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【フェーズ2-9】 技術イベントや勉強会で、発表する。話す発信で、第三者の目利きを通す 【ITエンジニアの卵に贈る、就活の書】

 この記事は「ITエンジニアの卵に贈る、就活の書」シリーズの一本です。シリーズ全体の目次はこちら(扉記事)からご覧いただけます。


 エンジニアを目指す学生のみなさん、こんにちは。クオリティアーツの池田です。

 ITエンジニアの卵に贈る、就活の書・フェーズ2-9の記事です。前回のフェーズ2-8では、技術ブログで学びを言語化する話をしました。今回はフェーズ2「作る」の実践各論11本のうちの7本目として、技術イベントや勉強会で、発表するというお話です。

 書く発信と並ぶ、もう一つの発信軸が、話す発信です。connpassやDoorkeeperで開催されている無数の勉強会、PyCon JPやRubyKaigiのような大規模カンファレンス。そのどれか一つに登壇者として立つと、あなたの学びは、フェーズ2-2で扱った第三者の目利きを通した強い成果物として、公開の場に残ります。

 新卒の就活中の方はもちろん、第二新卒として他社の面接に臨む場面でも、登壇履歴はそのまま面接での対話の素材になります。


1. 話す発信は、プロフェッションとしての知識共有の中核

 序章-1で紹介したIEEE-CS/ACMのソフトウェアエンジニア倫理綱領の第8原則は、専門知識の共有を求めています。SWEBOK v4.0のソフトウェアエンジニアリング・プロフェッショナル・プラクティスの領域には、コミュニケーションと共同作業が明示されています。

 技術イベントや勉強会で発表するという行為は、この視座から見ると、プロフェッションとしての知識共有の中核です。同じ分野に取り組む他人と、同じ場で、同じ時間を過ごしながら、自分の学びを差し出し、他人の学びを受け取る。書く発信よりも密度の濃い、双方向のやり取りが生まれます。

 世界のエンジニアが集まる場所では、話す発信が仕事の一部として組み込まれています。KubeCon、DockerCon、AWS re:Invent、Google I/O、Apple WWDC、Microsoft Build、Meta Connect、NeurIPS、ICML、CVPR、USENIX、SIGGRAPH、OSDI、SOSP。世界基準の会社ほど、社員のエンジニアが国際カンファレンスに登壇し、その文化が組織の中心にあります

2. フェーズ2-2の第三者の目利きが、いちばん強く働く場所

 フェーズ2-2で、私は第三者の目利きが働く場所こそが、いちばん強いポートフォリオを生むという話をしました。技術イベントや勉強会での登壇は、その第三者の目利きが、もっとも強く働く場所の一つです。

  • CFP採択:Call For Proposals(登壇者募集)を経て採択されたということは、そのイベントの実行委員があなたの発表を「聞くに値する」と判断したという第三者の目利きです

  • イベント公式ページに、あなたの名前と発表タイトルが公開される:あなたの名前を検索すると、そのイベントの公式ページからあなたに辿り着けるようになります

  • Speaker Deck / Docswellでのスライド公開:登壇後のスライドが、あなたの個人アカウントではなく、イベントの公式アカウントから引用・紹介されることも多くあります

  • YouTube公式チャンネルに動画アーカイブが残る:多くのカンファレンスは、登壇動画をYouTubeで公開しています。「◯◯カンファレンス2026 △△セッション」で検索されたときに、あなたの動画がヒットする状態になります

  • 参加者のブログやXに、あなたの発表への言及が残る:来聴者が自分のブログやXに感想を書くと、その言及が公開の場に、あなたの技術的信用として積み上がります

 書類選考の担当者は、こうしたイベント公式ページ、Speaker Deck、YouTube、他人のブログ・Xを経由して、あなたに辿り着きます。あなたの個人アカウントだけに置いたスライドと、イベント公式ページから辿れるスライドでは、届く強度が違います。

3. 話す発信の3段階。無理なく積み上げる

 いきなり大規模カンファレンスに登壇するのは、勇気が要ります。話す発信は、3段階で無理なく積み上げるのがおすすめです。

3-1. 段階1:LT(Lightning Talk、5分の短時間発表)

