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《葬送のフリーレン》好きなキャラ:ソリテール2(師弟の思想的対立)

ネタバレには配慮していません。

『葬送のフリーレン』の原作マンガはまだ読んだことがないという方には原作マンガを、既に読んだことのある方にはある一つの視点からの再読をお勧めしています。


はじめに

今「第3回キャラクター人気投票」の実施中なので、「好きなキャラ」について書いています。

今回はソリテール(その2)。アニメでは未登場なので、ネタバレありです。(その1はこちらです)

※ これまでにユーベルとハイターについて書きました。

魔族と魔族の師弟関係

前回、ソリテールのもう一つの魅力は「魔王との師弟関係」だと書きましたが、そもそも、家族の概念を持たない魔族でも師弟関係が成立するのか?という疑問と興味はあります。リーニエの「父上って何?」も思い出します。(第2巻14話、15話)

ただ、魔王について語る初期のソリテールの表情をみると、二人が単なる支配・服従の関係にあるとは思えません。(第10巻88話、第12巻116話、117話)

二人の関係に名前をつけるとすれば親子か師弟しか思い浮かばないため、師弟ということにしておきます。

マハトとデンケン(魔族と人間)の師弟関係がしっかりと成立しているわけですから、魔族と魔族の間で師弟関係(親子関係)が成立した稀有な例なのかもしれません。(なお、人間(親)と魔族(子)の親子関係は上手くいった例がありませんね)

魔王とソリテールの師弟関係には、一つそういう面白い要素があります。

師弟の対立

魔王とソリテールの関係は、魔族と魔族の師弟という変わり種の珍しい関係性なのですが、もう一つ特徴的な要素があります。それは二人が思想的に対立したということです。

師弟愛という堅い絆で結ばれている師弟関係も良いものですが、師弟関係がギクシャクするのも物語としてはおもしろいですよね。

ゼーリエとフランメには「魔法は特別であるべきだ。才ある者にしか教えるつもりはない」というゼーリエと「誰もが魔法を使える時代」を目指したフランメという思想的対立が一応はあります。(第6巻53話、第14巻129話)

ただ、そうは言っても、この二人が親子同然の愛情で結ばれていることは疑いようがなく、また、ゼーリエはああ見えてかなり包容力のある人ですし、実はかつての自分をフランメに見ているが故の対立という面もありそうです。山あり谷ありのドラマはあるにしても最終的には上手くいくのだろうという安心感があります。

それに対して、魔王とソリテールは思想的には決定的に対立してしまったらしいのです。

そこのところの描かれていないドラマもソリテールの魅力だと私は思います。

ソリテールの守破離

ソリテールはフリーレンの鏡像だと思うので、ここからはフリーレンにも所々で言及します。(第3巻22話、第10巻88話)

黄金郷編(約100年前)や女神の石碑編(約80年前)のソリテールは魔王にベッタリです。(第10巻88話、第12巻116話、117話)

ですが、黄金郷編(現在)では魔王の思想を否定して独立しています。「楽しくなかった」「不毛だ」「危険だ」と散々な言いようです。既に「守破離」の「破」や「離」の段階です。(後述しますがフリーレンはまだ「守」の段階でしょう)

魔王について語るときのソリテールの表情を見れば、この過程でソリテールは大きな喪失を経験しているようなんですね。

ソリテールは自分の世界観(世界をどう捉えるかというものの見方)を洗練させる(矛盾を取り除いて論理一貫させる)ことに熱心で、その過程で魔王の思想を否定するに至ったのでしょう。

魔王の教えが間違いだったのか、それとも、魔王がウソを教えて騙したのかはわかりませんが、ソリテールの表情からは後者であるという感じがします。(ではフランメは?という話にもなってきます)

敬愛する魔王から教わって真実だと信じていた世界観がウソだった。世界観が崩壊すると同時に個人的な信頼も損なわれてしまうわけですからかなりショッキングな出来事です。(おそらく同じような経験を大魔法使いたちもしていると思います)

この「魔王様大好き!」だったソリテールから「共存は危険思想」というソリテールへの変化。これが彼女の魅力でしょう。ソリテールに何があったのか。それを知りたい!と思います。私は。

フリーレンとフランメ、ゼーリエとの関係

ソリテールとフリーレンが鏡像の関係にあるなら、気になって来るのはフリーレンとフランメの関係です。

フリーレンはフランメの偶然とは思えない行動に違和感を覚えてはいます。(第1巻7話、第6巻47話)

フリーレンは偶然であることを信じ切れていません。

フランメは、悪意があるわけではありませんから「ウソをついている」とか「騙している」という表現は不適切でしょうけれども、重大な隠し事をしていると思いますし、所々で「方便としてウソを使っている」と思います。

