_1,  b_2)}$$ のなす角を $${\theta}$$ とすると、$${\vec{a}  /\!/  \vec{b}}$$ となるのは、$${\theta=0\degree}$$ または $${\theta=180\degree}$$ のときなので、
 $${\cos0\degree=1,  \cos180\degree=-1}$$
であることに着目すると

$$
\begin{align*}
\vec{a}\cdot\vec{b}&=|\vec{a}||\vec{b}|\cos0\degree=|\vec{a}||\vec{b}|\\
\vec{a}\cdot\vec{b}&=|\vec{a}||\vec{b}|\cos180\degree=-|\vec{a}||\vec{b}|
\end{align*}
$$

より

$$
\begin{align*}
\vec{a}\perp\vec{b}  \longleftrightarrow 
\vec{a}\cdot\vec{b}=|\vec{a}||\vec{b}|   または   \vec{a}\cdot\vec{b}=-|\vec{a}||\vec{b}|
\end{align*}
$$

 ともに両辺を2乗すると

$$
\begin{align*}
{(\vec{a}\cdot\vec{b})}^2={(|\vec{a}||\vec{b}|)}^2
\end{align*}
$$

より

$$
\begin{align*}
(\vec{a}\cdot\vec{b})^2=|\vec{a}|^2|\vec{b}|^2
\end{align*}
$$

 ここで
 $${\vec{a}\cdot\vec{b}=a_1b_1+a_2b_2}$$
 $${|\vec{a}|^2={a_1}^2+{a_2}^2}$$
 $${|\vec{b}|^2={b_1}^2+{b_2}^2}$$
より

$$
\begin{align*}
(a_1b_1+a_2b_2)^2=({a_1}^2+{a_2}^2)({b_1}^2+{b_2}^2)
\end{align*}
$$

 両辺を展開していくと

$$
\begin{align*}
(a_1b_1)^2+2a_1a_2b_1b_2+(a_2b_2)^2&={a_1}^2{b_1}^2+{a_1}^2{b_2}^2+{a_2}^2{b_1}^2+{a_2}^2{b_2}^2\\
\cancel{{a_1}^2{b_1}^2}+2a_1a_2b_1b_2+\bcancel{{a_2}^2{b_2}^2}&=\cancel{{a_1}^2{b_1}^2}+{a_1}^2{b_2}^2+{a_2}^2{b_1}^2+\bcancel{{a_2}^2{b_2}^2}\\
2a_1a_2b_1b_2&={a_1}^2{b_2}^2+{a_2}^2{b_1}^2
\end{align*}
$$

より

$$
\begin{align*}
{a_1}^2{b_2}^2-2a_1a_2b_1b_2+{a_2}^2{b_1}^2&=0\\
{(a_1b_2)}^2-2(a_1b_2)(a_2b_1)+{(a_2b_1)}^2&=0
\end{align*}
$$

 因数分解して

$$
\begin{align*}
(a_1b_2-a_2b_1)^2=0
\end{align*}
$$

 よって

$$
\begin{align*}
a_1b_2-a_2b_1=0
\end{align*}
$$

 途中で中学3年で習う因数分解公式
 $${a^2-2ab+b^2=(a-b)^2}$$
を使っています。つまり、$${a_1b_2=a,  a_2b_1=b}$$ とした場合です。
 以上より、次の関係が得られます。

<ベクトルの平行条件>

$$
\begin{align*}
\vec{a}\perp\vec{b}  \longleftrightarrow  a_1b_2-a_2b_1=0
\end{align*}
$$

 下図のように、「たすきがけ」してひき算です。

***

ベクトルの垂直条件

 また、$${\vec{a}\perp\vec{b}}$$ となるのは $${\theta=90\degree}$$ のときなので、$${\cos90\degree=0}$$ であることに着目すると

$$
\begin{align*}
\vec{a}\cdot\vec{b}=|\vec{a}||\vec{b}|\cos90\degree=0
\end{align*}
$$

