産んでも産まなくても女性のせいにされませんか? (少子化問題のジレンマ)
歌詞のメッセージと、この明るさを、本稿の冒頭に置きたいと考えました。
1 はじめに:「育てられないなら産むな」という言説の理不尽
犬や猫を飼育する文脈なら、育てられないなら家族に迎えるのは無責任と言うのは理解できます。
だけど、「育てられないなら産むな」という意見は難問だと感じます。
つまり「育てられる」とは、具体的に何なのでしょう? 生存? 教育? 障害を負った場合は?
2 家族依存型福祉の限界:我が家の場合
デリケートな話だから、私の家族の例で話しますね。伯父が統合失調症だから、遺伝することなのか、若かった私の両親は悩み、専門医と相談をして、当時の医学では分からないと言われ、下の子が産まれました。我々の歳が離れているのは、そのためです。
兄としてバカなことを申しますと、記憶力がずば抜けていて、英単語はもちろん、他の教科も教科書を暗記して試験に臨むヤツでした。私が進学する道を断たれた、地元の進学校に、家族の名誉がかかっていると感じて進学し、大学も努力を続け、卒業式の総代のスピーチを頼まれた頃に発症。診断名は双極性障害から統合失調症へ代わり、2017年まで、療養生活を続けて事故で亡くなりました。持って生まれた力と、障害の重さが比例するかのような苦しみを生き抜きました。自慢の家族です。兄にしてもらえてよかったなぁと、思っています。
3 無限に責任は負えない
だから、下の子が産まれてくるべきではないとか、お荷物だとは思っていません。
しかし、母は70歳になるまで、下の子の療養や看護をし続けたことは事実です。
このように、障害を持った子や、障害を負った子の親、とくに母親が、事実上無限に責任を負わされる状況を改善しないと、安心して出産出来ないと思うのです。
参考情報
高齢化率が18.5%(22(2010)年)のスウェーデンiiでは、介護を必要とする高齢者であっても、在宅介護サービスiiiを受けながら自宅で暮らし続けるケースが多く、9割を超える高齢者が在宅で過ごしている。
(国は、海外の制度を理解してますよ)
4 生殖を個人の責任から社会の共同事業へ転換するパラダイムシフト
4-1 何をどう変えるのか?
生殖を個人の責任から社会の共同事業へ転換するパラダイムシフトを、日本社会は必要としていると思います。
また、技術の進歩で、可能になることが増えるから、倫理的に大丈夫なことは何なのかも論じる必要があります。
4-2 江戸時代などの間引きから学ぶ
国や男性側の都合を、女性に背負わせると:
日本では、平安時代の『今昔物語集』に既に堕胎に関する記載が見られるが[1]、堕胎と「間引き」即ち「子殺し」が最も盛んだったのは江戸時代である。関東地方と東北地方では農民階級の貧困が原因で「間引き」が特に盛んに行われ、都市では工商階級の風俗退廃による不義密通の横行が主な原因で行われた。また小禄の武士階級でも行われた[2]。
この時代と変わらなくなりますよね。また、現在倫理的であることが、将来変わる可能性も示唆します。
収入が少なくて子供を育てられないなど、経済的な理由が67.7%と最多で、次いで若すぎる、未婚のため、子育てに自信がない、学業に差し支える、親の反対等が上位を占めました。
10代ということもありますが、江戸時代の間引きも貧困が原因だから、とても考えさせられます。
4-3 議論のために確認したい大切なこと
女性の自己決定権を守ること
キャリアと生涯の収入で不利益が起きないこと
中絶自体を減らしていく
→避妊の啓発
→性犯罪の撲滅(暴力が無くて当たり前の社会に育てる)
出産も中絶も国や他人が(伴侶も含めて)、口出ししてはいけない(命をかけるのは女性だから。将来的に人工子宮が可能になると、ここは前提が変わるはずです)
産まれてくる人の権利と尊厳
4-4少子化対策例
フランスが「保育インフラ整備」、スウェーデンが「休暇制度の柔軟性」、フィンランドが「物質的支援と保健サービスの統合」に重点を置いているので、日本はいいとこ取りで参考にすると良いと思う。「物質的支援と保健サービスの統合」は、個人的には日本のお古の文化と相性がいいと思うし、保健サービスにアクセスしやすくなり、女性の孤立を減らせると思う。
ご興味のある方は、パパ・クオータ制も検索することを勧めます。
4-5 ダブルスタンダードの残酷
生殖の非対称性もテコ入れが必要です。
例えばトイレで出産して捕まる報道はあっても、妊娠させた側は報道されませんよね。社会のダブルスタンダードと指摘されても、仕方がない現実です。
また、責任持って育てている若い女性が、ネットで叩かれたりします。7年も経てば、その方のお子さんが小学生になり、自分のお母さんが、自分が原因で炎上したと知ることになるから、一時の感情で誹謗中傷することは、避けて欲しいです。
むしろ、それほど激怒するのはなぜか、自己との対話をされると良いと思う。
5 デジタル時代の「村」という選択肢
以上を踏まえて、「育てられないなら産むな」を振り返ると、少子高齢化だから「でも産め」だし、「共働きで稼いで納税しろ」などなど、国や社会の本音がダダ漏れでうるさいですよね。
国がシェアハウスみたいな組織を運営して、若かったり貧しかったりする女性が、安心して出産して「みんな」で子育てし、キャリアも犠牲にせずに済む、「産む・産まない」の中間の、「産みたいけど、育てるの大変」という人々の支援をすると、どうでしょう?
