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諦めるなメジャーの夢を。君たちも西田陸浮に続くんだ「迫り来るMLB新球団の誕生リアル&下剋上を制した大リーガー列伝」ドラフト順位も身長も関係ねえぜ

まずは野球少年の諸君に朗報だ。君たちが大人になる頃には、メジャーリーグのチームは確実に今より2つ増えている。早くて5年後、2031年には新球団の誕生だ。

かかっても2033年なので、そう遅い話ではない。とにかく新球団は狙い目だ。

なぜなら日本のプロ野球だと楽天が誕生した時のように、選手は最初から思い通りに集まらない。MLB参入の歴史が最も浅いDバックスとレイズ(ともに1998年誕生)も、同様に大苦戦を強いられていた。

現時点のMLB新球団の候補地は、ざっと5つ。今回は、そのうち最有力候補を含めた「3都市プラスアルファ」を紹介する。トップバッターは、今ホットな西田陸浮ゆかりのオレゴンだ。

ちゃんと今から計画を立てれば、決して夢物語で終わることはない。ポイントは、やはり「候補地のロックオン」に尽きる。

Rikuu Nishida

西田陸浮といば、やはり新代名詞「令和の小さな巨人」でしかない。メジャーデビュー戦で披露した、体格差を物ともしない“鮮烈バックホームレーザー”は既に語り草だ。

同時に低身長メジャーリーガーが、またひとり誕生した瞬間でもあった。現役最小はアストロズ今井達也の同僚で身長165cmのアルトゥーべ、これに168cmの西田陸浮が続く。

WBC2026で史上初のサヨナラ弾を叩き込んだオジー・アルビーズは、小兵枠の代表格で身長170cmだ。彼の驚異的な打撃センスは20代トップクラス、以下の記事でも取り上げてある。

実はムーキー・ベッツも身長175cmと山本由伸より低い。しかもベッツはドラフト5巡目、全体172位だ。西田同様に下剋上を制した大スターの象徴でしかない。

侍戦士のヌートバーだってドラフト8巡目、全体243位。マイナー時代はガテン系バイトで食い繋いだ時期もある、ガチの苦労人だ。

21世紀最強打者の1人、聖人プホルスなんて西田より下から這い上がっている。西田はドラフト11巡目の全体329位、プホルスに至っては13巡目の全体402位だ。

プホルスは高校生の時にドミニカから家族と移住し、カンザスシティの短大を経てカージナルスにドラフト指名されている。

実は短大で圧巻の成績を残したものの、入団当初まで「肥満体型で守備に穴がある」と評価を上げられずにいた。

同じ中南米出身のアルトゥーべは、もっとエグい。いわゆるドラフト外のテスト入団だ。それも一度は「低身長だから」と門前払いを喰らっている。

しかし彼は挫けずに、翌日もテスト会場に出向いて合格という鬼メンタルを発揮してのけた。

通常ルートは現地の私設アカデミーに所属し、ショーケース(品評会)にてスカウトが予め目星を付けておいてから、16歳で国際契約を交わすのが王道かつ主流だ。

ところがアルトゥーべは低身長のためアカデミーにすら拾われず、16歳で一発試験に挑み、1万5000ドル(当時のレートで170万円)という格安契約だった。そこから5年かけてメジャーデビューを果たしている。

西田陸浮でも契約金は17万ドル、現レート換算で約2400万円だ。ティモンディ高岸の真意は、ここにある。ドラフトの順位も身長も関係ない。

君の「やる気」が、果たして松岡修造を泣かせられるかどうかに懸かっている。

もちろん書く側だって本気だ。ここから先、ざっと原稿用紙60枚以上はある。気づいたら卒論レベルの“文量”になっていた』。

ドラ穴あとがき

そして、何よりも地元から愛される選手になることだ。つまり、新球団の候補地を味方につけるに越したことはない。

将来のMLB新球団が誕生する街へ「アメリカ野球留学はメジャー直結型4都市が最旬ルート」

現にイーマン琉海は、これから新天地での武者修行編が幕を開けようとしている。選んだ先はサクラメント州立大学、この都市こそ“5月に急浮上”という最も旬な候補地だ。

打率8割のスピードスターとして甲子園を沸かせた「センバツ2025」は、記憶に新しい。渡米前に出演した「トクサンTV」では、吉田正尚ばりの力強いスイングを披露している。

確かにパワーアップ感はあったが、別に見た目は変わっていない。高校時代と同じ身長164cmのままで、横に増えた感もなかった。ちなみにサクラメントと桜の関係は一切ない。

もちろん例のサクラメントについては後述するが、実は新球団の候補地以外にも激推しがある。それが今回のプラスアルファ都市、カンザス州マンハッタンだ。ニューヨークのマンハッタンではない。

ここには、“ネクスト西田”の筆頭候補こと井上心太郎のカンザス州立大学がある。

いよいよ1カ月後に控えたMLB2026ドラフトの下馬評において、井上は下位予想ながら指名圏内に入る新たなホープだ。高校時代は阪神ドラ1ルーキーの立石正広とチームメイトだったことでも知られている。

からの残る1つはムーキー・ベッツが生まれ育った、テネシー州ナッシュビル。現地アメリカでは、MLB新球団候補地における大本命として広く浸透している。

最旬ネタでいえばサッカーW杯だ。サムライブルーこと日本代表の選ばれし戦士たちが“ナッシュビルを拠点”に、これから激闘を繰り広げていく。

という4都市のラインナップで、留学先の情報や町の治安度など暮らし目線も交えつつ、メジャーへの道ついて掘り下げてみた。

オレゴンから愛「ポートランド編」

それでは、再び西田陸浮の続きから見ていこう。正直なところ、この「西田ルート」は手堅い。彼は短大からスタートしたことが、幸いにも奏功する結果となった。

アメリカの短大野球はレベチ

そもそも日本に短大野球という概念すらない中で、アメリカは全く違う。前述したアルバート・プホルスもさることながら、現役では全米ドラ1のブライス・ハーパーが短大経由の著名なメジャーリーガーだ。

短大組は普通にドラフト上位に食い込んでくるし、1軍選手の在籍も別に珍しいことではない。それこそ飛ぶ鳥を落とす勢いのジェイコブ・ミジオロウスキーは、2年短大の卒業から4年間の下積みを経て、メジャーの初マウンドを踏んでいる。

ミジオロウスキーの短大は地区の強豪校で、やはり入部テスト=トライアウトは超絶狭き門だが、入学自体のハードルが高い訳ではない。

一方で西田の短大は古豪ながら、近年はパッとしないチーム状況だった。とはいえ彼は異国からのトライアウトなので、言葉の壁が当然ハンデになる。

総じて、それを払拭するくらいのプレーを見せるしかない。ここまでの野球レベルに達することが、最初の目標だ。

アメリカの短大は入試と寮がない

学力に関しては心配不要だ。アメリカの短大は、日本と違って落とされることがない。高校を卒業していれば英語力の有無も求められず、TOEFLやIELTSとは無縁でも大丈夫だ。

そもそも、今のワーホリのような即戦力型の就労体験でもあるまい。あくまで留学生としてだ。現に西田陸浮は小学生レベルにも満たない英語力で、短大留学からのワークアウトを勝ち取っている。

つまるところ、アメリカの短大留学に入試という概念はない。これをオープン・アドミッション、いわゆる無試験入学と言う。申請書類が揃っていれば、まず落とされる心配はない。

学校側が英語力を把握するために、TOEFLやIELTSといった証明書類の提出を求めるケースもあるが、その時は“ありのまま”を伝えるまでだ。

ここで見栄を張ると、後でしっぺ返しがやって来る。「なんだこのガキ全然サッパリさのすけ詐欺師めが」と。それで評価を落とせば、いらぬハンデを背負うことになる。何事も最初が肝心だ。

なおアメリカは日本と同じで、寮を有する短大を見つける方が難しい。なので西田ルートを選ぶ場合は基本、アパート探しは短大の近場で。チャリで15分圏内までがベストの範囲だ。

