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生成AI時代のハローワーク

本連載では、生成AI時代のハローワークとして、子どもに人気な職業トップ100について、「AIでなくなる仕事・残る仕事」というテーマでインタビュー形式で記事化していきます。

本記事では、なぜ、いま、「生成AI時代のハローワーク」というテーマに取り組むのか解説します。


生成AIネイティブな4歳の息子

「パパ、鬼さんって何で豆が嫌いなの?」

4歳の息子の質問は、仕事で聞かれる質問や相談より回答が難しいこともしばしばです。

数年前までであれば、答えを探すために親である僕がスマートフォンを使って検索が必要でした。今も僕は、スマホで検索します。

しかし、最近では、4歳の息子は自分の手で解決しちゃいます。

わからないことがあると、勝手に家族共用のタブレットを手に取り、ChatGPTに聞くという術を手に入れたのです。

「ねぇ、ChatGPT、鬼は何で豆が嫌いなの?4歳にもわかりやすいように教えて」

息子は、まるで保育園の先生に話しかけるような自然な口調でAIに質問を投げかけます。
「4歳にもわかりやすいように教えて」というプロンプトも使いこなして。

音声認識が息子の幼い声を認識し、優しい口調でありつつ、まだ機械っぽさの残る音声で、わかりやすい説明が流れます。

そして息子は、
「へぇー、豆は魔法の力があるんだ!」
息子はニコニコしながら、AIからの返答に納得します。

僕自身は工学の博士を持っていて、AIの会社を経営しているので、他の大人よりは新しいテクノロジーに親和性が高いはずですが、まだまだ音声入力に戸惑いや抵抗を感じます。

一方で、息子にとって音声入力で会話できるAIは既に生活の一部となっていて、息子にとって、ChatGPTは単なるツールではなく、なんでも答えてくれる先生であり、親と違って無視しない頼れる相談相手です。

時には「パパの言ってることあってるかな」と、AIにセカンドオピニオンを求めることもあります。
笑ってしまいますが、これが新しい世代の学び方なのかもしれません。

4歳の息子を見ていると、AIとの共生が当たり前となる世界が、既に始まっていることを実感します。
彼らは生まれた時からAIが存在する世界で育ち、僕たちとは全く異なる感覚でテクノロジーと向き合っているのです。

AIとコミュニケーションの未来

息子が公共の場でAIと会話をする(スマホに話しかける)姿を見て、ふと考えさせられることがあります。

電車の中で息子が「ねぇ、ChatGPT」と声を上げると、周囲のお客さんの視線が気になる僕は、「電車では静かにね」と注意します。

しかし、息子は「なんで、話すのはいいのに、ChatGPT使うのはダメなの?」と聞きます。

なぜ僕たちは公共の場での音声コミュニケーションにこれほど敏感なんでしょう。

最近増えた外国人観光客は、電車内で音声入力を使いこなしている姿をよく目にします。文字起こしだけでなく、ボイスチャットもよく使われているようです。
彼らにとって、スマートフォンへの音声入力は既に当たり前の行為となっているようです。

確かに、海外でタクシーやUberに乗ると、ドライバーが乗客を気にせず運転中にビデオ通話を楽しむ光景もよく見ます。
この点を解決している(より快適に変化させている)のがウェイモでしょうか。

一方で、日本特有の「他人に迷惑をかけない」という繊細な社会規範は、決して否定されるべきものではないはずです。むしろ、この独自の文化感覚こそが、新しいコミュニケーション技術を洗練させる触媒となるかもしれません。

例えば、既に一部のウェアラブルデバイスやアプリケーションでは、環境音
に応じて自動的に音量を調整したり、超指向性スピーカーで周囲に音が漏れないよう制御したりする機能が実装され始めています。
また、骨伝導技術を活用した「ささやき」での会話も可能になりつつあります。

このように、テクノロジーは私たちの文化的価値観に適応しながら進化を続けています。息子の世代が大人になる頃には、高度な社会規範と最新技術がうまく調和した、新しいコミュニケーションの形が確立しているのでしょうか。

生成AIはコミュニケーション能力を向上させるか?衰退させるか?

