見出し画像

【フェーズ3-6】 カジュアル面談・OB訪問・企業説明会で、応募前に実際に接続する。会って確かめ、持ち帰って確かめ直す 【ITエンジニアの卵に贈る、就活の書】

 この記事は「ITエンジニアの卵に贈る、就活の書」シリーズの一本です。シリーズ全体の目次はこちら(扉記事)からご覧いただけます。


 エンジニアを目指す学生のみなさん、こんにちは。クオリティアーツの池田です。

 ITエンジニアの卵に贈る、就活の書・フェーズ3-6の記事です。前回のフェーズ3-5では、4つ目の観点・数字のお話をしました。企業ポートフォリオの数字面で、JDを裏取りする視点でした。

 今回はフェーズ3の5つ目の観点、対面の実践に入ります。他の4つの観点(JD/技術発信/採用ページ・中途JD/数字)が「情報の裏取り」だったのに対して、この5つ目の観点は、実際にその会社の人と対面で対話する場です。カジュアル面談、OB訪問、企業説明会、オフィス訪問、オンラインイベント。応募を決める前に、実際に会う場です。

 ここで、双方のポートフォリオを持ち寄って、対等に確かめ合います。学生さんが自分のポートフォリオを持ち込み、企業側も自分のポートフォリオを差し出す。応募前に、対等に接続する場です。

 そして、この記事でいちばんお伝えしたいことを、先に書いておきます。対面は、確認の終点ではありません。会って初めて出てくる話があり、その話を持ち帰って、JDや技術発信や数字を読み直す。会って確かめ、持ち帰って確かめ直す。この往復までが、5つ目の観点です。

 もうひとつ。5つの観点は、どの観点から入っても構いません。逆求人イベントでスカウトをもらった、サマーインターンで会社を知った、大学に来た説明会で初めて名前を聞いた。対面がいちばん最初の入口になることは、就活では珍しくありません。その場合も、大切なことは変わりません。入った観点から、他の4つへ戻れることです。

 新卒の就活中の方はもちろん、第二新卒として他社の面接に臨む場面でも、そのまま使える内容です。


1. 前提:応募前のお見合いと、応募後の選考は、性質が違う

 大切なことを、最初に確かめておきます。フェーズ3-6で扱う対面の場と、次のフェーズ4で扱う面接は、性質が違います

 応募前のお見合い(フェーズ3-6):

  • 選考ではない(合否判定なし)

  • 企業と学生が対等に情報交換する場

  • お互いを知って、応募するかどうかを判断する

  • 現場のエンジニアが直接出てくることが多い

  • 学生さんが質問する側になる時間が長い

 応募後の選考(フェーズ4):

  • 選考(合否判定あり)

  • 段階的な選考プロセス(一次面接、二次面接、最終面接)

  • 企業側が学生を評価する場

  • 人事・マネージャ・技術者が段階的に出てくる

  • 双方向とはいえ、企業側が主導する時間が長い

 本記事で扱う場面は、応募を決めるかどうかを、みなさんが判断する時期です。フェーズ4で扱う選考は、応募を決めた後の話です。この境界を、まず腹に据えておいてください。応募前のお見合いは、選考のプレッシャーなしに、対等に確かめ合える貴重な場です。

2. 応募前の対面の場、5つの種類

 応募前のお見合いに使える対面の場を、5つ整理します。それぞれの場がどんな場で、そこで何を聞き、何を持ち帰れるかを、あわせてお伝えします。この記事で扱うのは、あくまで情報収集の視点です。面接のように相手を問い詰めたり、点数をつけたりする場ではありません。見聞きしたことをどう受け止め、応募を決める前に最終的にどう見極めるかは、この記事の5章でまとめてお伝えします。

 この5つは、フォーマルさも、話せる相手も、得られる情報の種類も、それぞれ違います。カジュアル面談は、企業の現場エンジニアや採用担当と1対1で話せる、いちばん気負わずに深い対話ができる場です。OB訪問は、大学の先輩という距離の近さを生かして、社員インタビューには出てこない本音を聞ける場です。企業説明会は、複数の応募検討者に向けて会社全体を紹介する、5つの中でいちばんフォーマルな場で、配布資料や登壇者の顔ぶれから会社の姿勢がにじみ出ます。オフィス訪問は、言葉ではなく、実際の空気や社員同士のやり取りを体感する場です。オンラインイベント参加は、選考を意識しない技術コミュニティの延長にあり、社員の素の技術への向き合い方がいちばん自然に見える場です。

