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【対談】公認会計士「つーも」と語る、マンクラの考える仲介手数料あれこれ


つーもさんX


すんで南 X

すんで南
ここ数年、断続的にですが、仲介手数料についての議論が賑わっていますよね。最近も話題になりました。仲介手数料が高い、いや正当だ、という議論、というか、若干言い合いにもなっている気もします(笑)。

マンクラでもある、つーもさん的に、仲介手数料について、感じていることはありますか?

つーも
はい。私自身も本業は税理士として、一定の料金を設定し、お客様にサービスを提供している立場です。
そういう意味では、広く言えば仲介業に近いサービス業なんですよね。

だからこそ「どちらの言い分もすごくよくわかる」というのが本音です。

ただ、私自身のスタンスとしては、「基本的に自由競争でいいんじゃないか」という立場なので、あまり目新しい意見は出ないかもしれません(笑)。

というのも、税理士業界においては、料金の規定や上限は一切なくて、完全に事業者ごとの自由競争なんですよ。

不動産の仲介手数料のような、上限のパーセンテージもないですね。

不動産の仲介手数料に法定の上限(3%+6万円)が定められているのは、それが「独占業務」だからだと思うんです。

免許に縛られた独占業務なので、もし不動産業界が結託して料金を底上げすると、消費者に不利になりますよね。それを防ぐためにも、宅建業法で縛っているという背景があると推察してます。

ただ、税理士の取り扱う業務は、案件ごとの金額差が数万円〜数十万円程度に収まることが多いので、法律で制限するまでもない、という政策的判断なのかもしれません。


1. 独立1年目の失敗と「安売り」がもたらす悲劇

すんで南
最近は「定額制」だったり、「片手分(売り手または買い手の片方のみ)しか仲介手数料をもらいません」といったサービスを打ち出す会社が注目されていますよね。

頼む側の消費者からすれば「手数料が安くてお得だ!」と感じると思います。一方で、経営者目線で見ると、高いクオリティを維持したまま組織化したり、スケールさせるのは、ハードルがあるんじゃないかと思うんです。

つーも
私も全く同感です。
これ、自分自身の苦い経験を振り返っても、身に染みる部分がありまして……。

私が独立して税理士事務所を立ち上げた1年目、集客のやり方もよく分からないし、本当にお客さんが来てくれるか不安だったんですよね。

だから、相場よりもかなり低い価格設定で案件を受けてしまったんです。

で、実際に安く受けてみてどうなったかというと……恐ろしいことに、価格を安くすると、集まってくるお客様の質やリテラシーも、低くなってしまいがちなんですよ。

書類の準備が遅れたり、コミュニケーションの工数が異様にかかったりして、結局自分の労働時間が一気に削られていく。

単価が低いのに工数は2倍かかるみたいな状態になって、自分の首を絞める結果になりました。それが1年目の最大の反省点だったんです。

すんで南
なるほど。頼む側からしたら「安くてラッキー」なんですけど、受ける側としては利益が出ないどころか、疲弊していってしまう。

つーも
まさにそうです。安さだけで集客してしまうと、ビジネスとして成り立たせるのが、難しくなってしまいます。
定額制や安さを打ち出すアプローチは、相応の絞り込みや仕組み化をどう徹底させるか次第で、うまくいくかどうかが分かれるのではないでしょうか。

すんで南
仲介手数料を払う側、特に売り手(オーナー側)の心理としては
「流動性の高い人気タワマンで、なんで数百万円の手数料を払わなきゃいけないんだ」
「右から左へ流すだけなのに、満額取るの?」
と思われやすいですよね。

つーも
はい。X(旧Twitter)を見ていると、特に湾岸エリアの住民の方々や情報感度の高い不動産クラスタが多いので、そうした流動性の高い物件についての言及が目立ちます。

ここ数年の、売り出せばスパッと決まるような局面を見ていると、「営業コストがかかっていないのに仲介手数料が高すぎる」とチクチク言いたくなる気持ちも分かります。

でも、じゃあなぜ、不動産仲介会社が満額や、それに近い手数料をいただくことが多いのかといえば、そのエリアだけ、あるいはその物件だけ手掛けているわけではないからです。

そのような都心の一等地もやれば、郊外の手間がかかる物件も扱う。

案件ごとに「この物件は手間がかからないからX%、こっちは大変だからY%」なんて個別で料金を変えていたらキリがないですし、顧客によって手数料を変え過ぎるのは、それはそれで不公平感も出ますよね。

私自身の業務でいえば、税理士としては基本一律の料金体系にしていますし、値引き交渉はお断りしています。

人によって「あっちには色をつけて、こっちにはつけない」なんてことをやり出したら、サービス全体の公平性が保てなくなりますから。

ですので、事業者側として、一律で満額をいただきます、というロジックには、それはそれで筋が通っていると思います。

もしそれが嫌なら、最初から定額制や格安を謳う事業者を選べばいい話なんですよね。ユーザーには選択肢が用意されているわけですから。


2. 満額の手数料に払う「価値」の正体

すんで南
確かに、格安を選ぶのも、満額の会社を選ぶのも、個人の自由ですよね。
つーもさんは過去に、ご自宅を売却された経験があるとお聞きしましたが、その時はどうされたんですか?