 LTは、話す発信の入口として、いちばん入りやすい形です。5分間、1つのテーマを絞って話す。スライドは10枚前後で足ります。準備の負担は、技術ブログ1本を書くのと同程度か、少し軽いくらいです。

 学生さんが登壇しやすいLTの機会には、次のようなものがあります。

  • connpass、Doorkeeper で開催されている無数のLT会:「学生LT歓迎」「初心者LT歓迎」というタグで検索すると、毎週のようにイベントが見つかります

  • 大学のサークルや研究室の内部勉強会:まずここで練習してから外に出る、というルートも安全です

  • 地域の勉強会:東京・大阪・名古屋・福岡だけでなく、札幌、仙台、金沢、広島、沖縄など、日本全国で技術コミュニティが活動しています

  • オンラインLT会:Zoom、Google Meet、Discord、YouTube Live、X Space、Cluster などを使ったオンライン開催が定着しています。地方や海外から気軽に参加できる形になりました

 フェーズ2-4「技術書を、血肉にする」の3拍子の「書き残す」の最終段階、フェーズ2-6「ハッカソン」の成果物の後処理、フェーズ2-8「技術ブログ」で書いた記事、そのどれも、LTの素材になります

 手元にある成果物を、5分間のスライドに切り出して話す、という考え方で入ると、無理なく1本目が立ち上がります。

3-2. 段階2:中規模勉強会での20〜30分セッション

 LTを何本か経験したら、次は20〜30分の一般セッションに挑戦します。日本各地で開催されている中規模勉強会には、次のような領域別のコミュニティがあります。

  • Web系:Frontend Conference、TSKaigi、Node学園、Vue.js Japan User Group、Nuxt Meetup、React Tokyo、Cloudflare Meetup

  • モバイル系:iOSDC、DroidKaigi、Flutter Tokyo、React Native Tokyo

  • バックエンド・言語系:JJUG CCC、Java Users Group、PyCon mini、Rust.Tokyo、Go Conference、Kotlin祭、Elixir Meetup、RubyKaigi の地方版イベント

  • クラウド・インフラ系:CloudNative Days、Kubernetes Community Days、AWS Startup Community、Google Cloud Next の関連コミュニティ、HashiConf、Terraform Meetup

  • データ・機械学習系:MLOps、Data Engineering、Snowflake、BigQuery、Databricks の各コミュニティ、生成AI Meetup、LangChain 勉強会

  • セキュリティ系:AVTOKYO、CODE BLUE、SECCON、Security-JAWS

  • テスト・品質系:JaSST、WACATE、TEF道、TEF関西、Cloud Testing Meetup

 これらの中には、学生さんの登壇を歓迎する明確な枠を持っているコミュニティもあります。CFPの募集要項に「学生歓迎」「初登壇歓迎」と明記されていることも多くあります。まずは公式サイトやconnpassのイベントページを丁寧に読んでみてください。

 なかでもテスト・品質系のコミュニティは、学生の登壇者自体がまだ少ない領域です。フェーズ2-4で読んだ技術書や、実際に書いたテストコードの経験を、JaSSTやWACATEのような場で発表すると、他の学生と重なりにくい登壇履歴になります。

3-3. 段階3:大規模カンファレンスでの登壇

 3段階目は、大規模カンファレンスへのCFP応募です。ここには次のような場があります。

  • PyCon JPRubyKaigiiOSDC JapanDroidKaigiKaigi on Rails:数百人から千人規模の言語別カンファレンス

  • CloudNative Days TokyoKubernetes Community Days:クラウドネイティブ系の大規模イベント

  • Vue Fes JapanJSConf JPFrontend Conference Fukuoka:フロントエンド系の大規模イベント

  • DevOpsDaysRegional Scrum Gathering TokyoAgile Japan:プロセス・組織系

  • NeurIPS、ICML、CVPR、ACL、SIGGRAPH:機械学習・AI・画像・言語処理の国際学術会議

  • PyCon US、PyCon EU、RubyConf、KubeCon:海外の大規模カンファレンス

 大規模カンファレンスに学生時代に採択されると、就活の場面で他の学生さんとは比べにくい強い実績になります。CFPの締切と採択率、審査観点は、各イベントの公式サイトで公開されています。1年前から準備するつもりで、まずは応募してみる、というくらいの気軽さで挑戦してほしい場所です。

