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専門家は、環境まで含めて人を観ているか― 気圧・湿度・季節の変化を、支援の前提にする ―

Your Best Solution代表、五木田穣ごきたゆたかです。

このnoteでは、心と体の健康に携わる
運動指導者や治療家などの
専門家・支援者に向けて、

健康、身体、支援、関係性、臨床思考、在り方などについて
多角的、包括的な視点で書いています。

※運動指導者や治療家などの専門職をまとめて、
 “支援者”と表現しています。
※また、我々専門職が行うサポートすべてを
 “支援”と表現しています。

最近、ととのえ職人の方で、
台風や湿度、季節感について
いくつか記事を書いてきました。

台風一過の朝、すぐに日常へ戻らなくていい。

同じ台風でも、沖縄と関東では体に残るものが少し違う。

小満芒種、すーまんぼーすーの湿った季節に、心と体を急がせない。

気温より、湿度に疲れる日がある。

こうした記事は、一般向けには、
日々の暮らしの中で自分の状態に気づくための話として書いています。

それらを、
専門家向けに見直すと、もう少し別の問いが立ち上がります。

それは、

私たちは、環境まで含めて人を観ているか

という問いです。

痛みがある。
体が重い。
やる気が出ない。
動きが悪い。
呼吸が浅い。
集中できない。
疲れが抜けない。

そういう訴えを聞いた時、
私たちはつい、その人の身体の中だけに原因を探そうとします。

筋肉。
関節。
姿勢。
動作。
神経。
生活習慣。
運動不足。
睡眠。
栄養。
メンタル。

もちろん、それら一つ一つは大切な要素です。

でも、それだけで本当に
人を観ていると言えるのでしょうか。

その人がいる環境。
その日の気圧。
湿度。
季節。
土地の空気。
移動の負荷。
仕事の状況。
家族との関係。
社会の流れ。

そうしたものを含めて、その人の状態は成り立っています。

人は、身体だけで生きているわけではありません。

環境の中で生きています。

今日は、
専門家として、気圧・湿度・季節の変化を、支援の前提にする
という話を書いてみたいと思います。



体は、環境を受け取っている

私たちの体は、いつも環境を受け取っています。

気温を受け取る。
湿度を受け取る。
気圧の変化を受け取る。
光の量を受け取る。
音を受け取る。
風を受け取る。
空気の重さを受け取る。
人の気配を受け取る。
場の緊張を受け取る。

それらは、必ずしも言葉になるとは限りません。

「今日はなんとなく重い」
「体がだるい」
「呼吸が浅い」
「頭がぼんやりする」
「いつもより動きにくい」
「気持ちが内側に向く」

そういう形で現れることがあります。

専門家は、こうした訴えを、
すぐに本人の意志や努力の問題にしてはいけないと思っています。

やる気がない。
集中力がない。
体力が落ちた。
自己管理ができていない。

そう判断する前に、環境要因を観る

今日はどんな天気だったのか。
湿度は高くなかったか。
気圧の変化はなかったか。
台風が近づいていなかったか。
梅雨の時期ではないか。
移動が多くなかったか。
仕事や家庭で予定が乱れていなかったか。
その人の体は、どんな環境を受け取っていたのか。

