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「オンボーディング」の教科書 〜始め方・進め方〜

今回は、中途入社者(キャリア入社者)の早期活躍や定着のために重要な「オンボーディング」について、実際の流れを7つのステップで紹介するとともに、記事最後の「付録」では"オンボーディングの始め方"として設計・導入・運用・改善のタスクリストを紹介します。

【はじめに】 オンボーディングによくある「誤解」

最初に、関係者(オンボーディングチーム)の「オンボーディング」に関する認識合わせのために、よく誤解される5つのことをまとめました。

1. オンボーディングは、入社者に対する「引き継ぎ」(だけ)ではない

オンボーディングは、入社者に対して事業や組織・業務を教える=引き継ぐことだけが目的ではありません。組織として入社者を「歓迎」し、入社者が新たなキャリアに「期待」を抱きながら、早期に「組織の一員」として活躍できるようになることが目的です。

2. 即戦力人材だからといって組織に慣れるのも速いとは限らない

「今回入社した彼/彼女は"即戦力"だから」と、入社後に職場で"放任/放置"されていることがあります。業務上のスキルや経験の面では即戦力であっても、新たな組織環境に即順応できるとは限りません。オンボーディングは、どのような入社者であっても同じように丁寧に実施します。

3. 入社者は"サポートしてもらう"意識ではなく、自身も積極的に参画しないとオンボーディングは成功しない

オンボーディングの成功のためには、入社者本人もオンボーディングチームメンバーの1人として「参加する」という姿勢が必須です。自分のこれまでの経験やスタイル・性格等を振り返って「自分自身はどうすれば1日も早く組織の一員となって成果を出せるようになるか」を考え、上司に伝え、オンボーディングプランに反映させていく必要があります。

4. オンボーディングは入社者のためだけではなく、受け入れる側の「職場メンバー」の成長のためでもある

オンボーディングの主たる効果は入社者の早期活躍等ですが、受入れ側の職場メンバーの成長や部署の組織力向上の効果も忘れてはいけません。入社者の受入れに当たって、職場メンバーは改めて自分たちの組織の文化・風土や仕事の進め方等を客観視し課題に気づくきっかけとなります。職場メンバーから見て「上司と入社者だけで"何かやってる"」とならないように、職場メンバーもオンボーディングの対象者として巻き込んでいきます。

5. オンボーディングは体系的にプログラムを進めていくことが目的ではなく(それは手段として)、入社者を歓迎し自律サポートすることが目的である

オンボーディングの計画を立てプログラムを体系的に実施していくと、いつの間にかプログラムを進めること自体が目的化してしまうことがあります。そうならないために、オンボーディングチーム全体で「入社者はどのような希望を持っていて、いま何にもどかしさを感じていて、どうなったら"組織の一員になれた"と実感できるのか」等、常に入社者の立場と気持ちになることです。

オンボーディングの「進め方」 〜流れの例〜

次に、オンボーディングの実際の流れを7つのステップで記載しました。

準備開始

選考・オファーが終わり入社者が確定した後、その入社者が入社する1ヶ月前を目処にオンボーディングの準備を開始します。

人事部門内でのオンボーディング担当者は会社によって異なりますが、HRBPがいれば入社者の配属部門の担当HRBPが主体となり、HRBPがいなければ採用担当または育成担当が主体となると思います。

【Step 1】 オンボーディングチームの立ち上げ

最初に、対象入社者に関係するメンバーで「オンボーディングチーム」を編成します。チームメンバーは、直属上司やHRBPの他、メンター(バディ)やトレーナー、同僚の引き継ぎ担当者、参加が可能であれば前任者等です。そして、入社者本人もオンボーディングチームメンバーの1人と位置付けます。

チーム編成後、入社前の本人を除いたチームメンバーで"プレ"キックオフミーティングを実施し、オンボーディングの目的やゴールの共有と、チームとして密に連携していくことを確認します。

