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【フェーズ1-3】 「有名な会社」と「良い会社」は違う。そして「安定」を求めて選ぶ会社ほど、あなたの未来を不安定にする 【ITエンジニアの卵に贈る、就活の書】

 この記事は「ITエンジニアの卵に贈る、就活の書」シリーズの一本です。シリーズ全体の目次はこちら(扉記事)からご覧いただけます。


 エンジニアを目指す学生のみなさん、こんにちは。クオリティアーツの池田です。

 ITエンジニアの卵に贈る、就活の書・フェーズ1-3の記事です。前回のフェーズ1-2では、IT業界をひとつの軸で切らずに、4つの軸で立体的に眺める方法をお話ししました。

 今回はさらに一歩進んで、フェーズ1「気づく」の総論で挙げたその2にあたるテーマ、「有名な会社」と「良い会社」の違いをお話しします。あわせて、就活で「安定」を求めるほど、なぜ未来が不安定になるのかも掘り下げます。

 この記事は、フェーズ1シリーズのなかでも、いちばん「就活の思い込み」を見直すための1本です。ここを通り抜けると、その先のフェーズ2・3・4での会社の見方が、大きく変わっていきます。

 私自身、エンジニアとして、会社員として、そしてコンサルタントとして、25年近くいろいろなIT企業を内側から見てきました。有名度の高い会社も、名前をあまり知られていない良い会社も、その両方の内側を見てきました。そこで感じてきたことを、これから就活のスタート地点に立つみなさんへ、まっすぐ届けます。

 新卒の就活中の方はもちろん、第二新卒として他社の面接に臨む場面でも、同じ話が土台になります。


1. 就活生が最初に持ちがちな、「有名度=安全」の思い込み

 就活を始めた学生さんと話すと、無意識のうちに次のような感覚を持っていることが多いです。

  • 「テレビCMをよく見る会社なら、間違いないだろう」

  • 「親世代が知っている会社なら、安心だろう」

  • 「大企業に入れば、その後のキャリアも安泰だろう」

  • 「名前を聞いたことのない会社は、リスクが高そう」

 この感覚は、決してみなさんの落ち度ではありません。社会全体が長い時間をかけて、「有名度=安全」という思い込みを積み上げてきたからです。親世代がそう教える。就活情報サイトがランキングを作る。周りの友人も「まず有名なところ」と言う。無意識のうちに、この物差しで会社を測るクセがついてしまう。

 でも、25年近く業界を見てきた私の目には、この物差しはエンジニアという職業には、ほとんど合っていないように映ります。

 この記事で伝えたいのは、「有名」と「良い」は、まったく違う軸で語られるべきということです。順番に紐解いていきます。

2. 「有名」とは、そもそも何か

 まず、「有名な会社」というときの「有名」は、何を指しているのでしょうか。整理してみると、次の3つが混ざっていることが多いです。

2-1. ブランド認知度

 テレビCM、ニュース、SNS、電車の中吊り。社会一般に名前が届いている度合いです。BtoC(消費者向け)事業をやっている会社ほど、認知度が高い傾向があります。

2-2. 事業規模と社員数

 売上、時価総額、社員数。組織としての大きさです。数千人から数万人規模の会社は、名前を知られやすくなります。

2-3. 親世代・社会全体の知名度

 「うちの親も知っている」「テレビの経済ニュースでよく聞く」という世代を超えた認知です。歴史のある企業ほど、この意味で有名になります。

 この3つが、就活で「有名」と呼ばれるものの正体です。どれも大切な要素ですが、共通して言えるのは、エンジニアとして育つ場所としての良さとは、直接は関係しないということです。

