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【小説】メンズエステのめぐみさん①

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あらすじ
めぐみが、メンズエステに勤めてから7年が経った。
26歳になった今も、キャラクターの濃いお客様との刺激的で、
楽しかったり、面白かったり、たまに悲しかったりの、とても充実した毎日を送っていた。

お店HPのプロフィール
★めぐみさん★
 身長:165cm
 年齢:24歳
 スリーサイズ:88 - 62 - 83
★店長のコメント★
当店の指名No.1嬢!
彼女はまさに「渋谷に舞い降りた天使」
その可愛らしい見た目に反するダイナミックな施術とキワキワを攻め立てる技術は国宝級。
仰向けになった時に見られるダイナミックボディも一興です。
皆さんに死ぬまでに1度は味わってもらいたいです・・・!
予約必須です!
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1話目 めぐみさんと佐藤さん (1/5)


渋谷に舞い降りた天使、その名はめぐみ

これが鈴木愛のもう一つの名前とキャッチコピーである。
いや、もしかするとめぐみが本当の名前で、鈴木愛がもう一つの名前なのかもしれない。

大学生の頃からめぐみを名乗り、ついに8年目に突入した。
大学卒業と同時にやめる予定だったメンズエステ嬢は、あと1ヶ月、もう1ヶ月とだらだらと過ぎていった。
そして、今ではやめることをやめた。

この職についたきっかけは大学の同級生の紹介だった。
仲良くなったきっかけは大学の奨学金説明会で、たまたま隣の席だったからだ。

私には大金を稼がないといけない理由が2つあった。
1つは、生活費だ。
静岡のド田舎の貧しい自営業の家系で育った私に、両親は進学に反対だった。
そんな両親も、私の熱意に渋々折れる形で進学を認めてくれた。
ある条件が飲めるのであればと。
その条件は、授業料や生活費などの仕送りは一切しないこと。
唯一の例外は、親の自営業の経費で落ちるスマホ料金だけだった。
家賃、公共料金、食費、授業料は全て自分でやりくりできるのであれば。という無謀すぎる提案に私は乗ったのだ。

そして、2つ目の理由は、大学を卒業すると同時に発生するこの奨学金という名の借金への不安だった。
この奨学金のお陰で大学に行けるのに、奨学金に怯えて生活するなんて、、、本当に皮肉な話だ。

効率よく稼ぐために、高額バイトを調べても、キャバクラや風俗ばかりが出てくる。
遺伝的に、お酒を全く飲めないので、お酒を飲むキャバクラはすぐに候補から消えた。
そして、体の関係を持つ風俗には抵抗があった。
履歴書を持ち、店の前まで行ったが、やはり無理だった。
好きでもないおじさん達に、自分を捧げるのは、私には超すことができない一線であった。

そして、話しかけてくれた隣の席の彼女も同じような境遇だった。
二人が仲良くなるには、その2つの共通点だけで十分だった。
それから、二人で同じ講義をとり、いつも一緒にいた。
夏休みになる頃には、お互いの家に入り浸るような生活をしていた。
私は、夏休みは実家の手伝いのため、静岡に帰省した。
彼女は宮城の田舎の生まれだが、資金面の関係で、夏の帰省は見送るとのことだった。
そして、大学1年生の長い夏休みが明けた時、久しぶりに会った彼女を見て衝撃が走った。

私達には考えられないようなハイブランドのバッグにイアリング。そして、テレビで特集を組まれていた限定品のポーチ。
少なく見積もっても40万はするだろう。
つい2か月前までは、中国の企業が運営する、安いECサイトで、いかにおしゃれにみせるかでもちきりだったのに。

私が話しかけるのに躊躇していると、彼女の方からいつもの調子で声をかけてくれた。
「割の良いバイト見つけちゃった!愛ちゃんもどう?」

この言葉をきっかけに愛とめぐみの二重生活が始まった。

17時ぴったりに定時に仕事を終え、自宅がある押上駅に直帰するために、都営新宿線へ急ぐ。
本来、愛の職場である新宿から、そのままめぐみの職場である渋谷に向かう方が圧倒的に効率がいい。

しかし、残業がない限りは、頑なに一度家に帰ることに拘った。
境目を作らないと、いつしか自分がめぐみに浸食される気がして怖いからだった。

【めぐみさん、お疲れ様です。今日は19時から佐藤様(3回目のお客様)からのご指名です。】
帰宅の電車に乗り、スマホを見ると店長から2時間前にメッセージが入っていた。
【了解です。】

さっと短文のショートメールを送り返す。
帰宅の電車に乗ると私の表の顔、つまり、OL鈴木愛としての時間が終わりを告げた。
そして、これからはメンズエステ嬢、【めぐみ】としての時間が始まるのだ。

押上駅から自宅は徒歩7分と比較的立地がいい。
家に着くとすぐにストックしてあったお米を解凍し、その間に今日使った弁当を洗う。
洗い終えしっかりと乾拭きで水気をとる。
ちょうど解凍がおわったので、そのまま弁当にお米を詰めてちょこっとゴマ塩を振りかける。
あとは、冷蔵庫から、昨日の夜に多めに作ったピーマンの肉詰めとミニトマトを2つ、ほうれん草のお浸しを詰めた。
凝ったものは作っていないが、このちょっとした家事さえもできなくなるなら夜職やめる。
夜職に足を踏み入れる時に自分に誓った唯一の約束事だった。 

時刻を見ると18:00になっていた。
服をオフィスカジュアルなものからパーカーにジーンズとラフなものに着替える。
そして、化粧をし直しマスクとメガネをする。
あっと言う間にもう一人の私であるめぐみが完成した。
時刻は18:10。私は、本日初の出社をする。