より

$$
\begin{align*}
\vec{a}\perp\vec{b}  \longleftrightarrow  \vec{a}\cdot\vec{b}=0
\end{align*}
$$

 さらに、内積の成分表示より
 $${\vec{a}\cdot\vec{b}=a_1b_1+a_2b_2}$$
なので、次の関係が得られます。

<ベクトルの垂直条件>

$$
\begin{align*}
\vec{a}\perp\vec{b}  \longleftrightarrow  \vec{a}\cdot\vec{b}=a_1b_1+a_2b_2=0
\end{align*}
$$

 下図のように、成分ごとに掛けてたし算です。

***

 これで、2つのベクトルの平行条件と垂直条件が得られました。この2つの条件は、対比して覚えておくのがよいでしょう。

<ベクトルの平行条件>

$$
\begin{align*}
\vec{a}\perp\vec{b}  \longleftrightarrow  a_1b_2-a_2b_1=0
\end{align*}
$$

<ベクトルの垂直条件>

$$
\begin{align*}
\vec{a}\perp\vec{b}  \longleftrightarrow  \vec{a}\cdot\vec{b}=a_1b_1+a_2b_2=0
\end{align*}
$$

例題12
 
2つのベクトル $${\vec{a}=(1,  2),  \vec{b}=(2,  p)}$$ について、次の条件をみたす $${p}$$ の値を求めなさい。
(1) $${\vec{a}}$$ と $${\vec{b}}$$ が平行になる
(2) $${\vec{a}}$$ と $${\vec{b}}$$ が垂直になる

解答
(1) 平行になるときは、平行条件より

$$
\begin{align*}
1\cdot p-2\cdot2&=0\\
p-4&=0\\
p&=4
\end{align*}
$$

$${\blacksquare}$$

 図で確認しましょう。$${p=2}$$ のとき、$${\vec{a}=(1,  2),  \vec{b}=(2,  4)}$$ となるので、図示すると次のようになります。

 確かに、$${\vec{a}}$$ と $${\vec{b}}$$ は平行になります。

(2) 垂直になるときは、垂直条件より

$$
\begin{align*}
1\cdot3+3\cdot p&=0\\
3+3p&=0\\
3p&=-3\\
p&=-1
\end{align*}
$$

$${\blacksquare}$$

 これも図で確認しましょう。$${p=-1}$$ のとき、$${\vec{a}=(1,  2),  \vec{b}=(2,  -1)}$$ となるので、図示すると次のようになります。

 確かに、$${\vec{a}}$$ と $${\vec{b}}$$ は垂直になります。

空間ベクトル

 これまでやったベクトルは、平面上(2次元)のベクトルで平面ベクトルといいます。空間内(3次元)においても、平面ベクトルと同じようにベクトルを考えることができ、これを空間ベクトルといいます。
 例えば、下図のような直方体 $${\text{ABCD-EFGH}}$$ を考えます。

 ここで、次にように空間ベクトルをおきます。
 $${\overrightarrow{\text{AB}}=\vec{a}}$$
 $${\overrightarrow{\text{AD}}=\vec{b}}$$
 $${\overrightarrow{\text{AE}}=\vec{c}}$$
 3次元空間で考えているので、これらは空間ベクトルです。

 このとき、空間ベクトル $${\overrightarrow{\text{AG}}}$$ と $${\overrightarrow{\text{GD}}}$$ を、$${\vec{a},  \vec{b},  \vec{c}}$$ で表すことを考えよう。

