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【全訳】欧州評議会人権委員がセックスワークの非犯罪化を勧告

欧州評議会人権委員(Council of Europe Commissioner for Human Rights)が、2024年2月にセックスワークの非犯罪化を勧告。以下の勧告の日本語への全文の翻訳です。

勧告の中には、「女性の人身取引対策グローバルアライアンスやラ・ストラーダ・インターナショナルなど複数の人身取引対策団体が買春の犯罪化が人身取引の防止や撲滅に実証された効果がなく、セックスワーカーの中の人身取引被害者の特定や保護を阻害」とあり、「アムネスティ・インターナショナルの指摘で、セックスワークの非犯罪化は、搾取、人身取引、セックスワーカーに対する暴力を犯罪化する法律の撤廃ではなく、これらの法律は維持され、強化されるべき」とあります。


セックスワーカーの人権保護 2024年2月15日

https://www.coe.int/en/web/commissioner/-/protecting-the-human-rights-of-sex-workers

欧州全域のセックスワーカーが直面する現実には深刻な人権上の懸念が存在する。この重要かつ複雑な課題に取り組むには、以下の要素がもたらす人権上の影響を十分に理解することが不可欠である;高いレベルの暴力と法執行機関・司法制度による不十分な保護、スティグマ(汚名)、そして住宅や医療を含む必須サービスへのアクセス制限や孤立化を招く複合的な差別。これらの諸要因が相まって、セックスワーカーへの犯罪が野放しになる構造を作り上げており、それがさらなる暴力の連鎖を引き起こしている。

欧州全域のセックスワーカー、その代表組織、関連の国際機関及び専門家と協議した結果、セックスワーク(成人間の合意に基づく金銭と性的サービスの交換)に対する取り組みとして、人権に確固として根差したものであり、セックスワーカーの権利の効果的な保護に焦点を当て、固定観念や誤解よりも、安全、主体性、身体的自律性を優先するものを求める。セックスワーカーは、あらゆる個人と同様に、職業に基づく差別からの保護を受ける権利を有する。選択した職業にかかわらず、基本的人権、サービス、法的保護への平等なアクセスが保障されるべきである。

暴力の脅威と法執行機関や司法制度による不十分な保護

大陸全体で、セックスワーカーはしばしば高いレベルの暴力や虐待に直面している。これは主に、社会におけるセックスワーカーの周縁化や安全でない労働環境、そして根強い有害な態度に起因している。暴力は様々な形態をとり、言葉による虐待や脅迫、ストーキングや嫌がらせ(オンラインを含む)、強盗、身体的攻撃、レイプや性的暴力、ヘイトクライム、さらには殺害にまで及ぶ。同様の理由から、性労働者は人身取引や搾取といった他の深刻な人権侵害の被害に遭うリスクも極めて高い。

多くの加盟国では、セックスワーカーに対する暴力犯罪を特定・計数可能な公式の細分化された記録が不足している。入手可能なデータは、主にセックスワーカーが他者を警告するために秘密裏に報告するNGOからの情報に基づいている。入手可能な情報によれば、加害者の範囲は様々である。

多くの国で、セックスワーカーは警察や法執行機関自体がセックスワーカーに対する暴力に加担したり継続させたりしていると報告している。警察による嫌がらせやセックスワーカーへの強硬な取り締まり事例は、セックスワーカーが警察を安全の守護者ではなく脅威と見なし、警察の保護能力や意思をほとんど信頼していないほど頻繁に報告されている。

また、性的サービスの提供自体が違法でない国々においても、スティグマ化(汚名)や起訴、制裁、国外退去への恐れから、セックスワーカーは自身や目撃した暴力・人権侵害を報告することを躊躇することが多い。したがって当局は、法的報復を恐れずに犯罪を報告できる環境を確保し、暴力加害者に責任を問うことで、セックスワーカーの保護を最優先すべきである。

欧州評議会「女性に対する暴力及び家庭内暴力の防止及びこれとの闘いに関する条約」(イスタンブール条約)の監視機関であるGREVIOが指摘するように、検察機関や司法機関においても、「レイプの被害者は無実の女性や少女のみである」という概念に基づく有害な固定観念が依然として存在し、これは司法制度におけるセックスワーカーに関する決定に悪影響を及ぼす可能性がある。

スティグマ化(汚名)、さらに複合的かつ交差する形の差別

セックスワーカーは、セックスワークが恥ずべき不名誉な行為であるという根強い偏見に苦しんでいる。その結果、社会的・性別に根差した性的行動規範に適合していないと見なされることを理由に、社会的に容認された軽蔑、威嚇、差別が深刻なレベルで存在し、自己決定的な生活を送る努力を妨げている。

