【全訳】国連の女性差別作業部会のセックスワーク非犯罪化の勧告
以下の文書のA/HRC/WG.11/39/1は、2024年に開催された国連の人権理事会(Human Rights Council / HRC)の「女性および女児に対する差別に関する作業部会」の第39回会合の報告書のセックスワークの非犯罪化の勧告で、この勧告で一段と国際人権でのセックスワークの非犯罪化の潮流が強まっています。
前年の2023年の第38回会合でも、国連の人権理事会の作業部会はすでに非常に明確な形で全面的なセックスワークの非犯罪化を勧告しています。 この文書は、セックスワーカーが直面する制度的・構造的な排除を問題視しています。
I. はじめに
1 世界中のセックスワーカーは、広範囲にわたる差別と人権侵害に苦しんでいる。これには、恣意的な逮捕や拘禁、国家機関や民間人による暴力、医療・社会サービスへのアクセスの欠如、司法へのアクセスの阻害、私生活や家庭生活への干渉、そして市民的・政治的・文化的生活からの排除が含まれる。(注1)セックスワーカーの権利運動は拡大しているが、セックスワーカーの権利侵害に関する人権の法体系は限定的である。人権救済制度へのアクセスの障壁や、セックスワークとフェミニズム、そして人権に関する極めて対立した見解が、セックスワーカーの人権保護における実質的な進展を妨げてきた。
注1 オープン・ソサエティ財団「セックスワーカーが経験する一般的な人権侵害」(2011年)
2 「女性および女児に対する差別に関する作業部会」は、セックスワーカーに対する差別、疎外、およびスティグマ(社会的不名誉)が人権機関によって対処され、その人権が保護されるべき時が来ていると考えている。これを踏まえ、セックスワーカーの見解を反映させた本文書は(注2)、異なる政策体制下での人権侵害を可視化し、国際的な人権基準の明確化と再確認をして、各国政府やその他のステークホルダーがセックスワーカーの人権をより一層実現するための勧告を行うことを目的としている。本作業部会は、この文書を通じて運動間の連帯を構築し、誰一人取り残さないことを確実にすることを目指す。人権基準の分析と勧告に先立ち、本作業部会はセックスワークに対する主なフェミニストの取り組みと、主な立法と規制モデルの概要を提示する。
注2 2023年5月、世界のあらゆる地域から集まったセックスワーカーとの会議が開かれた。作業部会は、対話者の方々の貴重な時間と専門知識に感謝の意を表する。本報告書の主執筆者であるIvana Radačićは、長年にわたる学術研究を通じて様々な法域の多くのセックスワーカーと接触しており、その経験も本報告書の作成に役立った。本報告書はAlice Miller、Christina Zampas、Trajche Janushevによるレビューの恩恵を受けており、作業部会は感謝の意を表する。
II. さまざまなフェミニストの視点
3 セックスワーク(注3)はジェンダー化された現象であり、その内部の仕組みは既存の家父長制、人種、階級、そして国家主義的な階層構造に従う傾向がある。多くのセックスワークの分野で、性的なサービスを売る側のほとんどは女性であり、買う側のほとんどは男性である。さらに、ジェンダーの制度は、セクシュアリティを規定する核心の枠組みの一つでもある。(注4)ゆえに、セックスワークはフェミニストの考察の中心に置かれてきた。
注3 「セックスワーク」という用語は、セックスワーカーの権利活動家によって作られて、セックスワークや売春を違法、不道徳、危険な活動とする支配的な描写に抵抗し、労働的側面を強調するものである。より広範な概念ではあるが、本文書では「セックスワーク」という用語を、金銭その他の経済的利益を得るための性的サービスの販売の意味で使用して、これは性的サービスを販売する人々が好む用語である。「売春」という用語は、特定の法規定を参照する場合や、直接引用を行う場合に使用される。詳細はOpen Society Foundations「開放社会におけるセックスワークの理解」(2019年4月)を参照。
注4 Joyce Outshoorn「売春と女性の人身取引をめぐる政治的議論」『社会政治学』第12巻第1号(2005年春)、141–155頁。
4 セックスワークに従事する人々のアイデンティティや経験は多様であるにもかかわらず(とりわけ、性別、性的指向、性同一性、人種、市民権、社会経済的背景、セックスワークの市場によって影響を受け、それらがどのように交差するか)、この議題は主に二極化したイデオロギー的立場の観点から議論されてきた。(注5)一方の側には、廃止論的フェミニストの立場があり、セックスワークを女性に対する暴力、セックスワーカーを被害者と位置づけ、顧客の犯罪化を主張する。(注6)もう一方の側には、セックスワークを選択の問題として、セックスワーカーを合理的主体と定義し、成人間の自発的なセックスワークの完全な非犯罪化を提唱するフェミニストの立場がある(注7)。第三の視点として、二分法的な思考に異を唱え、セックスワーカーの主体的意志(エージェンシー)を認めつつも、社会的、経済的、政治的制限も認識して、この主体的意志(エージェンシー)はあらゆる労働市場にある搾取された労働の現実を反映させるもので、この視点が台頭してきている。(注8)この第三の視点は、抽象的にセックスワークの政策を論じるのではなく、実務における各政策の人権への影響を注視する。そして、ハームリダクションの観点から、成人間のセックスワークの完全な非犯罪化を提唱している。