生半可は断ち切るんだ

アメリカの短大、いわゆるジュニア・カレッジやコミュニティ・カレッジと呼ばれる2年制大学は、旧来の「入るは易し、出るが難し」という名残りが未だに踏襲されている。

ただし、4年制大学のなかでもトップクラスの場合は、この限りではない。そして2年制でも4年制でも共通しているのが、険しい卒業ハードルの高さだ。

日本のように大学生活を満喫したり、野球漬けで学業が疎かになったりとかは、一切アメリカで通用しない。この覚悟がないと、せっかくの計画も丸潰れになってしまう。

西田ルートの家賃&物件事情

そんな訳で、ここからが本題だ。まず西田陸浮の通っていた短大はマウントフッド・コミュニティ・カレッジで、オレゴン州北東部の10万都市グレシャムにある。

野球部には寮がないため、西田はグレシャム市内で暮らしていた。

マウントフッド短大は町の中心部から少し離れた場所にあり、周辺の家賃相場は18万円前後。もろに今のアメリカ爆騰価格だが、この家賃は読み進めて行く上で目安になる。

物件探しをする際は、完全車社会なので短大からチャリ15分圏内だ。もしトラブルなんかでチャリが使えない場合に備えて、徒歩30分圏内を想定しておく。

グレシャムの治安は、それほど悪い訳ではない。今年に入ってから隣の大都市ポートランドで「治安が大幅に改善された」という報道もあるようだが、詳細は後述する。

新球団候補「ポートランド鹿児島」

グレシャムは、250万人規模のポートランド都市圏に属するベッドタウン。このポートランドこそMLB新球団の有力候補地で、かつてはドラマ「オレゴンから愛」にもチョイ役で登場していた。

比較的ポートランドは西海岸寄りで、同ドラマのメインロケ地「マドラス」はガッツり内陸部へと入り込む。かけ離れてはいないが、車で飛ばして2時間といったところ。

ポートランドには約63万人が暮らしており、日本でいう鹿児島市に相当する人口規模だ。最寄りのMLB球団はマリナーズで、ポートランドの真北に位置するシアトルとは約280キロ離れている。

ちょうど鹿児島市と福岡市の距離も280キロなので、いわばシアトルはポートランド市民にとって同じ九州のソフトバンクホークスを応援する感覚と近い。

実は新球団の候補地を巡り、ここを問題点に挙げる向きもある。要は客の取り合いだ。アメリカの300キロなど日本の100キロ感覚にも満たない。

とはいえ、このアメリカ北西部のMLB球団はマリナーズのみ。それに御当地企業でもある、世界のNIKEが新球団誘致に積極的なことも大きく働いた。

MLB新球団は2枠で、アメリカを真っ二つに分断すること東西で各1枠ずつ。ポートランドは西の有力候補として、強敵ソルトレークシティと人気を二分にする状況だ。

西田ルートの種明かし

話を再び西田陸浮に戻す。彼は短大時代の実績動画をインスタなどで積極的にアピールし、4年制大学への編入を経てドラフトで指名されている。

この短大ルートはアメリカの王道だ。短大2年で卒業→大学3年生として編入→翌夏(まだ大学3年生)ドラフトで指名される。編入の場合は短大時代の年数(取得単位)がカウントされ、大学通算3年間がドラフトの最短条件だ。

逆に短大は1年在籍でドラフトの指名対象。なのでアメリカは短大の野球レベルが高い。もちろん野球特待生の免除制度も充実している。

幻のスポドリとD1大学のリアル

アメリカの短大もそうだが、全米大学野球という大きな括りを簡単に理解する上で、最も重要なのが「ディビジョン」だ。日本の大学野球における1部・2部リーグ、サッカーのJ1・J2などにイメージは近い。

NCAAに所属する約1000の4年制大学が、ほぼ均等にディビジョン1~3に分類されている。NCAA(全米大学体育協会)とは、かつて日本で販売されていた「幻のスポドリ」のルーツで、年間2000億円以上を稼ぎ出すモンスター組織だ。

この年収は、丸ごと日本のプロ野球12球団全部に匹敵する。それでいて「非営利団体」だから怖ろしい。学生ありきの組織ゆえに“諸事情”はあるにせよ、いわばNCAA加盟のD1大学ともなれば高級ブランドのようなものだ。

一口にNCAAの認定と言っても、野球に特化した基準ではない。各大学のスポーツ全般を対象としている。14種目以上のスポーツ部があるのか、学生を集められる奨学金=財政力に問題はないかなど基準は手厳しい。

つまりディビジョンとは、各大学のスポーツ階級を示している。なので正確には日本の“大学リーグ”とも違う。ディビジョン毎に各地域の複数リーグが設けられている。

ちなみにディビジョン認定は“大学全体”としての区分けなので、必ずしもD1野球部の全てが強い訳ではない。

D1大学は「年間1000万円免除」

そんなD1大学には、とっておきの最新特典がある。それは今季から適用中の全額免除制度だ。従来は最高7~8割の免除で、全額は稀だった。

伊達にアメリカの大学最高峰と呼ばれるだけあって、D1の免除内容は学費をはじめ、食費や寮費といった生活費まで幅広い。

特にD1は学費が跳ね上がる分、ざっとこれらの年間費用も1000万クラスと鬼だ。当然ながら州や各大学など諸々での違いはあるが、西田陸浮の場合はオレゴン大学に編入したことで年間400万円の免除をゲットしている。

これが仮に今なら、おそらく600〜800万円は堅い。なおD2は従来と変わらず学費のみ、D3に至っても据え置きで免除なしのままだ。

今季から大チャンス「免除枠が急拡大」

ここで少しD1における従来の制度について踏み込むと、免除額自体はD2と大差がなかった。これは「配分」というNCAA独自の規定にある。

従来のD1は、野球部のベンチ入りメンバー34人で、約11人分の全額免除を分配していた。これに対してD2は9人分だ。

この分配比率がネックで、チーム内格差からの不協和音という典型パターンの火種にもなる。

極端な話、11人に全額枠を与えれば、残り23人は免除ゼロだ。レギュラークラス以外は、D1もクソも減ったくれもない。かと言って今度は34人で一律分配なら、特に主力組からすればD1なのに謎の3割免除だ。

一方でバスケとアメフトは、ずっと前から全額免除の配分数が多く、これに根負けしたNCAAが遂に鉄板入りの分厚い腰を上げた結果、今季から野球の枠も急拡大の「34人」にまで増えている。

ゆえに、これからメジャーを目指す上で、端から4年制D1大学を狙うのも一手だ。

D1待遇はメジャー並み

D1校は各種免除に留まらず、チーム専属のトレーナーや管理栄養士といったサポートも手厚い。バットやユニフォームなどの野球道具は無料支給で、遠征時にはチャーター機を使う大学もある。

まさにメジャーばりの好待遇だが、それと引き換えに日々のタイトなスケジュールも伴う。学外バイトは固く禁じられているものの、そんな隙間すらないほどだ。

とはいえ活躍すれば、スポンサー収入が見込めるし、OBによる特別賞の報酬だって余裕で生活費の足しにはなる。

ちなみに映画や外食、はたまた洋服代などは娯楽として扱われるため免除の対象にはならない。

屈強なポートランド人を味方につけろ

西田陸浮はオレゴン大学の編入でグレシャムから200キロ南下した「ユージーン」という地を次なるステージに選んだが、実際このポートランド圏内にも野球部を有するD1校はある。

前述した通り、ポートランドは鹿児島市の人口規模に相当する地方都市だ。連山に囲まれた広大な盆地を開拓し、今日のベースを築いた歴史を有する。

町の東に望む富士山級の「マウント・フッド」は、標高約3500メートル。この麓に西田陸浮を育んだグレシャムがあり、まんま母校の由来でもある。

奇しくもポートランドは札幌と同じ緯度に位置しているが、豪雪地帯ではない。冬場でも東京と同じような気温だ。市内は網羅するようにチャリ専用レーンが整備されている。

こうしたチャリ文化と同様に深く根差しているのが、古くから受け継がれる「無骨なオレゴン愛」だ。ポートランドには昔ながらのマニアックすぎる個人のDIY関連ショップが数多ある。

理科室のようなオタ聖地、木組の工房や世界最古のスケボーショップ、ボタンとリボンだけの専門店など挙げ出したらキリがない。クラフトビールの醸造所も多く点在し、地元独自の個人コーヒー店を熱烈に応援する風土もポートランドの特徴だ。