3. 「良い」とは、エンジニアにとって何か

 では、「良い会社」とは、エンジニアにとって何なのか。25年近く現場を見てきた私は、次のように整理しています。

 良い会社とは、エンジニアが伸びる場所を、意識して用意している会社

 これを、もう少し具体的に分解します。3つの視点から、良い会社の日常を並べます。

3-1. 視点1:知ろうとする姿勢がある

  • 社内で技術勉強会が日常的に開かれている

  • 経営層や部課長が、技術のことを自分の言葉で語れる。かつ、その実践の証拠が学生にも見える

  • 経営層や部課長が、直近1年以内に業務でコードを書いた実績、あるいはコードレビューに参加した実績を持つ

  • 技術ブログや公開資料など、社外への技術発信が活発である

  • 経営層や部課長自身も、技術発信・カンファレンス登壇・技術書執筆といった発信を続けている

  • 新しい技術に対して、「まず試してみる」文化がある

  • コードレビューが、知識共有と学び合いの場になっている

  • 技術書購入補助・カンファレンス派遣・業務時間内の学習時間などの学びの制度が、社員の職位で差別されず、経営層自身にも適用されている

3-2. 視点2:応用する自由がある

  • エンジニアが技術選定の意思決定に加われる

  • 上流の設計から下流の運用まで、幅広く関われる機会がある

  • 継続的インテグレーション(CI)や継続的デリバリー(CD)などの仕組みが整っている

  • 開発と運用が分断されず、DevOpsやSREの考え方が浸透している

  • チームとして意思決定する文化がある

  • 経営中期計画と並んで、技術投資・技術負債への向き合い方・技術人材育成の道筋を、経営層が自分の言葉で語れる

  • 業務上の指示や情報共有が、文書と口頭の両方で行われている

3-3. 視点3:責任を仕組みで受け止める

  • 失敗を、個人の責任ではなく、仕組みの問題として扱う

  • ポストモーテムなどの振り返りの仕組みがある

  • ユーザーやクライアントに対する誠実さが、日々の意思決定に滲む

  • 情報公開・セキュリティ・プライバシーへの姿勢がしっかりしている

  • 若手も先輩も対等に議論できる、心理的安全性のあるチーム

  • 新卒の若手が、直属の上司以外にもキャリアの相談ができる仕組み(メンター制度、スキップレベルの対話など)を持つ

  • 多様な背景を持つ社員(性別、国籍、家族の形、身体の特性、居住地など)が、対等に働ける環境の整備、あるいはその整備計画を持つ

 これら22項目のいくつかが揃っている会社が、エンジニアにとっての「良い会社」です。有名度や規模とは、独立した軸であることが、感じ取れると思います。

4. 有名度と、良さの関係

 では、実際のところ、有名度と良さは、どんな関係にあるのか。25年見てきた私の実感を、正直にお伝えします。

 有名度と良さは、重なることもあれば、重ならないこともある。それだけです。

  • 有名で、しかも良い会社:世の中には確かに存在する。ただし、そういう会社は倍率が高く、就活での競争は激しい

  • 有名ではないが、素晴らしく良い会社:意外なほどたくさんある。特に、BtoB事業や地方IT企業、規模の小さい専門特化型企業などに多い

  • 有名だけど、エンジニアの育成環境が薄い会社:これも一定数ある。有名度と育成環境は、別軸だから

  • 有名でもなく、育成環境も薄い会社:これも当然ある

 大切なのは、「有名かどうか」だけで就活を進めないことです。有名度は、あくまで補助情報。エンジニアとしての自分が伸びる場所かどうかを、別の軸で見ることが、フェーズ1で持っておきたい姿勢です。

5. 「安定」を求めるほど、未来が不安定になる、という話

 もうひとつ、就活でよく聞く言葉があります。「安定」という大切な言葉です。

 「安定した会社に入りたい」「安定したキャリアを歩みたい」。これも自然な気持ちです。でも、エンジニアという職業においては、「安定」を求める姿勢そのものが、未来を不安定にするという、少し逆説的な現象があります。

 なぜか。3つの理由でお話しします。

5-1. 理由1:エンジニアという職業は、変化と付き合う職業だから

 フェーズ1-1でお話ししたように、エンジニアという職業は、変化と付き合い続ける職業です。10年前は主流でなかった技術が、いまは中心にある。5年前に注目されていた技術のいくつかは、いま影が薄い。

 このなかで、「変化しなくていい安定」を求めて会社を選ぶと、変化から取り残された環境に自分を置くことになります。新しい技術に触れる機会がない、古い技術だけで仕事が回る、社外の変化から遮断される。そうした環境で数年過ごすと、転職市場で自分の市場価値が下がっていたということが起こります。

 「安定」を求めた結果、将来のキャリア選択肢が狭まる。これが、逆説の第一です。

5-2. 理由2:「安定した会社」は、実は変化への耐性が弱いことがあるから

 「安定」というと、大企業や歴史のある会社を思い浮かべることが多いです。もちろん、大企業のなかにも、変化に強い、素晴らしい会社はたくさんあります。ただ、大きさや歴史そのものは、変化への強さを保証しません