注5 しかし、売春に関するフェミニストの視点は数多く存在し、リベラル、ラディカル、社会主義、マルクス主義、実存主義、ポストモダン、ポストコロニアルなどがある。Sarah Bromberg「売春におけるフェミニストの課題」(1997年、アメリカ合衆国カリフォルニア州立大学ノースリッジ校にて開催された国際売春会議での発表論文)を参照。ラディカルフェミニスト、セックス・ラディカル、ポストモダン、ポストコロニアル・フェミニストの視点に関する議論については、Jane Scoular「売春の『主体』:フェミニスト理論におけるセックス/ワークの言説的、象徴的、物質的立場の解釈」『フェミニスト理論』第5巻第3号(2004年12月)、343–355頁を参照のこと。
注6 このラディカルフェミニストの立場には、カトリーン・バリー『性の売春化』(ニューヨーク:ニューヨーク大学出版局、1996年)、シーラ・ジェフリーズ『売春の概念』(オーストラリア・ノースジーロング:スピニフェックス出版、1997年)、 キャサリン・A・マッキノン「人身売買、売春、そして不平等」『ハーバード市民権・市民的自由法レビュー』第46巻第2号(2011年夏号);メリッサ・ファーリー編『売春、人身売買、心的外傷後ストレス』(ニューヨーク、ラウトリッジ、2004年)のようなものがある。
注7 いわゆるセックス・ラディカルズや、セックスワーカーの権利活動家の中には、セックスワーカーを家父長制の破壊者として位置づけている者さえいる。Frédérique Delacoste and Priscilla Alexander編『セックスワーク:性産業で働く女性たちによる著作集』(San Francisco, Cleis Press, 1998)を参照。
注8 この視点は主にポストモダン理論とポストコロニアル理論に位置づけられ、しばしば労働権利運動を反映している。参照:マギー・オニール『売春とフェミニズム:感情の政治学へ向けて』(ケンブリッジ、グレートブリテン及び北アイルランド連合王国、ポリティ、2001年);ジュリア・オコンネル・デイヴィッドソン『売春、権力、自由』(アナーバー、ミシガン大学出版局、1998年); ジェーン・スカラー『売春の主体:セックスワーク、法、社会理論』(英国アビンドン、ラウトリッジ、2015年);イヴァナ・ラダチッチ、マリヤ・アンティッチ、ミルジャナ・アダモヴィッチ「構造と主体性の相互作用におけるセックスワーカーの職業活動」『クロアチア政治学レビュー』第59巻第2号(近日刊行予定)。
5 ここ数十年で、セックスワーカーの権利を擁護する運動は世界的に大きな広がりを見せて、多様なフェミニストの潮流やLGBTIQコミュニティの仲間たちも加わっている。(注9)この運動はセックスワークを正規の労働として認められるべきものと定義し、労働法上の権利や社会保障制度の対象とすべきだと主張している。そして、セックスワークの全面的な非犯罪化と、公共政策の策定から実施・評価に至るまでの全過程にセックスワーカー自身が参画することを求めている。(注10)
注9 グレゴール・ガル『セックスワーカー組合の組織化:国際研究』(英国ベージングストーク、パルグレイブ・マクミラン、2006年);グローバル・ネットワーク・オブ・セックスワーク・プロジェクトズ「歴史」。https://nswp.org/history で閲覧可能。また、カマラ・ケンパドゥー、ジョー・ドエゼマ編『世界のセックスワーカー:権利、抵抗、再定義』(ニューヨーク、ラウトリッジ、1998年)。
注10 「ヨーロッパの性労働者宣言」参照。
https://www.opensocietyfoundations.org/uploads/4519572c-ebbf-45c8-980c-
d8b36da1f050/manifesto_2005.pdf
欧州性労働者権利同盟「性労働者を支援するフェミニストたち:私たちのマニフェスト」、2023年3月。
https://www.eswalliance.org/the_femifesto
グローバル・ネットワーク・オブ・セックスワーク・プロジェクト「性労働、人権、法に関する合意声明」、2013年。https://www.nswp.org/resource/nswp-publications/nswp-consensus-statement-sex-work-human-rights-and-the-law
6 本作業部会は、セックスワークを巡る支配的な二極化した議論が、その複雑さや当事者の多様な経験を反映していないと考えている。こうした分断を招く論争は、セックスワーカーが直面する差別、暴力、その他の人権侵害の削減にはつながらず、むしろ逆効果である。本作業部会は、セックスワークが収入を得る手段になっていることも認識し、この活動に従事する人々が直面している差別や人権侵害を懸念している。
7 人権の観点からセックスワークを検討するにあたり、本作業部会は、平等と非差別の原則、主体的意志(エージェンシー)、身体的自律、プライバシー、自由な意思決定に焦点を当てる。同時に、平等への権利、最高水準の健康への権利、暴力からの自由を含むセックスワーカーの人権が完全に尊重され保証される必要性を強調する。自己決定に基づくこの取り組みを採用することは、セックスワークに従事するという決定が他の多くのインフォーマルな労働と同様に、ジェンダーに基づく差別やトランスジェンダーへの暴力、人種差別、社会経済的な疎外、排他的な移民政策、そして新自由主義的な資本主義がもたらす深刻な格差の中で行われているという事実を覆い隠すものではない。一部の女性にとって、収入を得る機会は極めて限られている。協議の中で、あるセックスワーカーは次のように語った。「もし他の機会があったなら、セックスワークを選ばなかったでしょう。しかし、これは私の選択であり、尊重されるべきなのです。」