彼らオレゴニアンは、決して収入や肩書きで人を判断しない。「雨にも負けず、傘をも差さず、風と大企業は上等」。これこそが真のオレゴニアンだ。

ちなみにオレゴン州は消費税ゼロの分、所得税が最大9.9%と全米トップクラスを誇る。しかしオレゴニアンは、こんな税金ごときに屈するようなタマではない。

いざとなれば彼らのバックには、ポートランド発祥で名高い「世界のNIKE」も控えている。

一癖も二癖もあるが、穿った見方をすればポートランドの屈強な民ほど頼もしい味方はない。

犯罪率→全米平均2倍のリアル

ポートランドで命を狙われるような凶悪犯罪は少ないが、車上荒らしや万引きは後を絶たない。おまけに“自業自得の警察”が人手不足に陥り、ゾンビタウン化しつつある。

2021年にオレゴン州は「少量の大麻やハードドラッグ(フェンタニルなど)の所持を合法化」という試験的な“狂った法律”を採用。結局これが完全裏目で3年後に廃止されたが、その爪痕が今も色濃く残る悲しき現況だ。

時を同じくしてコロナ禍には、市民vs警察の大規模な対立も起きている。実はポートランドでは、古くから警察組織が根深い人種差別を繰り返してきた黒歴史も。いわゆる黒人に対する過剰な武力行使だ。

不満が頂点に達したポートランド市民は、「警察予算ゼロと組織解体」を掲げた超過激デモを断行する。

これに即座に反応したのが、オレゴン州外のトランプ支持派だ。彼ら極右団体には外国勢も加わっており、ポーランドに乗り込んでの集団乱闘だった。

張本人のポートランド警察も極右団体をバックアップする始末で、完全に市民の信頼を失った結果、ボイコット精神による離職が相次いだ。

今日のポートランドでは、軽犯罪を目撃しても“見て見ぬふりポリス”が常態化している。多発する万引き犯のカモにされ、挙句の果てには潰された店舗も少なくはない。

伝説級の超絶危険エリア2傑

まずダウンタウンでの夜間外出は、もってのほかだ。特に路面電車(名称MAX)のパイオニア・スクエア駅は、昼間であっても近づいてはいけない。一見すると何の変哲もない広場だが、ここはホームレス軍団の巣窟だ。

基本ダウンタウンの東側、間違ってもこの駅から徒歩で5分先のエリアを流れる「雄大なウィラメット川まで散策」なんて考えは起こさないこと。

そしてダウンタウンの北東で縄張りを固める、ウィラメット川沿いの「チャイナタウン」こそゾンビタウンのラスボスだ。その名も「ゾンビランド」

市民を巻き込む過激なギャング抗争とかはないが、まんまソンビランドだ。チャイナタウンの中心部には、かつて麻薬の密輸や人身売買の隠れ蓑だった「伝説の上海トンネル」が名残りを留めている。

ここを拠点に上海ルートを確立したことで、当時は「西部の悪魔」と恐れられた。雰囲気的には昔の浅草・山谷、いわゆる“ヤマ”のような古き良き危なかった時代のオーラを漂わせている。

だからと言って、どこもかしこもポートランドが終わっている訳では当然ない。これから紹介するポートランド大学の周辺は、市内近郊の閑静な住宅地が広がる安全なエリアだ。

ガチ狙いルート

ポートランド大学はダウンタウンから北に10キロほど進んだ、ウィラメット川の北岸に面している。ここはユニバーシティ・パーク地区といって、特に大学内には24時間体制の常駐警官を配備する力の入れようだ。

キャンパスの敷地は東京ドーム10個分と広大で、快適な寮生活が送れるように施されている。

カフェとパブが合体したラウンジタイプの西洋バーだったり、はたまた多国籍料理をはじめとするメニュー豊富な巨大食堂であったり、もちろん野球部などアスリート関連の設備投資も抜かりない。

大学からチャリ10分圏内には多彩な店舗がある。最寄りは大学の北側を走る、チャリで約5分のロードサイド店舗群だ。商店街ではないものの、幅広の大通り沿いに点々とメガスーパーからマックやスタバまでが並ぶ。

このまま大通りを再びチャリで5分ほど道なりに奥まで進むと、今度はちゃんとしたアメリカ版の商店街だ。

ここは「セント・ジョンズ」というレトロ地区の中心街で、例のクラフトビール店や個性派コーヒーショップなどが立ち並んでいる。

そんなポートランド大学は文武両道の難関校ではあるが、少数精鋭なのでアメリカでも地元以外は無名に近い。

ポートランドの生徒数は約3300人で、アメリカの4年制大学の平均が約2万人と一目瞭然。ちょうど日本の4年制大学の平均数が、ポートランド大学と大差ない。

さらに生徒1人あたり職員8人と手厚い教育体制で、この比率もアメリカ平均の半分以下だ。ポートランド大の手厚さは、日本の大学でも数える程度しかない。

キリスト教の系列校なので、一定以上ある基金を学力向上のために充当できる。これぞ「教育の鏡」と呼ぶに相応しい大学だ。

とはいえ年間費用の目安は込々で1300万円、なんだかんだ取るものは取る。

学力レベルは、オレゴン州で不動の断トツをキープ。日本でいう「明治・立教の上層クラス」に相当する。

野球はD1中堅レベルで、今季から横浜DeNAに新加入のヒュンメルが最直近の著名OBだ。これまで14人のメジャーリーガーを輩出している。

輩出歴も含めて正直なところパッとしないが、ここ5年は歴代トップに迫る勢いだ。古くからポートランド大学を知る地元の先人たちを中心に「70年前の伝説チームを超えるのも時間の問題だ」と伝統校の底力を見せ始めている。

日本人留学生の受け入れ実績は年間数人レベルと極めて少ないが、合格さえすれば逆に“こっちのもん”だ。日本人の著名な卒業生も未だいない。

裏を返せば、今度は君がポートランドで新規開拓のパイオニアになれるチャンスだ。少数精鋭なので、ちゃんと心を開けば絆も深められるぞ。

ちなみに、同じ市内にあるポートランド州立大学とは間違われやすい。向こうは生徒数2万人の大東亜帝国クラスで、ダウンタウンにキャンパスがある。

日本人留学生の実績は、分母なりに少なくはないレベル。同様に全米での知名度もポートランド州立大学の方が上だが、残念ながら野球部はない。

アメリカは9月が入学シーズンだ。渡米の準備は、その前のサマーリーグに向けた6月頃に照準を合わせておくこと。


大本命の世界都市で夢を掴め

続いてはムーキー・ベッツの地元、72万都市のナッシュビルだ。人口規模は静岡市と遜色ない。

カントリーミュージックが盛んな「音楽の都」と呼ばれ、都市圏全体で220万人を誇るテネシー最大の州都。MLB新球団の候補地における“東の横綱”だ。

Mookie Betts

数多くのメジャーリーガーが、ナッシュビルをオフシーズンの拠点にすることでも知られている。

と言うのも後述するが、ナッシュビルに住民票を移すことで所得税フリーになるからだ。莫大な年俸を稼ぐ一流選手にとって、この免税制度は大きい。

それぞれ地元がナッシュビルとは別のパスクアンティーノ、ルーカーとブランドン・ロウの3人は、球団の垣根を超えたワークアウト仲間だ。彼らが利用するジムはもちろん、ナッシュビルには高水準のスポーツ施設が一定数ある。

極みつきは世界都市ナッシュビルが誇る名門「ヴァンダービルト大学」だ。カブスの全米ドラ1・スワンソンを皮切りに、大物たちが挙って母校に帰って来る。

これまで彼ら教え子が施設改修に費やした寄付額も20億円以上とレベチでしかない。

ゆえにMLB新球団候補地の選手アンケートで、ナッシュビルは群を抜いてトップ支持を得ている。同様にファンのネット投票でも断トツだった。

これらとは別に、地元NFLチームの実績も評価を高めた要素の1つ。地元NFLのタイタンズは昨季こそ動員数が著しく落ち込んだものの、21世紀の括りで視野を広げれば「ずっと人気」をキープしている。

ましてやナッシュビルの住民は可処分所得が高い。つまり市場の余力が充分ということだ。

とはいえ資金面の課題も抱えている。大口スポンサーの確保と地元タイタンズの新ニッサン・スタジアムの完成だ。特に後者は市が既に巨額な費用を投じており、現在その金策に奔走している。