4. CFPを書く。世界標準の型を学ぶ

 大規模カンファレンスに応募するとき、CFPをどう書くかが最初の関門になります。CFPには、世界標準の型があります。

  • タイトル:短く、内容が伝わり、聞きたくなる。誇張しすぎない

  • アブストラクト(要旨):発表全体を100〜200語で要約する。何を、なぜ、どう、その結果何が伝えられるか

  • アウトライン:発表の骨組み。何分で、何を、どの順序で話すか

  • 想定される聴衆:どのレベルの、どういう関心を持つ人に向けた発表か

  • プロフィール:登壇者としての、あなたの経歴。学部・専攻・GitHub・Zenn・Speaker Deckのリンクなど

  • 付随資料:過去の登壇動画、書いた技術ブログ、GitHubリポジトリなど

 このCFPの型は、世界のカンファレンスで共通しています。KubeConやPyCon USのCFPの過去の採択事例を英語で読むと、質の高い応募がどう書かれているかが分かります。学生時代からCFPの型を学んでおくことは、社会人になってからカンファレンスに応募する土台になります

5. スライドはSpeaker Deck / Docswellで、公開の場に残す

 発表が終わったあとの一手間として、スライドをSpeaker DeckまたはDocswellに公開することをおすすめします。これは、フェーズ2-2で扱った公開性の原則の実践です。

  • Speaker Deck:世界標準のスライド共有サービス。海外のエンジニアも見に来ます

  • Docswell:日本発のスライド共有サービス。日本語圏の技術発信で近年広く使われています

  • SlideShare:長年使われているスライド共有サービス

 登壇スライドは、そのイベント終了後にも、検索やX、勉強会のまとめブログを経由して、繰り返し読まれます。世に出したスライドは、資産として長期に働く、という視座を持ってください。

 スライドを公開するときには、次の点も添えると、質が上がります。

  • 発表イベント名、日付、会場を明示する

  • 関連するGitHubリポジトリ、技術ブログ記事のURLを、スライドの最後に添える(フェーズ2-5のハブ機能)

  • 参考文献と出典を丁寧に載せる

  • 登壇後、YouTubeで動画がアーカイブされた場合、スライドの説明欄にリンクを追記する

6. 主要な学生向け・初心者向け勉強会の一覧

 「学生歓迎」「初登壇歓迎」の勉強会を探すときに、具体的にどんな場があるかの解像度を上げておきます。日本国内で、学生・初心者の登壇を明確に歓迎している勉強会・コミュニティを、領域別に整理します。

6-1. 学生・初心者歓迎の登壇機会

  • 技育祭/技育Camp/技育CAMPハッカソン:株式会社サポーターズ主催。学生エンジニア向けの登壇機会が定期的に用意されている

  • 学生LT大会(各地域のconnpassグループが主催):東京、大阪、名古屋、福岡、札幌、仙台など、地域単位で学生LT大会が開催されている

  • オンライン学生LT大会:Zoom・Discord等で地方からも参加可能な、月次〜隔月のオンラインLT会

  • 大学のIT系サークルの内部LT会:まずここで練習してから外に出るルート

6-2. 言語・技術別コミュニティの初心者歓迎枠

  • PyCon mini(各地方):東京以外の各地方(札幌、仙台、静岡、金沢、広島、九州など)で開催される小規模Python会議。学生登壇枠がある回も多い

  • Rust.Tokyo、Go Conference、Kotlin Fest:言語別カンファレンス。初回登壇歓迎の傾向

  • JJUG CCC(Java User Group)、Ruby会議の地方版:長年運営されているコミュニティ会議

  • TSKaigi、Vue Fes Japan、React Tokyo:Web系フロントエンド/TypeScript系

  • iOSDC Japan、DroidKaigi:モバイル系。学生スポンサー枠を持っている場合もある

  • Cloudflare Meetup、AWS User Group、Google Cloud Meetup:クラウド・インフラ系

6-3. 品質・テスト系(学生登壇者が少なく、狙い目)