8 さらに、この取り組みは、より肯定的にセックスワークに従事することを決めた人々でさえ、しばしば搾取や暴力の対象となるという事実を隠すものでもない。セックスワーカーは毎日の生活の中でさまざまな人権侵害を経験する。こうした侵害は、国際人権法において、長らく正面から議論されることがなかった。本作業部会は、基準を明確にし勧告を行う前に、各立法モデルが人権に及ぼす影響について論じる。
用語・背景の補足
Agency(エージェンシー/主体的意志): 自分で考え、選択し、行動する能力のこと。この文書では「無理やりやらされている被害者」としてだけではなく、「自分の意思で動く主体」としてセックスワーカーを捉える重要性を説いています。
Decriminalization(非犯罪化): 「合法化(Legalization)」が特定のルールの下で許可するのに対し、「非犯罪化」はセックスワークに関わる行為そのものを刑罰の対象から外すことを指します。
Harm Reduction(ハームリダクション): 禁止や根絶が難しい現状において、現実に起きている健康被害や暴力を最小限に抑えることを優先する考え方です。
III. さまざまな政策の取り組み
9 近年、多様なフェミニストの視点がセックスワークの政策の取り組みに影響を与えている。(注11)例えば、リベラル・フェミニストの視点は、オランダやニュージーランドの立法に影響を与えた。(注12)一方で、ラディカル・フェミニストの視点は、スウェーデンが最初で他国でも採用された顧客の犯罪化モデル(「需要の根絶」としても知られる)に影響を与えた。他の政策には、一部の管轄区域(アメリカ合衆国ネバダ州の一部郡を除く全域など)では、セックスワーカー、顧客、および第三者のすべてを処罰する全面犯罪化がある。多くの国では、売春の組織、管理、仲介が犯罪とされており、一部の国(主に旧共産圏諸国)では、性サービスの提供そのものが行政罰や軽犯罪の対象となっている。(注13)セックスワークが犯罪化されていない地域であっても、多くの規定がセックスワーカーに対して存在して、特に路上で働くセックスワーカーに対してはそうである。実際、ほとんどの規制枠組みにはセックスワーカーに対する懲罰的な要素があり、そのすべてが人権上の影響がある。(注14)
注11 もちろん、フェミニストの言説は、セックスワークを規制する唯一の、あるいは必ずしも最も支配的な言説ではない。他の枠組みには、公序良俗、公共の安全、公衆衛生、人身取引対策などが含まれる。セックスワークに関する言説も政策立案において関連性を増しつつある。
注12 オランダ王国は2000年に合法化を導入した。2003年にはニュージーランドが、セックスワークの完全な非犯罪化というより柔軟なモデルを採用した。これらの取り組みについては後述する。参照:ジョイス・アウトショーン「議会における売春論争:フェミニスト分析」『欧州女性研究ジャーナル』第8巻第4号(2001年11月)、 pp. 472–490; アリソン・ローリー「この問題の複数の側面:売春改革に関するフェミニストの見解」『性労働から犯罪性を取り除く』ジリアン・エイベル他編(英国ブリストル:ブリストル大学出版局、2010年)所収。
注13 グローバル・ネットワーク・オブ・セックスワーク・プロジェクトズ「セックスワーク規制が分かる世界の地図」、2021年12月。https://www.nswp.org/sex-work-laws-map
注14 グローバル・セックスワーク・プロジェクト・ネットワークによれば、193の国と属領において、何らかの形態のセックスワークの1つ以上の側面が犯罪化されているとしている(同上参照)
10 制度の複雑さに加え、セックスワークの規制は合法・違法領域の間の広大なグレーゾーンによって特徴づけられる。これが法的不確実性を生み出し、しばしば国際的な人権基準に抵触している。さらに、セックスワーク政策の実施においては、広範でしばしば恣意的な執行機関による権力行使で特徴づけられ、それは警察、自治体や、社会福祉機関などで行われている。また、ほとんどの政策は、最も脆弱な立場にある路上セックスワーカーを標的にする形で実施されている。(注15)最後に、LGBTIQコミュニティに対する差別的な法律、制限的な移民政策、性的搾取を目的とした人身取引とセックスワークの混同、多くの国におけるリプロダクティブ・ライツへのアクセスの阻害、そして広範な反移民感情や人種差別や反LGBTIQ感情や社会経済的不正義が、セックスワーカー、特にトランスジェンダー女性、移民、人種・民族的マイノリティを不利な立場に追い込んでいる。各国政府は、セックスワーカーが差別なく人権を享受することを保証できていない。
注15 ジェーン・スコーラー「法は何の関係があるのか:法律がいかにして、なぜセックスワーク規制において重要なのか」『法と社会ジャーナル』第37巻第1号(2010年3月)、pp. 12–39
1 さまざまな犯罪化モデル
11 セックスワーカーが犯罪化されている地域では、恣意的な逮捕(路上に立っているだけ、あるいはコンドームを所持しているだけで)、弁護権の軽視、警察による虐待(金銭や性的サービスのゆすり、差別、屈辱的な扱い)、民間人からの暴力に対する保護の欠如、適切な医療へのアクセスの欠如など、人権侵害が多発している。(注16)セックスワークそのものは犯罪とはされていない地域においても、多くの関連行為は依然として犯罪化されており、これはセックスワーカーに深刻な害を及ぼしている。(注17)例えば、第三者による関連行為(管理・仲介・支援など)の犯罪化は、セックスワークの管理者や組織者、仲介者だけでなく、セックスワーカーの子供やパートナーまでも「売春の収益で生活している」と見なされる規定に基づき犯罪化される可能性がある。さらに、女性同士が互いに協力して安全を確保するために働いている場合であっても、搾取の要素が全くないにもかかわらず「売春斡旋罪」として処罰されることがある。(注18)加えて、顧客への呼びかけやサービスの宣伝といった売春の勧誘や広告の犯罪化によって、セックスワーカー自身が罰せられる場合もある。
