「文車妖妃のメソッド」第14話:エピローグ
「ふうこん、どうしてこの作品を残した?」
「えーっと、作者に会いたくなったから?」
「ちよさん、この作品の魅力ってなに?」
「……唯一無二だから。私にこういう文章は書けません」
「加藤くん、この作品に花丸をつけた理由は?」
「カンペキですね。この人が他のを書いたらお金を出してでも読みたいです」
「んじゃ最終審査クリアだな」
文章には好みが人それぞれにある。万人受けするものを狙って書くなんて、当然できやしない。ノーベル賞作家であっても苦手な人はいる。しかし、何年かに一度、爆発的に受け入れられる作品は必ず出てくるのだ。
自然発生で生まれるものではない。その裏には、作者が倒れるほどの苦悩があり、編集者の命を削るレベルの努力があり、「この作家を売り出したい!」という強い気持ちを持つ人たちがいるものだ。公募賞の審査員もそこに含まれる。
言葉は思考だ。思考は作者の性格がそのまま現れる。売れたい。認められたい。お金持ちになりたい。チヤホヤされたい。
それらの欲望を乗り越えた時、恐ろしいほどに魅力的な作品が生まれてくるのだ。
(うーん、私はそうは思わないな)
「あ、志村さん、ちょっと待ってください。自分で選んでおいてなんですけど、この作品、綺麗すぎやしませんか? なんて言うんでしょう。文体から溢れてくるエネルギーが見えないというか」
「あー、加藤くんの言うこともわかるなぁ」
いや、もしかしたら欲望丸出しな文章でもおもしろいのではないだろうか。隠すことなく欲望をぶつけるのも、魅力的な文章ではないのだろうか。創作物語の悪役が魅力的に描かれるのは、欲望そのものだからではないのだろうか。
「……でも、やっぱり他の作者とは違いますよ、この人」
(そうなんだよ。そこが私もやはり引っかかるのだ)
裏の裏は表。欲望を隠して隠せば、それは表に出てくるのかもしれない。
「逆に、『大賞を狙ってるぞ!』ってのが見えてるもんね。だって、完璧だよ。嵐文メソッドもすべてクリアしてるし。加藤くんの言うようにストレートなエネルギーは見えないけど、にじみ出てくるのは隠せていないってのがいいかも」
「……うーん。わからなくなってきましたね。何度目の愚痴かわかりませんけど」
「僕もそう思います。むずかしいですね。胃が痛くなってきました。おもしろい作品って理由なんて後付けなんですよね。読んですぐにわかります。おもしろい文章って、言語化すると、ほんと、なんなんでしょう」
「あー! 加藤くん、それ言っちゃだめだよ。ほらほら、志村さんが勝ち誇った顔をしてるじゃない!」
「加藤よ、おもしろい文章ってのはな」
先回りして加藤と新井と高木と神吉(幽霊)は答えた。
「おもしろさとは何か、と問われた時にだけ現れる幻想である」
(おもしろさとは何か、と問われた時にだけ現れる幻想である)
(了)
第1話:https://note.com/u_yasushi/n/n50fe762ef006
第2話:https://note.com/u_yasushi/n/n2aefa79ddb17
第3話:https://note.com/u_yasushi/n/n7766d2efafdd
第4話:https://note.com/u_yasushi/n/n14db0d504832
第5話:https://note.com/u_yasushi/n/ne3df7df82afc
第6話:https://note.com/u_yasushi/n/nce363b3a3b6d
第7話:https://note.com/u_yasushi/n/n988d2fbbea88
第8話:https://note.com/u_yasushi/n/nc7891dfdb586
第9話:https://note.com/u_yasushi/n/nf24d6f4b8133
第10話:https://note.com/u_yasushi/n/n7df18307a437
第11話:https://note.com/u_yasushi/n/n3729eec39423
第12話:https://note.com/u_yasushi/n/n986740e6ffa6
第13話:https://note.com/u_yasushi/n/ne4d645a75975
第14話:https://note.com/u_yasushi/n/na38f84e5a63f
いいなと思ったら応援しよう!
最後まで読んで頂きありがとうございます!
また是非おこしください。
「スキ」を押していただけるとめちゃくちゃ感激します
感想をツイートして頂ければもっと感激です
ありがとうございます!感謝のシャワーをあなたに