 近年、業界の外から見ると強そうに見えた会社が、業界内部の変化に追いつけずに苦しむ場面が増えています。これは日本だけの話ではなく、世界のテック業界でも同じことが起きています。「安定」の代名詞だった会社が、5年、10年で様変わりする。時代のスピードが、企業の「安定」を上回っているのが、いまの現実です。

 「安定した会社」を選んだつもりが、入社後に会社のありようが大きく変わる。これが、逆説の第二です。

5-3. 理由3:エンジニアとしての自分が、社内でしか通用しなくなる可能性

 これは、いちばん静かで、いちばん重い理由です。

 会社の中でしか通用しない技術、その会社独自のフレームワーク、その会社独自のプロセス。これらだけで数年働くと、社外に出たときに自分の言葉で自分の技術を語れなくなることがあります。フェーズ4の面接記事群でお話ししていますが、面接で自分の技術を自分の言葉で語れるかどうかは、良いエンジニアであるかどうかの大きな指標です。

 とくに、担当する仕事が決められた仕様の実装に限られ、技術選定や上流の設計に触れる機会が少なく、社外発信からも離れたまま数年を過ごすと、外に出たときに「自分がやってきたこと」を、社外の言葉で語れなくなります。日々の仕事のなかに、技術選定・上流の設計・社外発信への接点がどれだけあるか。ここを、就活の段階で確かめておいてほしいのです。

 「安定した会社」で長く働くつもりだったのに、いざキャリアを変えたくなったとき、選択肢が少ない。これが、逆説の第三です。

6. 「変化と付き合える会社」を選ぶ、という発想

 だから、就活のこの時期に、私はみなさんにこう提案します。

 「安定した会社」を探すのではなく、「変化と付き合える会社」を探してみてください

 変化と付き合える会社の共通点は、先ほどの3つの視点と重なります。

  • 知ろうとする側:新しい技術を、まず試してみる文化がある

  • 応用する側:エンジニアが技術選定の意思決定に加われる

  • 責任を受け止める側:変化のなかでも、誠実さと責任を貫く姿勢がある

 この3つの姿勢を持つ会社は、時代がどう変わっても、変化を吸収して次の時代に進んでいけます。そこで働くみなさんも、同じように成長し続けられます。それが、いちばん本質的な「安定」の形だと、私は思っています。

7. 就活で使える、「有名度」と「良さ」を切り分ける3つの問い

 理論の話が続いたので、最後に実用的な話をひとつ。就活で会社を観るときに、「有名度」と「良さ」を切り分けるための3つの問いをお伝えします。この記事を読み終えたあと、気になる会社を眺めるときに、使ってみてください。

7-1. 問い1:この会社は、技術のことを、社外に発信していますか

 技術ブログ、勉強会登壇、公開資料、書籍執筆、オープンソース貢献。社外への技術発信の量と質は、その会社の技術文化の厚みを映します。有名度と関係なく、この発信は見えます。無名の会社でも、素晴らしい技術発信をしている会社はたくさんあります。

7-2. 問い2:この会社の募集要項には、エンジニアの育成についてどこまで書かれていますか

 新卒向けの募集要項で、「新卒からエンジニアとしてどう育つか」が具体的に書かれている会社は、育成を意識しています。この観点で募集要項を見比べると、会社の姿勢が浮かび上がってきます。ここは、フェーズ3-2「そのJDは、接続の入口として書かれていますか」で詳しく掘り下げます。

7-3. 問い3:この会社の経営層や部課長は、エンジニアとして今も現役ですか。その証拠は、学生にも見えますか

 経営層が技術を語れることは、最低限の入り口に過ぎません。社外に発信する企業であれば、経営層は自然と語れるようになります。それに、話術だけで技術を語ることは、誰にでもできます。私自身、25年近くこの業界を見てきましたが、その場では流暢に技術を語れるのに、実際には何年もコードに触れていない経営層や部課長に、何度も出会ってきました。特に地方中小のIT企業に、この傾向が強いと感じています。

 本当に確かめたいのは、その言葉の裏に、エンジニアとして今も手を動かしている実績があるかどうかです。直近のGitHub活動、個人名義の技術ブログ、コードレビューへの参加、技術選定の議事録に実務者として名前が残っているか。これらは、面接という一回きりの対話の中の言葉遣いよりも、はるかに裏取りしやすい記録です。詳しくは、フェーズ4-6「組織・経営面接」と、連載外の単発記事「面接逆質問22選」で具体的な問いをお話ししています。

