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アラスカ産原油のウソを解説

まず最初に、「 ホルムズ海峡 封鎖が続くと日本はどうなってしまうのか?」を知りたい方はこちらで解説しています。

では本題。

ホルムズ海峡が封鎖され、日本の原油輸入の7割超が止まっているこの状況で、高市首相がトランプ大統領との首脳会談で打ち出したカードが「アラスカ産原油の調達」だ。

官邸関係者は「日米ウィンウィン」と表現し、メディアも好意的に報道してるが、この計画がいかに実態が無いものかを解説していく。



まず「合意した」という話から嘘

最初に確認しておくべき事実がある。

首脳会談後の高市首相の発言はこうだ『 私からトランプ大統領に対しまして、日本において米国から調達する原油を備蓄する共同事業を実現したい旨を伝えました

「実現したい旨を伝えた」つまり「お願いしただけ」 合意でも決定でもない。 トランプ側はこれに対して具体的な約束を何一つしていません。


アラスカの石油生産量はショボい

とある解説では「アラスカの石油生産量はおよそ日本の年間消費量の2割程度」と言われている。 正確な数字で見てみよう。

  • 日本の中東からの原油輸入量:1日あたり230万バレル

  • アラスカ全体の現在の生産量:1日あたり40万バレル

  • そのうち輸出に回せる余剰分ほぼゼロ

あくまで生産量から比較してるだけで何の意味もない数字。 現状はアメリカ3.4億人の国内需要を満たすのに手いっぱいで、日本に回せる量は全くない。 なぜあれほどの広大な土地があるのにこれしか採れないのか?「永久凍土だから」

つまりは「再開発して増産するしかない」という話だが、現在進められてる計画である「アラスカ大型油田開発 Willowプロジェクト」

この採掘計画の見込み生産量は、石油企業ConocoPhillipsの発表で18万バレル/日。 これが仮に全て日本向けになったとしても、日本の需要 300万バレル/日の「6%」に過ぎない。その上そもそも計画自体がアメリカ向け原油の確保を大前提に設計されているため増産しても大半がアメリカに流れる。アメリカ国内向けが優先されるため、日本が得られる量はさらに少なくなる。

※2024年確定データ実績  石油製品を含む原油関連の輸入310万バレル Energyインスティチュート 報告 336万バレル


「現在の危機」には1ミリも役に立たない

稼働時期の問題はもっと深刻だ。

Willowプロジェクトの本格稼働は2029年以降。 そのうえ、あくまで契約が成立したと仮定して、日本が投資して採掘して出てきた一部を日本に回すというだけの話。

ホルムズ海峡が今封鎖されているこの危機に対して、数年後に少量の原油が届くかもしれない計画は何の解決にもならない。


採掘・インフラ・精製設備は全て日本側が負担


採掘投資リスク
。アメリカの土地なのに採掘費用は日本が負担。もし想定量が出なかった場合の損失は誰が負うのか。「掘ってみたけど出なかった」がエネルギー開発では普通に起きる。 そして、あくまで石油の価格はアメリカの言い値になる。

アラスカには、日本が主力で使っている30万トン級VLCC超大型タンカーが入れる港がない。 20万DWT前後のタンカーでないと入れず、そのため距離をかけて運ぶ場合の船腹効率(1隻あたりの輸送量とコスト)は、中東ルートに比べて明確に不利になる。

精製の問題。日本の製油所は長年、中東産の中質〜やや重質な原油に合わせた設備を持つ。アラスカ産は軽質(サラサラ)で成分が異なり、そのままでは精製できない。 日本の製油所は中東産専用に最適化されてるので、アメリカ産オイルが今すぐ入ってきても対応が出来ない。 どう日本向けに精製すればいいかを研究して設備を建設するところから始めないといけないので、さらに追加コストと数年の年月が必要。


