サロン楽屋話079:ブルーカラービリオネアから学ぶ──AI時代でも成長を加速させるテニス上達法
便利な動作解析やデータ分析に頼るだけでは、テニスは上達しません。本当に大事なのは、集中し、挑戦し、体験すること。アメリカで注目される「ブルーカラービリオネア」は、自分の身体を使いこなせるプレーヤーが成果を手にする時代の象徴かもしれません。
▶新アメリカンドリーム「ブルーカラービリオネア」というヒント
アメリカで「ブルーカラービリオネア」が増えているそうです。
従来は低賃金だった肉体労働者が、事務や経理などのホワイトカラーよりも稼げる時代が来ているのだとか。
12月24日放送『羽鳥慎一のモーニングショー』によると、エレベーターやエスカレーターの技術者による年収中央値は、日本円で約1,660万円です。
▶配管工で年収3倍のケース
名門カリフォルニア州バークレー大学出身、チョン・マイさんの例。
ホワイトカラーの経理職から、ブルーカラーの配管工へ転職したところ、時給は前職の3倍に。
稼げるだけではありません。
就労時間は6時から14時半までで、5時から男に先駆けてプライベートも充実しています。
本人は「今は配管工の仕事が大好きで、すごく楽しい」と語るビリオネア。
▶ポルシェは誰のもの?――AI時代の逆転劇
背景にはAIの発達と人手不足があると伝えられました。
ある弁護士が現場作業員を出張で依頼したところ、自分の車よりも高価な「ポルシェ」に乗って現れ、驚いたそうです。
確かに弁護士の仕事は、法律について熟知し、事件や事故ごとに過去の判例と関連資料を調べるなど、細かく丹念な知的能力が求められます。
しかし、こうした大量の情報検索や判例の参照作業は、AIの最も得意とするところです(関連記事「向き不向きは、性能差──優劣ではない」)。
▶手を動かす仕事が、いちばん強い
一方、配管工の仕事は、AIには代替できません。
チョンさん曰く、「AIは人の代わりに考えてはくれるけれど、人の代わりに働いてくれるわけではない」とのこと。
ブルーカラービリオネアの台頭は、まさにこちらで述べた「3K職場だって、ロッククライミングでゴー」に、ますます拍車をかけそうですよ。
仕事が、暇つぶしの趣味になる。
「やらなきゃ」の義務ではなく「やりたい」意欲に変わる。
「遊び感覚」でやる時代の到来です。
▶テニスの上達も“have to”から“want to”へ
テニスの上達も同じ。
“have to”から“want to”への転換が、パフォーマンスを圧倒的に高めるのです(関連記事「“have to”か“want to”か? 『今の人生』の横に走っている『別の人生』がある(諦める力)」)。
眉をひそめる人もいるかもしれませんが、力を入れすぎない取り組み方のほうが、結果として上手くいく場面は、確かに存在するのですから。
焼き肉がっつり食べ放題よりも、腹八分目だと、調子がいい感じ。
▶シンギュラリティ時代の「人がプレーする価値」
とはいえ、AIへの過度な期待には注意が必要です。
番組コメンテーターの玉川徹氏は、このブルーカラービリオネア時代は「短いかも」と予測。
今度はフィジカルAI(ロボット型人工知能)の台頭で、肉体労働もやがて機械に置き換わる可能性があると占います。
――シンギュラリティ。
AIが人間の知能を超え、自己成長を繰り返すことで社会や人類のあり方が根本的に、そして、急速に変化する転換点。
それは、便利さの頂点であり、同時に「人が関わる意味」を問い返される地点でもある。
技術が進めば進むほど、逆説的に「人がプレーする価値」が、よりくっきり浮かび上がってきます。
▶「精密機械」の中身は人間
こちらでご紹介した、ロボットによるスポーツ大会が催されつつあります。
確かに斬新。
テニスプレーヤーがロボットに置き換わる、そんな時代がやがて(間もなく?)来るかもしれませんね。
当初は、ロボットのコミカルなプレーに新鮮味を楽しめるかもしれません。
あるいは空飛ぶプレーに、驚くかもしれません。
しかし、フェデラーがホークアイ導入で人間味の喪失を懸念し、ナダルがデータ至上主義に苦言を呈したように、機械化が進むあまり、人間がプレーするテニスの面白み、機微、感動が、失われかねません。
漫画でも、必殺技の度が過ぎると、鼻白むのに似ています。
「精密機械」と呼ばれてなお面白いのは、それがホントは生身の人間だからです。
https://www.youtube.com/watch?v=-kXjk8sQNV0
▶使い切らない進化論
AI社会もテニス界も、人が関われない進化は、進化ではあっても、成長ではありません。
上達とも、言いにくい。
限界(シンギュラリティ)まで追い込むのではなく、余地を残して、人のリソースをどう使うか?