 逆の側の実例も挙げておきます。2026年7月のエンジニアtypeの記事で、GMOインターネットグループ代表の熊谷正寿さんが、2か月でおよそ10万行のコードを書いたと語っています。手で書いたのではなく、Claude Codeに口頭で指示して生成させたものですが、いちばん新しい道具を、トップが自分で使い倒していることに変わりはありません。62歳です。しかも「通常業務は一切遅延させていません」と言い切っています。

 注目してほしいのは、コードの量ではありません。世に出たばかりの道具を、トップが誰よりも早く自分で試しているという一点です。IT企業が売っているものの本質は、技術です。だとしたら、その会社のトップが技術においてもトップであろうと走っているのは、特別なことではなく、当たり前のことのはずです。この問いは、高すぎる基準ではありません。やっている経営者は、実在します。だから、みなさんが会社を見るときに、この基準を下げる理由はありません。

 この考え方は、本シリーズ全体を貫く原則のひとつです。「語れるか」ではなく「実践し、その証拠が残っているか」。この物差しは、経営層・部課長に限らず、企業ポートフォリオ全般(フェーズ3以降で扱う技術発信、採用ページ、数字の開示)を読むときにも、繰り返し使うことになります。

 この3つの問いは、有名度に頼らずに会社の「良さ」を測るための、実用的な物差しです。

8. 3つの問いを、実際の会社リサーチに当てはめてみる

 3つの問いを実際にどう使うか、具体的なシナリオで整理しておきます。ある学生さんが、志望候補の会社Xについて調べる場面を、想像してみてください。

8-1. 問い1(技術発信)を、実際に使う場面

 会社Xの名前をGoogleで検索して、次を確認します。

  • 会社の公式技術ブログはあるか。あれば、直近3か月の更新頻度は

  • Zenn、Qiita、はてなブログの公式アカウントはあるか

  • 社員個人の技術ブログや、CTOのTwitter/X アカウントの発信内容

  • 会社のGitHub Organization(`github.com/会社名`)の活動状況

  • 直近1年の技術カンファレンス(PyCon、RubyKaigi、iOSDC、DroidKaigi、Cloudflare Meetup、生成AI Meetupなど)に、社員が登壇しているか

 これらが充実している会社は、技術発信を経営として支えている証拠。逆に、これらがほぼ空白の会社は、社内で技術を発信する文化が薄い可能性が高い。

8-2. 問い2(募集要項)を、実際に使う場面

 会社Xの新卒エンジニア募集要項を開いて、次を確認します。

  • 「エンジニア」「ソフトウェアエンジニア」「SE」「開発職」など、どんな呼称が使われているか

  • 使用技術スタックが、具体的に列挙されているか、あるいは抽象的な表現に留まっているか

  • 育成カリキュラム、メンター制度、1on1、書籍購入補助、勉強会支援などが、具体的に書かれているか

  • 「歓迎スキル」に、GitHub、OSS、コミュニティ活動、技術ブログといった項目があるか

  • 給与レンジや評価制度が、透明に開示されているか

 これらが具体的で丁寧に書かれている募集要項は、新卒に対する誠実さの証拠。逆に、抽象的な標語だけが並ぶ募集要項は、新卒への向き合い方が定型化している可能性がある。

8-3. 問い3(経営層の実践)を、実際に使う場面

 会社Xの経営層(CEO、CTO、VPE、CIO、CFOなど)や部課長の名前で検索して、次を確認します。技術投資の予算執行権を握るのは、CTOではなくCFOや財務責任者であることが多いです。CTOが技術投資を起案しても、その内容を理解しレビューできなければ、CFOは何を根拠に執行を判断しているのでしょうか。技術を理解せずに技術投資を承認するということは、内容を検証せずに印鑑を押しているのと変わりません。技術を扱うIT企業において、CTOの起案を理解しレビューできないCFOや財務担当取締役が存在するというのは、私はあってはならないことだと思っています。逆に、強いIT企業では、CFOや財務担当取締役がいちばん技術に詳しい、ということも珍しくないというのが私の実感です。CFOや財務責任者についても、経営層・部課長と同じ物差しで確認する価値があります。

