育児の落とし穴 〜スリングの失敗〜
自己紹介
私は、働く人の健康をサポートする「産業医」をしています。普段は、産業医活動の「落とし穴」や日々の実践・考えを、noteやX(Twitter)で発信しています。
育休・育児シリーズを始めます
2025年に第一子を授かり、合計4ヵ月ほど育休を取得しています。この経験を通して得た学びを、『落とし穴シリーズ』として発信していきます。特に、これから育休を取ろうと考えている男性に参考になればと考えています。諸先輩方からすれば鼻で笑われるような内容もあろうかと思いますが、こんな人間もいるんだと温かい気持ちでご笑覧いただければ幸いです。
スリングの失敗
育児アイテムの一つである「スリング」の恥ずかしい失敗の話です。
赤ちゃんの怖い病気として「股関節脱臼(発育性股関節形成不全)」があり、寝かせるときの「おくるみ」のやり方によっては危ないというのは知っていたのですが、「スリング」も注意が必要なのは知らなかった、というお話です。たまに、股関節の動きをみたり、脚のしわを見ていたりもしていたんですけどね・・・(情けない)
けっこう無警戒にスリングを使ってしまっていたので、その反省の意味を込めて記事にしたいと思います。
抱っこすると泣き止むことが多いため、あやすのにたまに使っていました。その際には、股が開くように注意して使っていませんでした。
幸運にも、現時点で股関節脱臼の所見は出ておりませんが、それは本当にたまたまラッキーなだけだったと思います。使っている時間・頻度もそう多くはなかったことや、危険因子として、家族歴はなく、男児で、逆子ではなかったというのもあると思います。
スリングの注意情報
発育性股関節形成不全とは、赤ちゃんの股関節がうまく発育せず、「太ももの骨(大腿骨)」と「骨盤のくぼみ(臼蓋)」がしっかりかみ合っていない状態を指します。本来、股関節はボールと受け皿のようにかみ合うことで安定し、歩く・立つなどの動きを支えています。しかし、形成不全があると受け皿が浅かったり、骨が外れやすかったり(亜脱臼・脱臼)します。
原因は一つではなく、生まれつきの体の特徴、赤ちゃんがお腹の中で動きにくかったこと、逆子、女の子であること、きつく足を伸ばすようなおくるみや抱き方などが影響するとされています。
乳児期に見つかると、装具(足をM字開脚に保つ器具)で関節が正しい形に成長するよう促すことが多く、多くの子が問題なく育ちます。しかし、発見が遅れると歩き方の異常、痛み、将来的な変形性股関節症のリスクにつながることがあります。
そのため、早期発見がとても大切です。定期健診で足の開き具合を確認したり、必要に応じて超音波検査やX線で評価します。気になる点があれば、早めに医療機関に相談することで、将来の負担を大きく減らすことができます。
赤ちゃんの股関節脱臼 ―正しい知識と早期発見のために― | 日本小児整形外科学会.

家庭では、赤ちゃんを縦方向に抱く、おくるみを使う時に脚を包まないなど、脚をM字の形に保つことが大事だといいます。
整形外科医インフルエンサーのおると先生も何度も啓発されています(ごめん、おると先生、、、ちゃんと見てなかった)
赤ちゃんのスリング横抱きのポストが流れてきましたが、赤ちゃんの股関節の発育には「脚を閉じたままにしないように育てる」ことがとても大切なので知っておいて欲しい
— おると🦴整形外科医@筋トレ (@Ortho_FL) October 8, 2025
M字開脚になるように正面から抱っこしてあげる「コアラ抱っこ」が医学的にオススメ
知らない人結構多いので何回でもポストするよ pic.twitter.com/7YaCbzh8Dz
なお、商品説明にも実は書いてました(けっこう下の方ですが)ちゃんと読みましょう。なお、スリングの使用を妨げるものではありません。注意事項を踏まえて正しく使えばとても便利です。営業妨害とみなされるのもアレなので商品名は載せません。
おわりに
スリングを使うときは気をつけましょう。この記事はシンプルにそれだけがメッセージです。
育児って本当に色々なところに落とし穴があるので、情報弱者は危険だなって痛感します。本記事が、誰かに届いて、助けになれば幸いです。
産業保健的コラム:このコラムは、私の専門である産業保健領域になぞらえて、この記事を補足で説明します。
〜因果関係の難しさと二次的加害の注意〜
スリングの不適切な使用が股関節脱臼のリスクを高める可能性があることは、国内外の文献や専門団体の見解から一定のコンセンサスがあるように思われます。そのため、「股関節脱臼を予防するためにも、スリングは正しい姿勢で使用しましょう」というメッセージは、予防的観点から妥当だと思います。
一方で、すでに股関節脱臼を起こした赤ちゃんの親に対して、「スリングの使い方が悪かったから脱臼したのだ」と断定的に説明することは適切ではありません。因果関係が “ありそう” なことでも、特定の個人の出来事に原因を一つに帰すことは医学的にも倫理的にも成立しません。これは、肺がんの患者に対して「タバコを吸ったから肺がんになった」と単純化して断定して説明することが適切でないのことと同じ構造です。
さらに、「〜していれば、〜にならなかったのに」といった言葉は、結果を本人(あるいは家族)の過去の行動に結びつけてしまい、二次的加害につながる可能性があります。予防のメッセージを伝える際には、こうした配慮が特に重要です。
産業保健活動は予防活動だからこそ、予防のためにメッセージを出す際と、事後にメッセージを出す際には、これらを明確に分けて説明することが非常に重要です。
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ちょっと癖のある投稿多めですが笑
また、夫婦でラジオも始めました。
育児トークは少な目ですが、よかったら聴いてください!
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