「文車妖妃のメソッド」第4話:新井ふうこと高木ちよ
新井はコミュニティ作りの達人である。人当たりの良い性格は、彼女のまわりを男女問わずに魅了する。「ええやん」の口癖はまわりを明るくし、やる気を起こす。踏みとどまっている者の行動をうながす。新井はこれまでプライベートのSNSで、さまざまなコミュニティやイベントを主催してきた。どれも盛況で、一言で表すと新井は人気者だ。memo社でも彼女のファンは多い。
「ちよさん、今日はいつまでやります?」
「……もうやめます。疲れてきました。残業はするなと言われていますし」
新井は高木ちよが少し苦手だ。得意とするコミュニケーションが彼女には通用しない。高木は何を考えているのかわからない。いつもディスプレイに向かい独り言を言いながら仕事をしている。何度か志村から注意されていたが、癖なのかまったく治らない。
「ちよさん、自分で記事を書いてる時は独り言が出ないんですね」
以前、新井がそう聞いた時、きょとんとした顔で高木は答えた。
「……私、独り言なんて言ってます?」
無意識らしい。高木が書くエッセイは自分をネタにした自虐モノだった。その文体はまさに独り言。独特の言い回し、多種多様な例え話が高木のエッセイの魅力だった。
コミュニケーションの達人と、独り言エッセイスト。この2人が合うわけがないのだ。
しかし新井は高木の文才を認めている。この2人の共通点をあげるなら、ファンが多いことだ。新井は人の承認欲求をくすぐる。人を認め人を喜ばせる。喜怒哀楽の「喜び」と「楽しさ」が彼女の得意とするところだ。
一方、高木は自分をネタにし、人を笑わせるのに長けていた。「哀しみ」と「怒り」が融合し、そこに笑いのエッセンスが入るエッセイは極上だ。
別々の感情を司る2人だが、仕事の上では相性がいい。お互いがないものを補完しあっているので、苦手だけど居心地がいいという、変な関係の2人なのである。ある日の休憩時間。コンビニから新井が帰ってくると、手にはアイスを持っていた。
「ちよさん、アイス買ってきたよ。抹茶とストロベリー。せーのでどちらが食べたいか決めよう。いくよー! せーの!」
「……ストロベリー」
「抹茶!」
相性がいいのである。
第1話:https://note.com/u_yasushi/n/n50fe762ef006
第2話:https://note.com/u_yasushi/n/n2aefa79ddb17
第3話:https://note.com/u_yasushi/n/n7766d2efafdd
第4話:https://note.com/u_yasushi/n/n14db0d504832
第5話:https://note.com/u_yasushi/n/ne3df7df82afc
第6話:https://note.com/u_yasushi/n/nce363b3a3b6d
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第9話:https://note.com/u_yasushi/n/nf24d6f4b8133
第10話:https://note.com/u_yasushi/n/n7df18307a437
第11話:https://note.com/u_yasushi/n/n3729eec39423
第12話:https://note.com/u_yasushi/n/n986740e6ffa6
第13話:https://note.com/u_yasushi/n/ne4d645a75975
第14話:https://note.com/u_yasushi/n/na38f84e5a63f
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