過去とは、ボートの航跡のようなもの
先月撮った写真を整理していたら、クルーズ船の甲板から撮ったビデオに目が留まった。
メキシコに向かってゆっくりと進みはじめた船の目の前に、大きな橋が迫ってくる。 普段、私が車で頻繁に通っている、お馴染みのハイウェイ。
かつて、下を通る貨物船が橋に衝突して橋が崩落し、走行中の車が海に落ちるという惨事があった。以来、橋はより高く架け直されたが、それでもクルーズ船は12階建ての高さがあるため、くぐる瞬間は信じられないほどぎりぎりになる。
甲板に立ってそのすれすれ感を体験したい——それは、私のやりたいことリストのひとつでもあった。クルーズを予約すれば簡単に叶うとわかっていたけれど、それだけのために船に乗るのもちょっと違う気がして、ずっと後回しにしていた。先月、ようやくその機会がきた。
どんどん近づいてくる橋にどきどきしながら、頭上すれすれにハイウェイである橋が通り過ぎていくのを感じた。
水平線に美しい夕陽が輝いていた。その光の中で振り返ると、パドルボードに乗った人たちが魚のようについてくる姿があった。巨大な船が作る波に乗って、戯れているのだった。
船が生み出す波を、WAKE(ウエイク)と言う。
私が好きなダイアー博士が、かつてインタビューでこんなことを話していた。
“The past is a trail you leave behind, much like the wake of a speedboat.
The wake of a boat doesn't affect its course… since it appears behind the boat.”
「過去とは、ボートの航跡(wake)のようなもの。
船の後ろに一時的に残る跡にすぎず、船の進路そのものには影響を与えないのですよ」
人生において大切なのは、過去との関係ではなく、どこまでも“今この瞬間”との関係。博士はそう繰り返し語っていた。もちろん同じようなことを言う人はたくさんいるけれど、船の航跡に例えたこの比喩は、私の心に一番強く残っている。
何かを悔やんだり、ガッカリしたり、怒ったりする気持ちも分かるけど、それらはあなたを幸せな未来に導いてくれるわけじゃない。だから、過去を振り向くより、今この瞬間を大切にしたいという言葉の意味は、今ならとてもよく分かる。
振り返ったとき、自分がつくったウエイクを、誰かが楽しそうに波乗りしているのが見えるかもしれない。
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