 1つの場だけで判断材料が揃うわけではありません。それぞれの場で見える顔が違うからこそ、気になる会社ほど、複数の場を組み合わせて使ってみてください。

2-1. 場1:カジュアル面談

  • 応募前に、企業の現場エンジニアや採用担当と1対1で話せる場

  • 選考ではないので、合否判定はない

  • 応募前の意思決定を支える場として、多くの企業が積極的に活用している

  • 実施形式は、オンライン(Zoom、Google Meetなど)が多い

  • 所要時間は、30分〜1時間が一般的

 カジュアル面談は、その名の通り、企業と学生が対等に、肩の力を抜いて知り合う場です。この記事ではこの先、確認しておきたいことや質問をいろいろお伝えしますが、面談の場に持ち込む温度感そのものは、あくまでカジュアルであることを忘れないでください。矢継ぎ早に質問を重ねる、面接のような硬い言葉遣いで通す、といった振る舞いは、この場の空気にはそぐいません。雑談の延長のような自然な言葉で、少しずつ聞いていくくらいでちょうどよいです。

 カジュアル面談は、5つの場の中でも、いちばん深い対話ができる場です。だからこそ、確認しておきたいこと・聞いておきたい質問の厚みも、この場がいちばん大きくなります。ただし、厚みがあるからといって、詰め込んで話す必要はありません。

 多くのカジュアル面談は、最初の10〜15分ほどで、企業側から会社概要や募集背景の説明があります。質問のいちばん自然な入り口は、この説明の中で気になった点を、そのまま掘り下げることです。「先ほどおっしゃっていた〇〇について、もう少し詳しく聞かせてください」というように、直前に語られた言葉を拾って質問すると、対話は無理なく深まります。以下で紹介する質問は、この最初のやり取りが一段落したあと、さらに踏み込みたいときに使う材料として読んでください。

 この場で確認しておきたいことは、まず、資料やブログの文章だけでは分からない、現場の生の言葉です。JDに書かれていた技術スタックについて、現場エンジニアは自分の言葉でどう語るか。技術ブログで発信されていた内容の裏側を、どう説明するか。数字(離職率、平均勤続年数)の実態を、どう受け止めているか。カジュアル面談は、他の4つの観点(JD/技術発信/採用ページ・中途JD/数字)を、機械的に答え合わせするだけの場ではありません。調べてきたことを起点にしながら、対面でしか聞けない情報を、新しく手に入れる場です。

 もちろん、対面で聞いた話が、これまで調べてきた内容と重なる部分もあります。言葉の一貫性は、その会社の内側の一貫性を映す一つの手がかりです。JDでは華やかな言葉が並んでいたのに、対面で自分の言葉で語れない場合、社内の日常と対外的な発信の間に、まだ埋まっていない距離があります。ただし、これも数ある情報収集の一つに過ぎず、この場だけで結論を出す必要はありません。

 企業側の説明を掘り下げる質問に加えて、聞いておきたい質問もお伝えします。実際に就活中の学生さんに聞いてみると、カジュアル面談で聞きたいことは、研修・スキルアップ・配属・同期の4つに集中していました。技術的に踏み込んだ質問は、フェーズ4の技術面接で自然と出てくる場面が増えるので、カジュアル面談では、まずこの4つを軸にするのがおすすめです。

  • 新卒の研修は、座学とOJT(実際の業務を通した学び)の割合はどれくらいですか。期間もあわせて教えてください

  • 入社後、最初の数か月で、具体的にどんな技術を学ぶことになりますか

  • 資格取得の支援や、技術書の購入補助といった、学び続けるための制度はありますか

  • 配属は、どのように決まりますか。本人の希望はどこまで聞いてもらえますか

  • 新卒の同期は、今年は何人くらい入る予定ですか

 目の前で話してくれている、面談担当者ご自身に向けた質問も、カジュアル面談で聞きやすい問いです。

  • 差し支えなければ、〇〇さんご自身が、この会社への入社を決めた理由を聞かせていただけますか

  • 〇〇さんが新人だったころ、いちばん助けられた先輩のサポートは何でしたか

 会社を主語にした質問と、目の前の人を主語にした質問を、意識して使い分けてください。「御社は」と聞くと答えにくい問いでも、「〇〇さんは」と聞くと、担当者本人の実感を交えて答えやすくなります。

 もし事前に企業の技術ブログや発信を読み込んでいるなら、その内容に触れる質問も歓迎されます。「このブログ記事、実装の裏側をもう少し聞かせてください」といった一言を加えるだけで十分です。準備の量に応じて、無理のない範囲で使ってください

 ここで、聞く相手によって、聞くことを変えるという整理をお伝えします。フェーズ3-2からフェーズ3-5までで、たくさんの「確かめたいこと」をお渡ししてきました。それを全部、目の前の1人にぶつけると、対話は成り立ちません。相手の持ち場に合わせて、こう分けてください。

  • 現場のエンジニアが相手のとき:技術と日常のことを聞きます。技術スタックを選んだ理由、直近で苦労した実装、コードレビューの進め方、1日の時間の使い方、新人がどう教わっているか。その人が自分の目で見てきたことが、いちばん豊かに返ってきます