注16 セックスワーカー権利擁護ネットワーク『司法の失敗:セックスワーカーに対する国家・非国家主体による暴力と安全・救済の模索-中東欧・中央アジアにおけるセックスワーカー権利擁護ネットワークのコミュニティベース研究プロジェクト』(ブダペスト、エイズ対策協会(JAZAS)及び人身取引対策行動(ASTRA)、2015年); スラジャナ・バロス他、『法至上主義と裁判実務:セルビアにおける性労働の犯罪化が性労働者と人身取引被害者の人権に与える影響』(ベオグラード、2017年); イヴァナ・ラダチッチ、マリヤ・アンティッチ「性労働者の犯罪化:公共秩序の再考」『国際人権ジャーナル』第26巻第8号(2022年)、 pp. 1374–1393; 及び ジェルーシャ・ランガサミほか、「警察による性労働者への虐待:2011年から2015年に女性法律センターに報告された事例からのデータ」(ケープタウン、女性法律センター、2016年)。
注17 NSWP「セックスワーク規制のグローバルマッピング」
注18 バロスほか『法至上主義と裁判実務』、およびラダチッチ・アンティッチ「セックスワーカーの犯罪化」
12 さらに、セックスワーカー(特に、屋外で働くワーカー)は、周縁化され不利な立場にあるコミュニティ(その中にセックスワーカーも含まれることが多い)が採用する行動や活動が犯罪化されることで、間接的に犯罪化される可能性がある。例えば、薬物使用や所持の犯罪化、特定の性的指向や性同一性の犯罪化、ホームレス状態の犯罪化などがある。(注19) セックスワーカーは、徘徊、浮浪、交通妨害、売春目的の集会、公然わいせつ、騒乱行為などの罪で起訴されるかもしれず、これらはすべて、私生活の権利を含む人権の享受に影響がある。(注20)警察にセックスワーカーを直接的または間接的に標的にする権限を与えることで、犯罪化モデルは組織的な暴力を助長し、セックスワーカーの健康と安全を損なう。(注21)協議の中でセックスワーカーたちが強調したように、セックスワークの犯罪化は暴力を助長し、スティグマを増大させ、HIVやその他の性感染症のリスクが増大して、司法へのアクセスを妨げることで、セックスワーカーの人権を損なう。
注19 セックスワーカー権利擁護ネットワーク『正義の失敗』
注20 セックスワーカー包摂的フェミニスト同盟「刑法がセックスワーカーの健康、安全、人権に与える影響」、OpinioJuris、2023年6月21日。
http://opiniojuris.org/2023/06/21/impact-of-criminal-law-on-the-health-safety-and-human-rights-of-sex-workers/
および Open Society Foundations, 「セックスワークに影響を与える法律と政策」(ニューヨーク、2012年)。
https://www.opensocietyfoundations.org/publications/laws-and-policies-affecting-sex-work
注21 セックスワーカー包摂的フェミニスト同盟「刑法がセックスワーカーの健康、安全、人権に与える影響」
2 「需要の根絶」アプローチ
13 顧客を犯罪化するモデルも、問題の多い人権侵害の影響があり、作業部会による協議を含む過程でセックスワーカー自身から強い反発を受けてきた。(注22)第三者の性産業に関連するすべての活動(例えば、セックスワーカーに賃貸することなど)の広範な犯罪化は、セックスワーカーの私生活の権利、居住の権利、そして平等に扱われる権利を侵害することになる。(注23)このモデルは警察によるセックスワーカーへの監視や嫌がらせを激化させ、逮捕や拘禁の増加や、移民のセックスワーカーの強制送還を招き、セックスワーカーの司法へのアクセスを損なうことが示されている。セックスワークを地下に追いやることもまた、セックスワーカーのスティグマと差別を助長して、住宅や金融機関へのアクセスが妨げられ、公共施設が提供する枠組みから拒否されていると報告されている。(注24)このモデルもまた、セックスワーカーの健康と安全に悪影響があり、国連合同エイズ計画(UNAIDS)が認めているように、セックスワーカーの顧客を犯罪化することは、コンドームへのアクセスと使用を減らし、暴力の発生率を高めるなど、セックスワーカーの健康と安全に悪影響を与えることが判明している。(注25)作業部会が開催した協議では、参加者は、顧客が警察を恐れるため、セックスワークがより安全性の低い場所に移り、セックスワーカーが顧客の選別など労働条件に関する管理をどのように失ったかを説明した。さらに、参加者たちは、セックスワークの違法な地位が、コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックの間、あらゆる社会的保護が、どのようにに失われていたかを説明した。
注22 同上;NSWP「『需要根絶』立法が女性のセックスワーカーに与える影響」(エディンバラ、2018年)。
https://www.nswp.org/sites/default/files/pb_impact_of_end_demand_on_women_sws_nswp_-_2018.pdf
および欧州性労働者権利同盟「スウェーデンモデルに関する誤解を解く」(2022年)。https://www.eswalliance.org/myth_busting_the_swedish_model
注23 アムネスティ・インターナショナル『市場を「壊滅させる」ことの人間的代償:ノルウェーにおける性労働の犯罪化』(ロンドン、2016年)。
