【執筆後記】小説「LOVERSサクライロ編」―芸術が人々の心を癒やし、誰もが自分らしく生きる時代へ―
「LOVERS サクライロ編」を読んでくださった方、本当にありがとうございました。本作は「LOVERS外伝」の物語をさらに膨らませ、さくらとリオンが福岡を拠点に、芸術の力で人々の心を癒やしていく姿を描きました。
「LOVERS サクライロ編」はこんなお話…
ライブペイント画家のさくらと即興ピアニストのリオンが、芸術を通じて人々の心を癒やしていく物語。東京から福岡へ拠点を移した二人は、誰もが自分らしくいられる癒やしの場「ワライバ」をアトリエに築こうと準備を進める。音楽と絵を融合させた独自のライブパフォーマンスは人々の魂を再調律し、やがて社会的な成功よりも精神的な充足を尊ぶ新時代の象徴に。彼らは最終的に、湖畔の古民家に拠点を移し、真の幸福を分かち合うコミュニティを育て上げていく。
⬛かねてから抱いてきた『ワライバ』の構想を物語化
存在自体を受け入れてもらえるような癒やしの場があったら……。
その思いは、小説内で初めて喫茶『ワライバ』を登場させたときからありました(関連記事はこちら)。最初は物語の中に登場する “変な喫茶店”(コーヒーを頼まなくても一日いられる)という扱いでしたが、いつしか私自身がそこの『常連客』になり、その後ワライバのコンセプトに共感してくださる方が現れてからは、同じ志を持つ芸術家同士の交流場(ミュシャのアトリエのような)、更にはそこに引き寄せられた人々の癒やし場としての『ワライバ』という具体的なイメージを持つようになりました。
それが今回、さくらとリオンによって生きた物語になったことは、私にとっても感慨深いです。
⬛AIや既存のシステムが崩壊した世界を想像してみる
過去作品「LOVERS」では、AIと芸術家とが共存する道を示しました。しかし、その後のAIの進化はめざましく、まさに泡のように膨れ上がっています。既存のシステムも同様で、両者はいつ破裂、崩壊するかわからないところまで来ています。
死や損失、不足を恐れる人間は「安定した今」が永遠に続くようにと願い、しがみついています。しかし、この世に変わらないものは一つとして存在しません。繁栄し続けた文明もありません。人の肉体もやがては滅びます。
作中でリオンが奏でた『エリーゼのために』(第6話)は、こうした人の性に焦点を当て、既存のシステムを解体、再構築する試みでした。
このような考えに触れ「芸術家の世迷い言だ」と言いたくなったら、それはそれで構いません。最終(9)話でも書いたように、あなたと私たちとは、今は交わることのない世界を生きている、それだけのこと。しかし、私たち芸術家は、その想像力でありとあらゆる未来を思い描き、その世界線で生きることを常に想定しながら生きていることを付け加えておきます。
⬛ステレオタイプの「小父さん」の登場
執筆当初は全く考えていなかったのですが、小父さんこと磐田錬次郎は、いろうたのイメージする「古い時代を象徴する人物」として、やや誇張して描きました。
夢を取るか、現実を見るか。
多くの人が進路を決める過程でそのような選択を迫られたのではないでしょうか。私自身「働かざるもの食うべからず」と言われ続け(本来は、日本で言われているのとは違う意味)、若い頃は就職しながら小説を書くという安全な道を選びました。小説内では、ミュージシャンになりたかった錬次郎が、夢を諦めて会社員になったという表現になっていますが、きっとあなたにも同様の経験があるはずです。
そんな錬次郎は、いつしか夢のことも忘れ、生真面目なサラリーマンとして順調に出世、部長という肩書を得ることで存在価値を見出すようになります。
⬛「誰かのため」ではなく「自分のため」に
家庭を持ち、長く会社勤めをすると、自分の趣味や楽しみよりも「家族」や「会社」のために働くという意識が強くなりがちです。
しかし、それが生きるためだったとしても、自分のやりたいことを後回しにしたり、身を粉にして働いた結果、心身が病に冒されてしまったりしたら、健康的な生き方からは遠ざかっていると言わざるを得ません。
物質的な豊かさがあるから幸せなのではなく、心が健やかだから幸せ。
さくらとリオンはそのことを強く訴えたくて、ピアノと絵によるライブパフォーマンスをしています。
二人は、一見すると「心が疲れている人々を癒やす」という目的のために芸術活動をしているように見えますが、彼らはまず、自分自身が創作活動をすることによって癒やされている。心のコップがいつも満たされているからこそ、溢れた分の水で人々を癒やすことが出来るのです。
⬛スタンダードモデルになる、アーティスティックな生き方
読者の方の中には、「こんなふうに生きられたらいいんだろうけど、どうせ無理。これはフィクションだし、実際に出来るとしても、暇な主婦や企業勤めを終えた老人だけでしょ」と思っている方もいるでしょう。
そう思ったあなたは常識人。自信を持って今の世界を生きてください!
ただし、小説に書いたことは今後の標準的な生き方になります。
・スーパーに行って食品を買うのではなく、自給自足や物々交換をする。
・スマホやゲーム機にアクセスして時間を空費するのではなく、自ら創造し、表現者として生きる。
・お金に絶対的価値を見出すのではなく、お金では交換できないものに価値をおき、心身ともに豊かな生き方を目指す。
今を、心身をすり減らしながら生きるのか、今この瞬間から全力で楽しんで生きるのか。あなたの人生の主人公はあなたです。どう生きるかは、あなたのその手に委ねられています。
⬛現実を創る力はあなたにも備わっている
「でも……」
「〇〇のせいで……」
「忙しいから……」
「自分には能力ないから無理……」
もし、こんな口癖があったら、見直したほうがいいかもしれません。
言霊は存在します。あなたの発した言葉はそのまま現実に反映されるのです。ネガティブなことを言えば運の悪いことが起き、ポジティブな言葉を使えば、いいことを引き寄せる。言葉ひとつ、変えただけで何が変わるのかと思うかもしれませんが、物語の中で、さくらとリオンもそうやって願いを叶えていきました。もし、苦しい現状を変えたいと思っているなら、試して見る価値はあると思います。
***
私たち芸術家は、自分自身のために芸術と向き合ってきました。それを活力にこの苦しい時代を、孤独と闘いながら生きてきました。しかしこれからは、その芸術が、物質に代わり花開く時代です。
もしあなたが芸術家なら、一緒に新しい時代を走っていきましょう。
そうでない方も、芸術作品に癒やされながら、自分らしい人生を創造していきましょう。
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