スティグマ化(汚名)があることで、多くの場合、セックスワーカーは自分たちがセックスワークに関わっている事実を隠すことになる。自身や家族が暴露され公の恥辱に晒されることへの絶え間ない恐怖の中で生活することを招く。また、適切な保健サービスの利用を妨げ、住居・教育・育児支援へのアクセスに影響を及ぼしうる。

特に懸念されるのは、移民、人種差別を受ける者、トランスジェンダー(トランス)の人々、障害者、長期疾患を抱える者など、複数の交差する形態の差別に直面するグループに属するセックスワーカーの人権状況である。彼らのアイデンティティや立場に対する社会の認識こそが、彼らを一層激しい孤立と無援の状態に陥らせる。これらのグループに属する人々は、すでに社会で周縁化されていることが多く、正規の労働市場へのアクセスが困難である。

セックスワークの犯罪化

多くの国では、セックスワークそのもの、あるいは第三者の関与、すなわち、セックスの購入、「売春斡旋(ポン引き)」、「売春宿の経営」、セックスワーカーへのアパートの賃貸、広告といったいわゆる「斡旋サービス」が、犯罪とされて、あるいは犯罪化が検討されている。

しかしながら、国際人権団体や関連する国連機関が提出した入手可能な証拠、そしてセックスワーカー自身による証言は、セックスワークを犯罪とすることによって、セックスワーカーとその権利の保護を確保することはできないということを示している。

2016年、法律上及び実務上の女性差別問題に関する国連作業部会は、セックスワークに従事する女性を犯罪化することは「彼女たちを不正義、脆弱性、スティグマの状況に陥らせ、国際人権法に反する」と指摘した。同作業部会は、セックスワークを規制する規定など、女性が自らの身体を管理する権利を制限する懲罰的規定の施行は、国家による深刻かつ不当な統制形態であり、女性自身の生活や健康に関する意思決定の自律性を制限することで、女性の尊厳と身体の完全性を侵害すると強調した。

セックスワーカーの団体や権利擁護者によると、たとえセックスワークそのものが犯罪化されていなくても、第三者の行為を犯罪とすることは、セックスワーカー自身の働く環境全体が犯罪の対象となるため、彼ら自身に自動的かつ直接的に影響を及ぼす。これにより、彼らの仕事に対するスティグマ化(汚名)が増大し、暴力に遭うリスクも高まる。

この点に関して、欧州人権裁判所(以下「裁判所」)は、M.A. 他対フランスの事案に関する受理可能性決定において、フランス国内で合法的にセックスワークに従事する様々な国籍を持つ261名の申請者たちが、欧州人権条約に基づく被害者としての地位を主張する権利があると認めた。

この事案で申請者たちは、合意に基づく成人間の性行為の購入を犯罪とする2016年のフランスの法律が、彼らを隠れて孤立した方法で働くことを強い、身体の安全と生命に対するより大きなリスクにさらしていると主張している。

また彼らは、この法律が、彼らの私生活をどのように送るかを決める自由を侵害しており、欧州人権条約の第2条(生命への権利)、第3条(拷問の禁止)、および第8条(私生活および家族生活を尊重される権利)に違反しているとも主張している。かかる違反が生じたか否かについての裁判所の判決は係争中である。

2019年と2020年にイングランド全域で性産業に従事する185名を対象に実施した調査の結果、第三者刑事罰化は、性産業従事者への支援を望む家族、友人、同僚といった関係者にも影響を及ぼすことが明らかになった。この点に関して、フロントライン・ディフェンダーズは、こうした法律が人身取引対策活動を含む人権擁護活動家の活動をさらに危険に晒し、損なうことを明らかにした。活動家が売春宿で健康・人権支援活動を組織したり、被害者に接触したりすることが、逮捕や犯罪行為の告発を恐れて危険または違法となるためである。

2023年の国連作業部会の調査では、顧客や第三者の行為を罰するといった、あらゆる種類のセックスワークの犯罪化がもたらす害悪について、すでに確固たる証拠が集まっていることが判明した。

性的搾取及び人身取引に関連する性産業

国連作業部会が最近指摘したように、セックスワークと人身取引・性的搾取、フェミニズムと人権との関係に関する見解の深刻な対立が、セックスワーカーの人権保護における実質的な進展を阻んできた。

セックスワーク、あるいはその一部を犯罪化・抑圧する根拠としてしばしば提示される主張は、合意に基づく成人間のセックスワークを女性に対する暴力と同列に扱うものであり、セックスワークと、セックスワークにおける暴力の区別を無視している。

また、ジェンダーに基づく暴力は既に犯罪化されており、加盟国は被害者がセックスワークに従事しているか否かにかかわらず、この形態の暴力を防止・撲滅する人権上の義務を負っているという事実も無視している。さらに、この主張は、セックスワークに従事する人々の多様性や、彼らが生きる現実と状況を見落としており、自らの身体と人生に関する選択を行う自律性と主体性を尊重していない。

