【フェーズ2】 「作る」フェーズが、就活のすべてを決める。エンジニアの卵の、いちばん大事な長期戦 【ITエンジニアの卵に贈る、就活の書】
この記事は「ITエンジニアの卵に贈る、就活の書」シリーズの一本です。シリーズ全体の目次はこちら(扉記事)からご覧いただけます。
エンジニアを目指す学生のみなさん、こんにちは。クオリティアーツの池田です。
ITエンジニアの卵に贈る、就活の書・フェーズ2の記事です。前回までのフェーズ1では、就活の入口で立ち止まって見ておきたい3つのことをお話ししました。今回からはいよいよ、フェーズ2「作る」に入ります。エンジニア就活のシリーズ全体のなかで、いちばん大事なフェーズです。
フェーズ2は、大学1〜4年目を通した長期戦です。周りが就活を意識し始めるより前から、手を動かして「作れる自分」を作っておくことが、その後のすべてのフェーズを大きく変えます。ここを流してしまうと、フェーズ3以降で選ぶ会社の選択肢が、驚くほど狭まってしまいます。
私自身、エンジニアとして、会社員として、そしてコンサルタントとして、25年近くいろいろなIT企業を内側から見てきました。良いIT企業ほど、学生時代に手を動かしていた学生を、はっきり評価します。正直、これは何度見ても変わらない実感です。そこで感じてきた「作る」フェーズの重みを、これから就活のスタート地点に立つみなさんへ、届けます。
新卒の就活中の方はもちろん、第二新卒として他社の面接に臨む場面でも、同じ話が土台になります。
1. なぜ、「作る」フェーズがそこまで大事なのか
エンジニア就活を、私は6つのフェーズ(気づく・作る・接続する・確かめ合う・決める・歩き出す)に整理していますが、そのなかでフェーズ2「作る」をシリーズで一番大事なフェーズとして扱っています。なぜか。理由は3つあります。
1-1. 理由1:良いIT企業は、書類選考で「作ったもの」を見る
良いIT企業ほど、新卒エンジニアの書類選考で、学生時代に何を作ってきたかを丁寧に見ます。ポートフォリオ、GitHub、技術ブログ、ハッカソン参加歴、長期インターン経験。これらの手応えのある作品を持つ学生は、書類選考の段階で明確に評価されます。とりわけ、テストコードやCI設定など、品質への配慮がうかがえる痕跡は、動くだけのコードとの違いとして、プロフェッションの目には強く映ります。
良いIT企業の応募フォームには、GitHub URLや成果物リンクの記入欄が用意されています。こうした選考設計の細部は、その会社が新卒に何を求めているかの静かな表明でもあります。フェーズ3-2の危険信号の記事で、この視点を具体的に扱います。
だからこそ、「まだ作ったものがありません」という学生は、書類選考の時点で選ばれにくくなります。フェーズ2の準備の差が、そのままフェーズ3・4の選択肢の広さになるのです。
詳しくは各論記事、フェーズ2-2「強いポートフォリオの作り方」で書いています。
1-2. 理由2:面接で語れる「自分の言葉」は、作った経験からしか出てこない
面接の場面で、「なぜエンジニアになりたいのですか」「これまでどんなことに取り組んできましたか」と聞かれます。このとき、自分の言葉で具体的に語れるかどうかは、フェーズ2で何を作ってきたかに直結します。
「授業で学びました」「本で読みました」と抽象的にしか語れない学生と、「こういう課題があって、こういう方法で作って、こういう学びがありました」と具体的に語れる学生。面接官の目に強く残るのは、後者です。
面接で使える言葉は、手を動かした時間のなかからしか、生まれません。
1-3. 理由3:入社後の伸びが、変わる
これは長い目で見た話です。フェーズ2で「作る」経験を積んだ学生は、入社してからの成長スピードも変わります。作ることの手応え、詰まったときの解き方、動くコードにたどり着くまでの粘り。これらの感覚は、社会人になってからではなく、学生時代にこそ培われます。
学生時代に作った経験のある新卒は、入社1年目からエンジニアとして扱われます。そうでない新卒は、まず作ることを社内で学ぶところから始まります。この差は、最初の数年の成長曲線を大きく変えます。
2. そして、フェーズ2はプロフェッションへの入門でもあります