MLB新チームの候補地は、各球団のオーナーたちよる匙加減ひとつだ。ファンおよび選手投票の選挙形式ではない。すべてはMLBオーナー会議という名の胸三寸で決まる。

そんな訳で、ナッシュビルの実情と推し大学の解説に進もうか。まずはナッシュビルと日本の意外な結び付きからだ。

サッカーW杯2026における、サムライブルーこと日本代表のベースキャンプ地で一躍脚光を浴びているが、そこには明確な裏付けがある。

日本の認知度が図抜けて高い

ナッシュビルの日系企業進出において、日産自動車とブリヂストンの存在を抜きに語れない。両社ともナッシュビルにアメリカ本社を構えることで名高い。

2000年代後半からは「桜祭り」が開催され、今では日本さながら春の風物詩として定着するほどた。

2015年には日産がNFLテネシー・タイタンズのホーム命名権を取得。この「日産スタジアム」も今やナッシュビルに浸透して長い。

2027年にはドーム型の新スタジアムが完成予定で、これに伴いネーミングライツも2047年まで延長している。

日本の産業による雇用機会の創出から、徐々に日本の文化を受け入れ始めた、というのが簡単な経緯だ。今やテネシー州全体における日系企業の進出は200社以上と半端ない。

日産とブリヂストンはナッシュビルを拠点に、いわゆるアメリカで成功を収めた日系企業のモデルケースでもある。

その影響力は後述する、在ナッシュビル日本総領事館やテネシー日米協会の設立にまで及んだ。これらの機関・団体が桜祭りの開催だったり、日本人留学生の受け入れ活動だったり架け橋的なポジションを担っている。

なお日本の総領事館は、アメリカ50州の全部にある訳ではない。ニューヨークやLAなど15前後の大都市に限られる。テネシー日米協会も含めて、2000年代に設立されていることも象徴的だ。

成長著しいメガメトロ

大都市圏での人口増加率は、アメリカ全土における平均の3倍と異様に高い。これはナッシュビルというより、周囲を取り巻くベッドタウン勢が発展傾向にある。

所得税ゼロだが

テネシー州に限っては、日本でいう都道府県民税と所得税がセットで一切かからない。

その分、ナッシュビル都市圏の消費税は約9.5パーと全米で3本の指に入る激高エリア。このパターンは全くポートランドと逆だ。

家賃はナッシュビル中心部で、1LDKのアパート相場が30万前後と絶賛爆騰中にある。ここでの留学はD1一択でしかない。

郊外なら治安も家賃も安心

やはり住む分には、治安が自慢のナッシュビル南郊に尽きる。なかでもブレントウッド、その近隣に位置するフランクリンが代表格だ。

ブレントウッドはベッツの地元で知られ、フランクリンには日産の本社ビルがある。ブレントウッドやフランクリンなら、そこまで家賃も跳ね上がらない。

大都市あるある「激ヤバ地帯2傑」

逆に避けるべきエリアはナッシュビルの北西近郊と北東郊外だ。

特に北ナッシュビルの「ボルドー」は、過去に大規模なギャング抗争を繰り返してきた悪しき風土が名残りを留めている。未だに銃犯罪が根絶しない。

ここはナッシュビルから雄大なカンバーランド川を越えた最初の地区で、結構な巨大橋が架けられている。チャリ専用レーンとかはないので、車を使う際は通過するだけにしておくこと。

ちなみに、この大橋は超歴史的人物のキング牧師に因んでいる。これ以上は敢えて割愛するが、うっかり車から降りようものなら帰って来られないと思え。

ナッシュビル北東郊外の「シェファード・ヒルズ」は、近年の犯罪率が顕著なエリアだ。そもそもナッシュビル自体の凶悪犯罪件数が全米平均の約2.6倍と高い。

中心街=ダウンタウンも、夜間の一人歩きは自爆しに行くようなもの。

アクセスは日本感覚だと激烈不便

実はナッシュビルには地下鉄が一切ない。これはナッシュビルに限った話ではなく、アメリカ全体が車社会だからだ。

地下鉄がある大都市はニューヨークやシカゴぐらいで、他は「あっても役に立たない」レベル。要は交通網が驚くほど発達していない。

これはバスも同様で、路線や本数が少なく「さらさら力も入れる気なんて毛頭ない」という日本とは逆転現象にある。

アメリカのネット配送網は最強

よって寮完備の大学が安全かつ便利だ。大概の大学は、ポートランドでも解説した通り周辺にスーパーなど生活類全般の店舗が揃っている。

とはいえ短大になると話は別で、逆に寮を設けている方が珍しい。

ただ、アメリカは日本と比べ物にならないほどネット配送のインフラが発達しているので、アプリ+サブスクのコンボで完結するという側面も。

留学先の推し4選

これらを踏まえた上で通称「ミュージック・シティ」に野球留学する際は、以下の4候補から選ぶのがベストだ。

ナッシュビル都市圏には、市内に3つの4年制大学と郊外に1つの短大=ジェーコーがある。

ヴァンダービルト大学

「アメリカ南部のハーバード」と呼ばれ、めちゃくちゃ秀才レベルが集まる超難関校だ。特に法律と医療・看護分野が高評価されている。

100人が受験しても5人前後という合格率で、野球もD1上位の常連校。兎にも角にも頗る強い。

ナッシュビルの知を象徴するかの如く、寮完備のキャンパスがダウンタウンに聳え立つ。中心街でありながら、ちゃんと専用球場も確保するセレブ大学だ。日本でいう早慶レベルの文武両道校である。

年間費用の目安は跳ね上がり、込々で1600万円だ。このクラスの大学にしては、べらぼうに高い訳でもない。

ベルモント大学

野球はD1中堅レベルで、学力は日本のMARCHクラスに相当する。音楽業界のオフィス街として高名な歴史的地区「ミュージック・ロウ」から近い。

ヴァンダービルト大学が位置する中心部から5キロ南下という徒歩圏内。この大学が最も日本と結び付きが強い。それが前述した在ナッシュビル日本総領事館やテネシー日米協会とのパイプだ。

こうした団体が大学内での日本文化を伝えるイベント、あるいは奨学金制度に深く関わっている。もちろん実際に日本人留学生の受け入れ実績も豊富だ。

年間費用の目安は、込々で1000万円。受け皿で選ぶなら、ここ一択でしかない。

リップスコム大学

お洒落なコスメ系ブランドをイメージさせがちだが、関連性は一切なし。ナッシュビル都市圏の南郊、高級住宅地として名高いグリーン・ヒルズにキャンパスを構えている。

ベッツの地元であるブレントウッドからも割と近い。

野球レベルはD1校だが、ベルモント大学より劣る。ベルモント大学は強豪リーグで、リップスコム大学は別の地方リーグに属する伝統校だ。

実はメジャーリーガーの輩出数では、圧倒的にリップスコムの方が多い。近年はリーグで勝ち星を積み重ね「古豪復活」の勢いを見せている。

キリスト教の系列大学なので治安面は厳格に守られ、前述した通りエリア的にも治安の評価は高い。

この市内には、高級住宅地ならではの一流ハイブランドショップなどを擁する大型ショピングモールもある。しかも大学からチャリで向かえる距離だ。

学力レベルは、例のベルモント大学と大差ない。この大学には現地の日本人留学生が一定数いる。日産本社のフランクリンが通学圏なので、現地に駐在するホワイトカラーの子どもたちに選ばれる感じだ。

総じて日本での知名度は極めて低いものの、割りかし日本人ウェルカムといったところ。年間費用の目安は、込々で1150万円だ。

ボランティア・ステート短大

ここはナッシュビルから北東に車を走らせること30分、ギャラティンという田舎町にある。

前述した同じ北東の危険エリア「シェファード・ヒルズ」とは30キロ近く離れているので、懸念は不要だ。

ナッシュビルを取り巻く発展型ベッドタウン勢の1つで、特にギャラティンは都市圏でも屈指の治安を誇ることで知られている。リタイア層が目立つ割に、住民年齢の中央値は36歳と若い。

物件選びは2択だが、、

町の中心部には世界最大チェーンのウォルマートをはじめ、一通りの商業施設などが並ぶ。短大の目と鼻の先にもショピングセンターが設けられているが、いかんせん前述した通り寮は無い。

ましてや、このエリアは完全に車必須だ。留学する際は、ここら辺がポイントになる。

家賃の相場は単身者用アパートでも18万円前後と驚愕プライスだが、まだナッシュビル界隈では安い方だ。

短大D1も全額免除

肝心の野球レベルは“短大D1”の下位ではあるが、元から弱小だった訳ではない。2000年代後半にかけて、20年間ほどリーグ最強を誇っていた。

これまでのメジャー輩出数は約30人、この短大を経由して4年制大学からドラフト指名された実績も決して少なくない。だからといってベッツのような大物スターが巣立った実績は皆無だ。