つーも
私が前の家を売却した時は、大手仲介会社さんにお願いしました。

その大手さんは「手数料の値引きは一切しない」というスタンスの会社でした。他の業者からは「うちなら手数料安くしますよ」というアプローチもあったのですが、あえて満額を払う会社を選んだんです。

すんで南
なるほど。手数料割引の提案を断ってまで、満額の会社を選んだ理由はどこにあったのですか?

つーも
「付加価値の高さ」ですね。
その会社さんは広告にすごく力を入れてくれていて、仲介手数料の中でプロのホームステージングを無料で入れてくれたり、ポータルサイトの枠でも一番目立つ最上位プランで掲載してくれたりしたんです。

私自身、ちょっと強気のチャレンジ価格で売り出したいと思っていたので、露出と魅せ方を徹底してくれる会社にお願いしたかった。結果的に売り出してわずか3日で、満額成約しました。

すんで南
3日で成約!それはすごいですね。

つーも
はい。もっとも、原価や実務の期間だけで言えば「3日間レインズに載せて営業しただけで、満額取るの?」というロジックも成り立ちます。

でも、売り手である私からすれば、希望通りの価格で素早く売却できて、営業担当者さんの対応も素晴らしかったので、満額の手数料を支払うことに、不満はありませんでした。

満足感さえ得られれば、3%+6万円という手数料は決して「悪」ではないと実体験として感じましたね。

すんで南
結局、取引全体を通してお客さんが「この金額を払う価値があった」と納得できるかどうかが全てですよね。

ただ、事業者側がSNSなどで、「俺たちは3%+6万円の価値を提供しているんだから、満額払うのが当たり前だ」という態度で発信してしまうと、ユーザー(消費者)からは反発を受けます。

プロとしてのプライドを持って「満額に見合う良い仕事をしよう、しっかり稼ごう」というプライドを持つこと自体は、素晴らしいことです。

しかし、それを顧客や世間に対してどう見せるか、どう伝えるかという「発露の仕方」は別の話ですね。

つーも
おっしゃる通りですね。
サービスの価値を評価するのは、事業者ではなく、あくまでお金を払う顧客・消費者側ですから。
業者が「自分は100の価値を提供した」と思っていても、それが顧客の求めているものにマッチしていなければ意味がありません。

「満額もらって当然」という上から目線のスタンスを見せつけてしまうと、消費者感情としては悪印象しか残らない。
私自身も税理士として一律料金でやっていますが、お客様に選んでいただき、継続していただけるように「これだけの付加価値を提供しています」という姿勢を、丁寧に見せることは大切にしています。

3. インフルエンサーと組織化の壁

すんで南
今回、SNS上で議論になった背景には、「インフルエンサー型仲介会社」の話題もあると思っています。
個人ブランディングを強みにして「この人にお願いしたい」と顧客から指名をもらえるのは素晴らしいことです。
しかし、個人で対応できる案件の数には限界があります。

個人の営業マンとして受け持てる案件数って、どんなに優秀でも週に3〜4組、月で数件が物理的な限界です。

売上で言えば、感覚的には、年間2000万くらいまでは1人で売り上げられますが、それ以上を目指すなら、他の誰かを雇って、組織化しなければなりません。

しかし、組織化した時の問題として、顧客は「そのインフルエンサー本人」を信頼して頼みに来ているということがあります。

「今後、担当が変わります」となった時に「そうなんだ。じゃあいいです」と離れてしまうリスクがある。

個人の信用を、どうやって「チームの信用」や「会社の信用」に昇華させていくか。これは不動産仲介に限らずですが、インフルエンサー業全体の課題ですね。

つーも
その課題、まさに今の私自身の最大の悩みでもあります……!