GREVIOは、イスタンブール条約自体は、セックスワーク(売春)そのものを女性に対する暴力の一形態として定義していないと指摘している。その代わり、条約は、セックスワークに従事する女性が経験する可能性のあるあらゆるジェンダーに基づく暴力に対し、彼女たちへの支援と保護に焦点を当てている。

この方針に沿って、GREVIOは加盟国に対し、女性に対する暴力に対処する政策や措置において、女性のセックスワーカーが晒されている複合的かつ交差的な差別の固有のリスク、さらにはシェルターへのアクセスを含む、一般および専門的な支援サービスを利用する上での課題を考慮に入れるよう求めている。

同様に、アムネスティ・インターナショナルやヒューマン・ライツ・ウォッチは、人身取引とセックスワークを混同することは、行き過ぎた取り組みを招きかねず、その結果、セックスワーカーや人身取引の被害者が暴力や危害に対し、より脆弱になる可能性があると強調している。加えて、このような取り組み(セックスワークと人身取引を混同する取り組み)が、人身取引の防止、被害者の特定と保護、加害者の訴追の支援という点で成功していることを示す証拠は不足しているのが現状である。

第三者の犯罪化に関しては、支持者はこうした立法が需要を減らし、性産業全体の規模縮小に寄与し、性的な搾取を目的としたジェンダーに基づく暴力や人身取引との闘いにつながるとしている。しかし、一部の州では、商業的な性的サービスが減少したどころか、犯罪化後の期間にむしろ増加した可能性すらあることを示す報告が一貫して存在する。

さらに、女性の人身取引対策グローバルアライアンスやラ・ストラーダ・インターナショナルを含む複数の人身取引対策団体は、買春の犯罪化が人身取引の防止・撲滅に実証された効果を持たず、むしろセックスワーカーの中の人身取引被害者の特定や保護を阻害する可能性があると見なしている。

こうした対立や誤解の背景には、当事者への十分な意見聴取が行われていないという問題がある。私が話を聞いたセックスワーカーやその代表者たちは、仕事や生活に直結する重要な決定がなされる際に、そもそも声をかけてもらえないことが多く、仮に意見を求められても、その考えが真剣に扱われることはほとんどないと語っていた。

権利へのアクセスにおける様々な障壁

セックスワーカーに対する人権に基づく取り組みとは、暴力や人身取引の被害者に対する欧州評議会の関連基準に沿ったシェルターへのアクセスであれ、保健、住居、教育、労働権を含む社会的権利へのアクセスであれ、セックスワーカーの権利へのアクセスを積極的に促進すべきことを意味する。

欧州における健康権および女性の性的・生殖に関する健康と権利に関する欧州人権委員会の問題提起文書で既に述べられている通り、セックスワーカーは医療ニーズが高まっているにもかかわらず、健康権を確保する上で重大な障壁に直面している。その結果、健康状態が著しく損なわれている。憂慮すべきことに、欧州全域のセックスワーカーは、性的・生殖に関する健康と権利を損なう様々な強制的慣行や守秘義務違反にも直面している。多くの加盟国は依然として、これらの権利への平等かつ妨げられないアクセスを確保するための効果的な措置を講じていない。

セックスワークが犯罪化されていない国であっても、セックスワークに関する規制があまりに厳しすぎるために、セックスワーカーが権利にアクセスすることを妨げ、結果として多くのセックスワークが法的枠組みの外で行われてしまう場合がある。つまり、セックスワーカーは、セックスワークが犯罪とされている国と同様に、制裁や罰金のリスクにさらされる。

例えばギリシャでは、「独身・離婚歴あり・未亡人であること」といった条件や、定期的な健康診断を受けることが、わずかに認可された売春宿で働くための要件とされており、その結果、多くのセックスワークが違法に行われていると報告されている。セックスワーカーの権利擁護者たちは、このような規制モデルにおける義務的な健康診断が、しばしばセックスワーカーの人権侵害と受け止められていると指摘している。

国連の女性差別撤廃委員会は、オーストリアにおけるセックスワーカーへの義務的な健康診断について懸念を表明している。これらの検査は公衆衛生当局によって実施され、一部の州では費用を本人が負担する必要がある。ドイツでは、広範かつ複雑な規制が存在するため、多くのセックスワーカー、特に移民、トランスジェンダーの人々、その他の社会的に弱い立場にある人々が抑圧され、排除されているとの報告がある。