現在は再建中で、古豪の栄光を少しずつ取り戻しつつある。D1特典は後述するが、ほぼ4年制大学の方と大差ない。

年間費用の目安は家賃も込々で680万円だが、全額免除なら年間280万円前後まで出費が抑えられる。

最短1年でドラフトが狙える

そして2つ目のポイントが、日本人第1号選手になれることだ。元々この短大は、留学生が絶滅種並みに少ない。日本人の受け入れ実績も「年間0人」という傾向が目立ち、大半はテネシー州の地元っ子たちが集まって来る。

ゆえに嫌でも英語力は身に付くし、またとないナッシュビルに名を売る大チャンスだ。言葉の壁を突破して野球でも上手くアピールできれば、ボランティア・ステートの救世主として語り継がれるぞ。

ちなみにボランティア・ステートとは、地元なら知らぬ者はいない「勇ましきテネシー州民」の別称でもある。ポートランド大学と同じくフロンティア精神が旺盛なタイプなら、渡米1年後のドラフトも夢ではない。

もちろん、ここで力を付けてD1大学が揃うナッシュビル進出も一手。この短大を選んだら、プロ入り後の愛称は「ギャラティン」で決まりだ。キャッチコピーは「勇ましきテネシープライド」でしかない。

アメリカの短大ディビジョン事情

4年制大学とは運営団体が違うだけで、2年制の方も学費・生活費(寮費・食費)は全額免除。違いはベンチ入りメンバーが30人で、免除枠も24人と全員ではない点だ。

これは短大D2も一緒で、全額免除の対象は学費のみになる。D3は免除なしだ。

かれこれ30年以上は現行ルールを変えずに来ているが、待遇面は4年制D1の足元にも及ばない。専属トレーナーや移動待遇など一切なく、設備投資も最低限のレベルだ。

中には個人寄付や地元企業・自治体からハード面の支援を受ける短大もあるが、ごくごく一握りに過ぎない。

4年制D1のようにスポーツメーカーと契約を結ぶケースも極めて少なく、グローブやスパイクは自費で賄うのが日常茶飯事だ。それら以外のチームバットやユニフォームといった野球道具は、短大側で負担してくれる。

D1の落とし穴←ここ超重要

そして短大D1における最大の落とし穴は「1年更新」だ。シーズンを棒に振るレベルの大怪我を負えば、次年度の免除は打ち切られる。もちろん成績不振だったり、不貞腐れて横道に走ったりは言語道断という下剋上でしかない。

ここが4年制D1(複数年保証)との大きな違いだ。現にミジオロウスキーは入学直後のケガで1年目が全休だった。

とはいえ、4年制D1にも落とし穴はある。原則として「減額禁止」なので、怪我や結果を残せなくても入学時の契約内容から引き下げられることはない。逆にガンガン結果を出せば、免除額の割合を引き上げてもくれる。

しかし学業面は話が別で、成績次第で一気に打ち切りというケースも稀ではない。これは短大D1も全く同様だ。

佐々木麟太郎が帰国した際、よく取材陣に「勉強優先」とコメントしているが、あれはスタンフォードという超絶エリート大学だからではない。

どこに通っていようが、昔からアメリカは「卒業マジしんどいから」というリアルな背中に過ぎない。現に西田陸浮が、一足先に身をもって経験した1人だ。

知られざるアメリカの大学事情2選

それに西田の場合は「D」ですらない短大からスタートしている。西田が渡ったオレゴンは、周囲4州で独自の短大リーグを設けており、ここの団体規定も「国際留学生のスポーツ枠の奨学金免除ゼロ」と保守的だ。

やはり小規模なので資金力はなく、待遇やサポート体制も万全とは程遠い。

それでもアメリカには、こうしたスポーツ特待とは別の「大学機関全体」が実施する学業奨学金の免除制度もある。全額免除とまではいかないにしても、成績優秀者なら学費半額が目安だ。

ちなみにオレゴンの短大リーグは、アメリカではマイナーな木製バットを使うことで知られている。アメリカの大学は日本と違い、短大も全ディビジョンも金属バットが主流だ。

軍神モン族とアスレチックス本拠地

55万人前後が暮らすサクラメントは、西海岸のサンフランシスコから北東に約150キロ、車で1時間半の内陸地。ちょうど八王子と同じ人口規模で、都心からの距離感も似ている。

都市圏の規模は230万人なので、前述したポートランドやナッシュビルと大差ない。

そんなサクラメントは2つの川が合流し、ナッシュビル同様に市内をΩマークのように取り囲む地形だ。この東側を流れるアメリカン川沿いに、東京ドーム25個分と広大な「サクラメント州立大学」のキャンパスがある。

Rukai Ehman

ゆえに生徒数3万人超のマンモス校で、学生寮の対応数も3000人以上と町レベルでしかない。

実際に学内もフードコートを含むファストフード5店舗のほか、スタバやアパレルショップ、生鮮食品を扱うミニマーケットなど充実している。

正門の近くにもホームセンターがあり、大学の3キロ圏内にはディスカウントストアから大型ショッピングモールまで目白押しだ。ダウンタウンまでは約10キロ、車なら10分で着く。

今年から改善が著しいライトレール(路面電車)も学生無料で便利。最寄り駅は正門から徒歩2分で、運行本数も15分おきと車社会のアメリカでは珍しい。

以前は今のポートランド同様、駅や車内で暴力事件が絶えず、乗客の減少から機能低下に陥る危機的状況だった。

現在は車内に民間の警備員を配置するなど、市がライトレール予算を増やしている。こうした市ぐるみでインフラの改善や治安の向上に全力投球しているのが、サクラメントの最新リアルだ。

安全度ワースト5%圏内の大都市

凶悪犯罪は直近3年で大幅に減少傾向にあるが、率にすると全米平均の約2倍。兎にも角にもサクラメントは、ギャング抗争や銃犯罪の発生率が突出して高い。その分、近年は警察も本気だ。ここがポートランドとは大きく違う。

ダウンタウンや旧サクラメント歴史地区(オールド・サクラメント)は観光地として賑わいを見せる反面、夜になると裏の顔を見せ始める。薬中の徘徊やホームレスが動き出すので、しばらく夜間の社会科見学は封印だ。

ダウンタウンの直ぐ西側にあるオールド・サクラメントで起きた深夜の派手な銃撃戦も、まだ記憶に新しい。

ゲームばりの暗黒街

ダウンタウンの北東近郊に構える「デル・パソ・ハイツ地区」は、サクラメントを代表する悪の巣窟。かれこれ半世紀近くサクラメントの暗黒街として君臨し、ダウンタウンから10キロ、車で15分程度と近い。

このラスボス城を砦固めの如く、まるでダウンタウンからのポリス攻撃に備えるように2つのエリアを従えている。「ストロベリー・マナー」と東西の玄関口を担う「ハギンウッド」だ。

デル・パソ・ハイツ地区には武器やフェンタニルの製造・保管庫、麻薬売買の取引所が点在しており、これまでに度重なる警察の一斉浄化作戦によって大量摘発されている。

裏を返せば、それだけ警察の動きが強化体制に向かっているので未来は明るい。

超絶サバイバル種族の黒歴史

サクラメント南部の「マックロード」や「フローリン」も、古くから悪名高いエリア。地元民も日中ですら近づかない2大地区、というのがサクラメントで暮らす暗黙の掟だ。

元々ここはインフラを後回しにされた上に、ベトナム戦争後の現地難民を受け入れた歴史がある。ベトナム人に留まらず、数多くの“モン族”も流れ込んだ。

国を持たないモン族は元から戦闘能力が高く、ベトナム戦争時にはアメリカ兵の身代わりとして皮肉にも多大な功績を上げている。いわゆるアメリカCIAのネゴシエーション、という名の狡猾すぎる理不尽な交換条件だ。

ラオスの山岳ジャングルで暮らしていたモン族を、アメリカ軍は巨兵プレス攻撃によって無双ゲリラ部隊へと変えた。からのアメリカ軍が、戦争終結時にモン族の亡命を手助けしたのは少数のみ。

リトル・サイゴンの光と闇

そこでサクラメントが難民救済に名乗りを上げた訳だが、言葉の壁や生活苦から一部のモン族はギャング化して行く。もちろん大半のモン族やベトナム難民は、この地区で雇用機会を生み出し独自の食文化などを広めていった。

