見出し画像

【戦術分析】FCアウクスブルク戦から読み解く、ヴァンサン・コンパニ率いるバイエルンの崩し方 FOKUS Bundesliga!!! #34


前書き

11月22日、アリアンツ・アレーナで行われたブンデスリーガ第11節FCアウクスブルクとの「バイエルン州ダービー」は、ハリー・ケインのハットトリックの活躍もあり、FCバイエルン・ミュンヘンが勝利した。本テキストではバイエルンがどうしてボールを独占できたのか、どのように相手を崩し、勝利を収めようと試みたのか考察する。

ブンデスリーガ第11節FCアウクスブルク戦の先発11人



ヴァンサン・コンパニ監督の狙い

バイエルン州ダービー」でヴァンサン・コンパニ監督率いるバイエルンが直面した問題は、5バックで強固な守備ブロックを築くアウクスブルクをどのように崩し、得点を奪うかということだった。とくにケベン・シュロッターベックジェフリー・ハウレフェーウクリスラン・マツィマの3人のCBは屈強な肉体の持ち主で、カバー能力も高いために崩すのは容易ではない。

コンパニ監督は「問題」に対し、ジャマル・ムシアラにバイタルエリアでの崩しの全権を与えるという判断を下す。ムシアラならば独力で前向きになれるうえ、個人技で状況を打開できる。多くの時間をペナルティエリアの幅内でプレーするムシアラにボールを集め、相手を崩すことがバイエルンの目的だった。


左サイドの支配者、アルフォンソ・デイヴィス

「5-3-2」の布陣でゴール前に「城」を築くアウクスブルクに対し、バイエルンはいくつか特徴的な動きを見せた。なかでも顕著だったのは両サイドバックの位置取りである。同サイドのウイングをサポートする役割を任されたアルフォンソ・デイヴィスラファエル・ゲレイロは、それぞれに異なる動きを披露した。

左SBのデイヴィスは、試合中のほとんどの時間を左のインサイドハーフとしてプレー。抜群のスプリント能力を武器とするキングスレイ・コマンが大外から崩す役割を担うためだ。反対に右のハーフスペースで味方と連携しながら崩す動きを好むマイケル・オリーセと組んだ右SBのゲレイロは、多くの時間を右の大外でプレーした。

とくにデイヴィスは相手守備陣を効果的に後退させる役割を担った。デイヴィスは左SBの位置からドリブルでボールを持ち上がる動きを仕切りに見せる。これにより味方CBをフリーな状態にできるうえ、自身はそのまま高い位置をとって相手を押し下げた。アウクスブルクの選手はときにはウイング、ときにはFW、ときには中盤中央でプレーするデイヴィスの対応に苦慮した。

試合中、バイエルンの左サイドからの攻撃のほとんどがデイヴィスを経由して行われる。キム・ミンジェダヨ・ウパメカノヨズア・キミッヒと斜めの位置関係にポジションし、ゲートの「出口」の役を果たしたためだ。またデイヴィスは推進力のある相手の右MFエルヴィス・レクスべチャイのカウンターへのケアも行った。アウクスブルク戦における左サイドの支配者はデイヴィスだった。


FCバイエルン・ミュンヘンによる試合の支配

この試合におけるバイエルンのポゼッション率は80%。1試合は90分であるため、単純に換算すると、72分間にわたってバイエルンがボールを保持したことになる。チームの後方でボールの供給源となったのは、ミンジェとウパメカノの2人のCBとキミッヒだった。とくにキミッヒは試合中、両チーム最多の126本のパスを記録し、そのうち119本(成功率94%)を成功させた。

キミッヒによる左サイドでアイソレーションとなったコマン(もしくはデイヴィス)へのロングパスは、非常に正確だった。12:40のシーンでは、キミッヒのロングパスからコマンがチャンスを創出している。加えて相手がキミッヒへのケアを行おうとすると、空いたスペースをウパメカノが活用して縦パスを供給する。ミンジェもデイヴィスを経由することで、95%のパス成功率を記録した。

また後方の3選手は、パスの供給源として機能しただけでなく、バイエルンの特徴的な守備を支える存在でもあった。バイエルンは自チームの選手がボールを失ったとき、多くの場合、相手ボールホルダーに最も近い位置にいる選手がプレスをかけるネガティブ・トランジションをみせる。とくに相手選手が完全にカウンターのフェーズに入った場合には、3〜4人で囲んだ上で孤立させ、サイドへと追い込み、ボールを奪ってしまう。