「ねえChatGPT、じゃんけんしよう」
息子はAIとゲームもします。
息子にとって、AIとの会話は既に「自然な」ものになっていそうです。

大人である僕たちは、ChatGPTのボイスモードを音声入力として捉え、「会話」とはまだ感じていないでしょう。

それは、相手が「プログラム」であることを意識しているからかもしれませんし、日本語においてはまだ不自然さ(固有名詞をよく間違える。地名の大分を読めないなど)が残るからかもしれません。

しかし、4歳の息子は違います。
まだ大分という地名も知らない分、不自然さを感じづらく、そんな息子にとって、AIは対話の相手であり、その返答は祖父母とのLINE電話と変わらないようです。

確かに、祖父母と息子の会話は、意味が通じてなくても成り立っている(芸人のアンジャッシュのネタのように)ことは多く、すでにAIの方が会話が意味的にも成立することは多いかもしれません。

「ChatGPT、おバカだね」
息子がChatGPTのことを馬鹿にします。

僕たちは、AIの返答が音声入力ミスやコンテキストを拾えていないときに、まだまだだなという意図を込めて、AIはバカだという表現をすることがあります。

しかし、息子はAIを会話相手と感じていることもあり、AIと人の違いという概念が明確ではありません。
そうすると、AIにバカと言っていいけど、人にバカというのはダメだという躾は難しくなる気もしてきます。

そうすると、AIにもバカだと言わない方がいいかもしれないです。
このタイミングで、人間とのコミュニケーション方法を教えるために、AIにも尊厳を認めるといったことが発生し始めているのかもしれないなと考えたりもします。

AIとのコミュニケーションが自然になることは他にも新しい課題も提示します。人間同士の関係性が希薄になるのではないか、という懸念です。
その懸念に対し、息子を観察していると、むしろ逆のことが起きているように見えます。AIとの対話を通じて、息子は適切な言葉の選択という能力を磨いているようです。

「ねぇパパ、卒園するお姉さんたちにメッセージを贈りたいから、ChatGPTに相談しよ」

この言葉に、僕は衝撃を受けました。息子はアメリカ人の経営する保育園に通っていて、英語で卒業のメッセージを伝えるそうなのですが、英語が得意ではない僕はどういった言葉が良いのか教えることは困難です。
AIがあることで、年齢や発達に応じた言葉の選択といったことが可能で、さらにそれを手伝ってくれるというのを息子自身も知っているということです。

これは、むしろ人間同士のコミュニケーションスキルを向上させており、子どもの発達にそった教育を提供できる可能性に気付かされます。コミュニケーションに関する学びも、必ずしも「人間」から受ける必要はなく、むしろ息子が身につけるべき大事なことは「誰かのために何かをしたいという意志」だけなのかもしれません。

息子たち生成AIネイティブ世代は、人工知能との対話を通じて、より豊かなコミュニケーション能力を獲得していくのではないでしょうか。
僕たちが子ども時代に「本を読むべし」と言われたように、これからは「AIと会話すべし」となっていくのかもしれません。
そして僕たち大人も、この新しいコミュニケーションの形から学ぶべきことがあるのかもしれません。
AIから知識だけでなく、コミュニケーション能力も身につけていっている子どもたちの様子は、テクノロジーと人間の新しい関係性を示唆しているように思えます。

親としてのAI教育のジレンマ

「息子さんが宿題をGoogle Homeに聞いてたんだって」
サロンから帰ってきた妻から聞いた話です。

うちの息子はまだ4歳のため、宿題はないので知らなかったのですが、どうやら最近の小学生は算数の宿題をAIに聞きながら解くなんてことをするようです。
このエピソードからは現代の親が直面する新しい教育的ジレンマを痛感します。

確かに、生成AIは強力な学習ツールです。子どもが節分について質問すると、年齢に応じた分かりやすい説明を提供してくれます。外国語を学ぶ際には、年齢に沿った言葉選びをして、ネイティブの発音で、読みあげてくれます。しかし、この便利さの裏には、深刻な懸念も潜んでいるようです。

