『俺節』を終えて。
東京公演22ステージ。福岡公演5ステージ。大阪公演17ステージ。
上演時間3時間半。全44ステージ。
『俺節』無事に終演しました。
初めての福原組。初めての大キャパ劇場。初めての地方公演。
商業演劇。マンガ原作。共演者・スタッフもほぼ全員が初めまして。
初めてづくしで4月から8月の大千穐楽までの4ヶ月間の7割ぐらいはガチガチに緊張しながら過ごしていましたが、終わってみると物凄く楽しくて、これ以上はなかなかない、作品としても座組としても最高の現場でした。
稽古の序盤は本当に最悪でした。
最初は読み合わせだったのですが、そこで爪痕を残さないといかんと気合いを入れすぎた結果、喉を飛ばしてしまいました。普段はむしろ喉は強い方で、本番でも喉を潰したことはほぼ無かったので自分でもビックリしました。
その後、1ヶ月ほど喉は治らず、喉が治らないことのストレスと日々の緊張と稽古の疲労などが相まって、毎日身体のどこかの調子が悪い。喉に加えて鼻水、咳、痰、皮膚の湿疹、夜眠れないなどの症状が日替わりで出てきて、どこの調子が悪いのか自分でもよくわからない。病院の診断で感染症ではなかったのが不幸中の幸いでしたが、初めての大規模な作品で意気込んでた分、自分が情けなくて、悔しい思いをしながら稽古してました。
元来の慎重すぎて心を開くのに時間がかかる性格に加えて、ずっと風邪っぽいからあまり人に話しかけられないこともあって、それもストレスでした。初対面だからもっと皆とコミュニケーション取って仲良くなりたいのに近づけないヤキモキ。
本格的な体調不良ともまた違う、個人的な感覚としては本領発揮できていない体調の悪さだけど、ほぼ全員初対面で自分の普段の姿を誰も知らないため、この座組での自分のポジションを確立するためにも、頑張るしかないという気持ちでした。
なるべく顔には出さずにいましたが、内心はずっとふへえ辛いと思ってました。このどうにも言いようがない状態がずっと続いていたのを知ってか知らずか、稽古の合間に色んな方が声をかけてくれたのに救われました。誰も知らない状態だったので、怖かったり理不尽だったりイカれてる人たちだったらどうしようと思ってましたが、百戦錬磨の方々はやはり皆優しかったです。
主演の松田さんはずーっと凄かった。
最初の読み合わせから全力で芝居も歌もやっていて、初日からもうコージが存在してました。『俺節』は出演している全員が全身全霊で挑まなければ成立しない作品で、アンサンブルの自分たちも1ステージやるだけでとんでもなく消費するのですが、主役の松田さんがそれを44ステージもやり通したことは本当に脱帽です。マジで俺節ハンパねぇです。松田さんがとにかくハンパねぇ。
ヒロインのチャンミさんも素晴らしかったです。
今回が初めての日本での舞台で、僭越ながら自分と同様に大きな舞台も初めて、とのことでした。これのために日本語も勉強して、単身で日本で4ヶ月稽古から本番までやり切りました。テレサのためにストリップ嬢たちが協力してヤクザたちから逃すシーンがありますが、自然と協力したくなる直向きさがチャンミさんにはありました。全力で号泣するために、毎回違う道筋を見つける芝居の作り方も勉強になりました。
そしてオキナワ役の稲葉友さん。
本人も仰ってましたが、あまり表情も変わらないのでクールな人なのかな?と思ってましたが、すごく周りに気を遣いながらバランス良く物事を捉える視野の広い方でした。一見ぶっきらぼうな自由人なようで、実はコージや北野先生に振り回されるオキナワのように、最終的にはいつでも皆が気持ち良く過ごせるように立ち回る姿がただただカッコ良かったです。芯の底からイケメンでした。
益岡さん。
目の前で北野がコージに歌とは何かを説くシーン。全く芝居を固めず、毎回自由に楽しそうに演じているのが印象的でした。舞台袖の出の直前で本日もよろしくお願いしますと挨拶すると、よろしくねと肩を抱いてくれるのは感激でした。信じられないほど気さくな方でした。
六角さん。
目の前で六角さんの歌を毎日聴けるのは完全なる役得でした。特に『暖簾』は日に日に凄くて。声の調子が良いとギターの演奏のアレンジを抑えていくという風に仰ってましたが、大阪公演の最後の方の演奏は染み入るとはこういうことだな、という歌でした。「日々の暮らしのあれこれの中で〜」の台詞を放火魔として間近で毎日聴けたのも役得です。
航さんと坂田さん。