  • 経営層・部課長個人のGitHubアカウントに、直近1年以内のコミット・PR・コードレビューのコメント履歴があるか

  • CFOや財務責任者であれば、SQLやスクリプトでのデータ分析、財務システムの構築・運用実務に、日常的に触れている実績があるか

  • 経営層・部課長個人名義の技術ブログ・note・Zennでの執筆があるか(会社の公式ブログの記事に、個人名の著者クレジットがあるかも確認する)

  • 経営層・部課長個人名義でのカンファレンス登壇(CFPを通した登壇)があるか

  • 技術書購入補助・カンファレンス派遣といった学習支援制度が、経営層自身の利用実績としても存在するか

  • カンファレンス登壇者一覧、技術書の著者ページ、OSSのコントリビューター一覧など、会社の外側にある第三者の記録に名前が載っているか

 これらが確認できる会社は、経営層・部課長自身がプレイヤーとして技術を実践している証拠です。逆に、検索しても個人名義の実践の記録が何も出てこない場合は、対話の中でどれだけ流暢に語られても、その言葉を裏付ける実績が伴っていない可能性があります。

 面接やカジュアル面談の場でも、この確認はできます。経営層・部課長のポートフォリオ(GitHub、技術ブログ、登壇資料)が見つかった場合は、それを話題にしてみてください。「このリポジトリのこの部分は、どんな判断で実装したんですか」と聞いたときに、本人の言葉で具体的に答えられるかどうかで、本当に自分で書いた・実践したものなのかが見えてきます。企業によっては、技術広報やライターが経営層名義でゴーストライティングしている場合もあるため、この一手間が裏取りになります。

 そして、経営層や部課長のポートフォリオが見当たらず、面接で話題にすること自体ができない場合は、それ自体が重要な判断材料です。エンジニアプロフェッションを自ら実践していない人の部下になって、エンジニアとして育つ機会は多くありません。作業者として使われるだけで終わる可能性が高く、この観点だけでも、応募先の候補から外すことを検討してよいと思います。

 これら3つの問いを、志望候補5〜10社に当てはめてみると、有名度とは別の物差しで、会社が並び替わっていくのが見えるはずです。この並び替えの姿こそが、本記事でみなさんに持ってほしい視座です。

まとめ

 本記事では、「有名な会社」と「良い会社」は違う、そして「安定」を求めるほど未来が不安定になる、という話をしました。

 「有名」の中身は、ブランド認知度・事業規模・親世代の知名度の3つで、どれもエンジニアとしての育ちとは直接関係しません。「良い」とは、エンジニアが伸びる場所を意識して用意している会社のことで、知ろうとする姿勢・応用する自由・責任を仕組みで受け止めるという3つの視点から、22項目で見えてきます。有名度と良さは、重なることもあれば重ならないこともあるので、別軸として扱ってください。

 「安定」を求めるほど未来が不安定になる理由は、変化から取り残される、会社側の変化に巻き込まれる、社外で通用しなくなる、の3つです。だからこそ、「安定した会社」ではなく「変化と付き合える会社」を探すことを提案します。会社を観るときの3つの問いは、技術の社外発信、募集要項の育成記述、そして経営層・部課長がエンジニアとして今も実践しているかどうかです。

 これで、フェーズ1「気づく」の4本がひととおり揃いました。次のフェーズ2「作る」からは、学生時代のあなた自身の準備に話が移ります。フェーズ1で持った物差しを、いよいよ具体的な行動に落とし込む時期です。とくにフェーズ2は、シリーズ全体で最も大事なフェーズです。

エンジニアの卵のみなさんへ、エール

 「有名な会社が、そのまま良い会社とは限らない」というこの話は、就活を始めたばかりのみなさんにとって、少し不安を呼ぶ話でもあったと思います。周りの友人が有名企業を目指すなか、自分だけ違う軸で会社を選ぶのは、勇気が要ります。

 でも、25年近く業界を見てきた私は、こう思っています。エンジニアとしての自分が伸びる場所を選ぶことが、いちばん確かな「安定」につながる、と。エンジニアとして市場で通用する自分を作れた人は、時代がどう変わっても、選択肢を持ち続けられます

 今週、気になる会社を1社選んで、「有名度以外の軸」で眺めてみてください。技術ブログを読む、募集要項の育成部分を読む、経営層の発信を読む。それだけで、その会社の「良さ」が、有名度とは違う言葉で見えてきます。

 一緒に歩きましょう。ボン・ボヤージュ。素敵な旅を。


次の記事はフェーズ2「作る」です。


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