ゆえに、この地区にはアジア系やメキシコ系の格安スーパーが集まり、ベトナム料理をはじめとする多国籍グルメも盛んだ。ランキングサイトやインフルエンサーなどが取り上げる注目店も一定数ある。

しかし、こうした口コミの発信源は地区に住む地元民でしかない。

自作自演と気づかず、うっかり人気グルメに鼻の下を伸ばそうものなら、モン族ギャングに狩られるだけだ。

サクラメント都市圏に暮らすモン族は約3万5000人とアメリカ最大級の規模で、この大半がフローリンを中心とする南部の低所得層地区に身を置いている。

これがフローリンの商店街「リトル・サイゴン」の全貌かつルーツだ。ちなみに南部の派生が前述した北部「デル・パソ・ハイツ地区」に移り住み、両ギャングは長らく対立関係にもある。

あくまでもモン族の全員がマフィアやギャングに手を染めている訳ではない。同時にサクラメント、ひいてはアメリカの自業自得も明らかだが。

なにもモン族に限った話ではなく、白人以外の人種は日本と比べ物にならない差別の壁と向き合っている。むしろ今日のアメリカは格差爆発の社会でしかない。

こうした少数派の象徴的、かつモン族を代表するアメリカンスターが、ディズニー・チャンネル出身の人気女優「ブレンダ・ソング」だ。

彼女が6歳頃まで生まれ育った都市圏東郊のカーマイケルは、凶悪犯罪と無縁の長閑なローカルタウンでもある。

ブレンダは、事実婚のパートナーでホームアローン俳優「マコーレー・カルキン」との電撃出産でも世間を驚かせた。

Brenda Song

サクラメントの英雄と誘致活動

モン族とは別に、MLB屈指の名将「ダスティ・ベイカー」もカーマイケルから巣立った著名な1人。選手としてもメジャー通算242発をマークした大砲で、最後はアスレチックスで現役を締め括っている。

この名将ベイカーこそサクラメントの新球団誘致活動で矢面に立つ「中心メンバー」だ。長らく地元のホームレス支援にも携わり、サクラメント市民からは英雄とリスペクトされるほど人望も厚い。

サクラメントは2026年5月末に、最後の候補地として名乗りを上げている。名将ベイカーが持つMLBとの太いパイプはもちろん、1等地に新ボールパークの土地を確保できたこともデカい。

Dusty Baker

ダウンタウンのリバーサイド、ちょうどアスレチックスのホーム球場を有する「西サクラメント地区」が、新ボールパークの予定地だ。現行の手狭なホーム球場は据え置きで、新たなスタジアムは2.7倍増の最大4万人収容とメガシンカでしかない。

西サクラメントは再開発中の新高級エリアで、若きMLBスターのニック・カーツをはじめアスレチックスの選手たちが数多く“仮住まい”を構えている。

アスレチックスは早くて2028年にラスベガスに移るとはいえ、彼らが住む西サクラメントの高級物件は月額150万円と市内最強だ。

大学周辺は由緒ある超安全エリア

ちなみにサクラメント州立大学からダウンタウン方面に広がる東地区は、古株の高級住宅地で家賃70万円を超える物件も普通にある。

西サクラメントとの新旧対決では遠く及ばないものの、ここは近隣住民同士の結束力が強く、防犯意識も非常に高いエリアだ。

総じてサクラメント州立大学に留学する場合は、不要不急の外出をしないこと尽きる。オマケで近場程度なら買い出しも問題ないレベルだ。アスレチックス戦は、学内のMLB関係者に頼るのが手っ取り早い。

彼らなら、敵チームのMLB定宿「キンプトン・ソーヤー・ホテル」の滞在状況も含めて、それなりに手配してくれるはずだ。

路面電車での気晴らし街中見学をするなら、ダウンタウン南部の「大阪屋」という餅や饅頭がメインの和菓子店を覚えておくこと。

ルーツを含めると120年以上の歴史を有する超絶老舗なので、ホームシック対策には欠かせない。

野球部は今季から最強リーグ昇格

野球のレベルは、日本で言う東都1部の立正大クラス。7月からカリフォルニア州の最強リーグに昇格する。

今季の立正大が久々に1部復帰を果たしたように、サクラメント州立大学も中堅地方リーグに所属していた。

まさにイーマン琉海の選択はベストタイミングだ。

学力レベルは日東駒専に相当し、TOEFL iBT(トーフル)は64点が基準値。120点満点なので、半分を目標に好きなメジャーリーガーのインタビューを丸暗記で翻訳する「生会話」から始めるのがコツだ。

もちろんインタビュアーの質問も含めた会話のキャッチボール丸ごとで。

日本人留学生の受け入れ状況は例年10~30人程度だが、学内には半世紀以上の歴史を有する日本人コミュニティもある。年間費用の目安は、やはり公立なので込々700万円と安い。

サクラメント州立大学を卒業すれば、もれなく「中退のトム・ハンクスに勝ったぜ賢者の石」が抽選ゲットできるぞ。

神秘なるカンザスの息吹

Shintaro Inoue

ここカンザスシティもW杯2026の会場として盛り上がりを見せるなか、最後のプラスアルファは全くの別モノだ。65万都市カンザスシティとは200キロも離れている。

KCロイヤルズ

まずカンザスシティ(KC)から簡単に説明すると、ここはMLBロイヤルズの本拠地。ダウンタウン(中心部)から約15キロ南東の近郊に本拠地「カウフマン・スタジアム」を構える。

なにせ、この球場が客を呼ばない。

誕生から半世紀以上が経過した老朽スタジアムで、立地的にも車の観客に限られる。このエリアに電車は走っていない。

ましてやアメリカ定番の“駐車場BBQ”に欠かせない「買い出し店舗」が、このスタジアム周辺には皆無だ。要は手ぶらBBQが出来ないので、特に平日のナイターは客足が遠のいている。

肉どころカンザスと駐車場BBQ

といのもカンザスは、かれこれ1世紀以上の歴史を有するBBQの聖地。かつて大規模な家畜取引所に伴う食肉加工で繁栄したカンザスシティは、安価で大量に生産できる「肉卸の流通拠点」として独自のBBQ文化も大衆に浸透ていった。

それとは別にMLB生観戦における駐車場BBQは、いわばアメリカ全土に広がる伝統文化だ。近年はドジャースをはじめ規制する球団も増えたが、まったく下火にはない。

彼ら“テールゲート族”は、試合の3時間くらい前からBBQ祭りをスタートさせる。

チケット代が高くて買えず、入場そっちのけで駐車場BBQに興じる人たちも普通に多い。これが週末の日常茶飯事だ。

さすがに平日のナイターは祭りレベルとまでいかないが、駅チカ球場の場合は電車や徒歩のファンを呼び込める。

1つ目の鍵は神オーナー

ロイヤルズの球団オーナー「ジョン・シャーマン」も、この点は重々に承知済みだ。彼はMLBでも数少ない“身銭を切る側”のオーナーで、地元カンザスシティを愛して止まない。

ビリオネアではあるが、地元のプロパンガス会社の叩き上げ平社員から起業した苦労人だ。ゆえに地元還元もロイヤルズに留まらず、教育活動から貧困層の支援まで幅広い。

決して金ありきの地域貢献ではないが、年間寄付額は10億円ペースともいわれている。寄付で終わらせることなく、必ず学生と交流の場を設けるのもシャーマン流だ。

ここにカンザスを最終枠に滑り込ませた理由の1つがある。シャーマンとは広義に「神の遣い」だ。この男なら、カンザスで躍動する君の雄姿を見逃すはずがない。

それにシャーマンの生まれは奇遇にも日本だ。アメリカ空軍に所属する父が、日本の米軍基地で働いていた時期に生まれたという。

そんな神オーナーは2030年を目途に、ロイヤルズのダウンタウン移転を公表している。住宅やオフィスも巻き込んだ斬新ボールパーク構想とはいえ、まさかの駐車場BBQは全面禁止の方向だ。

シャーマンとしてはBBQ広場の活性化を主張しているが、オールドファンには届いていない。ここが今後の争点となる。

いずれにせよ2030年の新球場誕生を見据えた、将来的なロイヤルズ入団というカードを持っておくに越したことはない。

地元KCの新旧ビッグネーム

Jacob Misiorowski

ちなみに怪物ミジオロウスキーもカンザスシティ都市圏の東郊出身で、彼の地元からカウフマン・スタジアムまで車で15分。ならではテールゲート族(駐車場BBQ)な家庭で育ち、他球団選手ながら今も彼のロイヤルズ愛は変わらない。