  • 採用担当・人事の方が相手のとき:制度と数字のことを聞きます。給与の内訳(基本給と固定残業代の分け方、時間数、超過分の扱い)、前年度の月平均残業の実績、新卒3年以内離職率、有給の取得率、配属の決まり方と決まる時期。これは重すぎる質問ではありません。採用の窓口として、答えられるように用意しておく種類のことです

 カジュアル面談で対応してくださるのが現場の若手エンジニアだけの場合、制度や数字の細部までは答えられないことも珍しくありません。それは、その方の落ち度ではなく、持ち場が違うだけです。その場合は「制度や数字のことは、どなたに伺うのがよいでしょうか」と尋ねて、聞く先を教えてもらえば十分です。良い会社は、その問いに、答えられる人の名前を返してくれます

 なお、福利厚生の細かい運用ルールのような、入社してから調べれば足りることまで30分の面談で埋める必要はありません。優先順位は、給与の内訳・残業の実績・配属の決まり方の3つ。この3つは、入社後の毎日をいちばん大きく左右します。

 カジュアル面談で見聞きしたことは、その場で良し悪しを判定する必要はありません。見分けの視点は、5つの場をひととおり見たあと、5章でまとめてお伝えします。まずはこの場で、素直に情報を集めることに集中してください。

2-2. 場2:OB訪問

  • その会社に勤めている先輩社員(大学のOB・OG)と話す場

  • 大学のキャリアセンター、OB訪問アプリ(Matcher、ビズリーチ・キャンパスなど)を経由することが多い

  • 選考ではない

  • 先輩の日常のリアルな話が聞ける

  • カジュアル面談よりも、さらにリラックスした対話が可能

 この場で確認しておきたいことは、先輩本人が、入社の理由や、働き続けている実感を、自分の言葉で語れるかです。用意された模範解答のような話しかできない先輩よりも、迷いや悩みも含めて率直に話してくれる先輩のほうが、その会社の実態を映しています。

 聞いておきたい質問として、次のようなものが使えます。

  • 若手エンジニアとして、直近1年でいちばん成長を感じた出来事を聞かせてください

  • 差し支えなければ、先輩ご自身が、この会社への入社を決めた理由を聞かせていただけますか

  • 先輩ご自身が、この会社で働き続ける中で感じている、いちばんの喜びと、いちばんの悩みを聞かせていただけますか

 OB訪問はカジュアル面談以上にリラックスした場なので、先輩ご自身を主語にした質問を中心に据えると、対話が自然に深まります。

 OB訪問は、1人の先輩の話だけに頼らないことも大切です。同じ会社でも、部署やチームによって働き方の実感は変わります。可能であれば、複数の先輩に声をかけ、異なる部署の話を聞き比べてみてください。OB訪問はあくまで先輩の善意で成り立つ場です。約束の時間を守る、事前に聞きたいことを整理しておく、お礼の連絡を忘れないといった、当たり前の礼儀を大切にしてください。

2-3. 場3:企業説明会

  • 企業が主催する、複数の応募検討者向けの説明会

  • 会社紹介、事業紹介、募集職種の説明、質疑応答

  • 選考ではないが、選考につながる場でもある

  • 大規模な合同説明会(マイナビ・リクナビ主催)と、個別の会社説明会がある

 大学に企業が訪問して開く説明会には、多くの場合、若手エンジニアがリクルーターとして同席します。担当者の説明とあわせて、リクルーターの話にも耳を傾けてみてください。話の質をどう受け止めるかは、5つの場をひととおり見たあと、5章でまとめてお伝えします。

 この場で確認しておきたいことは、まず登壇者の顔ぶれです。経営層や現場エンジニアが話すのか、人事だけが話すのか。質疑応答では、「残業時間はどれくらいですか」「有給取得率はどれくらいですか」といった具体的な質問に、具体的な数字で答えてくれるか。これらをどう受け止めるかも、5章でまとめてお伝えします。

 企業説明会や合同説明会では、会社パンフレットやチラシが配布されることがあります。これらの資料は、企業が学生さんに向けて作り込んだ、いちばん整えられた形の情報です。整えられているからこそ、読み方に少しコツが要ります。

 ここで、大切な前提を確認しておきます。企業が自ら発信するもの全般は、その企業を良く見せるために作られています。パンフレット、チラシ、採用サイト、説明会のスライド。これらは、都合の悪いことは書かれず、都合の良いことが盛られる傾向を、構造的に持っています。作り手が悪意を持っているという話ではなく、「自社を魅力的に見せる」という目的そのものが、そういう情報を生み出す構造だということです。