<$${\overrightarrow{\text{AG}}}$$ について>
 平行四辺形の法則より
 $${\overrightarrow{\text{AC}}=\vec{a}+\vec{b}}$$
 ベクトルの相等(大きさと向きが等しければ同じベクトル)より
 $${\overrightarrow{\text{CG}}=\vec{c}}$$
 よって、しりとりの法則より

$$
\begin{align*}
\overrightarrow{\text{AG}}&=\overrightarrow{\text{AC}}+\overrightarrow{\text{CG}}\\
&=\vec{a}+\vec{b}+\vec{c}
\end{align*}
$$

$${\blacksquare}$$

<$${\overrightarrow{\text{GD}}}$$ について>
 逆ベクトルより
 $${\overrightarrow{\text{GC}}=-\overrightarrow{\text{CG}}=-\vec{c}}$$
 $${\overrightarrow{\text{CD}}=-\overrightarrow{\text{DC}}=-\vec{a}}$$
 しりとりの法則より

$$
\begin{align*}
\overrightarrow{\text{GD}}&=\overrightarrow{\text{GC}}+\overrightarrow{\text{CD}}\\
&=-\vec{c}+(-\vec{a})\\
&=-\vec{c}-\vec{a}\\
&=-\vec{a}-\vec{c}
\end{align*}
$$

$${\blacksquare}$$

別解
 別解として、ベクトルの差を用いる方法もあります。
 先ほど求めた
 $${\overrightarrow{\text{AG}}=\vec{a}+\vec{b}+\vec{c}}$$
より

$$
\begin{align*}
\overrightarrow{\text{GD}}&=\overrightarrow{\text{AD}}-\overrightarrow{\text{AG}}\\
&=\vec{b}-(\vec{a}+\vec{b}+\vec{c})\\
&=\cancel{\vec{b}}-\vec{a}-\cancel{\vec{b}}-\vec{c}\\
&=-\vec{a}-\vec{c}
\end{align*}
$$

$${\blacksquare}$$

 以上のように、ベクトルの考え方を駆使していろいろな解法が存在します。そのときに自分の気付いた解法で解けばよいでしょう。

例題13
 下図のように、六面体の向かい合った3組の面がそれぞれ平行であるとき、この六面体を平行六面体といいます。
 この平行六面体 $${\text{ABCD-EFGH}}$$ において
 $${\overrightarrow{\text{AB}}=\vec{a}}$$
 $${\overrightarrow{\text{AD}}=\vec{b}}$$
 $${\overrightarrow{\text{AE}}=\vec{c}}$$
とするとき、次のベクトルを $${\vec{a},  \vec{b},  \vec{c}}$$ で表しなさい。

(1) $${\overrightarrow{\text{AC}}}$$
(2) $${\overrightarrow{\text{AG}}}$$
(3) $${\overrightarrow{\text{CE}}}$$
(4) $${\overrightarrow{\text{HB}}}$$

解答
(1) 平行四辺形の法則より

$$
\begin{align*}
\overrightarrow{\text{AC}}&=\overrightarrow{\text{AB}}+\overrightarrow{\text{AD}}\\
&=\vec{a}+\vec{b}
\end{align*}
$$

(2) (1) より
 $${\overrightarrow{\text{AC}}=\vec{a}+\vec{b}}$$
なので、しりとりの法則より

$$
\begin{align*}
\overrightarrow{\text{AG}}&=\overrightarrow{\text{AC}}+\overrightarrow{\text{CG}}\\
&=\vec{a}+\vec{b}+\vec{c}
\end{align*}
$$

(3) (1) より
 $${\overrightarrow{\text{AC}}=\vec{a}+\vec{b}}$$
なので、ベクトルの差より

$$
\begin{align*}
\overrightarrow{\text{CE}}&=\overrightarrow{\text{AE}}-\overrightarrow{\text{AC}}\\
&=\vec{c}-(\vec{a}+\vec{b})\\
&=\vec{c}-\vec{a}-\vec{b}\\
&=-\vec{a}-\vec{b}+\vec{c}
\end{align*}
$$

