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なぜコンサルの仕事はわかりづらいのか、あるべき姿を「編集者」として考える

昔の同僚や友人から、
「コンサルって何してるの?」と聞かれることがよくあります。

もしかすると、これは
・コンサルを使ったことがあるクライアント側も、
・コンサルとして働いている本人ですら、
うまく説明できない方が多いんじゃないでしょうか。

こうした問いに、僕なりの解釈として、
コンサルは「編集者」のメタファーで説明できるのではと考えています。

今回、そう考える理由を書いてみようと思います。



あるプロジェクトで起きたこと

以前、ある企業で「どの顧客を重点ターゲットにするか」の整理を、支援したことがあります。

ワークショップでは、事業部のメンバーからいろいろな情報が出てきました。

「このエリアは市場が大きい」
「ここは現場業務に深く入り込めている」
「ここは売上はあるが、競争が激しい」

現場感のある情報が出てきて、活発な議論がなされました。

ただ、議論が終わっても、曖昧な問いがひとつ残りました。

それは、「結局、このセグメント分けで何を言いたいのか」です。

つまり、顧客を分ける案はあって、それぞれのセグメントの特徴もなんとなくわかる。
でも、「なぜその分け方をするのか」が、まだスパッと説明されていませんでした。

ワークショップのあと、事業部長の方と話していたとき、その理由が見えてきました。

その方は、各地域や顧客群について、自分なりの見立てをかなり具体的に持っていました。
しかし、「その見立ての中で、戦略上どの切り口が重要か」を掴み切れていなかったのです。

そこで僕からは、
「要するに、こういう切り口で各セグメントを揃えると、中長期を見据えた意思決定ができそうですね」
と見方を再整理して、セグメント案をご提示しました。

すると、事業部長の方から、
「そう、それが言いたかった」というお返事をいただきました。


このとき、僕は新しい情報を探してきたわけではありません。

実際に起きていたことは、
・その方がすでに持っている認識を引き出して、
・戦略的に「意味がある」と感じた材料を並び替えて統合した
のだと思います。

それによって、
単なる「顧客の分類案」が、「この事業部はどこを重点市場と見て、どう攻めようとしているのか」という戦略に変わりました。

要するに、バラバラの断片を、一本の流れに編み直した、と言えるかもしれません。

何かすごい答えを外から持ち込むというより、
相手の中にすでにある考えを整理して、意味あるかたちに再編集する。
だからこそ、クライアントが自分事として、動き出したくなる。

コンサルタントの価値は、ここにあると思っています。

もちろん、必要なときは「リサーチ」や「分析」もするのですが、本質は「編集」にある気がしています。

だから、会議に出ているときも、
僕の頭の中では「何が正しいか」だけでなく、
「この人たちは、いま何を同じように見ていて、何が違って見えるのか」をずっと考えています。

事実のズレよりも、
個々人の中の意味づけのズレの方が、議論を止めることが多いからです。
そのズレをほどき、別の見え方を差し出すことが、コンサルの重要な役割なのだと思います。

こういう思考のプロセスは、外から見えづらく、だからコンサルタントの仕事は、分かりにくいのだと思います。


「編集」という仕事

コンサルが編集者だとすると、当然ですが作家ではありません。
つまり、ゼロから戦略を生み出す人ではない。

作家(=クライアント)の中にあるものを、引き出し、構造を整理して、意味を与え直し、人に届くかたちに整えるという感覚です。

ここで言う「編集」は、単なる整理ではありません。
情報を見やすく並べるだけなら、AIの方が上手く早くやってくれます。
でも実際の仕事では、整理だけでは足りないと思っています。

