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対話とは何か(3)人の話を「聴く」ことの難しさ(JES通信【vol.206】2026.2.10.ドクター米沢のミニコラムより)

 昨秋からこのコラムを中心に「対話とは何か」を考えてきました(資料1資料2資料3資料4資料5資料6)。
 前回のコラム(資料2:JES通信【vol.204】2025.12.10)ではフィンランドのカイ・アルハネン氏が「ダイアロジカル・スーパービジョン」のセミナーで紹介した「対話のためのガイドライン」を取り上げました(表1)。その中から「2.他者に加わる」、「4.共通の言葉を生み出す」、「5.違いを模索する」、「6.隠れて見えないものを探す」の4つの解説を試みました。今回はガイドラインのトップに出てくる「1.聴く」を取り上げます。

表1 対話のためのガイドライン
1.聴くListen
2.他者に加わる Join others
3.直接尋ねる Ask directly
4.共通の言葉を生み出す Create common language
5.違いを模索する Explore differences
6.隠れて見えないものを探す Search for hidden things
7.より大きな視点で考えてみる(全体像を考える) Examine the bigger picture

▼人は他人の話が聴けないのかもしれない

 「聴けない」をもう少し正確に書くと、「人は他人の話を注意深く丁寧に聴かないと、話者の意図を十分には受け取れないのかもしれない」という意味です。
 このように感じたのは2018年に産業オープンダイアローグ研究会を立ち上げ、勉強会を始めてしばらく経った頃でした。オープンダイアローグ・ネットワーク・ジャパンが2018年3月に公開した「オープンダイアローグ 対話実践のガイドライン」に紹介されている演習を参加者と一つひとつ試していったのです。参加者はすでに現場で活躍されている方々ばかりでしたが、演習の様子を見ていると、クライアント役の話をカウンセラー役が十分に聞き取れていないと感じる場面が少なからずありました。
 「人の話が聴けない」と書きましたが、「自分の聴きたいように聴いてしまう」と言い換えてもいいかもしれません。相手の話は聞いているのですが、途中で「こういうことを言いたいのだろう」とか、「きっとこうだ」と早合点してしまうのです。そのタイミングでコメントを返すと、相手はまだ十分に話せていないという不満を感じることになるわけです。対人支援職に就くには、学生時代に少なくとも数十時間のカウンセリングの訓練を受けていますし、その後もいろいろと研修の機会があります。それでもやはり人の話を聴くのは難しいのだと思いましたし、自分自身も相談者の話をどれだけきちんと聴けているのだろうかと振り返ることになりました。

▼次に話すことを考えていると聞き損ねる

 そこで勉強会では、「話の聴き方」についていくつか追加情報を提供しました。その中の一つに、当社が契約企業様の管理職研修で使っている資料「傾聴スキルの自己チェックリスト」があります。一部を抜粋してご紹介します。

表2 傾聴スキルの自己チェック
・相手の話が終わらないうちに口を挟む
・すべてを聞く前に解決策を示す
・話が要領を得ないとイライラする
・自分が話す方が多い
・別のことに意識が向いていて話を聞き漏らす
・次に話すことを考えていて話を聞き漏らす、など

 皆さんは従業員や部下の話を聞いていて、「それは違う」「まだまだ指導しなきゃ」などと思ってしまうことはないでしょうか。そこでつい、相手の話が終わらないうちに口を挟むとか、解決策を示すといったアクションを取ることもあると思います。しかしこちらが批判的なモードに入ってしまうと、部下の言葉を公正に受け取ることができなくなる可能性があります。
 一方、部下の側も、上司がカットインしてくると、「また怒られる」「どう言い訳しよう」「ともかく何か喋らないと」などと防御策を考えることに意識が向き、自分が話したかったことはどこかへ飛び、でも上司の話も聞き漏らしていたりするわけです。そして結局、「お前、俺の話、ちゃんと聞いてたか!?」と怒られることになります。このように双方が相手の話を「聴く」ことができないと、よい対話にはならないでしょう。

▼自分も人の話を聞き損ねる体験をした

 実は最近、私自身が“人の話を聞き損ねる”体験をしました。ある資格の面接試験があったのです。試験官から質問されると、自分の知識を総動員して答えを探します。よく知っている事柄はスムーズに受け答えができますが、認識が不確かな用語が出てくると、あれ、何だっけ?と一瞬考えます。その様子を見て、試験官が助け舟として追加のコメントをくれたのですが、頭の中は用語の検索でフル回転ですから、コメントの趣旨が十分に聞き取れず焦ってしまい、うまく返すことができなかったのです。試験の場で私が緊張し余裕がなかったのもありますが、表2の最後の2つが起こったと言えるでしょう。まさにこのコラムを書き進めている最中の出来事で、試験の帰り道、苦笑いしてしまいました。いくつになっても試験は嫌ですね。
 
 次回3月は、人の話を「よりよく聴く」にはどうすればいいのか、考えてみます。
 
*「聴く」「聞く」の補足説明
 「聴く」は英語のListenにあたり、相手の話を理解しようと耳を傾けるニュアンスを持ちます。これに対し「聞く」はhearにあたり、音や声が自然に耳に入ってくるニュアンスを持ちます。なるべく使い分けましたが、文章のニュアンス上、「聴く」「聞く」を混ぜて使った箇所もあります。

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