やはりメイクや服などをしっかりすると気持ちが入れ替わる気がする。
電車の中で私を見る人は愛ではなく、めぐみとして見ている。
この感覚は、二重生活をして8年目だが、いつでも新鮮な気分になる。
まさか私が、メンズエステで働くとは。
とか言いつつ紹介者の彼女に教えてもらえるまではメンズエステの存在さえも知らなかった。
ただ、マッサージをしつつ乳首や股間付近をさりげなく触って、お客様を気持ちよくさせて終了。
それがメンズエステだ。しかし、実際はそれだけですまないお客様も多い。
終了に近づくにつれてやれ抜いてくれとか、やらせろとか、パパにならせてとか、ましてや、断ると怒鳴りつけてくるお客様もいた。

最初はお金がいいから始めたバイトだった。
だからそんなお客様がいても我慢もできた。
でも、いつの時からか、私の手技で興奮したり、楽しそうにお話ししてくれるお客様と会うが楽しくて、この仕事をやめられなくなっていた。
変なお客様がいても、それ以上にこの仕事にやりがいを感じているのだ。
今日指名してくれた佐藤さんという人とも楽しい時間になったらな。
なんて考えていたらあっと言う間に最寄り駅の渋谷に着いた。

部屋に着いたのは、18:45だった。
出社場所は、渋谷から徒歩5分の所にあるマンションの一室だ。
19:00からスタートなので急ピッチで服を着替える。
「メンズエステ ナイスなナイト」では、胸の谷間が見えるゆるゆるの白Tシャツに、黒のミニスカートがコスチュームだ。
ナイロンでぴちぴちな素材なためボディラインがはっきりと見える。
賛否は別れるだろうが、私は嫌いじゃない。
何故なら私の長所をはっきりと見せつけられるからだ。

パンパンに膨れ上がった胸元はまるでポテトチップスの袋のようだ。
対照的にペットボトルを潰したようなお腹。
そして、黒いスカートによって肌のもちっとしつつも、キメ細かさがくっきりとわかる脚。

自負するにはそれだけの理由がある。
この体型を維持するくらいのケアは忘れないのだ。
間食はしないし、ジュースもお酒も飲まない。お酒は飲めないだけだが。
時間があるときは3駅前で降りてウォーキングをすることだってある。
だからこそ、このくらいは自慢させてもらっても神様は文句は言わないだろう。

写真を撮らなきゃ。
「メンズエステ ナイスなナイト」のお店のアカウントとは別に、
「めぐみ」としてSNSをやっている。
そして、出勤時には必ず写真を撮ってアップロードするのだ。
もちろん顔は出さないがこの作業をするしないで売上に大きな違いが出てくる。
顔を出さない理由はもちろん身バレ防止だ。
もしも、会社の人に見つかったら、私はめぐみとして生きる道がなくなってしまうからだ。

「今日はSさんが3度目のご来店(^^)楽しみすぎる~!
21:00から1枠空いてるから誰かめぐみに会いに来てくれる方はいないかな( ;∀;)」

よし、送信。
これで後は佐藤さんを待つだけだ。
あと8分ある。時刻は18:52になったばかりだ。
めぐみは、スマホのメモ帳を開く。
「えーと、どこだ。あった、あった。」
スマホをスクロールして佐藤の情報を見る。
偽名で使う人も多いのでよくある名前の人は覚えるのに困ってしまう。
最初はよくある苗字のお客様だけメモしていたが、いつの間にかお客様全員の情報を入力するようになっていた。
そして、忘れないためにも施術に入る前にメモを見返すのはとても重要だ。

佐藤さん(背が高いおじさん)
・1972年の11月25日生まれ(鼠年)
・最近部長になった
・妻子持ち(嫁とも娘にもうまくいっていないらしい)
・子供は今年二十歳の女の子
・部下に不満あり
・前回はデートのお誘い有
・トレンディ俳優の鈴木朝日?に似ていると言われることがあるらしい
・領収書を依頼される
・陽気だが、プライドが高いらしく男尊女卑な所がある
・来店日:2023年8月31日、2023年9月15日

スマホを見てなんとなくどんな人かを思い出した。
今日は、、、10月29日か。
前回デートのお断りをしてから1ヶ月経っていた。
週に10~20人くらいを施術していると、メモしていてもあまり来ない人は顔と情報が一致しなくなってしまう。
佐藤さんは辛うじて覚えていた。
次も来てもらえるように今日は慎重に作戦を練らなきゃ。
プライドが高いのでまずは外見を褒める。
その後はすぐに、デートがNGなことを先に言い、謝罪した方が良いかもしれない。
なあなあにして、最後にまた断ると相当へそを曲げる気がする。
こちらから謝罪をした方が、彼の性格を考えると、見栄を張ってその場は丸く収まる可能性が高い。
あとは適当に話題を振って煽てておけば落ち着くだろう。
でも、もし最悪な展開があったら、、、その時は、あの手を使おう。

「ピンポーン」

はっとして時計を見る。いつの間にか19:01になっていた。
私としたことが、メモに夢中になって時計を見ていなかった。
反省しながら、すぐにインターホンへ向かい相手を確認する。
挙動も特に不審な点はない。。。と。
オートロックを解除すると佐藤がマンションに入ってくるのが確認できた。
私もそれと同時に玄関の前の方に向かう。
2Fにあるこの部屋まで、インターホンを解除してちょうど1分ほどでたどり着く。

「ピンポーン」

チャイムが鳴った。
ふぅ。大きく息を吐く。

ガチャ。
「こんにちは、どうぞこちらへ。」


2話へ続く

3話

4話

5話

6話

7話

8話

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10話

11話

12話

13話

14話

15話

16話

最終話






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