 だからこそ、フェーズ3-3で扱った技術ブログやGitHub、登壇資料といった、事実そのものを動かせない技術的なポートフォリオを、あわせて確認する必要があります。パンフレットに書かれた言葉は編集できますが、公開されているコードや、実際に投稿された技術記事の年次推移は、後から都合よく書き換えることができません。パンフレットで受けた印象は、こうした動かせない事実で裏取りをしてはじめて、信頼できる情報になります。

 なお、パンフレットの内容は、多くの場合、会社の採用ページの内容を要約したものです。パンフレットで気になった記述があれば、採用ページに戻って、より詳しい説明や技術ブログへのリンクがないかを確かめてみてください。

 この前提を踏まえて、パンフレット・チラシを読むときの5つの観点をお伝えします。

 観点1:良いことだけが並んでいないか。パンフレットは、企業が自社の魅力を伝えるための資料です。良いことが並ぶのは当然ですが、課題や弱みへの言及が一切ない資料には、注意が必要です。実際に人が働いている会社であれば、成長過程にある部分、これから取り組む課題が、どこかにあるはずです。良いことだけがきれいに並んでいる資料は、都合の悪い情報を意図的に外している可能性があります。

 観点2:社員インタビューの人選に、偏りがないか。パンフレットに載っている社員インタビューは、とりわけ注意が必要な情報です。会社が「見せたい社員」を選び、「見せたい発言」を編集して掲載できる、企業発信の中でもいちばんお化粧がしやすい形式だからです。インタビューが特定の属性(同じ年次、同じ部署、同じような経歴)に偏っていないかを確かめてください。多様な年次・部署・経歴の社員が登場する資料は、社内の実態を幅広く見せようとする姿勢の表れです。逆に、決まった顔ぶればかりが繰り返し登場する資料は、実際に語れる社員が限られている可能性があります。

 さらに一歩進んで、インタビューに登場した社員本人が、技術的なポートフォリオを実際に公開しているかを確認してください。名前や役職が書かれている場合は、GitHub、Zenn、Qiita、Speaker Deckなどで本人の名前を検索し、技術発信の実績を自分の目で確かめます。パンフレットの文章そのものではなく、その文章の主語になっている人が、動かせない事実を持っているかを確認するのが、いちばん確実な裏取りです。

 観点3:技術の話が、具体的か。パンフレットに技術の話が出てくる場合、その具体性を確かめてください。「最新技術を積極的に導入」「モダンな開発環境」といった抽象的な表現だけの資料は、フェーズ3-2で扱った危険信号と同じ構造です。具体的な技術スタック名、具体的なプロダクト名が書かれている資料は、JDや技術発信の内容と照らし合わせて、一貫性を確認してください。

 観点4:質疑応答の時間が、どれだけ確保されているか。企業説明会の進行の中で、質疑応答の時間がどれだけ確保されているかは、その会社の対話への姿勢を映します。会社説明が長く、質疑応答が形だけの時間しか残っていない説明会は、一方的な発信が中心です。質疑応答に十分な時間が割かれ、具体的な質問に具体的に答えてくれる説明会は、対等な対話を大切にする姿勢の表れです。

 観点5:ノベルティやブースの華やかさと、中身は比例しない。合同説明会のブースでは、ノベルティの豪華さ、ブースの装飾の派手さで、企業を印象づけようとする場面があります。ノベルティやブースの派手さと、実際の技術力・働きやすさの間には、直接の関係はありません。むしろ、ブースの装飾よりも中身で勝負している会社、地味でも社員が丁寧に対話してくれる会社のほうが、実態が伴っていることが少なくありません。派手さに気持ちが動いたときほど、一度立ち止まって、資料の中身そのものを読み直してください。

 この5つの観点は、パンフレットやチラシを「悪いもの」として疑うためのものではありません。企業が力を入れて作った資料を、ある程度差し引いて読むための視点です。パンフレットで良い印象を持った会社ほど、フェーズ3-2〜3-5で扱ったJD・技術発信・採用ページ・中途JD・数字の観点で、あらためて裏取りをしてください。

2-4. 場4:オフィス訪問・現場見学

  • 会社のオフィスを実際に訪問する

  • 職場の空気、社員の様子、実際の働き方を体感する

  • コロナ以降、リモート主体の会社ではオフィス訪問の機会が減った

  • オフィスがある会社では、応募前に一度訪問しておくと、入社後のギャップが減る

 この場で確認しておきたいことは、説明会やパンフレットで語られていた「モダンな開発環境」「風通しの良い職場」といった言葉が、実際のオフィスの空気や、社員同士のやり取りと一致しているかです。言葉と実際の空気が一致している会社ほど、対外的な発信と社内の日常のギャップが小さい会社です。

