なぜオルタナギタリストはジャズマスターを使うのか― サーフギターからオルタナの象徴になったギター
ギターを長く見ていると、どうしても気になることがあります。
オルタナ系のギタリスト、やたらとジャズマスターを持っている。
もちろんストラトやレスポールを使う人もいます。
でも、なぜかジャズマスターが多い。
これはずっと前から語られている話で、今さら感もあるテーマです。
ただ、改めて順番に考えてみると、意外と面白い歴史がある気がします。
少しだけ整理してみます。
そもそもジャズマスターは売れなかった
ジャズマスター(Fender Jazzmaster)は1958年にフェンダーが作ったギターです。
当時のフェンダーの中では、むしろ高級モデルでした。
名前の通り、ジャズギタリストに使ってもらうために作られたそうです。
ところが。
当のジャズギタリストたちは、ほとんど使いませんでした。
結果として、このギターは中古市場に大量に流れます。
しかも、あまり人気がない。
つまり。
中古で安い。
ここが、すべての始まりだったのかもしれません。
パンクとアートロックの時代
1970年代になると、パンクやニューウェーブのギタリストがこのギターを手にします。
理由は単純で、安かったから。
有名なのはTelevisionのトム・ヴァーレインです。
ニューヨーク・パンクの名盤「Marquee Moon」で、あの細いアルペジオをジャズマスターで弾いていた。
ここで少しだけ、このギターのイメージが変わります。
「ジャズのギター」ではなく
「ちょっと変わったギター」。
この空気は、後のオルタナに少しつながっていく気がします。
そして90年代
ジャズマスターのイメージを決定的に変えた人がいます。
Dinosaur Jr.のJ・マスシス。
爆音です。
マーシャルにファズを突っ込んで、ジャズマスターを鳴らす。
この時点で、ギターのキャラクターが完全に変わります。
ジャズマスターは
「ジャズのギター」
ではなく
「轟音のギター」
になります。
シューゲイズとアーム
次に登場するのが、My Bloody Valentineのケヴィン・シールズです。
シューゲイズの代表作「Loveless」の轟音ギターでも有名です。
この人は、ジャズマスターのアームを使ってコードを揺らします。
あの独特の浮遊感。
実は、ジャズマスターのブリッジ構造だからできる部分も大きいそうです。
結果として
ジャズマスター
=
揺れる轟音
みたいなイメージが出来上がります。
なぜオルタナの象徴になったのか
ここまで来ると、理由はなんとなく見えてきます。
・中古で安かった
・変わった見た目
・ノイズも多い
・アームが独特
・でも音は独特
つまり、少し扱いづらいギターです。
でもオルタナの人たちは、むしろそういうものを好む傾向があります。
完璧じゃない感じ。
そこに味がある。
そんな空気。
日本でも
日本のオルタナ系でもジャズマスターはよく見ます。
ナンバーガールの田渕ひさ子。
羊文学の塩塚モエカ(ジャガーのほうがメインですが)。
君島大空(最近はもっぱらテレキャス?)。
最近だと(別に最近じゃないっぽいですが)、ゲスバンドの高野さんもジャズマスターを使っています。
別に「このギターじゃないとダメ」というわけではないと思います。
でも、なぜか手に取る人が多い。
それは多分、このギターが持っている歴史のせいかもしれません。
まとめ
最初は売れなかったギターでした。
でも安かったから、パンクの人が使った。
その流れでオルタナの人が使った。
そう、オルタナギタリストがジャズマスターを使う本当の理由は
オルタナ系の人たちは割と貧乏だった、っぽいのです💦
気がつけば、オルタナの象徴みたいになっていた。
ジャズマスターって、そういうギターなのかもしれません。
不思議なものです。
代表的ジャズマスターギタリスト
Thurston Moore
J Mascis
Elvis Costello
Nels Cline
追記:2026年現在のジャズマスター事情
最近はオルタナだけでなく、インディーやポップスでもジャズマスターを見ることが増えました。
ノイズや扱いにくさを含めて、
「普通のストラトとは違うキャラクター」
が魅力なのかもしれません。
また近年は、漫画やアニメ『ぼっち・ざ・ろっく!』の影響でギターそのものに興味を持つ人も増えました。
作中では黒いレスポールやYamaha Pacificaが印象的に登場しますが、原作では後藤ひとりがジャズマスタータイプのギターを使っている描写もあり、そのモデルはサイケデリズムの Psychomaster が元ネタではないかと言われています。
僕もまだまだ研究中ですが、ジャズマスターは本当に不思議なギターだと思います。