ミジオロウスキーは地元の高校に通い、カンザスシティから270キロ南下した「超名門クラウダー短大」を経てブリュワーズに入団している。

ここは、アメリカ短大野球界で5本の指に入る最高峰D1校だ。

1年目こそハムストリングと膝の損傷で全休のシーズンを送ったが、2年目は100マイル到達の無敗で一躍プロ注として名乗りを上げた。

実は、あのアルバート・プホルスもカンザスシティからMLB史上最高峰のスーパースターへと羽ばたいている。

聖人プホルスは生まれも育ちもドミニカ共和国だが、高校時代に家族でカンザスシティ都市圏に移住。北カンザスシティの「メープルウッズ短大」に進み、入学当初から大爆発する。

最速ルートの短大1年目でドラフト指名を受けたが、無名のD2校だったこともあり13巡目(全体402位)という修羅場からのスタートだった。契約金は当時のレートで680万円だ。

こんな最底辺からMLB通算700発超えを達成したメジャーリーガーなど誰ひとりいない。

Albert Pujols

プホルス伝説の後追いは高リスク

なおプホルスの入団当初は大柄で肥満体型、守備の評価も極めて低い19歳だった。

いわゆる“ウドの大木”だが、いざ打席に入るとベテランさながらの落ち着きぶりで軽々と場外を連発させ、常に首脳陣から年齢詐称の疑惑を持たれていたエピソードは代表的な語り草だ。

プホルスが通ったメープルウッズ短大は未だにD2なので、特待生免除は学費のみ。日本人留学生は年間0~数人レベルと稀有もいいところ。

それでもプホルス伝説に因んだ不動心やジャイキリ精神に肖りたいなら、チャレンジあるのみ。

ただ普通に、この短大は地元で有名なパワースポットでもなんでもない。しかもプホルスと同じ最速1年ルートを狙うと、大学中退で高卒扱いになるぞ。

猛勉強して全単位取得の道もあるが、入団契約後の流れ的に険しさしかない。

舞台は本場「オズの魔法使い」

さて、ようやく本題のカンザス州立大学だ。ここは、世界の2大名作における夢のコラボでしかない。

ハリーポッターと同じような学園都市が形成され、生徒と教職員で全人口の4割を占める。町の外は、まんまオズの魔法使いだ。

どこまで行っても小麦グリーンに疎らな農場、というランドエスケープは昔から変わらない。放し飼いで顔を見せる牧場の牛と豚こそカンザスBBQのルーツだ。

かつてはカウボーイが追い回した牛を200キロも離れた東の都、カンザスシティまで運んでいた。

カンザス州立大学は、こうした御当地ならではの畜産系に滅法強い。なにせ大学全体の敷地面積は東京ドーム57個分、これは東京ディズニーリゾートと同規模。

アメリカ最高峰の研究型大学と称され、特に農学・獣医学の研究予算が潤沢で設備も充実している。

ちなみに農学部の学生たちが構内販売する「Call Hall Dairy Bar」の生乳アイスクリームは、これを食べるためだけに他州から訪れるファンもいる名物だ。

学生が育てた牛から採れる新鮮濃厚ミルクをベースに、15種類の日替わりフレーバーで付加価値を際立たせている。

この畜産系に限れば、学力レベルは東大農学部や北海道大学獣医学部といった日本の最高峰に匹敵するほど。

一般の学力レベルはMARCHクラスだ。生徒数は2万人と平均的で、10棟の寮に約5500人が暮らしている。

概ね8割がカンザスの地元っ子で、車がないと話にならない田舎だ。車所有の地元っ子と早めに仲良くなれば、それなりのメリットも付いてくる。

海外からの留学生は、全体の2%と異様に少ない。日本人留学生のピークは年間100人以上の1990年代後半で、コロナ禍以降は年間20~30人。物価高の影響がモロに直撃する傾向だ。

とはいえアメリカ全体で見ればカンザスの物価は安い部類に入り、大学の込々費用も年間800万円と平均を下回る。

何より、この通称“リトル・アップル”は全米有数の典型的な安全カレッジタウンでしかない。

アメリカ版ハリポタ

5万5000人が暮らすカンザス州マンハッタンは、本家ニューヨークから移り住んだ先人に端を発する。

カンザス特有のフリントヒルズ、いわゆる“大草原の丘陵地帯”で、古くからマフィアやギャングとは無縁の町だ。

ゆえにファミリー層から高い支持を得ており「アメリカで最も住みやすいカレッジタウン」のランキングでも上位の常連組に座って長い。

正門の前には「アギービル」と呼ばれる学生街が広がっている。130年の歴史を誇るアメリカでも最古級の学生街だ。

ここには学生向けの安価な大衆バーやB級グルメ店が集まる。大学誕生後の黎明期に、少しずつ店を増やしていった。

ハリポタでいえばホグズミードだが、バタービールも「大学3年まで来ちゃダメ」とかもない。アギービル名物は“ピーナツバターバーガー”で、昼夜でメニューが変わる個性派ドーナツショップも人気だ。

学生街を抜けると、そのまま歴史的地区のダウンタウンに入る。さっきまでとは一線を画す、いわばダイアゴン横丁だ。

こじんまりとした統一感のあるレトロな歓楽街が、ここでは1世紀を経ても不思議と色褪せない。小洒落たテラス席のバーや洗練されたレストランなど、大人の雰囲気を醸し出している。

旧マンハッタン州立銀行は、こうした街の移ろいを見守っている“地味”なランドマークだ。さすがに、この銀行からゴブリンが出て来る演出もなければ、そもそも地下金庫すらない。

ここから近い旧劇場の地下で営む「会員制バー」は、リトル・アップルならではの隠れ家だ。専用のパスワードでしか入店できず、看板も設置しないというスタイルを貫いている。

まさかのリアル展開

とはいえ、この地方には実際に古くから伝わるスピ系の話も尽きない。かつてはリトル・アップルにも、悪魔祓いの祈祷師がいたそうだ。

彼ら“呪術使い”が拠点としたのは、この町から南西30キロ地点にある「ジャンクション・シティ」。呪術使いたちの任務は、ジャンクション・シティに帰還した軍人たちの悪霊を退治すること。

拠点の直ぐ北側には軍事都市の「フォート・ライリー」が形成されている。フォート・ライリーは人口2万人と小規模な軍事基地ながら、前線突破の最古参師団「ビッグ・レッド・ワン」の本拠地として名高い。

いわゆるアメリカ陸軍における名門中の名門師団で、同盟国の防衛線や合同演習など世界を飛び回るのが常だ。

帰国する頃には、現地から嫁を連れて来る隊員も一定以上いる。なかには、あろうことか現地の悪霊に憑依されたまま帰って来てしまう者も少なくない。

そこで招集されたのが、世界の呪術使いたちだ。アメリカ国内はもとより、海外からも上層部の現地交渉によって集められた。さすがは天下の米軍だ、いざとなれば手段を選ばない。

実際に彼らがハリポタばりに杖を使ったかまでは分からないものの、ポルターガイストを鎮めたり、コヨーテ悪魔のボスと戦ったりする話がある。

一説には、黒魔術で召喚した闇の戦士が逆に封じ込められ、カンザス竜巻の操縦士に変えられた大失敗ケースも。オズの魔法使いが生まれた経緯を踏まえると、あながち都市伝説オンリーでもない。

挨拶必須、スルー厳禁の町

これがジャンクション・シティの知られざる顔だ。なにしろ軍事による、これら2都市の関わりは170年と古い。つまり、軍事都市の受け皿がジャンクション・シティである。

ゆえに多国籍文化を発展せざるを得ず、韓国料理からドイツ産の地ビールや本格フランクフルト、カリブ海の食材を扱うスーパーまで多彩だ。しかもここは、べらぼうに家賃が安い。

軍人の住宅手当てを基準に家賃相場が設定されているので、だいたい全米平均の半額と破格だ。

もし寮生活に悩んでも、ここなら誰かしら拾ってくれる。その際は、よそ者と思われないよう「ボブ・ホーナー」の名を必ず口にすること。

元ヤクルトの最強助っ人、赤鬼ホーナーの生まれ故郷だからだ。そもそも寮生活云々より、この地で野球をするならホーナーを抜きに成功はない。

兎にも角にも「ジャンクション・シティ表敬」は最優先ミッションになる。目指すは、ダウンタウン北端の「バッファロー・ソルジャー」という記念公園だ。善は急げ、行けば分かる。