政治リスクは中東依存と何も変わらない

これが最大の問題点だ。

中東依存のリスクを分散したい、というのがこの計画の建前だ。だが実際には、リスクの種類を置き換えるだけで、構造は何も変わらない。

  • 中東:地政学的不安定リスク

  • アメリカ:トランプの政治的気分リスク

今回の関税騒動を見ればわかる。トランプは機嫌一つで同盟国に追加関税をかけ、交渉を人質にする。アラスカ原油も同じことが起きる可能性がある

価格は米国の言い値、供給量の保証なし、機嫌を損ねれば減量・停止・値上げ。 しかも中東は複数国に分散されているが、これでは米国一極集中だ。

 米国に依存先が付け替わるだけでリスクの性質は何も変わっていない。


過去に一度やって失敗している

実は日本はこれを一度やっている。

1996年から2000年にかけて、日本・韓国・中国にANS(アラスカ・ノーススロープ)原油が実際に輸出されていた。ピーク時の1999年には日量約7.4万バレルが輸出され、日本のシェアは36%だった。

これがどうなったか。BPとArcoの合併によりサプライチェーンが再編され、BPがカリフォルニアの製油所でANS原油を自社処理する方が合理的と判断した結果、2000年5月にアジア向け輸出は自然消滅した

日本側の意思とは無関係に、アメリカ企業の経営判断一つで終わった。今回も同じ構造だ。


アラスカ産原油の調達は「85兆円対米投資」からと言われている。
(5500万ドルなので円安で80兆円からさらに増額)

専門家の話では『80兆円投資の枠内で行われるなら日本の利益も確保できる良いプロジェクトになる可能性がある』という解説もあった。だが実際のところはどうなるのか?

この実態についても解説していく。


「85兆円投資」本当の構造

ホワイトハウスのファクトシート、赤沢経済再生担当大臣の国会答弁、国立国会図書館の調査レポート、ラトニック米商務長官のメディア発言 複数の一次ソースが同じ構造を示している。

出資比率:日本100%(すべて日本が負担)
元本回収まで:利益を日米50%ずつ分配
元本回収後の利益分配:日本10%・米国90%

要するにこういうことだ。「日本の金でアメリカの土地を耕し、収穫した果実の9割をアメリカに捧げる」という契約。


罰則付きの不平等条約

さらに「80兆円投資が滞れば15%の関税を再引き上げ」という罰則条項が明記。  関税を武器に圧力をかけて超不平等な条件を飲ませた。 これを国家間でやったわけだ。

ただしその後、米連邦裁判所がトランプ相互関税違法と判決をだした。

それに伴いトランプも関税撤廃の署名をした。 なので本来であれば、ここで「関税との引き換えの契約だったので見直しましょう」と出来るはずなのだが、高市政権は見直しを求めなかった。よって、脅しによって結ばされた契約だけが残った。


通商法122条で完全に無意味化

さらに状況は悪化した。

トランプは、違法であったことで相互関税を撤回したが、今度は通商法122条を根拠に、全世界一律15%の関税をかけると言い出した。

日本が85兆円投資を飲んだ「見返り」は関税15%をなくすことだったはずだ。しかし日本を含む 全世界が同率15%になるので、日本は全く無意味に不平等条約を結んだ挙げ句、関税まで背負わせられる羽目になった。


これを誰も追及しない

この問題を国会で追及していたのは、れいわ新選組の山本太郎議員だった。赤沢大臣との国会質疑で利益配分構造を明らかにした。

その山本太郎が議員を辞職した。今この構造を国会で追及できる議員はいない。 もう追及する人間がいない、報道する人間がいない。

だからこそ、あなたが事実を広める側になってほしい。


主要ソース

  • ホワイトハウス ファクトシート「Fact Sheet: President Donald J. Trump Secures Unprecedented U.S.–Japan Strategic Trade and Investment Agreement」(2025年7月23日)

  • ラトニック米商務長官 CNBCインタビュー(2025年7月23日)

  • 内閣官房「米国の関税措置に関する日米協議:日米間の合意(概要)」(2025年7月25日)

  • 第一生命経済研究所「日米貿易合意を巡るQ&A」(前田和馬、2025年7月28日)

  • 国立国会図書館 調査と情報 ISSUE BRIEF 第1337号(2025年11月6日)

  • 参議院 予算委員会:赤沢経済再生担当大臣 国会答弁(2025年12月15日)


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