序章の3本でお話ししたように、エンジニアは公衆の福祉に責任を負う、高潔なプロフェッションです。前回のフェーズ1-2でお話しした4軸の立体地図でいえば、軸のどこにいる会社を目指すにしても、プロフェッションとしての基礎はここフェーズ2で積み上がります。ビジネスモデルや技術ドメインが違っても、「作った経験」というプロフェッションの土台は共通です。
フェーズ2で紹介する各アクションは、就活のためだけの準備ではありません。プロフェッションとしての生き方を、みなさんが自分で背負い始めるための、静かな積み上げでもあります。
なぜ学業を残すのか:プロフェッションの土台となる、情報系の基礎を丁寧に積み上げるため
なぜ技術書を読むのか:公衆の福祉を守るための、専門知識体系を身につけるため
なぜGitHubを育てるのか:公衆に対して、自分の仕事を透明にする姿勢の表明
なぜハッカソンに出るのか:同業者と共に短時間で解を作る、プロフェッションのリハーサル
なぜ時間設計をするのか:継続的に何かを残せる暮らしを、学生時代のうちに作るため
なぜ技術ブログを書くのか:公衆と同業者への、貢献と学びの共有
なぜ勉強会で発表するのか:第三者の目利きを通す場に、自分の学びを差し出すため
なぜバイトをIT企業でするのか:プロフェッションの現場の空気を、時給をもらいながら吸い込むため
なぜ長期インターンに行くのか:プロフェッションとしての実務のリズムを、体で学ぶため
なぜコミュニティに顔を出すのか:プロフェッションの先輩・仲間の輪に、自分を接続するため
これから各記事で、具体的なハウツーやTIPSを丁寧にお話しします。ハウツーの表面だけを追うのではなく、その裏にある「なぜこれをするのか」を、プロフェッションの側から読み取っていただければ、フェーズ2の期間で積み上がるものが、就活の合格通知以上の重みを持つはずです。
そして、みなさんがフェーズ2で積み上げたものを、良いIT企業ほど、次のような形で丁寧に受け止めます。
書類選考で、GitHubや技術ブログのリンクを、実際に開いて中身を読む
コードレビューで、動くかどうかだけでなく、設計や書き方の意図まで見て、対等に議論する
面接で、成果物の技術選定理由やつまずいた経験を、掘り下げて聞く
学生時代の活動を、就活だけでなく入社後の育成の材料としても位置づけている
みなさんが「作る」側で積み上げるものと、企業が「見る」側で用意している仕組み。この両方が噛み合ったとき、フェーズ2の努力は正しく評価されます。
3. フェーズ2で見ておきたい、3つの姿勢
「作る」フェーズは、時間の使い方を設計する時期でもあります。バイト、学業、個人開発、コミュニティ、本を読む時間、休む時間。この時期の時間の使い方が、そのまま就活の結果に反映されます。
私が学生さんによくお伝えする、フェーズ2で持っておきたい3つの姿勢があります。
3-1. 姿勢1:完成させることに、こだわる
小さくてもいいから、完成させる経験を持つこと。動くところまでたどり着かせる粘り。作りかけで止まっているアプリが10個あるよりも、動く小さなアプリが1個ある方が、就活では強いです。
3-2. 姿勢2:手を動かした時間を、記録する
GitHub、技術ブログ、Qiita、Zenn、はてなブログ。手を動かした軌跡を、外に見える形で残しておくこと。就活の書類選考は、みなさんが送ったリンクを、面接官が実際に開いて見ます。「見せられるもの」があるかどうかが、判定に直結します。
3-3. 姿勢3:一人で抱え込まず、仲間や先輩と作る
エンジニアの仕事の多くは、チーム戦です。フェーズ2の時期に、友達と一緒に作る、コミュニティに顔を出す、先輩に見てもらう経験を持つと、面接で語れる話に厚みが出ます。「一人で作りました」よりも「仲間とこう分担して作りました」の方が、面接官の印象に強く残ります。
4. フェーズ2の全体像。総論1本+各論14本、あわせて15本
フェーズ2は、シリーズのなかで最も記事数が多いフェーズです。総論のこの記事に加えて、各論14本(2-1〜2-14)を用意しています。それぞれの記事で、フェーズ2の具体的な行動を掘り下げていきます。
4-1. 方向づけ(1本)
フェーズ2-1 なぜ作るのか。プロフェッションと企業のジョブ・ディスクリプションが、同じ方向を指しているから