「自分で考える力」の育成は、どうなるのか。
計算問題を解く時、AIに頼れば即座に正解が得られます。しかし、その過程で試行錯誤する機会、間違いから学ぶ機会が失われてしまいます。
また、暗算する力も重要です。僕たちの子どもの時にも計算機は存在しました。その上で、計算力が大事だと教えられたはずです。
違いは、AIができることが計算機を超えており、また計算機以上に身近になっていることで、悪いことだという実感がなく、ドラえもんに相談するのび太くんのように頼り切ってしまう危険性があります。
(今のAIは、まだ、ドラえもんほど子供の成長にコミットしてくれないです)

AIの利用を制限することは、もはや現実的ではありません。
むしろ、それは子どもたちの可能性を狭めることになりかねません。
今後の社会で必要とされるのは、AIと共存しながら、それを適切に活用できる能力だからです。
結局、僕たち親が模索すべきなのは、完全な制限でも放任でもない、バランスの取れたアプローチなのでしょうが、なかなか難しいです。

例えば、ある年齢に達したら、「最初は自分で考えてみよう」というルールが必要なのかもしれません。分からないことがあれば、まず自分なりの答えを考えて、それからAIに確認する。
そうすることで、AIを「答えを教えてくれる存在」ではなく、「自分の考えを確認し、深める道具」として位置づけるということができるかもしれません。

一方で、AIの適切な使い方や限界については、日々変化があります。
昨日までできないと思っていたことが、性能の高いモデルの公開でできるようになることもあります。
僕たち大人もわからないことが多い。
だからこそ、AIの適切な使い方や限界を子どもと大人が一緒に考えるという姿勢が重要だと考えます。時にはAIが間違った情報を提供することもあり、それは人もそうであること、自分で考えること、判断することが大事だということを、一緒に考えていくことが重要なのでしょう。

しかし、正直なところ、これだけで十分なのかという不安は常につきまといます。テクノロジーの進化は加速度的で、僕たち大人の想定をはるかに超えるスピードで変化しています。5年後、10年後に仕事という概念が変わらないとは言えません。

それでも、一つだけ確信を持って言えることがあります。それは、人間としての基礎的な能力—好奇心、洞察力、胆力、共感力—を育むことが重要だということです。結局のところ、親としての役割は、テクノロジーと人間力のバランスを取りながら、子どもたちが自立的に考え、判断できる力を育むための環境を整えることなのかもしれません。
それは簡単な道のりではないですが、避けては通れない課題でもあります。

生成AIによる自動化の進展

2022年11月のChatGPTの登場は、僕たちの仕事の在り方を根本から覆す転換点となりました。
それまでのAIが特定のタスクに特化していたのに対し、生成AIは言語理解、文章作成、コード生成、画像生成など、より広範な知的作業を担えるようになりました。この変化は、職業の自動化に関する従来の予測を大きく加速させています。

特に顕著な変化が見られるのは、これまで「人間にしかできない」と考えられてきた知的労働の分野です。例えば:

  • コンテンツ制作: ブログ記事、マーケティング文章、基本的なレポート作成

  • プログラミング: コード作成、デバッグ、コード最適化

  • データ分析: データ整理、分析レポート作成

  • カスタマーサポート: 問い合わせ対応、FAQ生成

  • 翻訳・通訳: 一般的な文書の翻訳、多言語コミュニケーション

これらの業務は、既に部分的にAIによる自動化が進んでいます。
僕たちの会社でもAIエージェントが開発に参加していて、SlackからCTOがAIに指示を飛ばしてバグを修正したプルリクをAIが出すといった光景がみられます。