私はいま一人で税理士事務所を運営しているのですが、有難いことに案件が増えて、キャパシティがカツカツなんですよ。

でもじゃあ、自分のサービス品質を維持したまま、作業を誰かに振れるかというと、なかなかイメージが湧かない。

税務や決算の作成クオリティを下げるわけにはいかないですが、自分と同レベルのスキルを持つ資格者を雇うと莫大なコストがかかる。

どこまで業務を標準化して、どのレベルで人に任せるのか。

経営者の方々が通ってきた採用やマネジメントの壁に、今まさにぶつかっています。

すんで南
人気ラーメン店が「支店を出すか、1店舗で味を極め続けるか」で悩むのと同じですよね。

自分の手が届く範囲で完璧なクオリティを追求するのも一つの美学ですが、自分が創り出したい世界観やサービスを、組織化してより多くの人に届けていくチャレンジも尊いことです。
それに、組織にするからこそ「担当者が不在の時も、チームでフォローできる」というリスクヘッジや、サステナビリティが生まれる。担当者が急病になった時に、すべてがストップしてしまうのも良くないですよね。

つーも
一人社長だと、自分が倒れた瞬間に、事業も売上もストップしてしまいますから。組織を大きくしてオフィスを構え、従業員を雇って雇用を守るとなると、コストを売上から回収しなければならない。

だからこそ、必然的に適正な手数料をいただく構造になっていく。

組織を維持・拡大していくための企業論理としても、適正な対価を得ることは不可欠なんですよね。
もちろんこれは事業者側の事情であり、消費者には関係のないことです。
だからこそ、消費者には事業者を選ぶ自由があります。

4. 変化する不動産市況とこれからのコンサルティング

すんで南
もう一つ重要な視点として、不動産市況そのものの変化があります。
去年や一昨年までは、都心や湾岸のマンションは「売りに出せば右から左へすぐ売れる」というイージーな売り手市場でした。
しかし、今年に入ってから、特に1.5億を超えるような高額物件の潮目が、変わりつつあります。高騰を続けてきた湾岸エリアに代表されますが。

つーも
市場の雰囲気が変わってきているんですね。

すんで南
はい。売主さんの目線は、この数年の勢いのまま、高止まりしているのですが、買主さんのついてこれる予算感と噛み合わなくなってきているんです。

その結果、売り出しても、成約に至らないケースが増えています。

さらに、住宅ローンの金利上昇局面や、審査の厳格化によって、買付けが入って契約しても、本審査の段階で減額や否決になって解約になるという手痛い事例も出てきています。

つーも
なるほど。売り手と買い手の条件をマッチングさせる難易度が、以前より上がっているわけですね。

すんで南
はい。「出せば売れる」局面での仲介と、なかなか決まらない難しい局面で価格交渉や資金計画のコンサルティングを粘り強く行う仲介は、問われる実力が変わります。
市況が厳しくなってきた今だからこそ、仲介会社が介在してプロとしての調整力を発揮する、本質的な価値が問われていると感じます。

つーも

単に契約書や重説を作るだけであれば、今の時代、いくらでも効率化できますよね。
でも、仲介の本当の価値って、その前後に発生する泥臭いコミュニケーションや調整の手間にあると思うんです。
不動産クラスタやマンクラの人たちは、知識が豊富なので勘違いしがちですが、一般のお客様って、知識がないのが普通ですよね。

私も以前、個人的に不動産購入の相談を年間何十件も受けていた時期があるのですが、「片手取引と両手取引の違いって何ですか?」「内見の時ってどこを見ればいいんですか?」という、初歩的な質問をたくさんいただきました。

SNSにいる、リテラシーの高い人たちやマンクラを基準にしてしまうと感覚が麻痺しますが、世の中のほとんどの人は不動産取引の知識なんて持っていません。

すんで南
例えば、過去にカードの分割払いを滞納していて信用情報(CIC)に傷がついているお客様に対して、通せる住宅ローンを根気強く探して調整するのも仲介会社の実力です。その手間をかけても、成約につながったり、あるいは感謝されるとは限らないのですが(笑)。

知識のないお客様の不安に寄り添い、資金計画から引き渡しまで伴走する。

その膨大な工数とノウハウに対して、対価をいただいているわけです。

今回、仲介手数料や定額制サービスを巡って様々な議論が巻き起こりましたが、最終的には「ユーザーが自分のニーズに合ったサービスを自由に選べばいい」という点に行き着きますよね。

つーも
流動性が高くて自分自身で判断ができるなら、定額制や格安仲介を使えばいいし、売却に手間がかかりそうだったり、手厚いコンサルティングを受けたいなら、満額を払って信頼できる仲介会社に頼めばいい。

選択肢が多いこと自体は消費者にとって間違いなくプラスです。

すんで南
なんといっても、東京や首都圏の不動産市場は巨大です。

新しく出てきた事業者や異なるビジネスモデルに対して過剰に攻撃するのではなく、お互いに切磋琢磨して業界全体のサービス品質を高め、市場のパイ全体を大きくしていけるのが一番ハッピーな形だと思います。

狭いパイを奪い合うのではなく、みんなで業界を盛り上げていきたいですね。つーもさん、今夜は遅い時間まで非常に濃いお話をありがとうございました!

つーも
こちらこそ、ありがとうございました!