【小説】怪異は連鎖する 第一話
〈あらすじ〉
現実とは、映画のように派手なわけでもなく山場があるわけでもない。物事の理由が明確になることすらなかったりする。鳥肌が立つようなジットリとした恐怖が、ただただそこにあるだけだ。
これは、専門学校に通う私の身の回りに起きたゾッとする怖い話。
専門学校に通うため、一人暮らしを始める私は学生寮の古いアパートに引っ越しをした。
不安と期待が入り交じるなか夢を叶えるための新生活が晴れてスタートした。
しかし、そのアパートでは次々と不可思議なことが巻き起こっていく。きっとこのアパートは曰く付きなのだ…そう思われたが、それは次々と連鎖していく。
本編
違和感のアパートの怪異
高校を卒業し、県外の専門学校へ通うために引っ越しをした。
初めての一人暮らしのスタートである。
住まいは学校のすぐ近くに建つ古いアパート。
一応、学校の寮ではあるものの門限があるとか、ご飯が出るとか、そういったことは一切なく…少し家賃が安いというだけで、身の回りのことは全て自分で行わなくてはならなかった。
そして、基本的には学生が入居するものなのだが一般の方も住めるようになっていた。
一般のアパートを寮として一部借り上げている仕組みだった。
三階建てでワンフロワに六部屋ずつのアパートだったが、私は最上階である三階の角部屋に入ることとなった。三階は私以外は一般の方が住んでいた。
部屋の間取りとしては、1Kのユニットバスという一人暮らし向けな間取りであった。
部屋には特に不満はなかったのだが…一つ気になった点がある。
アパートの廊下が暗いのだ。
日の光が入りにくいのか…昼間でも薄暗い。
幸い私の部屋は階段を上がって直ぐの一番手前の位置だったために廊下を歩かなくて済むのだが、それでも早急に部屋に入りたい気分になった。
昼間でもそんな状態なのだから、夜はとりわけ暗い。
もちろん廊下には蛍光灯は幾つも点いている。だが、それでも暗い…。はっきりと言ってしまえば、不気味な雰囲気なのである。
同じくこのアパートに住むKちゃんという子と仲良くなったのだが、やはり同じことを言っていた。
「暗くて、不気味だ」と。
Kちゃんは二階に住んでいて、その部屋が奥から二番目の位置にあるものだから、廊下をわりと歩かなくてはいけないので尚更気が滅入るらしい。
実は私は二階に住んでいるKちゃんには言い出せなかったが、二階が特に暗い雰囲気だと感じていた。
暫くして私は居酒屋のバイトを始めるのだが、深夜1時頃に帰宅して階段を上がり三階の自分の部屋まで向かう。
当然、その際に二階にも差し掛かるのであるが、廊下の全貌を見ようとはしなかった。体が拒否する感覚だった。少しだけ首の角度を変えれば完全に廊下の全貌が見える。
だけど、絶対に見なかった。
どうしても視界の隅には入ってしまうけれど、しっかりと視界に入れることはしないようにしていた。
私は霊感など無いので何か視えるなんてことはないのだけれど…
なんとなく、避けたかった。
この感覚が間違いではなかったことは、後々分かる。
さて、無事に入学式を終え、学生生活がスタートして一週間ほど経った頃である。
学校が終わり家で寛いでいると、二階の友達から連絡が入った。
"三階うるさくない?"
というものだった。私は耳を澄ませてみる。…何も聞こえない。
"うるさくないよ。どんな音?"
と返信する。すぐにまたメールが届く。
"なんか、子どもが走り回ってるような音"
…なかなか不気味なことを言う。私にはそのような音は聞こえないので、試しに廊下に出てみることにした。
扉を開けて、一歩外に出て耳を澄ます。
…聞こえない。
"廊下に出てみたけど聞こえなかったよ"
と返信すると、
"聞こえないならいいんだ、忘れて"
と言われてしまった。忘れられるわけがないのだけれど…。
先述した間取りの通り、このアパートは一人暮らし向けだ。そして、ここに住んだ二年間子どもの姿は一度も見ることはなかった。無論、足音などの気配もない。
引っ越して早々に不気味なことを言うのは止めてほしいと思ったが、このような音に纏わる現象が次々に起こっていくのだった。