もちろんご夫妻でも昔のように実家で出産するように、実家の代わりに利用することも可能にする。
ずっとシェアハウスでもいいし、経済的に自立しても良いし、実家みたいに帰ってきても良い。新しい村、共同体ですよね。
6 「産む/産まない」ジレンマを「産み育てのプロセス分散化」で解消したい
こうすることで、いやいや期も思春期も教育費も大変だけど、授かって出産出来れば、何とかなると思えるでしょう。すると、その他の人々の重圧も減ります。
ご事情や縁で、お子さんが授からなくて養子も迎えられなかったとしても、こうした組織に寄付をするとか、親戚のおじさんおばさんみたいに関わりを持てるようにすると、「産まなかった・産めなかった・授からなかった」方が抱える疎外感を和らげることができますし、子どもたちからすると、味方は多いほうがいい。
繰り返すと、「産む/産まない」ジレンマを「産み育てのプロセス分散化」で解消できるかもしれません。
妊娠期:公的ケアハウス
乳幼児期:地域シェア育児
学童期:教育バウチャー制度
こうした工夫を組み合わせて、デジタル時代の新しい「村」を作るイメージです。1914年生まれの私の母方の祖父が育ったような村のイメージ。
少子化に関して、私はこうしたアプローチが必要だと思うのです。
そして、出産した人だけが無限に責任を負わされる問題は、トイレで孤独に出産して捕まるケースも、私の母のケースも、減らして欲しいと願っています。
7 命のバトンは女性が負担を引き受けた社会のインフラ
社会が永続するには、人が存在する必要があります。理屈では、里親を必要とする子どもは世界中にいるし、安心して子育てしたい人々もいるから、生殖にこだわらなくてもいいはずです。しかし、移民は社会統合が難しい。
だから、生殖は社会の重要なインフラだと見直す必要もあるかもしれません。
物理的インフラ(保育施設)
人的インフラ(ケアワーカー養成)
技術的インフラ(AIとロボットで育児支援する議論)
法的インフラ(生殖の権利の議論)
文化的インフラ(子育てとは何かの再構築)
例えば、こう要素を分解すると、我々の社会の得意なことと苦手なことが見えてきますよね。おそらく、人材はいるけど、予算やリーダーシップの問題が大きいように思うのです。
インフラとか言うと情緒無いのですけど、「世界のインフラ」を歴史的に担ってきた女性への敬意を込めて、こう呼びました。
8 Q&A
「財政負担どうするの?」
2022年度補正後予算の国の一般会計歳出は、110.3兆円となっています。これは主に、①社会保障、②国債費、③地方交付税交付金等に使われており、これらで2/3を上回っています。
110.3兆円あるのだから、優先順位の問題だと思います。例えば、国際競争力が高い福祉国家という、一見矛盾することが可能かもしれません。競争するには人材が欲しいでしょう。福祉を行うなら、財源が安定するほうがいい。日本は現状、少子高齢化だから現役世代全員活躍しても、世界的には少数精鋭で競争するはずです。だから、結果的に達成出来そうに思います。
「家族制度への影響への影響はないの?」
大家族が核家族になり、そして団塊の世代3世の世代の人口は多くなりませんでした。少子高齢化自体が家族制度へ影響があり、何もしないことで機会損失することと、どちらが良いと思われますか?
そして、残された問い
シェア育児参加者の権利義務関係(法的親子関係の再確認)
「共同養育」と個人の育児観の衝突が予想されるので、思いを聴いて調整出来る人材を配置する
テクノロジーを用いた場合、愛着形成への影響をどうするのか
皆さんはどう思われますか? 私は、まずは安心感の確保とか、これまで犠牲を払った人々への感謝や名誉の確認から始めるのがいいと思います。
「子どもの声でうるさくて」といえる社会を、子どもがうるさいのは当たり前だと思えるスタンスで、取り戻せるといいですね。
Photo by Ann H from Pexels:
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彼らはテクノロジーによる電子音楽を、人の声で再考しました。革新的だけど、体温を失わない点に、私は学びたいです。
関連note
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