(4) 逆ベクトルより
 $${\overrightarrow{\text{HD}}=-\overrightarrow{\text{DH}}=-\vec{c}}$$
 $${\overrightarrow{\text{DA}}=-\overrightarrow{\text{AD}}=-\vec{b}}$$
 しりとりの法則より

$$
\begin{align*}
\overrightarrow{\text{HB}}&=\overrightarrow{\text{HD}}+\overrightarrow{\text{DA}}+\overrightarrow{\text{AB}}\\
&=-\vec{c}-\vec{b}+\vec{a}\\
&=\vec{a}-\vec{b}-\vec{c}
\end{align*}
$$

$${\blacksquare}$$

 この後は、空間ベクトルの内積や成分表示へと議論は進んでいきますが、本記事はここまでとなります。考え方は平面ベクトルと同じなので、興味があれば、各自勉強を進めていきましょう。導入さえしっかりと理解できれば、その後は自分で勉強できると思います。

ベクトルの歴史(簡単に)

 ベクトルの概念は、古代から少しずつ発展してきましたが、現代的な意味でのベクトルは、19世紀の数学者たちによって体系化されました。
 中でもアイルランドの数学者・物理学者、ウィリアム・ローワン・ハミルトン(William Rowan Hamilton)は、ベクトルを「大きさ」と「向き」を持つ量だと決めてスカラーと区別し、自身の研究にベクトルを応用させました。

William Rowan Hamilton(1805年-1865年)

 その後、ベクトルは微積分と結びついてベクトル解析や微分幾何として発展し、また2つ以上の数の組として表される抽象的な多次元の量として、線形代数として発展していきました。

(参考1)三平方の定理

 下図のように、直角三角形の直角をはさむ2辺の長さを $${a ,   b}$$、斜辺の長さを $${c}$$ とする。

 このとき、次の関係式が成り立つ。

$$
\begin{align*}
a^2+b^2=c^2
\end{align*}
$$

***

 この定理を、三平方の定理(さんへいほうのていり)といいます。この定理は古バビロニアの時代(紀元前2千年頃)から知られていますが、古代ギリシャの数学者ピタゴラスにちなんで、ピタゴラスの定理ともよばれます。
 なお、ピタゴラスはこの定理の発見者ではなく、真の発見者は分かっていません。

例題
 次の直角三角形について、$${x}$$ を求めなさい。

解説
(1) 三平方の定理より

$$
\begin{align*}
x^2&=1^2+1^2\\
&=1+1\\
&=2
\end{align*}
$$

よって

$$
\begin{align*}
x=\sqrt{2} \cdots{\small (答)}
\end{align*}
$$

(2) 三平方の定理より

$$
\begin{align*}
&x^2+1^2=2^2\\
&x^2+1=4\\
&x^2=4-1=3
\end{align*}
$$

よって

$$
\begin{align*}
x=\sqrt{3} \cdots{\small (答)}
\end{align*}
$$

(3) 三平方の定理より

$$
\begin{align*}
&x^2+3^2=5^2\\
&x^2+9=25\\
&x^2=25-9=16
\end{align*}
$$

よって

$$
\begin{align*}
x=\sqrt{16}=\sqrt{4^2}=4 \cdots{\small (答)}
\end{align*}
$$

 この結果は、下図のように決まった比として覚えておけばよいでしょう。

 特に、三角比において、(1) と (2) は重要なのでまとめておきます。角度もきれいな値で決まるのでセットで覚えましょう。

特別な直角三角形の3辺の比

 3つの角が $${45\degree,  45\degree,  90\degree}$$ である直角二等辺三角形と、$${30\degree,  60\degree,  90\degree}$$ である直角三角形の3辺の長さの比は次のようになる。

 左は正方形を対角線で分けた下半分の直角二等辺三角形で、辺の比は
  $${1:1:\sqrt{2}}$$
 右は正三角形を真ん中で分けた左半分の直角三角形で、辺の比は
  $${1:2:\sqrt{3}}$$
である。

***

 これはいわゆる三角定規の形で、この直角三角形に現れる角度 $${30\degree,  45\degree,  60\degree,  90\degree}$$ を有名角といいます。


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