Bob Horner

全米最強パワスポと伝説老師

それと、この町で元呪術師の老翁と出会えたら、もう万枚ボーナス確定でしかない。とっくに隠居の身とはいえ職業柄、彼らには「目立たぬよう暮らす」暗黙のルールがある。

やはりセンシティブな案件を扱うだけあって、引退と同時にジャンクション・シティを去る者が圧倒的。今となっては、老翁が町に残る理由を知る者も極めて少ない。

そんな老翁には「龍穴の案内人」という別称がある。これはアメリカ全土の真ん中カンザス、その地理的中心地レバノンの「裏世界的パワースポット」を指す代名詞だ。

レバノンは、ジャンクション・シティから北西200キロといったところ。レバノンの中心地点には、石碑と小さなチャペルが設けられている。

そして石碑周辺の“どこか”に存在するのが、巨大な「地下龍穴」だ。ここは「アメリカ最大の気が集まる」と呼び声高い反面、案内人なしに辿り着くことはできない。

地下龍穴には、途轍もない力を持つ鉱物系レアアースの塊が祀ってある、といわれている。代々に渡り地元カンザスの先住民族、いわゆるインディアンに地下龍穴は守られてきた。

この1つがカンザス州の由来でもある「カンサ族」だ。老翁は自然系スピリチュアルの使い手だったので、カンサ族から絶大な信頼を得ていたという。

そんな老翁との遭遇率はメタルスライム並みだ。でも彼はジャンクション・シティから離れないし、出没情報も途絶えていない。

ドラマ「正直不動産」に出てくる年寄り地主(山崎努)と同じ、神出鬼没でミステリアスな感じを漂わせている。きっと老翁は「選ばれし勇者」を待っているに違いない。

老師が居座る意義

今回の主役カンザス州マンハッタンも独特の文化を有するが、このジャンクション・シティも異色だ。人口2万2000人と通称リトル・アップルの半分にも満たない。

まず学園都市でもないのに、ジャンクション・シティは住民年齢の中央値が28歳。当のリトル・アップルは25.7歳で、全米平均が40歳前後だ。

ジャンクション・シティの人口は緩やかに伸び続けており、過去に一度も減少したことがない。

大元は軍事基地フォート・ライリーで、ここは常に“アメリカ内外”から人を呼び寄せている。これが一番の老師ポイントだ。

ジャンクション・シティは、多国籍文化を築きながら新たな血も常に残して来た。

食文化など形として今日まで残るものは、ほぼ担い手が変わっていない。どこも古くからの常連を抱えているからだ。それに“初アメリカ”の新妻からすれば郷里の味で、こうした帰還後あるあるコミュニティも軍内に染みついている。

逆に退役軍人は、活躍の場を新たに移すのが日常茶飯事だ。2世や3世がジャンクション・シティに帰って来るケースも“ない”に等しい。

つまり、常にジャンクション・シティは典型的なドーナツ化現象と直面している。それなのに過疎化に陥るどころか、衰え知らずだ。逆に新しい息吹を絶やすことなく、アメリカ全土へ送り込んでいる。

いわば「究極の諸行無常」を地で行く町でしかない。

ホーナーはもとより、この地をルーツに持つカンザス州立大学のOB・OGも途切れることなく増え続けている。

日本人留学生の場合は完全に異質ルートだが、呼ばれていることに変わりはない。老師が留まる理由は、おそらく“この龍脈=レイライン”だろう、使者だけに。

総じて、ジャンクション・シティからの「レバノン直行」も有り得るので、ここに向かう際は「世界の中心で何を叫ぶか」も考えておくことだ。こんなチャンスなんて、そうそうないぞ。

レイラインが結ぶ日米の神秘

そんな訳で、いよいよオーラスに突入する。まずは、ここまでの地理を一旦まとめると、登場した都市は5つ。これらは地図上で、だいたい横並び。両端は地図の右から大都会カンザスシティ、左が龍穴のレバノンだ。

ちょうど真ん中に主役のマンハッタンと残り2つが集まる形で、右にも左にも200キロずつ離れている。つまり、真ん中3つは近い。

マンハッタン=リトル・アップルの左斜め下が、ホーナーや老師のジャンクション・シティだ。この両都市は車で30分前後。ジャンクション・シティの直ぐ上が軍事都市フォート・ライリーで、リトル・アップルとの距離は大して変わらない。

ちなみに軍事基地だけあって、フォート・ライリーには各検問所が設置されている。日本でいう横田基地のように誰もが簡単に入れる訳ではない。

さらに補足すると面積は余裕で横田基地の50倍以上ある。なんなら横浜市全体に匹敵するほどで、そこに2万人程度しか暮らしていない。

それでいて陸軍なので、滑走路の広さは海軍の横田基地より劣る。実は、そんなカオスの規模感から生まれた地域特有のメリットが、リトル・アップル方面に車で15分のマンハッタン地方空港だ。

ちょうど両都市の中間に位置し、軍事や大学関連の需要で成り立っている。行き先はダラスとシカゴの2つ、乗り換えなら日本とも繋がるが、それぞれ1日2~3便と少ない。

ただ、龍脈=レイライン上は日本と完全に繋がる。それも、この空港と岩手県奥州市のアテルイ生誕地はドンピシャだ。

龍穴のレバノンは、アテルイが覇気を授かったとされるアラハバキ神の丹内山神社(花巻市)と、レイライン上でコラボしている。

アテルイは平安時代の超スーパースターで、東北地方における最も偉大な伝説の大ボスだ。

岩手を中心に「大谷翔平の生まれ変わり説」が広まり、逆に彼の登場によって「アテルイが復活した」と感極まる東北人も今では随分と増えた。

おそらく老師はレイラインを通じて過去と現世を往き来でき、そこそこの未来も見えているに違いない。

井上心太郎が開拓したカンザスルート

井上心太郎が絶賛活躍中のカンザス州立大学野球部は、全米最高峰リーグに属するD1中堅校だ。力的には前述したサクラメント州立大学(別リーグ)と大差ない。

日本で言う中央大や法政大に相当するレベルなので、サクラメント州立大学よりは少し上だ。

大学ワールドシリーズの出場は未だないが、MLBのドラフト指名数は100人ちょっと、このうち15人がメジャーデビューを果たしている。

特に2010年以降、ドラフト指名40人とレベルを1段アップさせたのが特徴だ。2021年には同大初のドラフト1巡目を輩出し、2024年に2人目が誕生している。

D1校なので免除や待遇は前述した通り。設備投資も同様に抜かりなく、2020年に完了したメガ改修プロジェクトは話題を振り撒いた。

スタジアム改修からクラブハウス、MLB仕様のデータ解析システムの新設まで総額23億円前後を投じている。いわば費用対効果でしかない。

それと特筆すべき点は、やはりマンハッタン地方空港だ。車で10分程度と近距離にあるのはもちろん、大学がチャーター機を確保しているため移動に困らない。

チャーター便は空港の行き先や本数と関係なく、自由に離発着できる。ただ、移動距離に関するNCAAの団体規定があるため、常に飛行機という訳にはいかない。

そして、この大学を選ぶポイントは背中を見せた「井上心太郎」に尽きる。今季は持ち味の本塁打数を量産できなかったものの、選球眼を高めたことで率の向上に成功。三振数を大幅に減らした点も大きい。

来月のMLBドラフトは、ロイヤルズが井上を指名すると見ている。

彼が開拓してくれた、このカンザス州立大学という「太いルート」を使わない手はない。井上と同じルートの西ネブラスカ短大から編入する手もある。

西ネブラスカ短大はD1下位レベルながら、井上が通算本塁打の学校記録を樹立した伝説の母校だ。つまり井上は、この地でも見事に開拓している。

では高校から彼が注目スラッガーだったのかといえば、全然そんなことはない。

高川学園時代は阪神ドラ1ルーキーの立石とチームメイトで、3年時に夏の甲子園に出場しているが、井上はベンチ入りの補欠メンバーで試合には出ていない。

それがアメリカに渡った途端、ドカンと大爆発だ。実はネブラスカ州もアメリカ中部で、そこまで龍穴のレバノンとも離れていない。

次は君がカンザスに呼ばれる番だ。ロイヤルズの救世主になるべき君を、カンザスは待っている。

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