注24 NSWP「『需要根絶』立法が女性のセックスワーカーに与える影響」
注25 「HIVとセックスワーク」、人権ファクトシートシリーズ(2021年)
https://www.unaids.org/sites/default/files/media_asset/05-hiv-human-rights-factsheet-sex-work_en.pdf
3 合法化
14 セックスワークを管理することを目的にした規制の取り組みである合法化も、セックスワーカーの権利を侵害することを招く側面が多くある問題が存在する。どこで、どのように、セックスワークが行われ、誰が行うことができるのかについての多くの制限があり、多くのセックスワーカーが合法の枠外に取り残されている。特定の管轄区域では、セックスワーカーは警察への登録をしないといけない。他の地域では、性感染症の強制検査や、セックスワーカーとして働くことができる者の性別、年齢、国籍に関する制限があり、セックスワーカーとして働くことができる者の市民権の規定がある。(注26)欧州連合の域外から欧州に流入した移民や、世界中の不法移民は、セックスワークが合法化されている多くの地域においてセックスワーカーの大多数を占めていて、合法的にセックスワーカーとして働くことはできず、路上で働くことは犯罪化されていることがよくある。
注26 オーストリアでは、セックスワーカーは警察への登録が義務付けられている。ハンガリーとトルコでは、性感染症検査が義務化されている。ギリシャとトルコでは、未婚のシスジェンダー女性のみがセックスワーカーとして働け、その場合も売春宿でのみ活動が認められる。エクアドルでも売春宿での活動が登録されたセックスワークの唯一の形態であり、性感染症検査の義務化も実施されている。セネガルでは自国民である女性のみがセックスワークを営むことが許可されている(NSWP「セックスワーク規制のグローバルマッピング」)。
15 したがって、厳格な規制は性産業の広範な(かつより脆弱な)部分を犯罪化したままにしておく。合法化モデルは犯罪化モデルと類似した要素を有するため、このモデルもまた、セックスワーカー運動から反対されている。
4 全面的な非犯罪化
16 ニュージーランド、オーストラリアのニューサウスウェールズ州、そして最近ではベルギーで導入された全面的な非犯罪化の取り組みは(注27)、セックスワーカーの権利運動によって広く支持されているモデルである。これは、セックスワークに特化した新たな法律を制定する合法化モデルとは異なり、非犯罪化は、セックスワークに特化した刑事罰の規定をすべて撤廃する。ただし、規制が全くなくなるわけではない。その代わりに、他の類似業種に適用される既存の事業規制に統合され、労働安全衛生の基準を含むセックスワーカーの人権と労働権の尊重・保護を目的とした規制が導入される。
注27 NSWP「ベルギーのセックスワーカー、議会における非犯罪化の歴史的採決を祝う」、2022年3月25日
https://www.nswp.org/news/sex-workers-belgium-celebrate-historic-vote-decriminalisation-parliament
17 非犯罪化された環境でもスティグマや社会的差別といった問題は依然として残るものの、ニュージーランドの事例は、非犯罪化によってセックスワーカーの労働条件と権利が改善され、警察との信頼関係が向上したことを示している。(注28)
注28 ギリアン・アベル、リサ・フィッツジェラルド、シェリル・ブラントン『売春改革法がセックスワーカーの健康と安全対策に与えた影響』(オタゴ大学、クライストチャーチ、2007 年)、およびリンジー・アームストロング「法執行から保護へ?非犯罪化された路上の性産業におけるセックスワーカーと警察の相互作用」『英国犯罪学雑誌』第 57 巻第 3 号(2017 年 5 月)、570-588 ページ。
IV. セックスワークに関する国際基準
18 過去数十年にわたり、セックスワーカーの権利は大きな発展を遂げてきており、これは、主にセックスワーカーによる権利の運動の擁護(アドボカシー)の結果である。特別手続の任務保持者を含む多くの国連機関は、セックスワークに対する処罰的な姿勢がセックスワーカーの健康と人権に悪影響を及ぼしていることを認識し、セックスワークに関するあらゆる罰則規定の撤廃を求めてきた。最近では、欧州人権裁判所がフランスにおける買春客の処罰化に関する事案を受理した。(注29)また、一部の法域では、セックスワークの犯罪化が、国内最高裁判所によって違憲と宣言されている。(注30)
注29 国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)、「国連専門家、フランス売春禁止法に対する上訴審理を欧州裁判所が受理した決定を歓迎」、2023年9月5日。
https://www.ohchr.org/en/press-releases/2023/09/un-expert-welcomes-european-court-decision-hear-appeal-against-french-anti
注30 NSWP「ポルトガルのセックスワーカー、新憲法裁判所の判決を歓迎」2023年5月19日。
https://www.nswp.org/news/sex-workers-portugal-welcome-new-constitutional-court-ruling
およびSarthak Gupta, 「インド最高裁、COVID-19パンデミック下でセックスワーカーを保護する判決を下す」, Open Global Rights, 2022年7月21日.