【Step 2】 オンボーディングプラン案の作成

本人の入社前に、オンボーディングチームで いつ・誰が・何のために・何を・どのような方法で実施するかを決め、オンボーディングプラン(案)としてまとめます。ここで「(案)」と表記している理由は、このプランは入社者本人との打合せを経て確定版となるためです。

なお、メンター(バディ)やトレーナー役の社員が初めての経験となる場合は、この段階でメンター/トレーナー向けトレーニングを実施します。

<オンボーディングプラン作成時に実際に使っている実施項目の「チェックリスト」や「プログラムリスト」、オンボーディングプラン(90日プラン)の作成・推進ポイントを それぞれnote記事にまとめていますので、もしよければご参照下さい>

【Step 3】 入社初日の迎え入れ(歓迎)

入社者の出勤初日の迎え入れの担当者と動線を、事前に(再)確認しておくことは非常に重要です。入社者は何時にどこに到着し、誰が迎えに行き、どこに連れていくのか、また、その際の入館手続きや社員証作成はどうするのか等の細かい動線を必ず事前に(再)確認しておきます。

また、入社当日の朝に迎えに行く担当者が交通事情等で間に合わない場合のバックアップ担当も必ず用意しておきます。

入社初日の動線確認は本当に重要:
まとまって入社する新卒入社と違って、一度に1人または少数の中途入社の場合、動線が明確でなくバタつく場面も目にします。
受付で合流後、研修会場に直接行くのか、一度所属部署に顔を出していくのか、または会議室で上司と顔合わせが先にあるのか、先に写真撮影・社員証作成の手続きをするのか…等、会社によっても部署によっても様々なパターンがあると思うので、毎回確認します。
私自身もある会社の入社初日に時間になっても誰も迎えに来ず、遅れて 何も聞かされてない派遣社員の方が迎えに来て2人で右往左往していたことがありました。また、HRBP時代には、迎えにいく担当者が電車遅延で間に合わずバックアップ担当として入社者を迎えに行ったことが数回あり、バックアップを決めておく大事さを何度も実感しました。

【Step 4】 オンボーディングプランの調整・確定

入社後、可能な限り早期に、入社者本人と上司で1on1を実施し、Step2で作成したオンボーディングプラン(案)をベースとして、オンボーディングの進め方を確認します。
その際には、【はじめに】のよくある誤解の3.で書いたように、本人にもオンボーディングメンバーとしての参加意識・オーナーシップを求め、本人の考えも踏まえてプランを調整し確定させます。

実際、色々な入社者と確認していると、人によって組織に"溶け込む"アプローチが異なります。広く人間関係を築くことを優先したい人もいれば、少しでも早く業務で成果を出すことを希望する人、慌てずじっくりと業務を学びたい人など様々なアプローチがあります。

【Step 5】 オンボーディングプランの実行

オンボーディングプランが確定したら、早速、計画通りにチームメンバーで実行していきます。
中でも人事担当(HRBP/採用/育成担当者)は、自身が担当するアクションの実行だけでなく、定期的に直属上司や本人、その他のオンボーディングチームメンバーとコミュニケーションを取って状況確認やフォローも行います。k同時に、定点的なオンボーディングサーベイやインタビューでモニタリングし、入社者や受入れ側の"小さなつまずき"を見逃さず、タイムリーに上司等と必要なアクションを取ることも、人事担当には求められます。