その、バランス(参考記事:緊張と弛緩の「シーソーゲーム」)。
結果として、最も効果的な進化・成長につながります。
AIや新しい技術に過剰に入れ込めば、人の働く場や学びの機会は減っていくでしょう。
事実、ホワイトカラーが集うマッキンゼーでは数千人規模、Amazonでは1万4000人、マイクロソフトでは9000人の人員削減が求められているのだと番組は伝えます。
働くのはつらい。
働けなくなるのもつらい。
どちらに転ぶにせよ苦しいのだとしたら、進化とは、ずいぶん手の込んだ修行です。
▶「頑張りのシンギュラリティ」(やりすぎ努力の臨界点)
入れ込みすぎると、楽しさも、回復力も、学習効率も落ちてしまう。
これは個人の資質ではなく、構造的な問題です。
AI開発と同じように入れ込みすぎたテニスだと、人はかえって気力も体力も集中力も枯渇し、学びの質も下がってしまうのです。
これを「頑張りのシンギュラリティ」と呼ぶのは、些か大げさすぎるでしょうか?(関連記事「『シンクは辛苦』。集中すれば乗り切れる!」)
▶完全燃焼しない、というテニス上達法
一方で、限界まで追い込まない取り組みが、むしろ推奨されるのでしたね。
最高潮に達する手前で、あえて解散する「バカ族」の音楽文化にならう。
完全燃焼しないから熱が冷めないのは「科学」です。
出し切ると、終わる。
余力を残すと、続く。
だからこそ、余裕を持ち、遊び感覚で楽しめる取り組みのほうが、結果的にテニスの上達は早まる。
楽しみと集中はペアであり、学びの質と密度が向上するからです。
2時間が20分に感じられるような、楽しみながら上達する充実感が生まれるのです(関連記事「言葉を超えた学び──アルカラスからコボッリが学んだこと」)。
▶答えを出すAI/試行錯誤を楽しむ人間
テニスの上達も、構図は同じです。
便利なテクノロジー(動作解析やデータ分析)に、頼りすぎるべからず(関連記事「『正解動作』より先に、あなたの感覚がある」)。
「丸投げしないで自分で思考しろ!」「ドンドン頭悪くなるぞ」
自分の身体で集中・挑戦・体験する試行錯誤こそ、楽しい。
便利さも、努力も、使い切らないからこそ、人は伸びます。
▶テニス版・ブルーカラービリオネア革命──コートで起こすマイレボリューション
打ち足りないくらいで終えた練習のほうが、翌日・翌年までの気づきは、意外と多いもの。
これは逆転現象のようでいて、実は人間の自然な成長プロセスです。
伸びしろを残した練習は、学びの「利子」を生み出します。
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スポーツ教育にはびこる「フォーム指導」のあり方を是正し、「イメージ」と「集中力」を以ってドラマチックな上達を図る情報提供。従来のウェブ版を改め、最新の研究成果を大幅に加筆した「note版アップデートエディション」です 。https://twitter.com/tenniszero