1 女性および女児に対する差別に関する作業部会
19 作業部会は、健康と安全に関する女性への差別の撤廃に関する2016年の報告書において、この議題にはじめて言及した。その中で作業部会は、セックスワークの犯罪化は、刑法の差別的な運用のひとつであることを示した。作業部会は、女性自身の身体に対する自己決定権を規制するための罰則規定の執行は、スティグマ(社会的負の刻印)と差別を生み出し、女性の人権を侵害するものであると主張した。それは、女性自身の人生や健康に関する意思決定の自律性を制限することによって、女性の尊厳と身体的完全性を侵害してきた。同報告書は、刑法その他の懲罰的規制が、セックスワークに従事する女性に対し、保護ではなく害を及ぼすことが実証されている方法で拘禁刑を科すことにつながっており、セックスワークに従事する女性の犯罪化が、彼女たちを不正義、脆弱性、スティグマの状況に陥らせ、国際人権法に反するものであると考えた。国際機関及び人権機関が、セックスワークに従事する女性が性に関する保健サービスへのアクセス権を享受し、暴力や差別から解放され、法の下で平等な保護を受けることを確保するよう各国に要請してきたことを想起し、作業部会は各国に対し、セックスワークの非犯罪化を勧告した。(注31)
注31 A/HRC/32/44, paras. 76, 84, 85 and 106 (e)
20 自由を奪われた女性に関する2019年の報告書において、作業部会は、女性のセックスワーカーが、女性の道徳性や性を管理する法律や社会的態度のために自由の剥奪に直面しやすいことを強調し、セックスワークそのものが犯罪ではない場合であっても、女性のセックスワーカーが不均衡に影響を受け、また法執行官によって標的とされており、そのような場合には、徘徊、わいせつ、または移住関連の犯罪に関する規定が適用されていることを指摘した。作業部会は、投獄に加えて、セックスワーカーが「逸脱した行動」を「治療」するために設計された「再教育」施設に拘禁される可能性があることも指摘した。さらに、作業部会は、国家がセックスワークに関連して女性を取り締まり、標的とし、処罰し、または拘禁する法律や慣行を禁止するよう勧告した。(注32)
注32 A/HRC/41/33, paras. 36 and 80 (c)
21 2020年の変化する労働の世界における女性の人権に関する報告書において、作業部会は、女性のセックスワーカーの処罰化が彼女たちに対する暴力の脆弱性を高め、公共施設が提供する枠組み(エッセンシャル・サービス)からの排除を助長していると指摘した。(注33)2023年の「貧困におけるジェンダー不平等」に関する報告書では、セックスワーカーの処罰化がしばしば社会経済的地位や周辺化と結びついていることに触れた。(注34)
注33 A/HRC/44/51, para. 43.
注34 A/HRC/53/39, para. 32.
22 さらに、2020年、本作業部会は恣意的拘禁に関する作業部会と共同で、ナイジェリア連邦高等裁判所の審理中の案件に対し、アミカス・キュリエ(法廷助言者)としての意見書を提出した。この案件は、セックスワークに従事している疑いのある女性たちの恣意的な逮捕、拘禁、および虐待に関するもので、罰則を伴う法律がもたらす差別的な影響を明らかにした。(注35) 2023年には最高到達水準の身体的および精神的健康を享受する権利に関する特別報告者と共同で、作業部会は、南アフリカにおけるセックスワークの非犯罪化を目的とした刑法改正を支持する書簡(コミュニケーション)を提出した。(注36)
注35
https://www.ohchr.org/sites/default/files/Documents/Issues/Women/WG/Amicus_Brief_1_Nigeria.pdf
注36
https://spcommreports.ohchr.org/TMResultsBase/DownLoadPublicCommunicationFile?gId=27841
2 その他の国連人権機関
23 女子差別撤廃委員会(CEDAW)もまた、セックスワーカーを犯罪と見なすことは、ジェンダーに基づく差別の一形態であると定義している。1992年の一般勧告第19号において、同委員会は、セックスワーカーが暴力に対して脆弱であること、また、貧困や武力紛争が一部の女性を「売春」へと追いやる要因となっていることに注目し、法がしばしば(国家機関によるものを含む)疎外や暴力を助長していると指摘して、セックスワーカーを保護するために、罰則措置と保護措置の両方が必要であるとの見解を示した。(注37) 2017年の一般勧告第35号では、同委員会は、女性に対して差別的であり、それによってジェンダーに基づくあらゆる形態の暴力を固定化、助長、促進、正当化、または容認するすべての法的規定、とりわけ「売春を行う女性」を犯罪とする規定を撤廃するよう締約国に勧告した。(注38) この方針は、同委員会の多くの最終見解でも表明されており、そこでは締約国に対し、セックスワーカーを処罰する法律の見直し、行政罰規定の撤廃、罰金の科挙の中止、および売春を行う女性の非犯罪化を求めている。一部の締約国に対する最終見解において、同委員会はセックスワーカーの安全な労働条件の欠如について懸念を表明しているが、これについては一貫して行われているわけではない。(注39)
注37 Paras. 14–16
注38 Para. 29 (c) (i)
注39 CEDAW/C/HUN/CO/7-8 CEDAW/C/HUN/CO/7-8/Corr.1, para. 22