しかし、生成AIによる自動化には、これまでの省力化・自動化とは異なる特徴があります。

  1. 段階的な代替

    • 業務の完全な自動化ではなく、タスクレベルでの部分的な代替が進む

    • 人間の監督や最終判断は依然として必要

  2. 創造的作業への進出

    • アイデア出し、企画立案、デザインなどの創造的プロセスにもAIが参加

    • 人間の創造性を補完・増強する形での活用が主流に

  3. 知識労働の民主化

    • 専門知識へのアクセスが容易になり、従来の専門職の優位性が変化

    • 新しい形の専門性が求められる様に

僕たちの会社でも、既に具体的な変化が始まっています。
例えば、採用業務におけるスカウトリスト作成、スカウト文作成といった業務はAIエージェントとの共同作業になっています。従来はRPO(Recruitment Process Outsourcing)に外部化していた部分を社内のAIエージェントが担うことで、採用担当者との連携が密になり、単なる省力化と異なり、質の向上につながっています。

他にも、エンジニアのテスト工数が大幅に減少しています。テストコードを自動生成するというレベルから、slackに参加したAIエージェントがレポジトリ内のコードを特定し、プルリクまで書くといったレベルまでこの2年でも大きく変わっています。

毎月開催しているウェビナーのコンテンツ改善についても、AIエージェントによりテーマの立案をするだけでなくアンケートを分析し、次回の企画に活かすといったやるべきだけど手が周りきていなかった部分までできるようになっています。
これらは、AIツールを効果的に活用することで、既存の職種における高付加価値業務への集中を促すという変化の一部です。

生成AIでなくなる仕事・なくならない仕事

2013年、オックスフォード大学のカール・ベネディクト・フライとマイケル・A・オズボーンによる研究は、AI時代における職業の未来について議論していて、衝撃を与えました。また、2015年には同じ研究者とNRIが共同で日本における職業の消失可能性について調査しています。
これらの研究から10年以上が経過した今、生成AIの登場・発展により、その予測の多くが現実味を帯びてきています。

自動化の可能性が高い職業・低い職業

参考
THE FUTURE OF EMPLOYMENT: HOW SUSCEPTIBLE ARE JOBS TO COMPUTERISATION? Carl Benedikt Frey and Michael A. Osborne September 17, 2013
日本におけるコンピューター化と仕事の未来 カール・ベネディクト・フレイ、マイケル A. オズボーン 野村総合研究所

消えゆく仕事の特徴

生成AIによって代替が進むとされる職業には、明確なパターンが見られます。

  1. 定型的な事務作業

    • データ入力

    • 文書作成

    • 基本的な経理処理

    • ルーチン的な報告書作成

  2. パターン化された判断業務

    • 基礎的な保険審査

    • 定型的な法務文書作成

    • 標準的な市場分析

    • 基本的なプログラミング作業

  3. データ処理中心の職種

    • 基礎的なデータ分析

    • マーケットリサーチ

    • 統計レポート作成

    • 一般的な翻訳業務

これらの職種に共通するのは、明確なルールやパターンに基づいて処理できる業務であるということです。

残り続ける仕事の特徴

一方で、以下のような特徴を持つ職業は、生成AI時代においても依然として人間が中心的な役割を果たすと考えられています。

  1. 創造性を必要とする職業

    • 芸術家

    • 革新的な製品開発者

    • クリエイティブディレクター

    • 戦略的なマーケター

  2. 高度な対人スキルが必要な職業

    • 心理カウンセラー

    • 教育者

    • 医療従事者

    • ビジネスコンサルタント

  3. 複雑な判断が求められる専門職

    • 高度な法務判断

    • 経営戦略立案

    • 研究開発

    • 危機管理専門家

  4. 社会的協調性が重要な職種

    • プロジェクトマネージャー

    • チームリーダー

    • 外交官

    • 社会起業家

ただし、これらの仕事も従来の在り方がそのまま続くというわけではないでしょう。その職業の中で、判断が求められる部分、つまりより本質的な価値が問われるようになるはずです。それは専門性の高い知識やスキルではなく、専門性を背景とした経験が価値を持つようになるということだと考えます。

これからの職業

さらに、生成AIの発展により、全く新しい職種も生まれるはずです。
AIプロンプトエンジニアが年収5,000万円といったニュースが話題になったことを覚えている方もいるでしょう。
さらに、僕たちの会社にもAIのシステムの開発だけでなく、AIの利用に関する倫理的な側面の相談をいただくようになってきています。これはAIがない時代にはない仕事です。
重要なのは、これらの変化を「なくなる仕事」「残る仕事」といった単純化したテーマとしてではなく、「働くことの再定義」として捉えることです。多くの職種では、生成AIとの協働により、より高度な価値創造が可能になると期待されます。

