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旅慣れテーラーになりてえな① 〜荷物が重たくなる呪い〜

私は荷物が重たくなる呪いにかかってる。
必要最低限のもの、手帳・ケータイ・財布・折り畳み傘・水筒・タオル・イヤホン・メモ帳・ペン、しか常に持っていない。これらに加えて稽古がある日は着替え・靴・台本・プリントをしまうファイル、あとは電車の中で読む本を1冊ぐらいだ。
なのに何故だか常にバッグが砂袋のように重たい。

高校時代は部活の柔道着を、大学時代は美大だったので画材道具を、そして教科書は常に持ち帰るタイプだったので、重さの感覚がバグってるところはあるかも知れないが、それにしても何だってこんなに荷物が重たいのかといつも思う。でも必要最低限しか入れてないのだから仕方がないのだ。この呪いと共に我は生きよう。

基本的に荷物が重い・小物が多いので、普段使いのバッグは頑丈さとポケットの多さを重視した結果、大きめのリュックを使っている。自転車や歩きでの移動が多いので日射病対策で帽子も常に被っている。長距離の歩行に耐えられるのと、突然の雨にも対応できるように、トレッキングシューズを履くことも多い。
日常の生活に適した格好をしているだけなのだが、結果として登山家のような格好になっている。荷物が重たく重装備に見えるのも登山家に拍車をかけている。山を登ってきたんですか? or これから山に登るんですか?とよく言われる。
別に良いんだけど、なんか恥ずかしい。

cotopaxiというブランドの大きめのリュックを買った。
cotopaxiはサステナブル志向のアウトドアブランドで、端材を組み合わせて作られているのが特徴だ。形は同じでも色味は全て違い、どれも一点物となる。そしてその色味がとてもカラフルで可愛い。
俳優の友人が働いていて、職場に遊びに行った際に、ブランドのコンセプトとオシャレなカラーリングですっかり気に入って、買うことにした。

既に日常使いのリュックは何点か持っていたので、新しく購入する必要はなかったのかも知れない、と買ってから思ったところもある。それでも欲しくなったのは、旅への憧れというものが無意識に働いた気がする。
自分はたぶん、旅行好きなのだが、中学高校のあたりから部活が忙しく、大学からは演劇が忙しく、卒業してからも何だかんだ忙しく、旅行なんか行ってる場合じゃねえと、自ら封じているところがあった。
いや別に、旅行に行ってる知り合いの演劇人もいっぱいいるし、行きたきゃ行けば良いのだが、そういうのはもっと成功してからだろと、若い頃は押し殺してきたのである。
その気持ちが溢れちゃったなあ、とcotopaxiのリュックを買ってから気づいた。

しかしcotopaxiを使う機会はあまり無かった。自分が買ったのは旅行用の大きめサイズのものだが、日常でも勿論イケる。しかし普段使いするようにはならなかった。
我が身は呪われてることもあって、数々のバッグがその呪いによって破壊されてきた。ある日突然、リュックの肩掛け部分が引き千切れるのである。そんなバカなと思うが、柔道着を運んでいると高校時代だけでバッグは2 3個お亡くなりになられた。流石に今はそこまで重たくないにしても、もう誰も、我が身の呪いによって傷ついて欲しくないのである。
要はお気に入りとして購入した分、簡単に壊れて欲しくなくて、使うのに躊躇してしまっていた。

と言っても、全く使ってなかった訳ではなく、姉が住んでいる鹿児島に旅行で行った時などはここぞとばかり使った。
その時、パソコンとiPadも持って行ったのだが、預ける荷物の中にパソコンやiPadなどの電子機器を入れてはいけないことや、機内に持ち込める荷物の重さ規定のことがよく分かっていなくて、空港で荷物の入れ替えをした挙句に重量オーバーで課金しなければならなくなった。せっかく安い航空チケットを買っていたというのに。
我が身の呪いと旅慣れてないことがしっかりと裏目に出た。

その後もなかなか使う機会がなかったのだが、『俺節』の稽古が始まるにあたり、初めての地方公演にも行くし、使うタイミングはここだ!と思った。正直、普段使っているリュックでも全然まかなえたのだが、何かの直感が働いた。

多分、cotopaxiを使いこなしたいとどこかで思っていたのだ。

使いこなしたいけど、それを使って簡単に壊してしまうのもイヤで、何故なら、日常で壊してしまうと、お前にcotopaxiは見合わさないよということになってしまうわけで。そのことに直面したくなかったのだ。

ただ、『俺節』は自分にとっても一つの挑戦だったため、その背伸びの気持ちに見合った装備として、cotopaxiを使いたくなったのだろう。

私が普段使いしているリュックは黒や茶色で、一般的な成人男性でも使いやすい、落ち着いたカラーリングだ。大きさや耐久度、ポケットの数も申し分なく、これはこれで気に入っている。
しかし、私は本来、カラフルなものが好きだ。カラフルなものを身に纏っていたい。一方で、荷物が重たくても減らすことより、それを引き受けて持ち運ぶ、不器用というか無骨というか無頓着というか、ちっとも派手ではない泥臭さも持ち合わせている。どちらも私らしさだと思っている。

海外旅行に行き慣れている人にパッキングのコツを聞いたことがあるが、その人は着る物はコチラから持っていっても捨ててきてしまって、足りなくなったら現地調達、行く時より来る時の方が荷物が少なくなるぐらいなのだと言っていた。
スゲー格好いいが、自分には到底出来ない。
何せ自分は呪いにかかっているのだ。

今回、地方公演に行く時、福岡には飛行機で、大阪には新幹線で行った。
前回の反省を踏まえ、福岡にはiPadのみ、持っていく本も1冊だけにした。
荷物の重さはクリアしたが、作業効率としてはiPadだけだとやはり良くなかった。
大阪は新幹線だったのと、福岡に比べて滞在期間が10日ほど長かったので、パソコンとiPad、本も5冊ほど持って行った。多過ぎかとも思ったが、5冊中3.5冊は読み終えたし、演劇以外にも文章を書くこと・絵を描くことにも注力したいと考えていたのでパソコンとiPadの両方がある方が作業が進んだ。
呪いではあるが、やはり自分にとっては必要最小限なのである。

そしてその中でもcotopaxiは適切に活躍してくれた。自分が理想を抱いていた、旅先での使い方が出来た。

旅における丁度良い荷物量はいまだに掴め切れていないところがあるが、自分にとってのベストが分かっているような旅慣れテーラーになれたら格好いいと思う。cotopaxiと共に旅慣れテーラーになりたい。


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