 オフィス訪問で見るべきは、装飾されたエントランスや会議室だけではありません。社員が実際に座って作業しているエリア、休憩スペースの使われ方、社員同士がどんな距離感で話しているかといった、案内担当者がわざわざ説明しない部分にこそ、日常の実態が表れます。ただし、1回の訪問で見える光景は、その日その時間帯の切り取りに過ぎません。訪問した曜日や時間帯によって印象が変わることもあるので、他の場で得た情報とあわせて判断してください。

 オフィス訪問は、カジュアル面談のように腰を据えて質問する場ではありません。案内してくれる方には、あらかじめ用意した質問をぶつけるより、目に入ったものについて、その場で気軽に尋ねるほうが自然です。「あの席は何のチームですか」「今日はいつもより静かですが、こういう雰囲気が普段からですか」といった、見たままを言葉にする問いかけで十分です。

2-5. 場5:オンラインイベント参加

  • 企業が主催する技術勉強会、ミートアップ、Meetup

  • connpass、TECH PLAY、Doorkeeperなどで告知される

  • 応募検討者向けの説明会と違い、技術文化を体感する場として位置づけられる

  • 学生歓迎の勉強会も多い(フェーズ2-12で扱った社外コミュニティと重なる)

  • 現場のエンジニアと自然な形で交流できる

 この場で確認しておきたいことは、登壇・発言する社員が、自分の言葉で技術を語れているかです。カジュアル面談のような1対1の緊張感がない分、社員の素の技術への向き合い方が、いちばん自然に見える場でもあります。

 企業説明会が「会社を応募検討者に紹介する場」であるのに対し、オンラインイベントは「技術コミュニティとしての日常」に近い場です。選考を意識しない分、社員の話し方や表情が自然で、技術への向き合い方が素のまま伝わってきます。何度か同じ会社のイベントに顔を出してみると、社員の顔ぶれや発表の傾向が見えてきますフェーズ2-12で扱った社外コミュニティへの参加と同じように、継続して顔を出すこと自体が、あなたの熱意を伝える手段にもなります。

 この場での質問は、事前に用意した台本より、発表を聞いて実際に浮かんだ疑問をそのまま声に出すほうが自然です。多くの勉強会にはQ&Aの時間があり、懇親会が設けられていることもあります。発表の技術的な選択に「なぜその方法を選んだのか」を尋ねてみる。それだけで、対話は十分に成立します。

 この5つの場は、応募前・選考ではない、対等なお見合いの場という共通点があります。応募を決める前に、この5つのうちいくつかを使って、企業と対等に接続します。それぞれの場で集めた情報をどう受け止め、最終的にどう見極めるかは、5章でまとめてお伝えします。

3. 学生さんが持ち込む、3つの準備

 対面の場に、学生さんが持ち込む準備を3つ整理します。

3-1. 準備1:自分のポートフォリオを、話題にできる形で

 フェーズ2で積み上げてきた成果物を、対面の場で話題にできる形で持ち込みます。

  • GitHubのURL、ポートフォリオサイトのURL、Speaker DeckのURL、技術ブログのURLを、事前に共有できる形にしておく

  • 直近取り組んでいる技術テーマを、1〜2分で説明できる形にしておく

  • 詰まったこと、乗り越えたこと、これから挑戦したいことを、具体的な言葉で話せるようにしておく

 自分のポートフォリオを、対等な接続の材料として、堂々と持ち込んでください。企業側は、成果物を持って来る学生さんに対して、真剣に応答してくれます。

3-2. 準備2:企業ポートフォリオを、読み込んで質問を用意

 フェーズ3-2〜3-4で読み込んできた企業ポートフォリオを、対面の場での質問に変えます。

  • 技術ブログのこの記事について、実装の裏側を聞きたい(現場のエンジニアの方に)

  • JDに書かれていたこの技術を、実際にどう使っているのかを聞きたい(現場のエンジニアの方に)

  • 給与の内訳と、前年度の月平均残業の実績を聞きたい(採用担当の方に)

  • 開示されている数字(離職率、平均勤続年数など)を、社内ではどう受け止めているかを聞きたい(採用担当の方に)

 質問を用意するときは、「誰に聞くか」もセットで考えておいてください(2-1で整理したとおりです)。企業ポートフォリオを読み込んで質問を用意する学生さんは、対面の場で対等な対話を成立させられます。企業側も、読み込んで来る学生さんに対して、真剣に対応してくれます。