なお、上司や同僚が「入社者は即戦力入社だから、そこまで周りが関わらなくても大丈夫だろう」という思い込みを絶対に持たないように 人事担当は注意します。

また、オンボーディング期間中は常に入社者を「歓迎」する意識を持つことにも注意します。

入社者を「歓迎」する
オンボーディングの目的には、入社者に期待を伝え「歓迎」することも含まれます。
外資企業のHRBP時代、各国HRBPが参加する会議の中で効果的なオンボーディングプログラムについてディスカッション機会がありました。各国HRBPが、いかに入社者に「歓迎されていること」を伝えるかを普段から考えているかを知り、刺激を受けたことを覚えています。
覚えている限りですが、例えば入社初日の受入れ方について、他国では下記を実施していました(日本だと少し"やり過ぎ"に感じてしまうものもありますが…)
入社者が初日朝に受付に着いたら封筒に入った経営者からの手紙が渡される(オンラインツールがあるにも関わらず、あえて紙で渡す)
同時に、入社日に合わせて家族にも手紙が送られる。
入社者の待合室の壁に、大きな文字でWelcomeメッセージが貼られていたり、職場メンバーの写真・メッセージが貼られている(本当は敷地に入る時に見えるように、オフィスビルに"垂れ幕"を出したかったとのこと)
PCのデスクトップやスクリーンセーバー上に、初期設定でWelcomeメッセージが表示される。職場メンバーからのメッセージ動画が流れる。
世界各国の入社者歓迎用の社内SNSがあり、世界中の社員からも歓迎メッセージが送られる&つながることができる。

【Step 6】 オンボーディングサーベイ&インタビューの定点実施

オンボーディング開始後、定点的に入社者本人および直属上司それぞれに対してオンボーディングサーベイを実施し、状況や課題等の把握に努めます。また、サーベイ結果をもとに人事(HRBP/採用/育成担当者)と入社者でオンボーディングインタビュー(面談)も実施します。

サーベイやインタビューの実施頻度は1ヶ月に1回程度が理想ですが、難しい場合は、オンボーディングを開始して数週間後、中間、終了前の3回の実施を目指します。
<オンボーディングサーベイやインタビューの具体的な項目例は下記note記事をご参照下さい>

また、オンボーディングサーベイ/インタビューの中では、入社者から(他社の採用活動と比較して)自社の採用活動へのフィードバック/アドバイスももらいます。採用ブランディングとして訴求していた自社・募集組織の「魅力(EVP)」と入社後のギャップや、他に感じた魅力・訴求すべき魅力についてアドバイスをもらっておきます。
<「魅力」については下記記事をご参照下さい>

【Step 7】 オンボーディングの終了&分析

オンボーディング期間が終了したら、入社者毎にオンボーディングチームでオンボーディングを振り返り、人事はサーベイやインタビュー結果を分析します。
評価や分析結果は、オンボーディング内容の改善検討に活かすと共に、採用ブランディングや選考方法の改善や、必要に応じて受入側組織・職場の改善等にも活用します。

なお、入社者の初回の人事評価も確認し、評価が高い/低い場合は、オンボーディングに関係する要因を分析します。


【付録】 オンボーディングの「始め方」 〜設計・導入・運用・改善のタスクリスト〜

オンボーディングの新規導入や見直し用として、設計・導入・運用・改善の各フェーズのポイントをタスクリストの形で紹介します。

1.「設計」フェーズ

  1. オンボーディング導入の目的・目標を設定する

  2. オンボーディングのアクションリストを設計する

  3. オンボーディングプログラムを設計する

  4. オンボーディングチーム・役割分担を設計する

  5. オンボーディングサーベイ/インタビュー項目を設計する

オンボーディングには関係者が多く入社者ごとに変わるため、オンボーディング導入の目的を明確にしておきます。同時に目標も定量指標化しておきます。
例えば、目的が「中途入社者の早期活躍」であれば、目標は「初回評価が標準以上の入社者割合」と設定する等です。

2.「導入」フェーズ

  1. オンボーディングチームの編成

  2. オンボーディングチーム向けのガイダンス/トレーニング

  3. オンボーディングプランの作成(90日プラン)

  4. 初日の入社者本人の受入れ方法の確認

3.「運用」フェーズ

  1. 初日の入社者の受け入れ

  2. オンボーディングプランの実行状況のモニタリング

  3. 定点的なオンボーディングサーベイ/インタビューの実施

  4. 試用期間終了可否の判断

4.「改善」フェーズ

  1. オンボーディングサーベイ/インタビュー結果の分析

  2. 設計時に設定した目標の達成度の評価

  3. 改善プランの作成と実行


最後までお読み頂きましてありがとうございました。


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