24 本作業部会および女子差別撤廃委員会に加え、他の特別手続の任務保持者たちもセックスワークの問題を取り上げている。例えば、最高到達水準の身体的および精神的健康を享受する権利に関する特別報告者は、2010年の人権理事会への報告書において、セックスワークの犯罪化がセックスワーカーの健康と安全に負の影響を及ぼしていると指摘した。他の労働者に認められている基本的権利が、セックスワーカーには犯罪化のために否定されてきたことを想起し、違法な労働には職業上の健康や安全基準など合法的な労働に必要な保護が適用されず、同報告書は犯罪化がもたらす健康状態の悪化、スティグマ化、暴力や嫌がらせ、労働条件への影響について詳細に論じるとともに、セックスワークと性的搾取を目的とした人身取引を混同することを批判した。同報告書はまた、適切な規制を伴うセックスワークの非犯罪化または合法化は、セックスワークに対する健康への権利の取り組みの不可欠な要素であると結論付けた。そして締約国に対し、セックスワークおよびそれに関連する行為を犯罪とするすべての法律を撤廃すること、セックスワーカーが本来受けるべき安全な労働条件を享受できるような適切な規制枠組みを構築すること、セックスワーカーが適切かつ質の高い保健サービスにアクセスできるようにするためのプログラムや教育的取り組みを実施することを勧告した。(注40) 2022年には、最高到達水準の身体的および精神的健康を享受する権利に関する特別報告者は、暴力とそれが健康への権利に及ぼす影響に関する報告書の中でセックスワークに言及し、セックスワークの犯罪化が虐待や搾取を可能にしていること、そしてセックスワーカーが性感染症への曝露だけでなく、顧客や警察による暴力、ゆすり、威嚇といった状況にさらされていると指摘した。(注41)
注40 A/HRC/14/20, paras. 27, 36–46 and 76 (b)
注41 A/HRC/50/28, para. 71
25 特に女性及び子どもの人身取引に関する特別報告者は、2020年の国連総会への報告書において、人身取引対策法との関連でセックスワークの問題を取り上げ、多くの国において人身取引対策法がセックスワークの抑圧に利用されており、結果として移動や移住の自由の制限を含む、女性の権利のさらなる侵害を招いていると指摘した。また、セックスワークが犯罪とされている法管轄区域においては、人身取引の被害者自身がセックスワークに従事したことで罪に問われる可能性があることに言及し、性的サービスの提供、および搾取に該当しないすべての関連行為を非犯罪化するよう求めた。(注42)
注42 A/75/169, paras. 41 and 70
26 原因および帰結を含む現代社会における奴隷制の諸形態に関する特別報告者は、2020年の国連総会への報告書において、セックスワークを、しばしば搾取や虐待につながる非正規雇用形態の一つとして特定した。同報告者は、適切な規制が欠如しているために、多くのセックスワーカーが困窮した際に社会保障を受ける権利を与えられていないこと、また、セックスワークが犯罪とされている地域では、セックスワーカーがしばしば犯罪組織の影響下に置かれていることを指摘した。さらに、移民や、マイノリティとしての地位に基づき差別を受ける人々、あるいはカーストや門地(家柄)に基づく差別を被る人々の脆弱性が高まっていることにも言及した。(注43)
注43 A/77/163, para. 46.
3 その他の国連機関
27 事務総長は、2016年の報告書のAIDS流行終結への迅速な対応において、セックスワークを犯罪と見なす問題について言及した。事務総長は、セックスワークを非犯罪化することで、暴力やハラスメント、そしてHIV感染のリスクを軽減できるとの見解を表明し、セックスワークの犯罪化を含む、人権を侵害する罰則的な法律、政策および慣行を撤廃するよう締約国に求めた。(注44)
注44 A/70/811 and A/70/811/Corr.1, paras. 53 and 75 (f)
28 国連合同エイズ計画(UNAIDS)、国連人口基金(UNFPA)、世界保健機関(WHO)、国連開発計画(UNDP)、および世界銀行を含む多くの国連機関が、成人の自発的なセックスワークの非犯罪化を求めている。(注45) UNDPとUNAIDSによって設置されたHIVと法律に関するグローバル委員会は、合意した成人間での性の売買を禁止する法律や、「不道徳な収益」、「売春による収益での生活」、「売春宿の経営」を禁じる法律など、商業的な性を禁止するその他の法律を締約国は撤廃すべきであると結論付けた。(注46) 同様に、WHOは、セックスワークの犯罪化が、主要対象集団や脆弱なグループに対する効果的なHIVサービスの提供を阻害する障壁の一つであると断定し、セックスワークの非犯罪化、およびセックスワーカーに対する非刑法の不当な適用の排除を求めた。(注47) 2017年の声明において、12の国連機関は、成人の合意に基づくセックスワークを犯罪化または禁止する法律を、締約国が見直し、撤廃することを勧告した。(注48)
注45 Sex Worker Inclusive Feminist Alliance, “Impact of criminal law on the health, safety and human rights of sex workers” セックスワーカー包摂的フェミニスト同盟「刑法がセックスワーカーの健康、安全及び人権に与える影響」
注46 Risks, Rights and Health (New York, UNDP, 2012), p. 43
https://www.undp.org/publications/hiv-and-law-risks-rights-health
注47 Consolidated Guidelines on HIV Prevention, Diagnosis, Treatment and Care for Key Populations(Geneva, 2016), pp. 86 and 87
注48 国連エイズ合同計画(UNAIDS)、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)、国連児童基金(UNICEF)、世界食糧計画(WFP)、国連開発計画(UNDP)、国連人口基金(UNFPA)、国連女性機関(UN-Women)、国際労働機関(ILO)、国連教育科学文化機関(UNESCO)、世界保健機関(WHO)、国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)、国際移住機関(IOM)、 「医療現場における差別撤廃に関する国連共同声明」(2017年)、p. 3.