  • JaSST(Japan Symposium on Software Testing):日本最大のソフトウェアテストのシンポジウム。東京、関西、九州、東海、北海道など地域別に開催

  • WACATE(Workshop for Accelerating CApable Testing Engineers):若手テストエンジニア向けの1泊2日合宿。学生・新人の参加が積極的に推奨されている

  • SQiP(Software Quality Profession)シンポジウム:日本科学技術連盟主催の品質保証のシンポジウム。学生発表枠あり

  • TEF道、TEF関西、TEFDO:地域のテストエンジニアフォーラム

 これらは、番外編B6(新卒エンジニアが最初に触れる、品質文化・テスト文化)でも紹介したコミュニティです。学生の登壇者自体がまだ少ないので、フェーズ2-4で読んだ技術書や、実装したテストコードの経験を、これらの場で発表すると、他の学生と重なりにくい登壇履歴になります

6-4. 生成AI・LLM時代の新しいコミュニティ

  • 生成AI MeetupLangChain 勉強会LlamaIndex 勉強会:ここ数年で急速に活発化した領域。学生登壇者が求められている

  • Anthropic MeetupOpenAI DevDay 関連イベント:API提供元主催のイベント。学生参加費が優遇されている場合が多い

6-5. 見つけ方

 勉強会を見つける入口として、以下のプラットフォームが便利です。

  • connpass(connpass.com):日本最大の勉強会プラットフォーム。「学生LT歓迎」「初心者歓迎」タグで検索

  • Doorkeeper(doorkeeper.jp):連続開催のコミュニティに強い

  • Peatix(peatix.com):大規模イベントに強い

  • X(旧Twitter)でのイベント公式ハッシュタグ:#技育CAMP #JaSST26 のような公式タグを追う

 connpassで「学生LT歓迎」で検索すると、常時数十件のイベントがヒットします。まずは1つ、直近1か月以内のイベントに、聴衆として参加してみてください。登壇者としてどんな発表が受けているか、コミュニティの雰囲気、司会の進め方を、実際に見ておくと、自分が登壇するときのイメージが持てます。

6-6. 企業主催の「勉強会」「ミートアップ」との距離感

 勉強会を探していると、企業が主催する「◯◯株式会社ミートアップ」「◯◯Tech Meetup」「◯◯Engineer Night」といったイベントが多く見つかります。無料で、しかも食事や飲み物が提供され、社員エンジニアが技術発信をしてくれる。学生さんにとっては、参加しやすい形に見えます。

 ここで、就活の視座から一つだけ、正直な話をしておきます。企業主催のミートアップの多くは、勉強会の体裁をまとった採用イベントです。会場設営、飲食、社員の登壇準備、その費用のほとんどは、その企業の採用予算から出ています。企業にとってのミートアップの狙いは、参加者に自社に良い印象を持ってもらい、そこからカジュアル面談や選考につないでいくことです。

 この構造そのものは、悪いことではありません。企業側も、学生さんとの接点を作りたい。学生さん側も、企業の中の人に会える。それぞれのメリットが噛み合った場です。ただし、「純粋に技術を学ぶ場」として企業主催のミートアップに参加すると、期待とずれることがあります。取り上げられる話題は、基本的にその会社にとって都合の良い側面に寄ります。失敗事例、撤退事例、技術負債の重さ、離職率の実態のような、その会社にとって不利になる話は、あまり出てきません。技術選定の失敗談が語られても、そこから「うちはこう乗り越えた」という良い着地に導かれることが多いです。