ただし、編集の前に「引き出す」ことも重要です。


現場のリーダーや事業責任者は、日々たくさんの現実に触れています。

何が伸びそうか、どこに違和感があるか、誰がボトルネックか、どこに勝ち筋があるか、などなど。
そうした感覚は、たいていすでにあります。

ただ、それは断片的で、
しかも当事者の目には、どの情報が重要なわからないこともあり、
だから、あえて言葉にされていない場合も多くあります。

だからまずコンサルがやるべきなのは、
オープンな質問をあれやこれやと色々出して、
その人の中にあるものを、きちんと出してもらうことだと思うのです。


そうして色々な情報を出してもらったとします。

そこから戦略をつくるには、ただ構造的に整理するだけではなく、
「それは、要するにどういう意味なのか」を捉え直す必要があります。

ここに、編集者としての腕の見せどころがあります。
同じ事実を見ていても、どんな意味を与えるかで、戦略はまったく別物になるからです。

たとえば、「市場が大きい」「顧客に入り込めている」「競争が激しい」といった情報が並んでいても、当然それだけでは何も意思決定はできません。

そこで、

「この切り口で再整理することで、攻めるべき市場が違って見えるのではないか」
「これは顧客の違いを見ているようで、実は自社がどう勝ちたいかの話ではないか」

といった解釈を与えることで、バラバラだった情報が、戦略的な意味を持ち得ます。

つまり、ここで言う「編集」とは、
見えているものを並び替えるだけでなく、
見えているものに別の見え方を与えることだと思います。

このジャンプがあるかどうかで、
コンサルの仕事は、単なる情報整理にもなるし、人が動きたくなる戦略ストーリーづくりにもなる。


「編集者」の2つの顔

ここまでをまとめると、「編集」の仕事には二つの側面があります。

ひとつは、情報を引き出して、構造を整理すること。
もうひとつは、さらに「これはこういう意味があるのではないか」という解釈を差し込むことです。

前者は構造化で、後者は創造です。

そして実感としては、
後者のほうが、むしろコンサルタントらしい仕事かもしれません。

日々、厳しい競争に晒されているクライアントは、視点を変えて物事の意味を捉え直すことが難しいこともある。

そこに、いわば暇なコンサルが、別の切り口、少し高い視点、長期の時間軸から眺めることで、新しい意味を見い出せるかもしれない。

だから、コンサルタントはゼロから正解を生み出すことはできない。
でも、解釈のジャンプを促すことはできる、と思っています。


「作家性」を奪わないこと

ただし、ひとつ難しさがあります。

それは、編集者が書きすぎてはいけない、ということです。

編集者が書きすぎた戦略は、だいたい「わかるけど動かない」ものになります。
それが本人たちの言葉になっていないからです。

外から見て、それっぽい戦略を言うことはできます。
でも、その言葉がクライアント自身の実感や意思とつながっていなければ、結局は「絵に描いた餅」。

当然ですが、借り物の言葉では、人は本気で動きません。
だから、編集者として大事なのは、自分が書きすぎないことだと思います。

あくまで、相手の中にあるものを引き出し、
相手が「それが言いたかった」と思えるかたちに整え、
最終的には、相手自身の言葉として立ち上がるところまで支える。

この距離感は、コンサルの仕事のかなり本質的な部分で、エゴとの闘いでもあると思っています。

自分の「正しさ」を見せるより、相手の中にある言葉を立ち上げる方が、ずっと難しい。
僕自身、毎日悩み葛藤しているポイントです。


「いわゆる編集者」との違い

ここまで「編集者」という言葉を使ってきましたが、
もちろん出版業界における編集者とまったく同じではありません。

共通しているのは、

  • 自分がゼロから書くのではなく、

  • 相手の中にあるものを引き出し、

  • 市場で勝てるかたちに整える

という点です

一方、最も大きく違うのは、意思決定と実行の主体です。

出版編集では、タイトルや発行部数などの大きな意思決定は、基本的に出版社側が権利を持ちます。

しかし、コンサルタントは、意思決定の主体にはなれません。
そして当然、戦略を実行するのもクライアントです。

だからこそ、
コンサルがコンテンツを作り込むことよりも、
クライアントの納得感が深まることがより重要になる。

繰り返しになりますが、この違いは大きいと思います。


なぜコンサルタントが、そういう編集を担えるのでしょうか。

ひとつには、現場から少し距離があるからだと思います。

当事者は、どうしても日々の業務や既存の文脈の中で物事を見ます。
それ自体は強みでもあるのですが、その分、前提を疑いにくくなったり、論点の優先順位が見えにくくなったりもします。