3-3. 準備3:応募を決めるための問いを、書き出しておく

 対面の場で聞きたい、応募を決めるための問いを、事前に書き出しておきます。

  • この会社で、5年後の自分がどう成長しているかを具体的に描けるか

  • この会社の技術文化が、自分の職業観と合っているか

  • この会社の待遇(給与、休日、リモート、副業)が、自分の生活と合うか

  • この会社の育成の設計が、自分の成長ペースと合うか

  • この会社の経営層・部課長が、自分が尊敬できる人か

 応募を決めるための問いを言葉にする作業が、フェーズ3の締めくくりです。対面の場でこれらの問いに対する答えを得て、応募を決めます。

4. 対面のあとに、もう一度戻る

 5つの場を見てきました。ここで、この記事の骨格をもう一度確かめます。対面の場は、確認の終点ではありません。むしろ、新しい事実が出てくる場所です。

 「実は今その技術は使っていなくて」「そのブログを書いた人は、もう別のチームです」「去年から人が増えていて」。こういう話は、資料からは出てきません。対面でしか手に入らない情報は、たいてい、次に確かめるべきことを連れてきます

 だから、面談が終わったその日のうちに、聞いた話を持って、もう一度戻ってください

  • 現場が挙げた技術名を、JDフェーズ3-2)の技術スタック欄と突き合わせる。JDにない技術が出てきたら、JDが古いのか、部署が違うのか

  • 出てきた社員名やチーム名で、技術発信フェーズ3-3)を検索し直す。その人の登壇や記事が見つかれば、話は裏が取れます

  • 「最近人が増えていて」と聞いたら、中途JDフェーズ3-4)の募集ポジションを見る。組織強化の増員なのか、欠員の埋め合わせなのか

  • 「残業は月20時間くらいですね」と聞いたら、数字フェーズ3-5)の開示値と並べる。ズレていたら、次の場でもう一度聞いていい

 これは手戻りではなく、確認をやり直しているだけです。そして、疑うためでもありません。あなたの理解の解像度を上げるためです。この戻り作業を1回やった会社の話は、フェーズ4の面接で、他の学生さんが持っていない深さになります。

4-1. 入口が対面だった人へ

 スカウトやインターンや説明会がきっかけで、JDを読む前に社員と会ってしまった。そういう学生さんは、たくさんいます。それは順番を飛ばしたのではなく、いちばんコストの高い観点を、先に引き当てただけです。

 やることは同じで、向きが逆になるだけです。面談で受け取った印象を、安いほうの観点で埋めていってください

  1. 会って聞いた技術・研修・配属の話を、そのままJDフェーズ3-2)で探す。書いてあるか、書いていないか

  2. 話してくれた社員の名前とチーム名で、技術発信フェーズ3-3)を検索する

  3. 採用ページと中途JDフェーズ3-4)を開いて、聞いた話とキャリアの道筋がつながるかを見る

  4. 口頭で聞いた残業・離職率・年収の数字を、開示されている数字フェーズ3-5)と並べる

 会う前と会った後で、同じ姿をしている会社。それが、この逆順で確かめたときに残る会社です。

4-2. 良い会社は、話した内容を、読み返せる形で残している

 この往復は、学生さん一人の作業ではありません。企業の側にも、往復を成り立たせる姿勢があります。良い会社は、次のような形で、対面と書きものをつないでいます。

  • 説明会や面談で口頭で語られた研修期間・配属の決まり方・残業の実績が、そのままJDと採用ページの文字でも読める

  • その場で「詳しくはJDのこの欄に書いてあります」と、書かれた場所を示してもらえる

  • 面談で話した内容を、後から一人で読み返せる形(JD・採用ページ・技術ブログ)で持っている

  • 説明会や大学訪問に、現場のエンジニアが同席し、自分の言葉で技術と直近の仕事を語る

  • その日話した社員の名前が、技術発信の側でも辿れる

 口頭で語られた言葉は、その場で消えていきます。消えない形にどれだけ置いてあるかが、対面と書きものの一貫性です。会って良い印象を持った会社ほど、この一貫性を確かめてみてください。

5. 応募を決める前に、重ね合わせて見極める

 普通のお見合いでも、良いなと思ったら何回かデートを重ねて、結婚に至ります。就活も同じです。お見合いにあたる2章の5つの場のあとに、フェーズ4の選考というデートがあり、その先に入社があります。お見合いの場でいきなり相手を問い詰める人はいません。だからこそ2章では、情報収集の視点だけをお伝えしてきました。

 ただし、お見合いにも終わりがあります。何度か対面の場を重ね、応募を決める時期が近づいたら、ここまで集めてきた情報を一度重ね合わせて、見極める視点も必要になります。ここからは、2章でお伝えした5つの場を振り返りながら、応募を決める前に見ておきたい視点を整理します。

 まず、シリーズ全体を貫く上位原則です。その会社は、エンジニアをプロフェッションとして育つ環境を持っているか。これを最終的に見分けるのは、1つの場での印象ではなく、複数の場を横断して立ち現れる姿の一致です。カジュアル面談で聞いた話と、企業説明会で見た登壇者の顔ぶれと、オフィス訪問で感じた空気と、オンラインイベントで見た社員の話しぶり。これらが場を変えても同じ姿を映しているなら、それは社内の日常そのものの一貫性です。逆に、場によって語られる姿がバラバラな会社は、対外的な発信と社内の実態の間に、まだ埋まっていない距離があります。

