【#文学フリマで買った本】「寺×走るアンソロジー」
文学フリマで買った本
「朧月 ~短編集~」
「稲麻竹葦 準備号 第十二号テーマ:斎宮」
「京都の美味しい食いもん」
「寺×走るアンソロジー」
「京のれん歩きvol.10 わらび餅大作戦」
「京都の風呂屋を歩く」
「本屋図鑑 だから書店員はやめられない!」
文学イベントの一日
愛読書の出会い
四条大橋と先斗町
誓願寺と誠心院
新京極通を歩き尽くす
キッチンくじらで日替わり定食
静かな熱気の中で感じたこと
白川筋を歩く
東三条社こと大将軍神社[完]
「寺×走る」のテーマで貴方ならどう書きますか? ——本が好きな方のコミュニティ「彩ふ読書会」のスピンオフ企画、「同人誌を作ろう会」の参加者有志でつくったアンソロジーです。5つのエッセイと4つの創作小説を収録しています。
「寺×走るアンソロジー」は、さんごさんの短編集と同じく、最初から購入を決めていました。
京都初お披露目とのことですが、昨年9月に開催された『文学フリマ大阪13』の時からずっと気になっていた一冊です。当時、ブースを通りがかり若干気になったものの、人生初の文フリということもあり、すべてのブースを見て回ることに集中してしまいました。結局購入せずに会場をあとにしたのですが、帰宅後にSNSで多くの購入報告を目にし、買っておけば良かったと後悔。『文学フリマ京都10』でも出品されることを知り、3階 第3展示場の「く-56」へ駆けつけました。
京都を愛する者にとって、「寺×走る」という言葉は、走り坊さんの伝説が残る『引接山 大蓮寺』を想起させます。洛陽八番観音霊場としても知られる大蓮寺は、ちょうど1ヶ月前の京都検定1級に登場したばかり。そういえば、みやこめっせから三条駅へ向かう際に立ち寄れば良かったですね。白川筋の写真を撮りたくて、つい南へ下りてしまいました。

【エッセイ】走る 五段活用/夕月詩葉
タイトルにある「五段活用」の文法的な仕掛けが、一人の女性が歩んできた人生の足跡と見事に重なり合って、その筆致の鮮やかさに驚かされました。「走る」という行為を通じて描かれる過去から現在への時の流れが、まるで一本の道のように美しく、最後には清々しい読了感に包まれました。作者の描く他の物語ももっと覗いてみたいと思わせる魅力に溢れた一編でした。
【エッセイ】成田山へ行って、廃線跡を走ってきた/ひじき
旅の行き先が決定するまでの試行錯誤が実にリアルで、計画段階特有の高揚感が真っ直ぐに伝わってきました。成田山新勝寺から廃線跡へと続く行程は未知の発見に満ちており、瑞々しい描写によって自分も一行に加わっているような臨場感に包まれました。読み終えた後、地図を広げてどこか遠くへ出かけたくなる。そんな旅の衝動を呼び起こす一編でした。
【エッセイ】ツネちゃんに会いに行く/小嶋蒼空
疎遠だった祖父の足跡を辿り、寺の住職「ツネちゃん」を訪ねるエッセイ。祖父の記憶や過去と向き合う主人公の姿に、涙が出なかったかつての自分を重ねました。先日父が亡くなり、甥や姪も当時の私と同じ心境なのだろうか。ふと湧いたそんな思いが、物語の静かな筆致と重なり胸に迫ります。時を超えて伝わる祖父と友人の深い絆が、失ったものへの愛おしさを静かに教えてくれる一編でした。
【エッセイ】このエッセイと一緒に観たい映画 今敏作品『千年女優』と他者の記憶を旅するということを考える/小嶋蒼空
祖父の逝去に際し、なぜ涙が溢れなかったのか。その葛藤を抱える著者は、映画『千年女優』を補助線に他者の記憶を辿ります。先のM-1グランプリ決勝で「映像が浮かぶ漫才は面白い」と評されたように、ツネちゃんとの対話と映画を通じて、祖父との時間が静かに立ち上がってくる描写に深く胸を打たれました。「記憶を旅する」ことの美しさが、そっと心に触れてくる一編でした。
【エッセイ】京都を、走る/吉田ちか
仕事を辞めた筆者が、京都の観光名所をジョギングで巡り、縁切りで名高い神社への参拝を機に走る楽しさを再確認するエッセイです。私も昨年の元日に訪れたその場所は、悪縁を絶つだけでなく落語との縁を長年紡いできた歴史もあり、「縁切り=再出発」という前向きな意味をそっと教えられた気がします。筆者の新たな一歩を応援したくなる一編でした。
【小説】あなたの知るジョン・レノンは心の中/金梅あのん
有名な外国人と京都のお寺の組み合わせといえば、1980年の焼酎CM撮影時に正伝寺の庭園で涙を見せたデヴィッド・ボウイが知られています。本作は、ジョン・レノンが妻とともに京都の名所を訪れた過去の出来事に思いを馳せる女性と、七歳年下の男性が織りなす創作小説です。街コンで知り合った登場人物二人の距離感が気になる一編でした。
【小説】逃避抄/シュシュ
50歳になったぶっきらぼうな男と不思議な少女が織りなす、作者の独特な世界観が描き出された一作です。少女の幻影に取り憑かれた男は、現実と幻想の境目が曖昧なまま、タイトルの通りに逃避行を続けていきます。静かな余韻のなかに、どこか暗い影を落とす結末へと向かう、その危うさが印象的な一編でした。
【小説】化け寺/柴野日向
古寺と怪奇という昔話ではおなじみの舞台設定ながら、既存のものとは異なる工夫が随所に散りばめられていて、固定観念を覆す展開にワクワクしながら読み進めました。緊張と緩和のバランスがとても心地よく、読後は不思議と爽やかさに包まれる一編でした。
【小説】廃れる前に/ののの
旅行記だと思って読み進めていたら、途中からこぼれんばかりの読書愛に満ちていて圧倒されました。寺のホテルへと導かれ、大好きな読書に耽る二人。奇妙な体験に違和感を覚えつつも、その特異な空気感に引き込まれて、思わず唾を飲み込みました。そして物語は静かに終息するのかと思いきや、映画のキャッチコピーさながらの「驚愕の結末」が待ち受けていて…。最後まで目が離せない一編でした。
アンソロジーを読み終えて
期待以上に京都が舞台となった作品が多く、京都好きとして心躍りました。観光好きでもあるため、ページをめくるたびに各地を旅しているような気分を味わえたのも大きな喜びです。私はどちらかと言えば、フェスよりも一人の曲をじっくり聴きたい派なのですが、この一冊を通してアンソロジーならではの醍醐味を味わうことができました。執筆された方々の他の作品も、ぜひ手に取ってみたいと思っています。
《了》
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