雇用へのアクセスと労働権に関しては、セックスワーカーの中に移民、トランスジェンダーの人々、障害者や長期疾患を持つ人々が特に高い割合で含まれていることは、特定のニーズを持つ人々が自身の状況に適した代替的な有償雇用を見つけることが非常に困難であることを反映しているようだ。

一部の加盟国では、代替雇用を希望するセックスワーカーを支援する体制を提供しているが、こうした支援メカニズムへのアクセスは、特に最も周縁化されたセックスワーカーにとって困難な場合が多いと報告されている。支援には特別な条件が課されることが多く、不十分だからである。セックスワーカーの労働権と社会保障制度へのアクセスを促進するためには、適切な経済的支援や関連教育サービスへのアクセスを含め、すべての支援措置は性労働者の特定のニーズと状況を中心に据えるべきである。

セックスワーカーとの協議を経て採択された画期的な法改正により、ベルギーは2022年に欧州で初めてセックスワークを非犯罪化した。これによりセックスワーカーは合法的に自営業者として働き、社会権を獲得できるようになった。

2023年夏からは新法により、労働時間や報酬に関する規定、顧客拒否権、全室への緊急ボタン設置義務など、雇用形態の性労働者にも労働権が拡大された。新法は第三者も非犯罪化し、セックスワーカーの銀行口座開設や宿泊施設提供に対する罰則を廃止。セックスワーカーが自身のサービスを広告することも認められた。

今後の道筋:人権に基づく取り組み

欧州評議会加盟国は、セックスワークに対して人権に基づく取り組みを採用すべきである。このような取り組みは、セックスワーカーが暴力や虐待から保護され、健康その他の社会的権利への平等なアクセス、私生活における権利、公的・政治的生活への参加権を保障しなければならない。

すべての政策措置は、セックスワーカーが差別(民族的出身、性別、性自認、性表現、身体的特徴、移民の地位、障害など、複数の要因が交差する差別を含む)に特有にさらされている状況を考慮しなければならない。

加盟国は、すべての人々が適切な生活水準、健康、教育、安全で搾取のない労働環境へのアクセスを享受できることを確保し、社会保護およびその他のあらゆる社会的権利への平等なアクセスを保証するための措置を講じるべきである。

加盟国はまた、法執行官、司法当局、公衆衛生専門家、社会福祉サービス従事者に対し、セックスワーカーに対するスティグマに対処し、セックスワーカーの権利を保護する必要性について研修プログラムを強化すべきである。これにより、これらのサービスへの平等なアクセスを保証すると同時に、社会におけるセックスワーカーに対する根強いスティグマを排除するプログラムの実施を促進する。

人権に基づく取り組みとは、成人の合意に基づく報酬を伴う性的関係が犯罪化されるべきでないことも意味する。セックスワーカー、顧客、第三者に対する刑事罰規定の適用と執行は、セックスワーカーの権利や必須サービスへのアクセスを著しく制限し、司法制度への恐怖から内密かつ孤立した生活・労働を強いている。

逆に、合意に基づく成人間のセックスワークの非犯罪化は、セックスワーカーの安全や社会保護・保健サービスへのアクセスに好影響を与え、健康状態の改善につながっている。国連作業部会はまた、非犯罪化の枠組みがセックスワーカーの公共・政治生活への参加権の保護に最も資すると指摘した。

合意に基づく成人間のセックスワークは、女性に対する暴力や人身取引と混同されるべきではない。むしろ、セックスワーカーは暴力、人身取引、搾取から保護されるべきである。アムネスティ・インターナショナルが指摘するように、セックスワークの非犯罪化は、搾取、人身取引、セックスワーカーに対する暴力を犯罪化する法律の撤廃を意味しない。むしろ、これらの法律は維持され、強化されるべきである。

性的搾取を目的とした人身取引やジェンダーに基づく暴力の被害者(セックスワークに従事しているか否かを問わず)の保護ニーズに適切に対応するため、加盟国は自国の法律が欧州人権条約 (特に、生命の権利に関する第2条、拷問禁止に関する第3条、奴隷制禁止に関する第4条)および欧州評議会人身取引対策条約、イスタンブール条約に整合させ、それぞれの監視機関による勧告に従って効果的に実施しなければならない。

最後に、セックスワーカー自身以上にセックスワーカーのために語れる者はいないし、誰もその環境を深く理解しておらず、個人がセックスワークに従事するに至った理由も把握していない。効果的で真にエンパワーメントと保護をもたらす人権に基づく政策を策定・実施するためには、その声と権利により大きな注目と可視性を与えることが不可欠である。

そのためには、多様な背景を持つセックスワーカーとその代表組織が政策決定プロセスに適切に参画し、意見を反映させられる必要がある。その経験と視点こそが、人権と尊厳を支える効果的な政策と介入策を構築する上で不可欠だからである。


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