4 国際非政府組織(NGO)
29 2023年、国際法律家委員会(ICJ)は「性、生殖、薬物使用、HIV、ホームレス状態および貧困に関連する行為を禁止する刑法への、人権に基づくアプローチのための3月8日原則」を発出した。(注49) セックスワークに関する「原則17」には以下のように記されている。
合意した成人間での、金銭、物品、またはサービスと引き換えに行われる性的サービスの交換、およびそれに伴う他者との意思疎通、提供の広告、または性的サービスの交換を目的として他者と場所を共有する行為は、公共の場であるか私的な場であるかを問わず、強制、暴力、権限の乱用、または詐欺がない限り、犯罪とされてはならない。刑法は、金銭的または物質的な利益を得る目的で、強制、暴力、権限の乱用、または詐欺のない公正な条件下において、直接的または間接的に、合意した成人間での性的サービスの交換を促進、管理、組織、他者との意思疎通、広告、情報の提供、あるいは場所の提供または賃貸を行う第三者の行為を禁止してはならない。
当時の作業部会議長であったイヴァナ・ラダチッチは、専門家グループのメンバーとして本文の作成に関与した。
30 セックスワークの非犯罪化は、アムネスティ・インターナショナル、ヒューマン・ライツ・ウォッチ、オープン・ソサエティ財団、HIVと共に生きる女性の国際コミュニティ(ICW)、国際女性健康連合(IWHC)、開発における女性の権利のための協会(AWID)、女性の人身取引対策グローバルアライアンス(GAATW)、およびグローバル女性基金(GFW)を含む、多くの人権団体によっても提唱されている。(注50)
注50 Sex Worker Inclusive Feminist Alliance, “Impact of criminal law on the health, safety and human rights of sex workers” セックスワーカー包摂的フェミニスト同盟「刑法がセックスワーカーの健康、安全及び人権に与える影響」
V. 作業部会の取り組み
31 本作業部会は、顧客の犯罪化や第三者による活動の犯罪化を含め、いかなる形態であれセックスワークを犯罪と見なすことがもたらす弊害については、すでに十分な証拠があると考えている。また、成人の自発的なセックスワークの完全な非犯罪化について、国際的な人権機関やその他の組織による合意が形成されつつあること、ならびにセックスワーカーの権利擁護運動がそのような取り組みを提唱していることに注目する。セックスワークを定義することは必要とはせず、また、多様な女性や人々の経験がそれぞれ異なるものであることに留意しつつ、本作業部会は、人権の観点から成人の自発的なセックスワークの完全な非犯罪化を提案し、それが構造的な差別や暴力、そしてセックスワーカーの権利侵害に対する免責に対処するための、最も有望な道筋であると確信している。また、この取り組みは、セックスワーカーの健康への権利やその他の社会経済的権利、拷問や非人道的、屈辱的な待遇を受けない権利、私生活の権利、および差別からの自由を強化するために最も適したものである。さらに、非犯罪化された枠組みこそが、セックスワーカーが公的、政治的生活に参加する権利を保護するために、最も資するものとなる。
32 非犯罪化によって搾取を阻止する国家の保護機能が損なわれることはなく、暴力、強制、または搾取が介在する事案においては、人身取引対策法を含む他の刑法規定が適用されるからである。ただし、人身取引対策はセックスワーカーの権利を侵害するような形で実施されてはならず、このことは人身取引に関する特別報告者や、特に女性や子供のことでは、最高到達水準の身体的および精神的健康を享受する権利に関する特別報告者が認めていることである。
33 セックスワークに関連するあらゆる刑法規定を撤廃することに加え、本作業部会は、浮浪罪、公衆道徳、公の秩序に関する規定、さらには各種の「再教育」といった、セックスワーカーに対する他の罰則規定の恣意的な適用を終わらせるよう求める。また、貧困を犯罪と見なす慣行に終止符を打つこともあわせて求める。(注51)
注51 A/HRC/53/39
34 司法へのアクセスを阻害するあらゆる障壁、司法における固定観念を含むものは是正されるべきであり、セックスワーカーは質の高い法的支援を効果的に利用でき、個別の事件において救済を求めることもできて、構造的な差別や排除に直面している集団として、戦略的訴訟を提起できるべきである。
35 セックスワーカーは、あらゆる人権や労働の権利が保障されるべきで、職業上の安全衛生に関連するものを含めて、安全で搾取のない労働環境が確保されるべきである。また、社会的な保護や社会的・経済的権利や健康への権利の全ての範囲に対して、平等にアクセスできるべきである。
36 スティグマや差別に対しても、国内のあらゆる関連するステークホルダーと共に策定された、持続的かつ包括的な戦略を通じて取り組む必要があり、あらゆる形態のジェンダーに基づく差別、暴力、および搾取を根絶するために適切な措置が講じられるべきである。さらに、セックスワーカーが自身の人権に関する情報や教育に確実にアクセスできるようにすることも重要である。
37 セックスワークに関する法的枠組みや公共政策の策定および実施にあたっては、セックスワーカーの意見が聴取され、直接関与できるあらゆる機会が提供されなければならない。また、労働組合を含む団体を結成する権利を完全に行使できるようにすべきである。新たな法律や政策を策定する際には、有害な性およびジェンダーの固定観念や抑圧と不平等の蔓延、ならびにその根底にある性差別や女性嫌悪やその他の抑圧と不平等の体系を考慮に入れなければならない。
38 最後に、国際的な人権の舞台においてセックスワーカーの権利をより可視化すべきであり、そのためには国際的なメカニズムや機関へのセックスワーカーのアクセスを意図的に拡大することが求められる。誰一人取り残さないことを確実にするために、諸運動間の連帯が強化されなければならない。
