英語表現の迂回路を持つという感覚
瞬間英作文に代表されるように、ネイティブがつかうこなれた表現をを何千、何万と暗記して、それをお手玉をする曲芸師のごとく使いまわすことを推奨するアプローチが世の中に流通しています。ネイティブがよく使う表現○選、のようなタイトルのコンテンツはたくさんありますし、「テンプレ表現を覚えてそれを使いたい」という大衆ニーズがあるのだろうな、という空気を僕はいつも察しています。
ただ、言わんとするところはわかるのですが、「それはしんどそう」と感じませんか。僕は以前から、瞬間英作文の類には懐疑的な立場をとっており、「たくさん表現を丸暗記してそれを曲芸のように使いまわす」というのは難しいし、できないと考えています。永遠に準備段階から抜け出せないという蟻地獄のような状態にもなるはずで、というのも、表に現れる語彙や表現というのは世の中無限にあるからです。
そこで今回は、ストックを一生懸命貯めるというアンチパターンではなく、「今現在持っている」ストックだけで迂回路を持つという発想を持つこと、「たくさん表現を覚えれば英会話できるようになる」という信念にしがみつかないほうがいいことを、僕なりに説明します。
持っているもので勝負する
僕がいいたいことは、「表現の幅が決定的要因になることはない」ということです。いかにたくさんの語彙をストックしているかがことを分かつわけではない、今持っているストックでなんとかするほうがいいし、それはできることである、ということです。
まず、これは前も言ったことなのですが、以下の方法を使うことで、少ない語彙でもなんとかしていくことができます:
相手に聞く
平易な言葉、汎用的な言葉で置き換える
句動詞や熟語を使う
「表現を思いつかないために何も言えずにフリーズする」という事態は誰にでも経験があるはずですが、それは、ストックが足りなかったからではない、というのが僕の言いたいことです。そうではなく、「言い換えなかったから」であり、自分のストックの範囲で言い換えてそれを言う、というチャレンジをしなかったからです。上記の3つの手法はそれをするための手段であり、誰でもできるはずです。
言い換えの場合は当然、しどろもどろになったり、焦ったり、何度も言い直したりすることは発生するでしょうが、それでも、「何も言わないで黙る」という結果よりはずっとましです。言い換えでなにか言うのはそれなりにしんどいのですが、「何か言う、言った」というプラスの結果は生み出せます。
蟻地獄に逃げない
もし、表現力をつけるために語彙やフレーズをもっともっと覚えないといけない、という焦燥感に駆り立てられいるのであれば、すこし待ってほしいと僕は思います。というのも、表現をじゅうぶんに覚えてから実践する、という直列のやり方だと、その、「覚えてから」というタイミングが永遠にやってこないからです。
いつも僕が言っている仮説思考の話とも関連しますが、「準備してからやる、決める」というやり方の場合、どうしでもスピード感が損なわれます。とりあえず方向性を定めてからすすめる仮説思考と同じで、「とりあえず今ある表現や語彙のストックだけでなんとかする」というアプローチはうまく機能します。
「迂回路」という言葉をつかって、地図や経路のようなものとのアナロジーを出しましたが、迂回の程度には上限ありません。極論ですが、隣町に行くために地球を一周してから隣町に行くルートを使ってもいいわけです。迂回すればするほど、冗長にすればするほど、今時分が持っているもので対応しやすくなる、といってもよいと思います。迂回されすればなんでも対応できる、と言い切ってもいいはずです。
さいごに
「シンプルイズベスト」ですから、正味の情報量を減らすことなく語数を絞ることができるのであればそれをするべきですし、迂回しなくていいならしないほうがいいです。今回示した迂回路の話は、「何かしらの都合でシンプルな形にできないとき」のためのバックアップ、代替になります。バックアップであるがゆえに冗長であったり、見た目があまり美しくないということも当然考えられますが、黙るよりはましです。
遠回りできる柔軟さを表現力のひとつとしてもいいはずです。さまざまな事物を異なる複数の切り口で表現できる、つまり、シンプルではないかもしれないが、自分にとってはもっとも心地よく美しい経路でものごとを英語表現する力は、プラスになります。
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▼この記事を書いた人▼
そっちゃそ
フリーランス英日翻訳者。本業で培った知識や経験をもとに、発音指導、語学指導もやっています。noteは、僕の思想や考えをひろく公開するために使用しています。僕の思想や考え方については、考察と思想哲学のマガジンにまとめているのでこちらをぜひご覧ください。詳しいプロフィールはこちらから。


主な著作:「自分の意見を言うことは『役に立つ』」、「外国語を学習すると決めたときに読む本」、「英語発音学習の第一歩」。既刊一覧はこちらから。
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さいごに
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