 だから、勉強目的で参加する場を選ぶときは、次のような使い分けを、頭の隅に置いておくとよいです。

  • 純粋に技術を学びたいとき:コミュニティ主催、ユーザーグループ主催、有志運営、大学・研究会主催の勉強会を選ぶ

  • 応募候補の企業を、内側から見たいとき:企業主催のミートアップに、応募先の企業リサーチとして参加する

  • 登壇の場としては、両方に価値がある:コミュニティ主催では第三者の目利きが強く働き、企業主催ではその企業のエンジニアに直接届く

 connpass のイベントページで、主催者欄が企業単独になっているか、コミュニティや複数企業の連名になっているかを確かめる習慣を持つと、その場の性格が事前に見えてきます。ただし、企業がお金と時間をかけて場を開くこと自体は、学生さんとの距離を埋めるための、まっとうな手段です。性格を知ったうえでどう使うかは、フェーズ3-6「カジュアル面談・OB訪問・企業説明会で応募前に実際に接続する」でもう一度扱います。

7. 著者が勉強会運営で見てきた、初登壇の学生さんの姿

 私自身、若手時代から JaSST、WACATE、TEF道 などのテスト系コミュニティの運営や、実行委員として登壇者の受け入れに関わってきました。ここでは、その立場から見えてきた「初登壇の学生さん」の姿を、少しだけ共有します。

 いちばん記憶に残っているのは、「大したことないネタなんですが」と前置きしてLTを始めた、ある学生さんの姿です。その学生さんは、大学の授業で書いた小さなテストコードの話をしただけでしたが、聞いていたベテランエンジニアが「その視点は面白い、うちの実務でも参考になる」と反応し、質疑応答が予定時間を超えて盛り上がりました。

 学生さんが「大したことない」と思う内容が、実は実務エンジニアには新鮮な視点として届く、という場面を、私は何度も目にしてきました。学生時代の視座は、みなさんが思っているより価値があります

 もう1つ記憶に残っているのは、登壇後の懇親会で、次のLT登壇に誘われた学生さんの姿です。1回目のLTを終えた学生さんは、懇親会で複数のコミュニティ運営者から「次回、うちのイベントでも話してほしい」と声をかけられました。LTの1本目が、次のLTを呼ぶという連鎖が、勉強会コミュニティの中では日常的に起きます。1本目の登壇のハードルさえ越えれば、そこから先の道は、驚くほど開けていきます。

 もう1つ、これも大切なことなので伝えます。登壇の質より、登壇したという事実の重みです。初登壇の学生さんは、多くの場合、緊張して声が震えたり、時間配分を間違えたり、質問に上手く答えられなかったりします。それでも、登壇したという事実は、書類選考の場面で確かに残ります。完璧な発表を目指す必要は、まったくありません。「私はこの内容について、公開の場で5分話しました」という事実自体が、あなたの技術者としての姿を伝えます。

 初登壇を控えているみなさんへ。大したことない、と思っているネタでも、5分話してみてください。そのネタを求めているコミュニティは、必ずあります。そして、1回登壇すれば、次の登壇への道が、自然と見えてきます。

8. 話す発信のセルフレビュー、5つの視点

 1本の発表を出す前に、次の5点をセルフレビューすると、質が上がります。

  • 一次情報にあたっているか:公式ドキュメント、RFC、論文、企業の公式ブログなどを、自分の手で読んでから話しているか

  • 実装と実験を伴っているか:スライドの中に、動くコード、実際に走らせた結果、GitHubリポジトリへのリンクがあるか

  • 他人の発表の要約になっていないか:類似の登壇や記事の焼き直しに終わっていないか

  • 話す時間内に収まるか:5分LTなら5分、20分セッションなら20分、リハーサルで実際に測る

  • 参考文献と謝辞を明示しているか:出典、引用、共同作業者への謝辞が丁寧に載っているか

 セルフレビューの型を持っておくと、発表の質のばらつきが減ります。

9. プロフェッションとして育つ環境を持つ会社は、話す発信を大切にしている

 シリーズ全体を貫く上位原則を、この記事でも確認します。その会社は、エンジニアをプロフェッションとして育つ環境を持っているか

 企業がこうした支援に投資する理由もまた、対等に知っておく価値があります。社員の登壇は、採用候補者への技術ブランディングであり、技術コミュニティへの還元でもあり、登壇準備の過程そのものが社員自身の学びの言語化にもなるという、企業側にとっても複数の狙いを持つ活動です。だからこそ、良い会社ほど、この支援を単なる福利厚生ではなく、経営の一部として位置づけています。