外部にいるコンサルタントは、その現場感を学びながらも、少し引いた位置から全体を見ることができる。
だから、どの断片が重要で、どこに意味を通すとストーリーが成立するか、考えやすいんだと思います。

ただし、現場の実態を雑に扱うと、単なる空論になります。
だから、現場の肌感覚をしっかり咀嚼したうえで、具体と抽象を行き来し続けることが必要です。

その往復運動の中で、本当の「編集」が起きるのだと思います。


コンサルに向いている人

では、どんな人がコンサルタントに向いているのでしょう。

編集者というメタファーを踏まえると、
「自分が前に出て答えを出したい人」よりも、
「相手の中にあるものを掴み、意味づけすることが面白い人」が向いていると思います。

コンサルの仕事では、自分が一番目立つ必要はありません。
むしろ、自分が話したことよりも、クライアント自身の言葉として、何かが立ち上がる方が大切です。

そこにやりがいを感じられるかどうかは、大きいと思います。

また、物事を俯瞰で見れることも重要です。

誰かの議論を聴いたとき、
「要するに、何を言っているのか」
「何と何がつながっているのか」
「なにが噛み合っていないのか」
などを考えたくなる人です。

具体的な発言をなぞるより、そこにある前提や関係を見たくなる人。
バラバラのものを整理して、一本の筋にしたくなる人。
そういう癖は、この仕事でかなり役に立つと思います。


一方で、正しさをそのままぶつけたくなる人は、少し苦労するかもしれません。

どれだけ「正しい」戦略を作っても、相手の中で意味が立ち上がらなければ、その人は動かないからです。
必要なのは、100点の戦略より、10点の行動だからです。

そもそも100点の戦略などつくれない、と思っています。
行動する中で学び、最初は10点だった戦略を20点、30点とすこしずつ上げていくことが大切じゃないでしょうか。

こう考えると、最低限のロジカルさは必要だけど、

相手の話を聞いて、
まだ言葉になっていない認識を感じ取り、
どこまで言えば届くかを見極める。

こういうセンスのようなものに、より価値があるかもしれません。


クライアントに向いてる人

逆に、クライアント側として、コンサルを使うと良いのはどういう人でしょう。

それはたとえば、
「なんとなく課題や打ち手は見えているけど、組織が動く言葉になっていない感覚がある人」だと思います。

現場の解像度は高い。
課題感もある。
打ち手の候補も頭の中にはある。

けど、それが納得感のある戦略になっていない。
優先順位がつけられない。
組織に伝わる形になっていない。

そういうとき、コンサルはかなり役に立ちます。


逆に言えば、
「全部考えてほしい」「正解だけ持ってきてほしい」という期待とは、少し相性が悪いかもしれません。

もちろん、情報整理や分析の支援はできます。
ただ、本当に価値が出るのは、クライアントの中にすでにある問題意識や構想の芽を、一緒に立ち上げるときです。

だから、受け身で答えを待つのではなく、
仮説や違和感を持ち込むクライアントほど、コンサルを使い倒せると思います。

編集者がいちばん力を発揮するのは、
作者がまったくネームが浮かばないときではなく、
書きたい衝動はあるのに、まだ作品になっていないときだからです。


最後に

やっぱりコンサルタントの仕事は、少しわかりづらいです。

分析をする仕事でもあるし、専門的な知識を提供する仕事でもある。
でも、それだけでは物足りなくて、

人の中にある認識を引き出して、
バラバラの断片をつなぎ、
その人たちが動ける形に整えていく。

言い換えると、
「何かを代わりに考える人」というより、
「その人たちの中にある考えが、戦略として立ち上がるのを支える人」。

つまり、編集者。

そう考えると、コンサルとは何をしているのか、
僕の中では、しっくり説明できるような気がします。



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