それらを観ずに、人の状態を判断すると、支援は浅くなってしまいます。


不調は、本人の内側だけで起きているわけではない

支援の現場では、どうしても「その人の中」に原因を探しがちです。

筋力が足りない。
柔軟性がない。
姿勢が悪い。
使い方が悪い。
考え方が偏っている。
生活習慣が乱れている。

もちろん、それらが関係していることはあります。

しかし、人の状態は、
本人の内側だけで完結しているわけではありません。

環境との関係の中で、いつも変化しています。

同じ体でも、季節によって状態は変わります。

同じ人でも、湿度が高い日と乾いた日では、感覚が変わります。

同じ動作でも、移動後と休息後では質が変わります。

同じ痛みでも、忙しい時期と落ち着いた時期では受け取り方が変わります。

同じ課題でも、家族関係や仕事の状況によって、取り組める量は変わります。

だから、
専門家は「その人の体」だけを見るのではなく、
「その人が今どんな環境の中にいるのか」まで観る必要があります。

体を観る。
心を観る。
思考を観る。
暮らしを観る。
環境を観る。
関係性を観る。

それらを切り離さずに見ることが、人を観るということです。


ICFの視点から見ても、環境は外せない

Your Best Solutionでは、
健康を考える上で、ICF(国際生活機能分類)の視点を大切にしています。

ICFでは、人の状態を、心身機能や身体構造だけでなく、
活動、参加、環境因子、個人因子との関係の中で捉えます。

つまり、
人の状態は、身体の中だけで決まるものではない、ということ。

その人が何をしているのか。
どんな生活をしているのか。
どんな社会参加をしているのか。
どんな環境にいるのか。
どんな支援や制限があるのか。

そうしたものが、その人の健康や生活機能に影響しています。

この視点に立てば、
気圧や湿度、季節の変化を「ただの天気」として
片づけることはできません。

それは、
その人の生活機能に影響する環境因子のひとつです。

たとえば、
梅雨の時期に体が重い人がいる。

台風前に頭痛やだるさを感じる人がいる。

湿度が高いと呼吸が浅くなりやすい人がいる。

暑さによって睡眠の質が落ちる人がいる。

季節の変わり目に、心の状態が揺れやすい人がいる。

これらを、本人の弱さとして見るのか。

環境との関係として観るのか。

ここで、支援の質が変わります。


「今日はどんな感じですか」の前に、「今日はどんな日ですか」

セッションや支援の場で、私たちはよくこう聞きます。

「今日はどんな感じですか」

もちろん、とても大切な問いです。

でも、もう一歩踏み込むなら、

「今日はどんな日ですか」

と観る視点も必要です。

今日は、湿度が高い日なのか。

雨が続いている日なのか。

気圧が変わっている日なのか。

台風が近づいている日なのか。

暑さが急に強くなった日なのか。

朝から移動が多かった日なのか。

仕事が詰まっていた日なのか。

家の中で何か予定が崩れた日なのか。

その日の体は、その日の環境とつながっています。

だから、クライアントの状態を聞く時には、
その人の内側だけでなく、
その人を取り巻く一日全体を感じ取る必要があります。

「今日は体が重いです」

と言われた時に、

「では、動きましょう」

と、すぐ始めるのか。

「今日は空気も重いですね。少し呼吸から見ましょうか」

と、始めるのか。

この違いは大きいです。

専門家の一言で、
相手は、自分の状態を責める方向にも、受け取る方向にも向かいます。


環境を観ない支援は、相手を急がせることがある

環境を観ないまま支援すると、
知らないうちに相手を急がせることがあります。

今日は体が重いのに、いつも通り動かそうとする。

湿度で呼吸が浅いのに、すぐ運動強度を上げる。

台風のあとで緊張が残っているのに、通常通りの課題を与える。

仕事や家庭の負荷が高い時期なのに、習慣化を求める。

気持ちが内側に向いているのに、前向きな行動を促す。

それは、
専門家として正しい提案をしているつもりでも、
相手の今の状態には合っていないかもしれません。

正しいことと、合っていることは違います。

運動が必要な人でも、
今日その強度が合っているとは限りません。

休養が必要な人でも、
ただ休めと言えば休めるわけではありません。

行動変容が必要な人でも、
今すぐ変われる状態とは限りません。

専門家は、正しい方法を持っているだけでは足りません。

相手の今の環境と状態に合わせて、
提案の速度や量を調える必要があります。

これが「調える」ということです。


気圧・湿度・季節を言い訳にしない。でも、無視もしない

ここで大切なのは、
だからといって、気圧や湿度、季節のせいにしすぎないことです。

何でも天気のせいにする。

何でも季節のせいにする。

それでは、本人の主体性が失われます。

しかし、反対に、
気圧や湿度、季節の影響をまったく観ないのも違います。

大切なのは、
言い訳にすることではなく、前提として観ることです。

今日は湿度が高い。

だから、いつもより呼吸が浅くなりやすいかもしれない。

今日は台風のあと。

だから、体の中に緊張が残っているかもしれない。

今日は暑さが急に強い。

だから、疲労の抜け方が違うかもしれない。

今日は雨が続いている。

だから、気持ちが内側に向きやすいかもしれない。

そうやって、
環境を前提に入れることで、支援はより現実的になります。

環境を観た上で、今日できることを考える。

環境を観た上で、負荷を調整する。

環境を観た上で、言葉を選ぶ。

環境を観た上で、相手の状態を責めない。

このスタンスが大切です。


沖縄と関東では、同じ台風でも体感が違う

先日、ととのえ職人の記事で、
沖縄と関東で感じる台風の違いについて書きました。

沖縄で感じる台風は、
自然が暮らしのすぐ近くまで入ってくる感じがあります。

風の音。
雨の強さ。
湿度。
停電への備え。
家の中で待つ時間。
吹き返し。
海に囲まれた土地の感覚。

自然の大きさを、体で受け取るような感覚があります。

一方で、関東で感じる台風は、
自然そのものに加えて、都市の機能や予定の乱れとしても受け取りやすい。