もしボールを奪った相手選手が、カウンターではなく、後方のGKに下げる選択肢を取った場合には、「オールコート・マンツーマン」気味のゾーンプレスを展開する。10:00のシーンや29:25のシーン、68:40のシーンなどは、完全なオールコート・マンツーマンを披露した。

20世紀のバイエルンの代名詞でもあった「マンマーク」を彷彿とさせるコンパニ・バイエルンのゾーンプレスは、最終ラインが数的同数になることに躊躇いがなく、空中戦を含めた対人能力に秀でる2人のCBとスイーパーとなることのできるマヌエル・ノイアーの存在あってこその戦い方だといえる。相手GKがロングボールを第1選択肢にしていたこともあり、バイエルンが試合を支配する構図が出来上がっていた。


ブンデスリーガ最高の選手、ジャマル・ムシアラ

チームが築き上げた「5-3-2」のブロックも見事だったが、とくに素晴らしい活躍を見せたアウクスブルクの選手はGKのネディリコ・ラヴロヴィッチだっただろう。試合中、バイエルンは33本のシュートを放ち、うち14本が枠内に飛んだにも関わらず、ラヴロヴィッチは11本のショットストップを記録した。そんなラヴロヴィッチの守るゴールマウスに最多6本の枠内シュートを放ったのはムシアラだった。

この試合におけるムシアラは、凄まじいと表現するにふさわしいプレーぶりを見せる。ほとんどスペースのないような位置でターンし、対面する相手DFをかわしてシュートを放つのだ。バイエルンのボール保持時、ムシアラはケインの横にポジションを取り、2トップのような状態を形成する。ただ攻撃が左サイドを経由するときには、ポジションを移動しながらパスの受け手となった。12:00には左WGのコマンからの横パスをワンタッチでゴレツカに落とし、チャンスを創出している。

ムシアラが最初にシュートを放ったのは26:50のシーン。デイヴィスから縦パスを受けると、時計回りの方向にターンして前を向き、相手SBとCBの間に突っ込むようにドリブルを仕掛け、相手MFが寄せてきた段階でカットインして3人をかわし、シュートを放ったのだ。相手選手は、ムシアラの急な仕掛けとキレのあるドリブルに追いていかれた格好だった。

32:57のシーンも特徴的だった。左の大外のコマンにボールが入ったタイミングで、デイヴィスがハーフスペースを突っ切るような動きを見せる。相手の右CBと右MFがデイヴィスに気を取られるなか、コマンは気を取られた2選手の背後に侵入したムシアラにパスを送る。十分なスペースを得たムシアラはターンをしたうえ、対峙した相手CBハウレフェーウをかわして左足をからシュートを放った。

47:50にはゲレイロとの大きな縦のワンツーからヘディングでシュート、51:37には相手CBマッツィマの逆を突いて転ばせ、アウトサイドからシュートを放った。75:23にはミンジェのインターセプトからの流れでケインにスルーパスを供給している。そして圧巻だったのは、84:05のシーン。キミッヒからパスを受けると、相手MFの間に突っ込む形で2選手をかわし、シュロッタ―ベックも躱してシュートを放ったのだ。

この試合においてムシアラがみせたプレーの数々は、彼がブンデスリーガ最高の選手であることの何よりの証明となった。現在のムシアラをファウルなしで止めるのは、至難の業だろう。そう感じさせてくれるほどに、今のムシアラは鮮烈な輝きを放っている。


後書き

今夏にマックス・エバールSDが下した判断は正しかった。トーマス・トゥヘルの後任として就任したコンパニ監督は、チームの状況をがらりと変えたのだ。ペップ・グアルディオラ流の「ワンサイドゲーム」戦術をチームに落とし込み、対戦相手を圧倒するバイエルンが復活したのである。

チーム状況を見れば、昨季のチームの問題はマネジメント面にあったのは明らかだ。キミッヒのプレーぶりは、トゥヘルの判断がいかに誤っていたかの何よりの証明である。今季のバイエルンには大いに期待したい。そして明らかにしてほしい。マイスター・シャーレはバイエルンのものだということを。


FOKUS Bundesliga!!! サイトマップ


読んでいただき、ありがとうございます!
そのほか
FCバイエルン・ミュンヘンに関するおすすめ記事はこちら


いいなと思ったら応援しよう!