4-2. 全実践各論を貫く共通軸(1本)
フェーズ2-2 強いポートフォリオの作り方。公開と質、そして第三者の目利き
4-3. 実践各論(11本/2-3〜2-13)
フェーズ2-3 学業で作ったものを残す。授業と卒業研究を、履歴書に書ける成果物に育てる
フェーズ2-4 技術書を、血肉にする。読んで、作って、書き残す3拍子で身につける
フェーズ2-5 GitHubを、公開の場のハブとして育てる。フェーズ2の成果物を束ねて、世界に見せる(★ハブ記事)
フェーズ2-6 ハッカソンで、短距離の成果物を残す。参加ではなく、束ねられる作品として残す
フェーズ2-7 就活と学業と個人開発を束ねる時間設計。継続的に何かを残せる暮らしを作る
フェーズ2-8 技術ブログで、学びを言語化する。書く発信で、読める形の記事として残す
フェーズ2-9 技術イベントや勉強会で、発表する。話す発信で、第三者の目利きを通す
フェーズ2-10 学生時代のアルバイトを、IT企業で経験する。2,000時間のバイト選びに、本気度が表れる
フェーズ2-11 長期インターンで、企業内の実績を積む。担当したプロジェクトと成果を残す
フェーズ2-12 社外エンジニアコミュニティで、先輩・仲間の輪に加わる。参加・運営・つながりの履歴を残す
フェーズ2-13 大学における研究を知る。その研究、型と実態は一致していますか
4-4. 歩き方まとめ(1本)
フェーズ2-14 フェーズ2の歩き方。点で作らず、線で。そして面まで。その先に立体がある
全部を一気にやる必要はありません。まず1つ、自分の状況に合いそうなものを選んで、そこから始めてみてください。1つの記事が、次の1つに自然につながっていきます。フェーズ2-5はフェーズ2全体の成果物を束ねるハブ記事として位置づけているので、他の各論と行き来しながら読んでいただくのがおすすめです。
5. 「作る」フェーズを、どう始めるか
「作れと言われても、何から始めれば……」という学生さんに、いちばん軽い入口をお伝えします。
気になる会社の技術ブログを1本読んで、その会社が扱っている技術のうち、1つだけを触ってみる。これだけです。React、Go、TypeScript、Rust、Firebase、Kubernetes。名前を聞いたことがある技術のうち、公式チュートリアルが日本語で用意されている技術を、1つだけでも動かしてみる。
チュートリアルの完了は、1日から数日で可能です。動いた瞬間の「あ、これが動くのか」という手応えが、そのままフェーズ2の入口になります。
そこから先は、フェーズ2-1〜2-13の各記事が、それぞれの方向に案内してくれます。
まとめ
本記事で扱ったフェーズ2は、シリーズで最も大事なフェーズです。
良いIT企業は、書類選考で学生時代に何を作ってきたかを丁寧に見る。面接で語れる「自分の言葉」は、作った経験からしか出てこない。入社後の伸びも、学生時代の「作る」経験から始まる。3つの姿勢:完成させる/記録する/仲間と作る。各論14本(2-1〜2-14)で、フェーズ2「作る」の全体を丁寧に掘り下げていく。入口はシンプル:気になる会社の技術ブログを1本読んで、1つだけ触ってみる。
次のフェーズ2-1では、なぜ作るのかという土台の考え方を、プロフェッションの視座と、実際の企業の募集要項の両側から丁寧に整理します。フェーズ2の各論を歩く前に、まずここで方向を揃えます。
エンジニアの卵のみなさんへ、エール
フェーズ2の話は、みなさんに「いま動いてほしい」というメッセージを含んでいます。周りの友人がまだ動いていないこの時期に、みなさんが手を動かし始めることが、その後の就活のすべてを変えます。
大きなプロジェクトを目指す必要はありません。小さな一歩でいい。今週、1つの技術のチュートリアルを、1つだけ触ってみてください。それだけで、本記事で扱ったフェーズ2の扉が開きます。
一緒に歩きましょう。ボン・ボヤージュ。素敵な旅を。
次の記事はフェーズ2-1「なぜ作るのか。プロフェッションと企業のジョブ・ディスクリプションが、同じ方向を指しているから」です。
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