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入れ歯も支援も、渡して終わりではない



先日の管理栄養士さんからの講話から、食事や食事介助について、歯科衛生士として働いていた頃のことを思い出しました。

私は、食事そのものよりも、その後の口腔ケアから関わることが多くありました。

けれど、「食べる」ということは、口の中だけで完結するものではありません。

飲み込む力。

姿勢。(→コレ結構大事です)

食事の形態。

一口の量。

介助する人との距離。

本人の気持ち。

いろいろなものが重なっています。

そして、それは義歯についても同じでした。

新しい入れ歯だからといって、すぐ何でも噛めるわけではない


義歯を新しく作った時は、まず口の中に入れることに慣れてもらいます。

その後、柔らかいものから少しずつ食べてみてくださいね、とお話ししていました。

ところが、たまにいらっしゃるのです。

新しい入れ歯が入ったからといって、いきなり硬い煎餅🍘やステーキ🥩に挑戦する方が。

そして、
「こんなの痛くて噛めん!」
と怒って、使わなくなってしまう。

もしくは、長年使っていた古い義歯へ戻ってしまう。

新しいものの方が、見た目はきれいです。

設計上も、以前より良い状態になっているかもしれません。

それでも、長く使ってきた義歯には、その人の口に馴染んだ感覚があります。

新しく作れば、すぐに何でも食べられる。

残念ながら、そう簡単ではありません。

義歯は、完成したあとも何度か調整しながら、少しずつ「自分仕様」にしていくものです。

施設では、今ある義歯をなるべく生かしていた


施設へ入居された方の場合は、できるだけ今ある義歯を使えるようにしていました。

歯ぐきに当たる部分を材料を裏打ちする「リライニング」や「リベース」を行ったり、歯が抜けた部分に人工歯を足す「増歯」をしたりします。

さすがに、

義歯が真っ二つに割れた。

クラスプと呼ばれるバネの部分が大きく変形した。(踏んづけたとかお尻の下にあったとか😭)

この場合はもう修理では対応できない。

そうした場合には新しく作ることになります。

でも、我々は簡単には諦めません。

新製には時間もかかりますし、
今まで使ってきた義歯は、単なる道具ではなく、その人の身体の一部に近いからです。

食事の時は外してもよい、と伝えることもあった


新しい義歯がなかなか馴染まない方も多くいました。

食事中に痛い。
噛むと義歯が動く。
口から飛び出してしまう。
(マンガみたいな話ですが、あるんです💦)

本人にとっては不快ですし、介助する職員の仕事も増えます。

義歯の完成まで時間がかかるため、その間に義歯なしで食べることに慣れてしまった方もいました。

そのような時には、状態を見ながら、

「食事の時は外して食べてもいいですよ。その代わり、起きている時は、できるだけ使ってくださいね」

とお伝えすることもありました。

歯科として、それが常に理想的な対応だったとは言えないかもしれません。

本来であれば、適合した義歯を使い、安全に、よく噛んで食べてもらうことが大切です。

ただ、義歯が痛くて食事そのものが苦痛になったり、食べることを嫌いになったりするくらいなら、まずは美味しく食べてもらいたい。

患者さんが、楽しく過ごしてくれること。
ご飯を、美味しいと感じられること。

歯科医師や私達は、そこを大切にしていました。

入れ歯を入れると、顔が変わる


義歯には、食べるためだけではない役割もあります。

義歯が入ることで口元が支えられ、顔のしわが目立ちにくくなります。
頬や唇の形も整い、顔つきがしゃきっとします。

義歯を入れた患者さんには、よく声をかけていました。

「すごく若返りましたね」
「美人さんになりましたね」
「イケメンになりましたよ」

すると、少し照れながら、鏡を見る方もいました。

使いづらい義歯を無理に押しつけるだけでは、使ってもらえません。

でも、
「少し使ってみようかな」
と思えるきっかけは、痛みの調整だけではないのかもしれません。

自分の顔が少し好きになること。
以前の自分に近づいたように感じること。

それも、義歯を使い続ける理由になるのだと思います。

歯科診療に時間がかかる理由


義歯を作るまでには、かなり時間がかかります。

まずは口の中を診察します。
必要があれば抜歯をする。
傷が治るのを待つ。
虫歯を治療する。
歯石を取る。
歯の根の治療をする。

口の中の状態を整えてから、ようやく義歯作りが始まります。

そこから、
型を取る。
噛み合わせを確認する。
歯を並べて試す。
完成後も調整する。

いくつもの工程があります。
歯科技工士が、一人ひとりの口に合わせて作ります。

そうです。
義歯はオーダーメイドです。

テレビCMなどで、
「オーダーメイド入れ歯」 
と宣伝しているのを見ることがあります。

でも、基本的に義歯はオーダーメイドです。
三回目ですが、大事なことなので何度でも言います🤣

患者さんの口の中の形も、噛み合わせも、歯ぐきの状態も、残っている歯も、一人ひとり違うからです。

時間がかかるのは、決して歯科医院がのんびりしているからではありません。
それだけ工程が多く、調整が必要なのです。
どうか、少しだけご了承ください💦

渡して終わりではない


義歯は、完成品を渡して終わりではありません。

何度か調整しながら、その人の口と生活に馴染ませていくものです。

考えてみれば、支援も似ています。

制度を紹介したから終わり。
サービスにつないだから終わり。
福祉用具を渡したから終わり。

それだけでは、本人の暮らしに馴染むとは限りません。

どれほど良い制度でも、どれほど正しい支援でも、その人が使いづらければ続きません。

本人の困りごとや生活に合わせて、少しずつ調整していく必要があります。

義歯も支援も、基本はオーダーメイド。
そして、渡して終わりではない。

その人が自分のものとして使えるようになるまで、様子を見ながら整えていく。

あごマスクで却下しましたが良いイラストなので💦

歯科衛生士として患者さんに関わっていた頃、私はそれを毎日のようにしていたのだと思います。

当時は、支援だなんて考えていませんでした。

ただ、
少しでも痛くないように。
少しでも美味しく食べられるように。
少しでも笑顔になれるように。

それだけでした。

でも今振り返ると、
食べることを支える仕事は、
その人の生活そのものを支える仕事だったのだと思います。

お時間ありましたら、こちらのお話もどうぞ😊



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