 カジュアル面談で見えてくる視点もあります。現場エンジニアが、技術スタックの選定理由や直近の技術課題、失敗事例を、自分の言葉で語れるか。自分の言葉で技術を語れる会社は、社内で技術文化が根付いている会社です。あわせて、企業側が学生さんにどう向き合うかも見ておきたい視点です。質問に丁寧に答えてくれるか、ポートフォリオを丁寧に見てくれるか、応募をやめる可能性も対等に受け止めてくれるか。応募者への姿勢は、入社後の社員への姿勢を、驚くほど正直に映します

 「うちは技術に投資しています」「モダンな開発文化があります」といった抽象的な回答しか返ってこない場合、社内で技術の言語化が進んでいない可能性があります。学生さんの質問を途中で遮ったり、質問の意図を汲まずに一方的に話し続ける場合も、対等な対話の姿勢が薄いサインです。対話の途中で「応募してくださいね」「エントリーはこちらから」と応募を強く迫られる場合、応募者数を増やすこと自体が目的になっている可能性があります。ただし、良い出会いに前のめりになること自体は、悪いことではありません。見分けるポイントは、あなたの意志を確認せずに次のステップへ話を進めようとするかどうかです。

 技術発信の失速について尋ねたときの答え方も、見ておきたい視点です。フェーズ3-3でお話ししたように、技術発信が「以前は活発だったのに、途中で止まった」会社は、CTOやテックリードの離脱、エンジニアの大量流出、経営の傾きといった深刻な変化と重なって起きることがあります。具体的な経緯を正直に語れるか、話をはぐらかすかで、その会社の姿勢がはっきり分かれます。曖昧にかわされた場合は、その場で結論を出さず、他の観点とあわせて、応募候補から外すことも含めて慎重に検討してください。

 カジュアル面談全体の「良し悪し」も、まとめて見ておきます。良いカジュアル面談は、次のような姿を持っています。

  • 事前に候補者のプロフィール(GitHub、Zenn、Speaker Deck、Wantedly、LinkedIn)を丁寧に読み込んで、その内容に基づいた対話が始まる

  • 面談の時間の半分以上が、候補者の質問に応じる時間になっている

  • 面談担当者が、自社の良いところだけでなく、正直に「まだ整っていない部分」も話す

  • 選考プロセスの次のステップが、押し付けではなく、候補者の意志を尊重した形で提案される

  • 面談後に「今日の話を持ち帰って、少し考えさせてください」と言える空気がある

 良くないカジュアル面談は、次のような姿を持ちがちです。

  • 面談担当者が候補者のプロフィールを事前に読んでおらず、質問がテンプレート的

  • 面談の時間のほとんどが、会社の宣伝に費やされる

  • 面談担当者が、自社の良いところだけを話し、都合の悪い部分に触れない

  • 面談後、すぐに「次の面接に進みませんか」と押し付けが始まる

  • 断りにくい空気が、面談中に作られている

 これらの違いは、その会社が候補者を「対等な対話の相手」として見ているか、「口説く相手」として見ているかの差です。カジュアル面談の1時間で、その会社の候補者への向き合い方は、はっきりと伝わってきます。

 企業説明会で見えてくる視点もあります。経営層や現場エンジニアが登壇せず、人事だけが登壇している場合、現場を出せない事情がある可能性があります。良い会社の説明会には、経営層と現場エンジニアの登壇バランスがあります。質疑応答の場で、「残業時間はどれくらいですか」「有給取得率はどれくらいですか」といった質問に、「人によりますね」「部署によります」という曖昧な回答が返ってくる場合は、数字を開示する姿勢が薄い可能性があります。

 大学訪問型の説明会について、ひとつ前提を確かめておきます。大学まで足を運ぶことは、知名度の代わりに使われる手段ではなく、距離を埋めるための、まっとうな手段です。地方の会社や、会社名だけでは学生さんに届かない会社にとって、教室で直接会うことは、数少ない現実的な接点です。フェーズ3-7で扱う大学推薦・教務課紹介と同じで、大学と会社が時間をかけて積み上げてきた接続の形だと考えてください。

 そのうえで、見るべきは中身です。同席する若手リクルーターの話の質には、はっきり差が出ます。大学の教室と学生さんの時間を借りて開催している、という認識を持てている企業ほど、担当者の説明もリクルーターの話も丁寧に作り込まれています。この差は、説明を聞いているだけで伝わってきます。