 プロフェッションとして育つ環境を持つ会社は、多くの場合、社員エンジニアが話す発信をすることを、経営として支えています。業務時間内での登壇準備を認める、カンファレンス参加費と交通費を会社が負担する、社内で登壇リハーサル会を開く、CFP応募の相談窓口を持つ、社員の登壇履歴をカンパニープロフィールに掲載する、ゴールドスポンサーとしてイベントを支援する。

 株式会社サイバーエージェント、株式会社ディー・エヌ・エー(DeNA)、株式会社メルカリ、株式会社リクルート、株式会社ZOZO、株式会社カヤック、はてな株式会社、株式会社SmartHR、株式会社freee、株式会社サイボウズ、株式会社エムスリー、GMOインターネットグループ株式会社など、多くの会社が、大規模カンファレンスにスポンサードし、社員登壇者を積極的に送り出しています。

 ここに挙がるのも、対外発信に投資しやすいメガベンチャーやWeb・SaaS系の会社が中心です。エンジニアを目指す学生さんの多くは、実際には、こうした会社ではなく、メーカー系・地方・中堅・中小企業に進んでいきます。大規模カンファレンスへのスポンサードや登壇支援がない会社でも、社内の小さな勉強会での発表を大切にしている会社、地域の技術コミュニティを地道に支えている会社は、確かに存在します。この実例リストは、あくまで一部の例として受け取ってください。

 募集要項の中に、社員の登壇支援制度や、カンファレンス参加補助が自然に登場するかどうかその会社の社員のSpeaker DeckやDocswellのアカウントを検索したときに、継続的な発表履歴があるかどうか。これは、話す発信をどう捉えているかの、いちばん静かで正直なシグナルです。

まとめ

 本記事では、技術イベントや勉強会で発表するお話をしました。要点は次のとおりです。

 プロフェッションとしての知識共有の中核は、IEEE-ACM第8原則やSWEBOKのCommunicationにつながる実践です。第三者の目利きがいちばん強く働く場所は、CFP採択、公式ページ掲載、公式YouTubeアーカイブ、他人からの言及。LTから中規模勉強会、大規模カンファレンスへと、3段階で無理なく積み上げていきます。

 CFPには世界標準の型があり、タイトル、アブスト、アウトライン、聴衆、プロフィール、付随資料で構成します。スライドはSpeaker DeckやDocswellへ公開すると、世に出したスライドが資産として長期に働きます。育つ環境の会社は、業務時間内の登壇準備、参加費支援、社内リハ会、公式のスポンサー支援を行っています。

 次のフェーズ2-10では、実務経験を積む入口として、学生時代のバイトを、IT企業で経験するというお話に進みます。

エンジニアの卵のみなさんへ、エール

 私自身、話す発信の入口は小さな社内勉強会でした。そこから徐々に社外の勉強会に足を運び、やがてWACATEのようなワークショップ型の合宿に参加し、そこで登壇の経験を重ねてきました。話す発信は、書く発信とは違う筋肉を使いますが、鍛えれば育っていきます。

 今週、なにか一つ、始めてみてください。connpassで「学生LT歓迎」で検索し、直近1ヶ月のイベントを1つ探してみる。フェーズ2-8で書いた技術ブログ記事を、5分のスライドに切り出して、手元にドラフトを作ってみる。過去に採択された学生さんのCFPを、Speaker Deckで検索して読んでみる。どれか1つで、本記事の1歩目です。

 一緒に歩きましょう。ボン・ボヤージュ。素敵な旅を。


次の記事はフェーズ2-10「学生時代のアルバイトを、IT企業で経験する。2,000時間のバイト選びに、本気度が表れる」です。


#エンジニア就活 #新卒エンジニア #勉強会 #カンファレンス #エンジニアの卵に贈る就活の書


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