電車は動くのか。
帰れるのか。
仕事はどうなるのか。
移動していいのか。
どのタイミングで動くべきか。
ニュースや交通情報を見続ける。

つまり、
同じ台風でも、受け取っているものが少し違う。

沖縄では、自然の近さが体に残る。

関東では、都市の揺れが思考に残る。

これは、支援の現場にも通じます。

人は、どこで暮らしているかによって、
同じ出来事の受け取り方が変わります。

同じ症状でも、
地方と都市部では背景が違うかもしれません。

同じ疲労でも、
移動距離や生活リズムによって意味が違うかもしれません。

同じ「忙しい」でも、
人間関係や社会的役割によって負荷が違うかもしれません。

専門家は、そこまで含めて人を観る必要があります。


体だけを見ていると、人が観えなくなる

技術を学ぶほど、私たちは細かく見えるようになります。

筋肉が見える。
関節が見える。
姿勢が見える。
動作が見える。
呼吸が見える。
代償動作が見える。

それは専門家として、とても大切な力です。

しかし、細かく見えるようになるほど、
逆に人が見えなくなることがあります。

肩が上がっている。
骨盤が傾いている。
股関節が使えていない。
呼吸が浅い。
足部が崩れている。

そうした観察は大切です。

でも、その人がなぜそうなっているのか。

どんな暮らしの中でそうなっているのか。
どんな環境を受け取ってきたのか。
何に緊張しているのか。
何を抱えているのか。
どんな一日を過ごしてきたのか。

それらを観ないまま、
身体の部品だけを見ていると、人が観えなくなります。

Your Best Solutionが大切にしているのは、
「人を観る」ことです。

症状を見るのではなく、人を観る。

動作を見るのではなく、人を観る。

不調を見るのではなく、その人が生きている構造を観る。

環境まで含めて人を観るとは、そういうことです。


専門家は、その日の支援を調整できるか

専門家に求められるのは、知識や技術だけではありません。

その日の状態に合わせて、支援を調整できることです。

今日は、動かした方がいい日なのか。
今日は、呼吸から入った方がいい日なのか。
今日は、話を聴く時間が必要なのか。
今日は、強度を上げるより、感覚を戻す方が先なのか。
今日は、宿題を増やすより、減らす方がいいのか。
今日は、前に進めるより、戻る余白をつくる方がいいのか。

それらを見極めるには、教科書通りの判断だけでは足りません。

相手の表情。
声の張り。
呼吸。
動き出し。
姿勢。
反応の速さ。
言葉の出方。
沈黙。
そして、その日の環境。

それらを総合して、観る必要があります。

専門家とは、正しいことをそのまま当てはめる人ではありません。

今の相手に合う形へ、知識や技術を調える人です。


支援とは、環境との関係を結び直すことでもある

人は、環境の中で崩れます。

忙しさの中で崩れる。
湿度の中で重くなる。
気圧の変化で揺れる。
人間関係の中で緊張する。
仕事の構造の中で呼吸が浅くなる。
家庭の役割の中で自分を後回しにする。
社会の速度の中で急がされる。

だとしたら、
支援とは、身体だけを整えることではありません。

その人と環境との関係を結び直すことでもあります。

どんな環境で崩れやすいのか。
どんな環境なら戻りやすいのか。
どんな時間帯に疲れが出やすいのか。
どんな人間関係で力が入るのか。
どんな季節に不調が出やすいのか。
どんな場所で呼吸が戻るのか。

それらを一緒に観ていく。

そして、
その人が自分の環境を読み、自分に合う調整ができるように支える。

それが、自立支援としての専門性だと思っています。


環境を読む力は、支援者自身にも必要

環境まで含めて人を観るには、支援者自身も環境を感じる力が必要です。

自分が今、どんな空気の中にいるのか。
自分の体は、湿度や気圧をどう受け取っているのか。
季節の変化で、どんな反応が出やすいのか。
移動が続くと、自分の思考はどう変わるのか。
忙しさが増えると、言葉はどう硬くなるのか。

自分が環境の影響を受けていることに気づけないと、
相手の環境にも気づきにくくなります。

支援者自身が、自分の体と心と思考のズレに気づけること。

自分の環境との関係を観られること。

それが、人を観る力につながります。

相手を観る前に、自分を観る。

支援の前に、自分の状態を調える。

それは、専門家としての土台です。


専門家は、環境まで含めて人を観ているか

専門家は、環境まで含めて人を観ているか。

この問いは、簡単ではありません。

身体を見ること。
動作を見ること。
痛みを見ること。
症状を見ること。

それだけでも、専門家として多くの学びが必要です。

しかし、それだけでは人は観えません。

人は、環境の中で生きています。
季節の中で生きています。
土地の空気の中で生きています。
社会の仕組みの中で生きています。
人間関係の中で生きています。
気圧や湿度や台風の影響を受けながら、暮らしています。

だから、支援もまた、
その環境を前提にする必要があります。

今日の体は、今日の環境の中にある。

今日の心は、今日の暮らしの中にある。

今日の思考は、今日までの負荷の中にある。

そう見られる専門家でありたいと思っています。

体だけを見ない。
症状だけを見ない。
本人の努力不足にしない。

でも、環境のせいにしすぎない。
でも、環境を無視しない。

その人が今、何を受け取っているのか。
何に反応しているのか。
どんな環境の中で、心と体と思考がズレているのか。

そこまで含めて観る。

そして、その人に合う力加減へ支援を調える。

それが、Your Best Solutionが大切にしている、
人を観るということです。

専門家は、環境まで含めて人を観ているか。

季節が変わるたびに、
気圧が揺れるたびに、
湿度が体にまとわりつくたびに、
この問いを持ち続けたい。

あなたは、環境まで含めて人を観れていますか?

専門家としての問いに、終わりはありません。

また、次の問いでお会いしましょう。

Your Best Solution
五木田穣


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