 最後に、5つの場そのものについての見極めです。カジュアル面談やオフィス訪問といった、選考の前にお互いを理解する場を、会社の側で一つも用意していない場合は、応募者との対等な接続に対する姿勢が、まだ形になっていないシグナルです。(OB訪問は、その大学の卒業生が在籍しているかどうかという、会社の裁量の外の事情に左右されます。ここでの判定には含めないでください。)エンジニア採用に真摯な会社ほど、選考の前のお互いの理解を大切にします。選考プロセスに直接入るしかない会社は、その姿勢を確かめる手段が面接まで得られないことを意味します。

 どの視点も、1つだけで結論を出すためのものではありません。デートを何度か重ねて結婚を決めるように、複数の場・複数の視点を重ね合わせて、応募を決めてください。

まとめ

 本記事では、対面の場での応募前のお見合いのお話をしました。

 応募前のお見合いと、応募後の選考は性質が違います。フェーズ3-6は応募前、フェーズ4は応募後にあたります。応募前の対面の場は、カジュアル面談、OB訪問、企業説明会、オフィス訪問、オンラインイベントの5つです。この記事で扱うのは、あくまで情報収集の視点であり、面接のように相手を問い詰める場ではありません。

 5つの場それぞれの特色と、聞いておきたい質問を整理しました。カジュアル面談は現場の生の言葉を聞ける場、OB訪問は先輩の率直な実感を聞ける場、企業説明会は複数の応募検討者向けにパンフレット・チラシを含めた会社の姿勢がにじみ出る場、オフィス訪問は実際の空気を体感する場、オンラインイベントは選考を意識しない社員の素の技術への向き合い方が見える場です。

 学生さんが持ち込む3つの準備は、自分のポートフォリオ、企業ポートフォリオを読み込んだ質問、応募を決めるための問いです。

 そして、この記事の骨格は往復です。対面は確認の終点ではなく、新しい事実が出てくる場所。会って聞いた技術名をJDと突き合わせ、社員名で技術発信を検索し直し、「人が増えている」を中途JDで確かめ、口頭の残業時間を開示された数字と並べる。会って確かめ、持ち帰って確かめ直す。5つの観点は、どの観点から入っても構いません。入口が対面だった方は、同じことを逆向きに進めてください。企業の側にも、口頭で語ったことを読み返せる形で残している会社があります。

 そして、応募を決める前の見極めとして、現場エンジニアが自分の言葉で技術を語れるか、応募者への姿勢、抽象的な回答や質問を遮る態度、応募の強要のされ方、技術発信の失速への答え方、良いカジュアル面談と良くないカジュアル面談の違い、企業説明会の登壇者の顔ぶれと質疑応答の答え方、5つの場を一つも設けていない会社のシグナルを、5章で整理しました。これらは複数の場を重ね合わせて見るための視点であり、1つの場・1つのサインだけで結論を出すものではありません。

 次のフェーズ3-7では、フェーズ3歩き方まとめに進みます。JDから始まる、100→30→20→10→5→1〜3のお見合いの旅を、情報コストの安い順に束ねます。

エンジニアの卵のみなさんへ、エール

 対面の場は、少し緊張する場面でもあります。カジュアル面談で何を聞けばいいのか、OB訪問で何を話せばいいのか、企業説明会でどう振る舞えばいいのか。就活を始めたばかりのみなさんにとって、いちばん不安な場面のひとつだと思います。

 でも、正直にお伝えしたいことがあります。カジュアル面談で緊張しなくていいのです。カジュアル面談は選考ではありません。企業側も、リラックスした対話を望んでいます。準備してきた質問を投げて、答えを聞いて、自分のポートフォリオを話題にする。それだけで、対等なお見合いは成立します。

 私自身、25年近く前、就活のときにカジュアル面談という文化はありませんでした。応募の前に企業と対等に対話する場は、ほとんどなかったのです。あの頃なかった対等な対話の場が、いまのみなさんの前には豊かに整っています。この場を、使ってください。

 今週、なにか一つ、始めてみてください。気になる会社のカジュアル面談を、1件申し込んでみる。大学のキャリアセンターで、OB訪問の方法を聞いてみる。connpassで、気になる会社が主催する勉強会を検索してみる。どれか1つで、本記事の1歩目です。

 そして、フェーズ3-7で、フェーズ3の歩き方まとめでお会いしましょう。100→30→20→10→5→1〜3のお見合いの旅の全体像を、一緒に整理します。

 一緒に歩きましょう。ボン・ボヤージュ。素敵な旅を。


次の記事はフェーズ3-7「フェーズ3の歩き方。JDから始まる、100→30→20→10→5→1〜3のお見合いの旅」です。


#エンジニア就活 #新卒エンジニア #カジュアル面談 #OB訪問 #企業説明会 #会社パンフレット #エンジニアの卵に贈る就活の書


関連記事・参考文献等

いいなと思ったら応援しよう!