例えば:

  • 法律家は定型的な文書作成からより複雑な判断業務へ

  • 医師は基本的な診断から高度な治療方針の決定へ

  • 教師は知識伝達から創造的思考の育成へ

と、それぞれの職域を深化・発展させていくことが期待されます。
生成AI時代において重要なのは、AIに代替される可能性が高い業務から、人間ならではの価値を発揮できる領域へと、自身のキャリアをシフトさせていく戦略的な視点です。戦略的な思考力というコンピテンシーや、そのベースにある好奇心といった人間のポテンシャルがより問われるようになるのです。

未来を生きる子どもたち──AI時代に育つ世代のキャリア展望

息子たちが社会人となる2040年代には、生成AIは私たちの生活や仕事に完全に溶け込んでいることでしょう。彼らは生まれた時からデジタルデバイスに囲まれ、AIとの共生を当たり前のものとして育つ最初の世代となります。
この新しい時代を生きる子どもたちにとって、従来の「安定した仕事に就く」という キャリアの概念は、もはや適切な指針とはならないかもしれません。なぜなら、AIの進化によって多くの職種が変容し、あるいは消滅する可能性があるからです。

しかし、これは決して悲観的な未来を意味するものではありません。
むしろ、AIとの共生時代は、人間ならではの創造性や感性、共感力が一層重要となる時代です。子どもたちは、AIを「競争相手」としてではなく、「パートナー」として捉える視点を自然と身につけていくでしょう。彼らにとって必要なのは、AIと協調しながら、人間特有の強みを活かせる領域を見出し、そこで独自の価値を創造していく能力です。

特に重要となるのは、好奇心、洞察力、胆力、共感力といった基礎的な人間力=ポテンシャルです。これらは、どれほどAIが進化しようとも、人間にしか発揮できない能力として残り続けます。
僕たち大人に求められるのは、子どもたちがAIを効果的に活用しながら、自身の可能性を最大限に引き出せるような環境づくりです。具体的には、AIリテラシーの育成はもちろんですが、批判的思考力や創造性を育む機会の提供、そして何より、失敗を恐れず新しいことに挑戦する勇気を育むことが重要となります。

未来は不確実性に満ちていますが、それは同時に無限の可能性も秘めています。AI時代を生きる子どもたちは、これまでの世代が想像もしなかった方法で、社会に貢献し、自己実現を果たしていくことでしょう。僕たち大人の役割は、そんな子ども達の可能性を信じ、支援していくことにあります。

生成AIにより論点思考が重要になる

最新の生成AIモデルは、人間の知的労働の多くを代替できる可能性を示しています。特に注目すべきは、これらのAIが単なる情報の処理や分析にとどまらず、論理的な推論や複雑な問題解決においても高い能力を発揮し始めていることです。

従来、新入社員やジュニアな職位の社員が担っていた定型的な業務——調査業務、議事録の作成など——は、すでにAIによって効率化され始めています。この流れは今後さらに加速し、より高度な業務にまで及ぶことが予想されます。

このような状況下で、ビジネスパーソンに求められる能力は大きく変容しつつあります。最も重要となるのが「論点思考」です。これは、目の前の課題に対して「なぜそれを行う必要があるのか」「どのような価値を生み出すのか」という本質的な問いを考え、その解決に向けた戦略を構築する能力を指します。

例えば、マーケティング戦略の立案において、データ分析自体はAIが高精度で行えるようになっています。しかし、どのようなデータを収集し、どの視点から分析を行うべきか、その結果をどのように経営戦略に活かすのかという判断は、依然として人間の領域です。これこそが論点思考の本質になります。
論点は立場によっても変わるため、誰のためにやる仕事なのか、頼んだ人のその先にいるのは誰なのかといった想像力、2つ先の立場を見通す力が重要になります。