けれども、フリーレンは基本的には師匠にベッタリで、帝国編では「どんな未来が見えているの?私の役割は何?」とゼーリエに縋っています。この場面のフリーレンはベッドに腰かけて足をプラプラと遊ばせて、まるで子供の様です。

フリーレンはフランメのことを「いい加減な人」、ゼーリエのことを「子供みたいな人」と言いますが、いざとなれば師匠頼みなところがあります。(第1巻7話、第7巻60話)

フリーレンはある意味では幸せです。師匠を信じて頼ることができるのですから。

ソリテールはフリーレン達に師匠である魔王を殺されてしまった(ということにしておきます)わけで、それがなければ今でも「魔王様大好き!」だったかもしれないですね。

世界観探究という情報戦

『葬送のフリーレン』では、フリーレンと魔族達が戦っています。この戦いは、より世界設定(真実)に近い世界観を持った方が勝つという情報戦です。

これは大抵の物語がそうだと思います。たとえば、愛が真実なら愛を知っている者が最後には勝つ。そういうものでしょう。力の強い者が勝つ物語も存在はしますけれども、おそらく『葬送のフリーレン』はそういう物語ではないと思います。

世界に謎のある物語は、ほぼこの情報戦の様相を呈します。

  1. 最初は、主人公(と読者)は真実を知らない。

  2. そして、どこかで真実を知って打ちのめされる。

  3. けれども、最後には本当の真実を手に入れた主人公達が勝つ。

そういう物語のパターンがあると思います。

今の『葬送のフリーレン』は1.の段階です。帝国編の最後はおそらく2.です。

キャラ別に言えば、ソリテールは既に2.の段階、フリーレンはまだ1.の段階です。

ソリテールは世界観の探究に熱心です。それに対してフリーレンは、そういったことには関心がなさそうです。師匠から与えられた世界観の中で生きています。ですから、思想的にもフリーレンは「守破離」の「守」の段階です。

女神の石碑編でグラオザームが「収穫」を得てソリテールと共有していますから、フリーレンが見てきたことはソリテールも知っています。ですから、たとえばフランメとヒンメル達がフリーレンをエンデに誘導していることも知っているはずです。しかし、フリーレンにその認識はまだありません。(第1巻7話、第13巻118話)

※フリーレンがエンデを目指して旅することになった経緯は、「オレオールはエンデにある」とフランメの手記に書かれていたから、ではありません。 それは順序が逆です。もともとキーノ峠という目的地があり、その口実としてヒンメル達が手記を利用したというのが正しい順序です(なぜかヒンメル達は手記の内容を知っていたわけです)。それが女神の石碑編の結末です。これはフリーレンの記憶を解析すれば明らかになることでしょう。魔族の立場でこの状況を見れば、タイムリープを駆使する未来のフリーレンが魔王の居城を目指しているわけです。勇者ヒンメルの目論見は明らかでしょう。エンデの女神の石碑に辿り着く前にフリーレンを抹殺する必要があります。

現状、フリーレン(と読者)は魔族に世界観の把握という情報戦で負けています。

それだけではなくて、レーヴェたちにもフラーゼたちにも負けています。おそらくフリーレンよりもデンケン、レルネン、ゼンゼの方が良く把握しています。一人負けです。

ですから、フリーレンがソリテールに追いつく局面がどこかで来るはずですし、帝国編でかなり追い上げるでしょう。

心配になるのは、ソリテールが魔王と決別したように、フリーレンとフランメの関係に一時的にでも亀裂が入るのではないか?ということです。

おわりに

「好きなキャラ」といっても「好き」に順番は付けられないと思いました。

それは今でもそう思っているのですが、いろいろと作文している中で、「応援」として、人気投票の投票行動として一票を入れるなら、ソリテールだなと思いました。

ソリテールは魔族です。いろいろと酷いことをしています。まあ、そこは「じゃあ、牛や豚を殺して食べるのも酷いことなんだ?」とか言って混ぜ返すことはできますけれども、普通に考えれば悪役(ヒール、Heel、憎まれ役)です。

魔族ですから、物語上の役割として「負け」を運命付けられています。千年後の魔族の繁栄なんて、読者は誰も信じてはいません。信じていませんけれども、それはなかったことにして、「これからどうなるのだろう?」と物語を楽しんでいるわけです。

勝ち馬に乗るよりは敗者を応援したい気持ちです。判官贔屓ほうがんびいきと言えば、まあ、そうなんでしょうね。

それで思い出すのは、松本大洋の『ピンポン』です。これはスポーツ(卓球)マンガで、主人公は卓球の天才です。紆余曲折はありますが、ライバルたちはみんな負けていきます。でも、敗者であるライバルたちがみんなかっこいいんです。私は主人公よりもライバルたちの方が印象に残っています。そもそも小難しい所のないエンタメとして傑作の部類に入るマンガですが、判官贔屓の傾向がある人には絶対にお勧めです。(全5巻、アニメもあります)

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