笑い寄りのところから演劇を始めた者として、大いに背中を追わせて貰いたいと思ったお二人でした。航さんとプラギャラ親衛隊やラストのみれん横丁でふざけ倒したこと、坂田さん・加瀬澤さんと一緒に袖でダラダラ喋りながら待機したこと、毎日とても楽しかったです。
龍茶さん・かせ(加瀬澤)さん・クボカンさん。
福原組常連の3人が、福原さんから演出つけられたり怒られたり無茶振りされたりしているのを見て、何となくこういう風に在れば良いんだな、という感覚を掴めました。役者としてのスキルはもちろん、その人の存在が作品の空気を作るんだな、ということをこの3人から一番感じました。
バラさんは噂はかねがね、知り合いの知り合い、という感じで身近にバラさんファンは多かったのですが、実際に共演させて頂いて、確かにこれは皆ファンになるなあというキュートさと面白さを兼ね備えてる方でした。自分もすっかりバラさんファンです。
ようこさんは美しい容貌からノータイムでクレイジーな演技が飛び出してくるのが魅力的でした。ヨシコが何をするのか袖から見るのが毎日の楽しみでした。エドゥアルダの欽ちゃん走りも永遠に好きです。
稲葉俊一さんは上記のしんどい時に積極的に声をかけてくれた先輩で、その優しさに救われました。今國さんは気遣いの方なのに(だからこそ?)、常連の人たちに雑に扱われるノリが面白かったです。嶋村さんはいぶし銀に構えながらも毎回気合いを入れて臨んでいる姿が格好良かったです。3人とも殺陣のあるシーンではとても心強い存在でした。
亀岡さん。誰よりもツッコミが早く、スナックのシーンでは龍茶さんと亀岡さんの反応速度が早すぎて最初は面食らってました。誰から何を言われても軽快に返す様子は見てて爽快だったし、僕も散々イジらせて貰いました。
江見ちゃん。本人の生来の気質なのだろうけど肝の座り方が尋常じゃないです。場違変子の茶碗蒸しはbacknumberのわたがしのように茶碗蒸しになりたいと思いながら見つめるのが楽しかったです。
のえみさん。普段はとっても上品な方なのに、アイリーンになった時の爆発的な破壊力のある芝居はどういう演技プランを組んだら出来上がるのか、最後まで分かりませんでした。面白過ぎる。
草野さん。アンサンブルの中では一番年上なのに、目が一番キラキラしている。みれん横丁の陛下の、慕われてるような馬鹿にされてるような、でも愛されてる感じが瞳に表れていました。
松永くん。今回唯一の同い年。クールボーイと見せかけてめちゃくちゃイカれた芝居をする人でした。旅公演の過ごし方を一番教えてくれた人でもありました。めちゃくちゃ地方を楽しんでいた。
ヤシさん。今回唯一の顔見知り。劇団チリでは即興をやっただけでしたが、今回スナックチームでガッツリ芝居で絡めて嬉しかった。スナックワゴンが動く前に、龍茶さんとママとヒソヒソくだらない話をするのが楽しかった。
チーちゃん。鳳仙花の歌声が最初に聴いた時から本当に美しくて。まだ何て呼ぼうか悩むぐらいのタイミングで、チーママだからチーちゃんと舞台上で呼んでみたらしっくりきて、永石千尋だから本当にチーちゃんなのかと後から気付いたのだけど、そこからチーちゃんと呼べるようになったから良かったです。
一茶。今回の座組ではダントツ若くて、研修所を出てから今回が初の舞台と言っていたけど、読み合わせの時から堂々とした演技をするなあと思っていました。細かいアイデアを毎回試していたのが印象的でした。
いぶき。名前順的に隣の席のことが多く、絡んでくれるお陰で座組に馴染む糸口となりました。コミュニケーションの鬼で、あまり上下関係とは無縁のところで生きてきた自分にとって色々勉強になりました。
そして杉山くん・高倉さん・森野さん、アンダーの3人。
キャストに何かがあって出られなくなった時の代役として常に控えてくれていました。はっきり言ってキャストよりもアンダーの方がキツかったと思います。10何人もいるキャストの、しかもそれぞれ色んな役がある、それらの台詞やミザンスを全部メモして覚えて、いつくるかも分からない状態でずっと待っていないといけない。
自分たちは本番が進めば進むほど、自分の役が身体に落とし込まれて余裕が出来てくるけど、この3人は全然稽古も出来てないのに、明日からどこかにポンと入れられる可能性を抱えながらスタンバッていないといけないのです。幸い、キャストは誰一人欠けることなく44ステージやることが出来ましたが、やり切れたのは間違いなく彼ら彼女らのおかげです。