このような変化は、僕たちの仕事への向き合い方自体の見直しを迫っています。会議や企画立案の場では、細かな実務的な議論よりも、「なぜそれを行うのか」「誰のために行うのか」といった本質的な議論により多くの時間を割くようになるでしょう。

結果として、これからのビジネスパーソンには、AIを効果的に活用しながら、より高次の思考と判断に注力する能力が求めらます。それは単なるスキルの問題ではなく、仕事に対する根本的な姿勢の転換を意味しています。目の前のタスクをこなすことから、そのタスクの存在意義を問い直すことへと、私たちの視点を移行させていく必要があるのです。

イーロン・マスクの半生記「イーロン・マスク 上・下 | ウォルター・アイザックソン、文藝春秋」によるとイーロン・マスクは、自動化を進める前に無駄な仕事や工程を排除すべきだと強調しています。彼の「アルゴリズム」と呼ばれる5つの戒律の中で、彼は第5戒として「自動化しろ。これは最終段階だ。」と述べています。マスク氏は自動化を最初に行うことを避け、まずは要件を洗い直し、部品や工程を可能な限り減らし、バグを取り除くことを優先すべきだと述べています。具体的には、テスラのフリーモント工場での経験から、無駄な工程をスピードアップすることに多くの時間を費やす愚を犯してしまったと反省しています。そのため、まずは工程を見直し、不要な部分を削減してから自動化に取り組むべきだと考えているのです。

このアプローチは、まさにあらゆる現場でのAI活用においても同様と言えます。自動化を導入する前に、現状の業務を整理し、無駄な工程や手順を排除することで、より効果的な自動化が可能となります。この本質的なAI活用のために、論点思考が重要になるのです。

人気職業における生成AIの影響

子どもたちに人気な職業は、僕たちが子どもの時と比べて大きく変わっていないようです。Youtuberやプログラマは僕たちの世代が子どもの時には人気な職業として存在しませんでしたが、スポーツ選手、医師、警察官といった職業は僕たちが子どもの時も人気でした。

これらの職業が、生成AI技術の台頭によりどういった影響を受けるのかを本連載では考えていきたいと思います。生成AIによる変革は必ずしも職業の消失を意味するものではなく、むしろ各職業の本質的な価値が際立つ機会となるはずです。

医師という職業を例に挙げると、生成AIは既に画像診断において人間の医師と同等以上の精度を示し、膨大な医学文献から最新の治療法を瞬時に提案できるようになっています。
しかし、このことは医師という職業の価値を低下させるどころか、むしろ医師本来の役割である「患者との信頼関係構築」や「総合的な判断」の重要性を浮き彫りにしています。
熱があって診察を受けると、経験のあるお医者さんは、昨日何を食べたかや最近変わった様子はないか、家族に病気の人はいないかといった幅広い問診をすることがあります。これは経験によって、目の前の症状が感染症なのか、他の大きな病によるものではないか、食あたりの可能性もあるといった様々な可能性を効率的に潰していっているのです。
これが、インターネットで診断を受けられるといったサービスでは数十問の質問を受けて、最終的にはお医者さんの診察をお勧めしますといった結果を得る体験とは決定的に異なります。

エンジニアの世界では、より劇的な変化が起きています。ChatGPTのようなAIがコードを生成できるようになり、プログラミングの敷居は大きく下がりました。しかし、このことでエンジニアの価値がただちに失われるわけではありません。むしろ、システムの設計思想を描き、ユーザーのニーズを深く理解し、それを実現するための戦略を立てる能力が、これまで以上に重要になっています。その結果、PdMといった職種が注目を受けていたりもします。

デザイナーの領域では、Midjourney等のAIツールが驚くべきクオリティの画像を生成できるようになりました。しかし、真に価値のあるデザインとは、単なる見た目の美しさではなく、問題解決のための創造的なアプローチにあります。AIは優れたツールですが、デザインの本質的な価値を生み出すのは、依然として人間のクリエイティビティです。

教師という職業も大きな変革期を迎えています。AIが個別最適化された学習コンテンツを提供できるようになり、基礎的な知識の伝達は効率化されました。しかし、教育の本質は知識の伝達だけではありません。生徒の可能性を引き出し、考える力を育み、人間性を涵養する役割は、むしろ重要性を増しています。

このように、生成AIは各職業から単純作業や定型業務をなくし、より本質的な価値創造に注力できる環境を生み出しています。これは、職業選択においても重要な示唆を与えてくれます。将来の職業選択では、学校や書籍から得られる知識をベースとした専門性ではなく、AIを活用しながら人間ならではの価値を発揮できる領域に注目すべきということです。

とはいえ、自動車の登場により馬車がなくなったようにいずれ置き換えられる職業もあるはずです。一方で、限られた家庭の子どものための寺子屋的な問答型の教育から、全国民への教育のために教科書やカリキュラムに基づいた教育の提供に変わった教師という職業が、AIの登場で個々人のレベルに合わせた教育ができるようになり、なぜ学ぶのか、学ぶことの重要性を伝え、意欲を引き出すという寺子屋的な価値提供に戻る可能性すらあります。

本連載では、それぞれの職業が、生成AI技術によりどういった影響を受け、変化していくのかを、実際に、その職業に就く人の意見を聞きながら考えていきたいと思います。

人気職業ランキング

以下は「13歳のハローワーク公式サイト」に掲載されている2025年1月の職業人気ランキングです。
すべてを扱えるかは自信がありませんが、なるべく実際の職業に就く現場の意見を聞き、取り上げていきたいです。

1位 プロスポーツ選手
2位 イラストレーター
3位 ユーチューバー(YouTuber)
4位 パティシエ
5位 美容師
6位 保育士
7位 医師
8位 トリマー
9位 看護師
10位 薬剤師
11位 漫画家
12位 ブリーダー
13位 警察官
14位 建築家
15位 ゲームクリエイター
16位 エンジニア
17位 歌手
18位 テレビ業界で働く
19位 和菓子職人
20位 声優
21位 気象予報士
22位 公務員[一般行政職]
23位 中学校・高校教師
24位 税理士
25位 インテリアデザイナー
26位 フラワーデザイナー
27位 作曲家
28位 ファッションデザイナー
29位 カイロプラクター
30位 スタイリスト
31位 海上自衛隊
32位 獣医師
33位 公認会計士
34位 グラフィックデザイナー
35位 ゲームプログラマー
36位 アニメーター
37位 ホテルで働く
38位 弁護士
39位 理学療法士
40位 監督・コーチ
41位 ファッションモデル
42位 外交官
43位 水族館の飼育係
44位 パン職人
45位 動物園の飼育係
46位 NASAで働く
47位 司書
48位 臨床心理士
49位 小学校教師
50位 ネイルアーティスト
51位 アナウンサー
52位 作家
53位 校務員
54位 シェフ
55位 メイクアップアーティスト
56位 ミキサー
57位 自然観察指導員
58位 プログラマー
59位 キュレーター
60位 宇宙飛行士
61位 バックダンサー
62位 編集者
63位 助産師
64位 日本料理人
65位 大工
66位 スポーツ用品メーカーで働く
67位 画家
68位 CGクリエーター
69位 動物看護士
70位 ペットシッター
71位 犬の訓練士
72位 便利屋
73位 カメラマン
74位 通訳
75位 陸上自衛隊
76位 精神科医
77位 ミュージシャン
78位 プラネタリウムで働く
79位 建設コンサルタント
80位 幼稚園教諭
81位 金融業界で働く
82位 農業
83位 ツアーコンダクター
84位 電車運転士
85位 天文台で働く
86位 芸能マネージャー
87位 テレビディレクター
88位 地質調査業(ボーリング技術者)
89位 絵本作家
90位 政治家
91位 為替ディーラー
92位 PA[音響]
93位 作業療法士
94位 地質調査業(地質調査技術者)
95位 パークレンジャー
96位 舞台俳優
97位 コレペティトゥア
98位 インペグ屋
99位 登山家
100位 スポーツトレーナー

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