勢いでキャスト全員分書いてしまいましたが、スタッフさんたちも全員素晴らしかった。プロとしての格セクションの仕事が完璧だったのはもちろん、本番中もすごく楽しそうなのが印象的でした。本番中に仕事しながら、キャストの日替わりの芝居を声を出して笑っていたり、台詞をそらで言えるようになっていたり、流れている歌を一緒に口ずさんでいたり。凄く愛に溢れていました。
素晴らしい人たちに囲まれて4月からの2ヶ月間、稽古をたっぷりやって本番を迎えたのですが、稽古を終えても自分は何だか固かった。
5年前ぐらいから本格的に歌を習い始めて、今回はそれが実を結んだ初めての大きな現場でした。稽古が始まる前、台本が届いて見てみたら、アンサンブルと聞いていたのに、自分のソロの歌唱シーンがある。オキナワと1対1で喋るシーンもある。これは頑張らねばと気合いを入れた結果、上記のようにずっと調子を崩していた始末。
稽古最終日に福原さんと少し喋らせて頂く機会がありました。
色々喋った中から勝手に自分が受け取ったのは、小劇場の者として挑もうという気持ちでした。色々な“初めまして”が重なっている中、実際に大きな舞台でもあることで、どうにかして自分をそこに当て嵌めようと空回っていたことに改めて気付きました。小劇場と商業演劇と、その境目は曖昧で実際は関係ないことでもあるのですが、小劇場の延長で勝負するんだという気持ちが自分としては腑に落ちました。
その心境が、みれん横丁の放火魔とリンクするところもあるし、上手いこと機能していたように思います。
余談ですが、放火魔の刺青は毎回、男子楽屋の皆に描いて貰ってました。
美大出身の加瀬澤師範が中心となって、稲葉(俊一)師範代と亀岡師範代、気まぐれに近所のクボカンおじさん、近場で見ているだけなので師範から白い目で見られる今國さん、がいつも本番の1時間前になると描き足してくれていました。途中から加瀬澤派とは流派の違う桑原師範も加わって字入れをしてくれたり楽しい時間でした。日に日に新しい技法を編み出し、ペンで描いているのに本物の刺青っぽい質感になっていきました。
本物すぎて半袖では外を出歩けないレベルでした。良い夏の思い出です。
『俺節』は社会の隅っこで、人生を賭けてのたうち回りながら何かを掴もうとして、それでも掴み切れない人々の話です。福原さんは稽古の最初からアンサンブルであったとしても、全員がいつでも自分が主役のつもりで芝居をして欲しいと言ってました。全員がそれぞれの登場人物の人生を背負っていることを表現できていなければ成立しない作品です。
44ステージもやっていれば、正直、何も考えずにオートマチックに芝居をやることも可能になってきますが、誰一人として芝居を固める人はいませんでした。時には敢えてルーティンを崩したりしながら、皆で毎回新鮮に芝居を作っていました。
これだけ大規模な興行で、全員がそのスタンスで挑んでいたことは本当に素晴らしいことです。初めての大舞台での出演作品が『俺節』で良かったと心から思います。
これからも自分は小劇場の人間としてやっていくだろうし、どんな現場だろうと、その初心を忘れないようにします。泥臭いエネルギーの発露こそが自分の最大の持ち味だと思うので。
今のところ、今後の決まっている予定としましては、
9月23日に自分のSOLO LIVE、
来年の1月31日に『レ・ミゼラブル -パワーマイム新演出版-』に出演予定でう。
SOLO LIVEではフリーの役者として自分が何を出来るかを模索したものを発表していますが、今回はスタンダップコメディを披露します。
前回のLIVEでは大喜利・一人芝居・スタンダップなど色々交えてやりましたが、今回はスタンダップに絞ってやりたいと思います。
スタンダップコメディ + 歌です。
メインは役者として活動していきますが、自分にしか出来ない表現というものも深めていきたいです。
『レ・ミゼラブル -パワーマイム新演出版-』はあの名作『レ・ミゼラブル』を腹筋善之介さんがパワーマイムで再構築したものになります。パワーマイムって何ぞや?な方はコレを観てください。『俺節』は日本版『レ・ミゼラブル』と評する方もいたので、そんな符合も面白いですね。腹筋さん曰くミュージカルにはしない、とのことですが『俺節』に負けないぐらいエネルギーに溢れた作品になること間違いなしです。今からちょっと怖いぐらいです。1日2ステージだけの作品ですが、是非観に来てください。
北野プロの社員/放火魔/印鑑屋/祭りの人/引っ越しや/親衛隊 役
山川恭平
へば!







